お嬢様の好奇心
「ははははははっ!! いやぁ、弦さんでもそんな冗談を言うんですね!! 最高ですよぅ」
顔合わせも済んだその数日後、俺はある連絡を弦さんから受けた。
が、しかし、その内容はとんでもない物であった。思わず現実逃避する位に。
『いや……すまんが、冗談は苦手でな。全て事実だ』
「いやいやいやいや、それが事実だとしたら紅姫さんが近い将来に此方を訪れるって事で……うっぷ」
唐突に沸いてきた吐き気を何とか堪え、心配そうに此方の様子を伺うラビィに片手を振って見せる。
とは言え、内心のダメージはかなり深刻である。
ただでさえ隊商の護衛を受けられるかどうか心配してたり、そもそも受けたとしても此方に敵意を抱くメンバーが混じってる事で辟易した思いを抱いてのだ。
そこへ唐突に弦さんから『すまん、木津よ。ラドホルトが其方を訪れるかもしれん』なんて連絡が来れば精神に異常をきたすわ。もう勘弁してくれぇ……。
「ら、ラドホルトさんは何て言ってましたか? キルでユーなんて物騒な言葉は言ってなかったですよね!?」
『大丈夫だ。奴もお前に怒りを抱くのは理不尽な事だと分かりきってる。…………多分な』
小さく呟かれた最後の言葉であるが、無駄に聴力の良い俺にはバッチリ聞こえている。
ただ、今のは俺の幻聴だと思いたい。そうでないと精神が耐え切れないよ。
「そ、そうですか。まぁ……ラドホルトさんに関しての事は後回しにします。実は先ほどカークスさんから連絡があって、隊商がヤウラに到着したみたいなんですよ。とりあえず戦車どうこうの事情を話してみた所『集めたメンバーを自分達が確認した上で、依頼を任せるか決める』との返事があったそうで、今から向かう所なんです」
『あぁ、それでいい。ラドホルトにしたって暫くは貴婦人の傍から離れられん筈だ。ミシヅの動きがまだ読めてなさそうだったしな』
「にしても、刺客だなんて穏やかではないですね……」
幾ら死闘を繰り広げた相手とは言え、ノーラさんの今の状況は同情を禁じえない。
だからと言って、どうこうする訳でもないが……。
内心に沸いて出たその複雑な感情にはとりあえず目を瞑り、弦さんに別れの挨拶を切り出す。
「弦さん、そろそろ通話を切ります。依頼を受けられたどうかは、また後で連絡しますんで」
『あぁ、頑張れよ』
そのまま通話を切り、盛大に溜め息を零す。
痛む胃と吐き気を堪え、俺はとりあえずキリエさん襲来の件を頭の隅に追いやる。
「今は護衛依頼に集中するしかない。キリエさんやノーラさんの事は一旦忘れるんだ、俺!」
ブツブツと呟きながら集中を深め、別の事を考えて思考を切り替える。
隊商の人達は集められたメンバーを見て、依頼を任せるかどうかを決めると言ったらしい。
恐らく、カークスさんは既に集めたメンバーのランクや装備に関しての報告は既に向こう側に伝えている筈だ。
以前にも彼は俺が車両持ちである事を組合のデータで確認したと言っていたし、そこ等へんの事はしっかりしているだろう。
にも関わらず、隊商が返事を保留しているのは何故だ?
本来参加する筈だった戦車との戦力比で決断するだけならば、判断材料としては十分な筈だ。
それでも決断できなかった。否、しなかったのは恐らく、集めた新たな戦力でも今回の依頼を遂行するには足りえる戦力だと認識したのだろう。
そう考えるとなると……。
「悪い反応じゃあ……ないよな?」
向こうも態々と集めたメンバーを呼び出す位だ。
これは恐らく事務的な確認作業に過ぎず、内心では雇う算段ではなかろうか?
向こうも血気盛んな組合の連中に対し、目の前で『やっぱやめた』宣言はしない筈だろ。
よっぽど失礼な態度でも見せない限り、上手くいくと見ても良いのでは? うん、そう思いたい。
「……考えてても仕方ない。よし!! 行くか、ラビィ!!」
「はい、沿矢様」
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沿矢が家を出始めた頃、組合所の前では到着した隊商の車両が列を成していた。
同じく、カークスが率いるクルイストも組合所の前で待機しており、今回集めた補充メンバーの到着を待っている。
ハタシロから付き添っていた護衛は既にその任を解かれ、依頼の疲れを癒す為にヤウラの街中へと散っていった後だ。
取り分け、ヤウラは前世界の崩壊から生き残った都市の中でも巨大な都市に分類される物であり、メイン居住区内には小規模ながら娯楽施設もある。
そうした前世界の娯楽施設が今でも現存しているのは大変に珍しい事であり、ヤウラの観光スポットにもなっている。が、正式な許可を得ていないのならば、メイン居住区内に足を運ぶには最低でもE+でないと駄目だ。
もっとも、組合に所属する勇士達に言わせれば『メイン居住区に行くならば、最低でもD+』との事だ。
それは何故かと問い返せば、彼等は不敵な笑みを浮かべてこう言うだろう。
『それ位の稼ぎがないと、メイン居住区では"遊び通せない"」
今の荒廃時代、純粋に楽しめる娯楽は少ない。
あるとすれば酒や食事、女か賭け事、それだけだろう。
もっとも、そんな娯楽ですら楽しめる者は限られていると言うのだから、笑えない事実だ。
そんな事情もあり、現存する娯楽施設の価値は計り知れない程に高い。
スカベンジャー達が掘り当てる遺物でも、娯楽の類は"当たり"に分類される。
もし前世界で流行した映画やコミック等のデータを記録したチップを見つける事ができたのならば、それは大金になり得るのだ。
今、隊商に積まれている商品の中にも幾つかの映画やコミックを記録したチップを積んでいる。娯楽都市との別名があるヤウラでは、商人達がそんな品物を購入するのに金の糸目を付けないのは有名だ。そんな"余裕"がある場所は実に珍しい。
東西南北に駐屯地を構え、メイン居住区は金属の巨壁に守られており、それを維持しているのは万を越す軍。傍から見れば、これ程に安定した大都市は無い。
だからこそ……。
「ハタシロやミシヅが警戒する訳ですね……」
「え? 何か言いましたか、お嬢……様」
何時もの様に"お嬢"呼びしようとした付き人に向かって、女性は睨む。
睨まれた相手は慌てて言葉を足し、何とかその場を取り繕った。
そんなやり取りも隊商が行う荷物の積み下ろし作業の音に紛れ、組合所を行き来する誰の耳にも届かなかった様だ。
女性はその事に安堵を覚えながら、失態を犯した付き人に注意を促す。
「ニルソン、貴方は少したるみすぎではないですか? わたくしは北方の大商会『フィブリル』の看板を背負い、この度の隊商に参加しているのです。そんなわたくしが『お嬢』等と気安く部下に呼ばれていたのでは、示しがつきませんわ!!」
「はぁ……申し訳ございません、ミルお嬢様。とは言っても、こうも移動続きでは気が持たないと言うか……」
ニルソンと呼ばれた小太りの男はペコペコと頭を下げつつも、そんな言葉を口にする。
その言葉でミルと呼ばれた女性の眉が跳ね上がった所を見るに、どうやら意に沿わない物であった様だ。
「言い訳はよしなさい、疲れているのは皆も同じ。ですが、それは言葉にしたところでどうにもなりません。そうやって一人が零した不満が他者に苛立ちを呼び起こさせ、苛立ちは集中を乱して精細を欠かせる。ほら、良い事なんて一つもないでしょう?」
ふふん、と言わんばかりに胸を張り、ミルは得意げに語り終える。
そんな彼女の態度を見て、ニルソンは彼女が移動時に読んでいた本の中身がどんな内容だったのかの大体の見当がついた。
「はぁ……そんな物ですか。ところで、ミルお嬢様……」
ニルソンは言葉尻を小さくすると、ミルに近寄って小さく尋ねる。
『ここから先、どうするんですか? 予定外の事態ですけれども……』
予定外の事態、と言うのはヤウラからの護衛戦力が変更された点だ。
クルイストが所持していたMBTの戦力比は当然ながら強力であり、期待できる物であった。
が、いざ現場に着いてみればそれは"破壊"されていたのだ。
そんな異常事態は予想外どころか、予想すらしていなかった事態だ。
しかし、何よりもミル達が驚いたのは……。
「本当に組合所が襲撃されていたなんて……思ってみませんでしたわ」
ヤウラに来るまでの道中で聞いた襲撃に関する噂話が、まさか事実だなんて思いもしなかった。
ミルは組合所の前で荒れ果てた道路や建物を修理する兵隊達を眺めながら、心中で愚痴を零す。
キスクからの旅路は実に安定だった。
初めて任された隊商の指揮に緊張しつつも、ミルは実に良くやった方だろう。
血気盛んな組合の勇士達に尻込みしつつもやり取り交わし、小さな集落や町での取引もなんとか捌ききった。
『これなら何とかなるのではないか?』
そう思い始めた矢先での思わぬトラブル。
ミルは初めて直面する問題に頭を抱えつつも、自分を奮い立たせる。
「確かに予定外の事態です。けれども、クルイストのリーダーが今回の件で対応してくれていたのは僥倖ですわ」
戦車が無くなったのは実に惜しい。
が、クルイストが掻き集めた戦力もそう馬鹿にはできない。
テクニカルを所持した三チームの参加、それだけを見れば"数が増した"事による強みが出てくる。
連れてきた隊商の車両数を考えれば、広範囲をカバーできる人数の増強は有難くもある。
戦車と違ってテクニカルは防御面や攻撃力に不安はあるものの、機動力は高い。
例えば、突然の襲撃が来た時には隊商の側面や後方への迅速な移動による対処が可能になるだろう。
そう考えると悪い事ばかりではない。
ミルはそう言って、ニルソンに今の現状を伝える。
彼はその説明を聞いて賛同するかの様に小さく頷いていたが、ふとそれを止めて疑問を口にした。
「あれ? だったなら何で、クルイストのリーダーに怒鳴り散らしてたんですか?」
そうなのだ。
ミル達がヤウラに到着し、カークスから事情を聞いた直後、彼女は途端に怒りを露にして見せたのである。
そんな彼女の姿は思わず呆気に取られる程に鬼気迫っており、連れてきた私兵達が間に入って落ち着かせるまで数秒の時を要した程である。
ミルはニルソンの問いに顔を向けると、あっけらかんと言い放つ。
「あぁ、あんなのただのポーズですわ。見せ掛けです。ああやって、わたくしが真っ先に怒りを見せれば私兵達の苛立ちを払拭できると踏んだのです」
今回の護衛依頼では、隊商が連れている私兵戦力はあくまでオマケ扱いと言う事にしている。
様々な経験をし、危険を乗り越えてきた組合の猛者達と比べれば、隊商の護衛達では頼りにし辛い物があるのだ。街中でゴロツキ達を相手に睨みを効かせてきた経験程度では、荒野の危険は払えない。
ミルはその事を熟知しているが、当の本人達はそうは思っていない。
『何故、自分達が組合の"ゴロツキ達"に従わねばならないのか?』彼等は臆面も無くそう思っている。
とは言え、金払いの良い雇い主の意向であるがゆえに黙って従ってはいたが、苛立ちはどうしても積もってしまう。
そんな折に、クルイストから思わぬ報告を受けてしまう。
ミルとしてはカークスの真摯な対応と、妥協案を用意していた事で納得できるものであったが、それを私兵達の前で素直に受け入れてしまうのは不味い一手だ。
長い旅路で徐々に募ってきていた私兵達の苛立ちを察していたミルは、これ以上ソレを増幅させない様に一芝居打ったと言う訳だ。
ニルソンはミルの説明を受け、思わず口を手で覆いながら感動してみせる。
「おぉ……!! お嬢もちゃんと考えてたんですね。俺、なんだか感激です!!」
「お嬢と呼ぶんじゃありません!! 全く……余程の理由がなければ、わたくしが人前でみっともなく喚き散らすはずもないでしょう?」
ニルソンの褒め言葉にミルは呆れ顔で答えつつ、懐からPDAを取り出して眺める。
そこにはカークスから受け取った、補充メンバーの詳細が記されていた。
「ランクにはとりあえず目を瞑るとして……車両持ちである事に違いは無い。けど『G-』だなんて、初めて見たわ」
集められたメンバーの軒並みは、やはりクルイストに所属する者達のランクと比べれば低い。
その中でも一際に目を惹くのが木津 沿矢と記された一人の少年だ。
なんとなく気になったミルは彼の詳細を調べてみる事にし、画面をタッチしてスクロールさせる。
「G-……だけど車両持ち、迎撃戦参加数は一、MVP獲得も同じく一って事は……初参加でMVPを取ったと言う事かしら?」
「なんか、よく分かんない子ですね。歳は……十五!? うっわ、お嬢より五つも下じゃないですか!! この歳で組合に所属するとか、世知辛い世の中っすねぇ~……」
後方でPDAを覗き込むニルソンの言葉を無視しながら、ミルは更に画面を眺めていく。
「えぇ? 所属してまだ一ヶ月近くしか経ってない。しかも、この子はヒューマノイド所持者!? 連れているヒューマノイドの型はカークスさんの調べでは……MMH? なに? 聞いた事も無い。な、何だか滅茶苦茶ですわ。金持ちの息子が道楽で組合に所属でもしたのかしら……って、よく見れば賞金首も仕留めてるじゃない!! 仕留めた相手は…………壊し屋ですってぇ!!?」
突然大声を上げたミルに対し、周囲から視線が突き刺さった。
が、そんな事はお構いなしと言わんばかりに彼女は大慌てで近くに待機していたカークスに走りより、PDAの画面を突き付けて説明を求める。
「かかかかか、カークスさん!! 壊し屋が仕留められたと言うのは本当ですの!? いや、そもそもこんな子が仕留めたというのは間違いでは!?」
「え? あ、ど、どうか落ち着いてください。フィブリル殿」
先ほど怒鳴り散らされたカークスとしては、今のミルの態度は心臓に悪い。
が、それも無理は無いと言う物である。
御川が以前述べたとおり、壊し屋『迫田 甲』は元々、北の地で悪行を尽くしていた輩だ。
北でその名を知らぬ者はいないどころか、今では言う事を聞かない幼子に『悪さをしてると、壊し屋が来る』と語り継がれる程のビッグネームであったのだ。
北方都市『キスク』から来たミルとしては、壊し屋討伐の報は寝耳に水どころか、寝耳に熱湯レベルの驚愕に値する。
そもそも何故、ミルが壊し屋の討伐の有無を知らないのか?
それはヤウラで起こった『貴婦人襲撃』の噂が、壊し屋討伐の報を一掃したからである。
今のヤウラでこそ、壊し屋討伐の真偽はハッキリしつつあるが、他都市ではそうはいかない。
何故なら、最初にヤウラが壊し屋討伐の報を発した時の情報があまりに少なすぎたからだ。何処で死亡したのか、死因は何なのか、何時死んだのかすらも当初は発表されずに終わっている。
それはヤウラ軍の佐官と壊し屋が繋がりを持って、ある事件を起こした事に起因する為に、それ等の情報は意図的に消去されたのだ。
真偽はどうもあやふやであり、賞金を受け取った話も聞こえてこない。
ならばこれは『デマ』であると結論付け、他都市では既に壊し屋討伐の報は沈静化してしまっている。
今のヤウラでは貴婦人騒動で木津 沿矢の異常性が露出し、その後に彼が壊し屋の賞金を受け取った目撃談が流れ、更には廃病院攻略の件で彼の実力の程が知れ渡りつつもあり、再度『壊し屋討伐』の報が密かに燃焼し始めているのが現状だ。
あと少し時が経てば、それ等の情報が他都市にも伝わり、大きな波紋を呼ぶだろう。
そしてその波紋をいち早くキャッチしたのが、何を隠そうミルであると言う訳だ。
「壊し屋が姿を現していた事にも驚きですし、かと思えば既に仕留められていますし、仕留めた人物はこんな少年ですし、凄腕かと思えばランクはG-だしで、もう訳がわかりませんわ!! 詳細を要求します!! 全て話してください!!」
「お、お嬢!! どうか落ち着いて!! みっともないですよ!!」
ミルの動転ぶりは凄まじく、先程に"余程の理由が無ければ、喚き散らさない"等と述べていた人物と同じとは思えない程であった。
彼女の気が静まるには少々時間が掛かりそうだ。
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「っしゃあ!! 一番乗り!! 流石です、ラビィさん!!」
「この程度の任務、造作もありません」
カークスさんからの要請に応えた俺は、少しでも隊商に良い印象を抱かせる為に、車に乗って速攻で現場に駆けつけた。拙い俺の技術で街中を爆走するのは自殺行為だが、ラビィのドラテクを駆使すれば何てことはない。
その代償としては気分の悪さが最高潮になる事と、足の震えが恐怖で止まらないって事かな。
なんとかそれ等を堪えつつ助手席から降り立った俺を、カークスさんが早速出迎えてくれる。
「木津君、随分と早い到着だな!! 気合は十分と言った所かな? ハハハ」
「はい!! そりゃあもう!! 遠足前の幼児みたいな気分ですよ!!」
「うむ! その気合は確かに受け取った。一緒に頑張ろう」
カークスさんは俺の返しに笑みを浮かばせつつ、どこまでも爽やかな態度だ。
彼の周りにいるクルイストのメンバーは此方に目線を向けてはいるが、やはり挨拶などはしてこない。
まぁ、彼等の態度には文句は言えない立場だ。今は我慢するしかないな。
「では、早速で悪いが今回の隊商を率いてきたフィブリル殿に挨拶と行こうか、準備はいいかな?」
「はい、大丈夫です。な? ラビィ」
隣に立つラビィに確認を取ると、彼女はゆっくりと手を伸ばしてきて俺の頭に乗せた。
そのままの状態でラビィは俺の目の前に移動すると、今度は両手を駆使して俺の頭部、正確には髪を弄繰り回す。
思わぬ展開に呆けてしまうが、直に乱れていた髪形をセットしてくれているのだと気づいた。
「これで大丈夫です、沿矢様。今の貴方でしたら初対面の人間の27%は好印象を抱くでしょう」
「そ、そう? ってか、随分と低くない!? いや、四分の一もあれば高い方なのか? まぁ……ありがとう、ラビィ」
感謝の言葉を受けると、ラビィは静かに微笑んで俺の隣に並び立つ。
そんな俺とラビィのやり取りを見守っていたカークスさんは、感心した様子を隠さずに感想を述べる。
「これは……驚いたな。命令した訳でもないのに主人を"気遣う"機械だなんて初めて見たよ。彼女には、よほど高性能なAIが搭載されているみたいだね」
「そうなんですか? よく分かんないですけど……」
カークスさんの言葉に首を傾げて見せると、彼は真剣な様子で語りだす。
「機械と言うのは便利であると同時に"融通"が効かない存在だ。下された命令は忠実に遂行するが、其処に忠誠心なんて物はない。前にガードを従えた商人と言葉を交わす機会があったのだが、それが即座に分かったよ。ガードに商品を運ばせている状態で主人が物を落としてね。彼が即座にソレをガードに拾う様に指示したら、ガードは持っていた荷物を放棄してその命令を実行してね。ハハハ、アレは笑えたなぁ」
「へぇ~……って、えぇ!? ガードを従える!? そんな事ができるんですか!?」
何気なしに流そうとしたが、思わぬ情報である。
今までガードと対立してきた身としては、カークスさんの話は想像しにくい物があった。
「あぁ、極稀に稼動してない状態で保存されていたガードが発見される事がある。主人の登録もされておらず、まっさらな状態でね。そう言った"遺物"はスカベンジャーが見つける物の中でも結構なレアでね。高値で取引されるよ」
「なるほど……」
つまり俺がラビィを発見した時と似た様な状態だ。
ってか、ガードレベルでもレアとか言ってたら、ラビィなんてそれこそ極レアも良い所だろ。
ここで新たにラビィの価値を再認識し、自然と気が引き締まる。
そんな事を考えている間も、カークスさんの話は続く。
「とある昔に無謀なスカベンジャーが稼動している状態のガード……つまりは廃墟内を徘徊してる奴をハッキングし、情報を初期化しようと試みた事がある。が、当然ながらそのままでは無謀も良い所だ。だから手足を吹き飛ばした状態でコネクトし、情報を解析しようとしたらPDAが即座に"イカれた"らしい。どうやら防壁機能もコンテナ類より格段に上みたいでね。まぁ、戦力を有した存在の寝返りを対策するとしたら、それは極当たり前の事だがね」
「はぁ~……そう上手くはいかない物なんですね」
「"解析屋"に言わせれば『素人が考えそうな馬鹿な話』との評だがね。当時としては『上手く行けばスカベンジャーの稼ぎ方が変わる!!』なんて大きな話にもなったみたいだ」
解析屋? コンテナを解除する際に里津さんが言っていた『専門家』とやらの事かね?
恐らく、コンテナや金庫の防壁を破るテクニックを持った人達の事だろう。
ウィザー○リィで言う所の、盗賊みたいな役回りだな。
カークスさんの話に頷きを返していると、ある疑問が脳裏を過ぎった。
当然ながら、その好奇心を隠すことなく口から発する。
「じゃあ、ガードを無力化した状態で解析屋に持ち込んだらどうです? 防壁をどうにかしてくれたら後は大勝利じゃないですか」
「そう思うだろ? が、解析屋は破る防壁の難易度の高さに応じて値を変えてくる。PDAを即座に破壊した防壁の難易度と聞けば……後は分かるだろ? かなりの額を吹っかけて来る訳だ」
「うへぇ……足元を見られるんですね」
「そもそも上手く初期化しても、手足を吹き飛ばしていたら商品価値としては最低もいい所だからね。それにガードを無力化すると言ったって、そうそう簡単に出来る事じゃない。火器を装備している上に装甲も硬いから遠距離戦では厄介だし、かと思えば接近戦で繰り出される一撃も致命傷となり得る物だ」
「メリットに対し、デメリットが余りにも大きい訳ですね」
「そうだ。が、当時では『革新的』な考えだと思われてしまってみたいでね。随分と無茶をして命を落とした奴等も多いらしい」
こう言っては何だが、面白い話だな。
スカベンジャー達が過去に行ってきた、無謀な挑戦の一つと言う訳だ。
それ位の気概がないと、こんな職業を続けられないんだろうな。
「……カークスさん。随分と楽しそうに話してらっしゃるのね? わたくしも混ぜてくれないかしら?」
和やかにカークスさんと会話を交わしていると、唐突に見知らぬ女性が横から話し掛けてきた。
その人は金髪のセミロングを右手の指を絡めながら、小首を傾げて笑みを浮かべている。
身に着けている装備は防弾チョッキ、腰に巻かれたホルスターに入るハンドガンのみ。
ローブを身に纏っていないから、即座に彼女の装備を見抜くことが出来た。
カークスさんのチームに所属する同業者……にしては装備が貧弱すぎる。
あのハンドガンも俺が持つDFよりかなり小さいし、OG型の装甲すら貫けないんじゃないか?
そんな考察をしていると、カークスさんが少し慌てた様子で彼女に向き直った。
「あぁ、すみません。フィブリル殿! 紹介します、彼が木津 沿矢君です。その隣に立っているのが、ヒューマノイドであるラビィ・フルト君」
「ぅえ!? あ、貴方がフィブリルさん!? 失礼しました、木津 沿矢です。えーと、ランクはG-で……」
ずっと考えていた俺の華麗な自己紹介の仕方は、思わぬ不意打ちですっかり吹き飛んでしまった。
なんとか何時も通りの調子で場を乗り切ろうとするが、それをフィブリルさんは片手を向けて止める。
「自己紹介は結構です。貴方の事はカークスさんから伺いました。わたくしはミル・T・フィブリルと申します。まぁ、勿論知ってるとは思いますが……」
「あ……はい」
そう言われてしまったら、口を閉ざすしかない。
が、そんな俺をフィブリルさんは真正面から見つめてくる。
彼女は俺よりも小柄であり、身長は160cmくらいだろうか。
僅かに首を傾けた女性に上目遣いで眺められると、どうも気まずい物がある。
かと言って後ずさったり、目を逸らすのは失礼だろうし……ってか見つめすぎだろ。
いや、待てよ? まさか彼女はさっきラビィが言った『好印象を抱く27%』の内の一人なのでは!?
心中でそんな下らない事を考えていると、フィブリルさんは大きく首を傾げながらようやく俺から離れる。
「……何だか、ただの少年って感じですわね。本当に貴方がストーム・フィストなの?」
「ぶっ!! い、いや……そもそもその二つ名はオフィシャルな審査を通ってないんです。だから、できれば名前で呼んでくださると嬉しいかなー……なんて」
勘弁してよ。このままこんな中二病チックな二つ名が定着するのは御免だぞ。
内心でそうゲンナリしていると、フィブリルさんは俺から視線を外す。
と、次に近くに居るカークスさんに向かって、彼女はそのまま問いを投げ掛ける。
「カークスさん。貴方、わたくしを謀ってませんわよね? 失礼ですが、どうにも話で聞いた印象とは程遠くて……」
「フィブリル殿、私にそんな意図はありません。貴方に述べた言葉に嘘偽りは無い」
「そう、ですわよね。そんな嘘を付いた所で、直に分かる事ですし……」
フィブリルさんはまたもや指先で髪を弄くりながら、頭を悩ませる。
しかし、それも長くは続かず、彼女は直に気を取り戻した。
彼女は茶目っ気な笑顔を隠すことなく浮かばせながら、ある場所を指差す。
「そうね。キヅとやら、アレが見えるでしょうか?」
アレ、と指差された場所には列を成した数両のトラックと、テクニカルが二両、最後に一両の装甲車が置かれている。その周りには装備が統一された集団が配備されており、周囲の警戒をしていた。
一見すると兵士の様に見えるが、ヤウラ軍の装備とは違う。
どうやらアレが今回護衛するトラックであり、その周りに配備されてるのは隊商の私兵戦力である連中と車両みたいだ。
「頼もしい光景ですね。フィブリル商会の規模の大きさが伺えます」
なーんて、慣れないヨイショをしてみたが、どうやらそれは上手くいったみたいだ。
フィブリルさんは片手を口に当てながら、満更でもない様子で笑い声を上げる。
「あら? やはりわかる人にはわかる物なのですね。ふふっ、若い身でありながらも見る目はあるみたいですわね」
そのまま彼女が『オーホッホ!!』なんて笑い出さないかと期待していたが、流石にそれは無かった。
大商会のご息女とは言え、流石に絵に描いたようなお嬢様っぷりは披露してはくれないか。
何となく残念な気持ちになりつつあったが、次にフィブリルさんが言った言葉でそれは驚愕へと変わる。
「いいですわ。歳若い身でありながら見る目があるようですし、よろしかったら貴方だけに特別にフィブリル商会の商品を眺める権利を贈呈しますわよ?」
いらないですわよ?
と、反射的に口走ってしまいそうになったが、何とかそれを堪える。
俺は水戸黄○に出てくる悪役の小物みたく、揉み手をしながら下手に出た。
「へへぇ! わたくしめにその様なご好意を向けて下さるとは、光栄の至りでさぁ!」
「そうでしょう? えぇ、そうでしょう! いいわ、此方へいらして! ニルソン、荷台を開けなさい!!」
「はいはい、どうぞ……」
ニルソンと呼ばれた彼はトラックの一つに近寄り、荷台の扉を開けた。
そこには大小のコンテナが所狭しと詰まっており、思わず圧倒される。
「す、凄い量ですね。積載量とか大丈夫ですか?」
「無論です!! 水準を少し超えているだけですわ!」
アウトじゃねぇか。
そうツッコミそうになったが、欠伸をする様にして誤魔化す。
そうこうしている間に彼女はニルソンと呼ばれた男の手を借り、荷台へと飛び乗る。
その動作は実に見事であり、まるで馬車に乗る姫の如く自然であった。
やはり彼女はお嬢様なんだなと新たに感心していると、彼女はコンテナの一つを開けて中から何かを取り出す。
「ほら、ごらんなさい。これは何だと思いますか?」
差し出されたのは……金属の板である。
白と黒の模様が刻まれてたり、板の横部分にスイッチが備わっているのも見えた。
が、それだけでは何も分からない。
俺は暫く大げさに唸って見せたが、遂に断念して頭を振る。
「も、申し訳ございません。俺の様な底辺の人間にゃあ、その商品の凄さはおろか、何に使用するかの検討もつきません。折角の機会なのに、己の見識の浅さを痛感して恥じ入るばかりです」
「あら、あらあら……! いいのよ? えぇ、仕方ありませんわ! 庶民には縁の無い物ですもの! 例え神が貴方の無様を嘲笑おうとも、わたくしは貴方を馬鹿にしませんわ! さぁ、顔をお上げなさい……?」
俺の小物演技が余程気に入ったのか、彼女は楽しそうにこのわたくしめに慈悲を向けてくださる。
おっと、いかんいかん。危うく心の底から小物になる所だった。
彼女は俺に板を翳し、幼子に語り掛ける様な柔らかな口調で話を続ける。
「これはね、チェスボードなの。チェスって分かる? 一言で言えば上流階級の遊戯ですわ。このスイッチを押せばボード上にホログラムで駒が投影されるの。素晴らしいでしょう?! 娯楽都市との別名があるこのヤウラではならようやく売れ……ごほん。此処なら高値が付くと予測し、倉庫に厳重に保管されていたコレを運んできたの」
さらっと処理に困ってた様な発言をしたな、この人。
何だか、彼女の反応が可愛く見えてきた。
俺は大きく驚いてみせ、話の続きを促してみる。
「ほ、ホログラムですかーー!? 凄い……いや! しゅんごいです!! フィブリル商会の品揃えは天下一品ですね!! それで?! 他には何が!?」
「えぇ、しゅんご……しゅんごい? まぁ、凄いのです。他にも色々とヤウラ向けの商品がございますのよ? 次はこれですわ」
彼女は首を傾げつつ、次の商品をコンテナから取り出す。
彼女が手にしたのは長方形の板の様な金属である。
やはりそれにもスイッチが備わっており、何に使うかマジで分からない。
「これはシアター投影機ですわ。このソケットに画像を記録したチップを指し込み、平らな場所に置けば……ほら! ご覧の通り!!」
言うと、空中に見知らぬ二人と様々な物が浮かび上がった。
その二人は素早い動きで戦っており、物を弾き飛ばして壮絶に争う。
しかし、飛ばされた物がある一定の範囲を過ぎると消えてしまった。
つまりこれは……。
「ホログラムを利用した画像投影機ですか? はぁ~凄いですね! 大迫力な映像が立体的に見られるなんて!」
「そうでしょう、そうでしょう!? 暗い所だともっと鮮明になりますわ!! 記録映像も豊富に用意しましたし、きっと高値で売れますわ!!」
確かに凄い迫力だ。
これに比べたら映画館で見る飛び出す3Dなんて子供だましである。
ただ、一つ気になるのが……。
「あの、音は出ないんですか? これ……」
「……音はまた、専用の別の機材が必要なのです。今回、それは用意できませんでしたが……」
駄目駄目じゃねぇか、映画の醍醐味はあの爆音でしょ。
少なくとも魅力は大幅に減るし、ストーリーも楽しめないだろ。
彼女はこほんと一つ咳払いし、投影機を仕舞って此方に向き直った。
「と、とにかく! 私達フィブリル商会は銃器や防具の他に、この様な商品を取り扱う余裕もございますの!! ふふ、その凄さと規模は北方では知らぬ者が居ないのです!! どう? 恐れ入ったかしら」
「へへぇ~! もう俺には理解できない規模の話でさぁ! もはや天上に住まう神の領域! その一端に触れるだけで一生の思い出になりました!!」
「おーほっほっほ!! そうでしょう!! ……ところで、貴方はあの壊し屋を討伐したと聞きました」
「ぅえ!? あ、はい……」
遂に念願のお嬢様笑いを聞けた俺は感慨に耽っていたが、突如迫田の話題を向けられて困惑する。
彼女はモジモジと気恥ずかしそうにしつつ、頬を赤く染めながらあるお願いを口にした。
「貴方が噂通りの膂力を有しているのならば、アレを動かして見せてくれませんこと?」
「……あー……なるほど、そういう流れですか」
言わずもがな、アレと言うのは隊商の私兵戦力である装甲車だ。
唐突な要求ではあるが、まぁ俺の力量を試すならば分かり易い試みだろう。
「わたし達が有する偵察戦闘車両『M202』です。三十ミリ口径の自動火器を標準装備しており、特殊なコンデンサーユニットを装着すればレイルキャノンも装備でき、連続射撃も可能ですわ!! 機動性を損なわない為に防御力が低い軽量装甲が採用されてはいますが、それを補う為にアクティブ防護システムも同時に装備されており、機動性と防御力の二つを高める事に成功した傑作機ですわ!!」
「な、何だか凄いですね……」
よくは分からんが、凄そうな説明だ。
少なくとも、俺が所持するテクニカル程度では太刀打ちできそうな代物ではなさそうである。
「まぁ、軽量装甲で覆っているとは言え、軽く十五トンは超えています。無理なら無理と、先に言っておいた方が懸命ですわよ?」
挑発的な目線でフィブリルさんはそう言うが、目の前の偵察戦闘車両の大きさはクルイストが所持していた戦車より小柄だ。
ならば、動かす位なら余裕だと思う。
そもそもあの戦車だって無茶に動かすと"すぐに壊れそう"だったから、手加減して振り回していた位だ。
まぁ、結局は最後に蹴り飛ばして壊してしまった訳だが……。
「いえいえ、大丈夫です。じゃ、早速失礼して……」
そうと決まれば話は早い。
取り合えずローブを脱ぎ、次に少し悩んで武鮫も外す事にする。
隊商を率いる商人であるフィブリルさんは、武鮫を取り外すと直にソレがHAでない事を見抜いたみたいだ。
『まぁ!』なんて感嘆とも、驚愕とも受け取れる声を漏らしながら目を輝かせ始めた。
とんだ見世物状態であるが、護衛依頼を受ける為だ。仕方ない。
「はい、失礼しますね。退いて下さ~い」
偵察戦闘車両に近づくと、私兵達の戸惑いの目線が突き刺さる。
彼等は後方に待機するフィブリルさんに視線を向け、彼女の頷きを確認すると何とも重たい足取りでようやくその場から離れた。
「何とも協力的な態度だ……」
内心の苛立ちを押し殺しながら、ようやく偵察戦闘車両に左手を伸ばす。
とりあえず上部に手を当て、斜め方向下から徐々に力を込める。
するとゆっくりと車両のタイヤは地面から浮き上がり、僅かに金属が軋む音が周囲に響き渡った。
『おいおい、嘘だろ……』
『ヤウラに居る化け物は紅姫だけじゃなかったのか?』
『信じられん……』
最近では聞きなれつつある驚愕の声を背中で受け止めながら、手持ち無沙汰に周囲を横目で確認する。
大通りの修復を行っていた兵士達は、態々と作業の手を休めて此方の様子を伺っている。
行きかう人々は足を止めて周囲の人と小声で会話し、何かを納得するかの様に相槌を打つ。
これ以上の注目を集めたくない俺は、フィブリルさんにお伺いの言葉を放つ。
「あの、もういいですかね? フィブリルさん」
「――ぇ、えぇ。もう十分ですわ。下ろしてくださって結構よ」
何とか許可を得た俺は安堵の息を漏らしつつ、ゆっくりと腕を戻して優しく偵察戦闘車両の向きを元に戻す。
地面にタイヤが擦れる音すら聞こえない程に丁寧に設置し直し、ようやく左手が自由になる。
なんとなく左手をブラブラと揺らしながら、フィブリルさんの元へと戻って行く。
「とまぁ、こんな具合です。はい」
ラビィが差し出してきた武鮫を左腕に嵌め、ローブを纏いながらフィブリルさんの反応を伺う。
彼女は暫く俯き加減で考えながら唸っていたが、ようやく視線を上げると突飛な事を口にする。
「貴方、ミュータントの類?」
「…………え!?」
いやいや、この世界ってミュータントとか居るの? だとしたら驚愕の事実だよ。
「お、お嬢様!! 失礼じゃないですか!! すみませんね、どうやらまた変なコミックを読んだみたいで……勘弁してやってください」
と、突然飛び出してきたのは彼女の付き人だろうか?
小太りな彼はヘコへコとした態度でそう謝り、ミルさんを諌める。
「貴方、何をそんなに慌ててるの? ちょっとした冗談じゃない」
「いやいや、そう言う問題じゃなくてですね……」
付き人っぽい人は此方をチラチラと横目で見ながら、何とも言えない態度を見せている。
どうやら彼には先ほどの光景は"刺激的"すぎたらしい。
久々に味わう畏怖の視線に何とも言えない気持ちになるが、これが恐らく一般的な反応であろう。
その数分後に藤宮さん達やラウルのメンバーも合流し、フィブリルさんと顔を合わせた。
彼女は各々と少し会話して質問をし、どうするかで悩む素振りを見せていく。
が、彼女は全員と話し終えると、直ぐに今回の護衛を正式にクルイストと俺達に依頼してきた。
向こうとしては予想外の展開にも関わらず、依頼額や仕事の内容にも変更は無いみたいだ。
どうやら、フィブリルさんは随分と寛大だったみたいである。
こうして俺達は無事に隊商の護衛任務に就く事となった。
後は隊商がヤウラで商談を纏めるのを待ち、出発するだけだろう。




