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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第一章 目覚めた世界は……
6/105

ようやく激動の一日が終わる!! マジで長かった 編


芋売りオジサンの言に従い、道順を辿っていくが周りから人が少なくなってきた。

自然と警戒を強くして歩みが遅くなる俺とは逆に、ルイは何かを確かめるように周りを見渡しながら早足になってきた。



「ソーヤ。私、ここ見覚えあるよ」


「お、そうか。なら、あと少しなのかな」



しかし、ここら辺の荒廃っぷりときたら一段と激しい物がある。

ルイは本当に此処に住んでいるのだろうか?

疑うわけでは無いが、住むのに適した場所とは思えない。


だって建物が中央から分断してたりするんだよ?

一見無事そうに見えた建物は前面だけ無事で、後ろは完全に崩壊してたりとか意味わからん。

里津さん達が住んでた辺りはまだ少し手を加えれば、住めそうな建物が多かった。

しかし、ここら辺の建造物は一から立て直すしか手はなさそうな所が多い。



「……!! ソーヤ、あっち! あそこから家に帰れる!」


「ん、んん~? ルイさんよぉ。俺には瓦礫の山しか見えないわけだけども、それとも君には別の何かが見えておるのかな?」



ルイが指差した場所は、完璧に建物が崩壊したと思われる瓦礫の山だ。

大半は大小の岩の塊で構成されているが、所々突き出した鉄の柱は捻じ切れており、先端が尖っててちょー危ない。

細かい鉄屑や、ガラスも散らばってるし、子供を歩かせるのは危険極まりない。



「でもでも、あそこをいつも通ってるよ? で、通りの反対に渡ってゴミ山に向かうの」



ルイは興奮冷めやらぬと言わんばかりに身振り手振りで説明してくれる。

反対側と指差された場所をよーく見てみると、確かに遠くに建物とは違うでかい何かが暗闇の中に浮かんで見える。

あそこがゴミ山かな、言ってる事に間違いはない様だが、此処を通るのかぁ……。



「おーけー。知ってる場所だろうが、暗いから気をつけろよ? カンテラの灯りを頼りにゆっくり行こうな」



帰りの事を思うと気が滅入るが、ここでさよならする訳にもいくまい。

ルイが先走らない様に注意しつつ、その瓦礫の山に足を踏み入れる。

流石に此処を手を繋いだまま走破するには危険なので、ルイとはもう手を離している。


しかし、それを良い事にギリギリ灯りの範囲外から出ないようにしつつ、ルイは素早く昇っていく。

時折後ろを振り返っては、俺がちゃんと着いて来ているか確認する余裕すらある。


こ、これが世紀末都市を生き抜いてきた子供の身体能力か。

逞しいな、自分が情けなくなってくるぜ……。

『ソーヤおそーい』とか言われたら僕のプライドはズタズタです。



「ソーヤ……大丈夫?」


「は、はぅあ! なるほど、急かされるよりも心配される事の方がダメージがでかいのか……」



俺の頼りになるお兄ちゃん像が台無しですわ。

いろんな意味で憔悴しながらも、何とか瓦礫の山の頂上に着くとルイが嬉しそうにある場所を指差す。



「あそこが家だよ。みんなと一緒に先生と住んでるの」


「…………教会? 宗教はまだあるのか?」



荒廃した街中に佇む寂れた教会は、人が住んでる事を示すように中から明りが零れ見える。

だが周りの建物には灯りや人の気配は全くなく、まるであの場所がこの世に残された最後の楽園の様にさえ感じさせてくれる。

一見すると幻想的だが、どことなく寂しさも伝えてくるのだった。








▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼








下りは上りより注意が必要だ、上りより踏ん張りが利き辛いし、こんな場所で転がり落ちたら大怪我間違いなしだ。

瓦礫の山から下っている途中、教会から誰かが灯りを持って近づいてきてるのが分かった。

恐らく、此方のカンテラの光が見えたのだろう。

俺とルイが下り終える頃には、灯りを持った誰かは下で待ち受けていた。



「先生! せんせ~~~~!!」


「ルイ……。ああ、よかった」



ルイがその人物に走り寄って抱きつく。

抱きつかれた人も、カンテラを脇に置いて両手でルイを深く抱き返す。


感動的だ、苦労した甲斐があったと言うものです。

ただ、少し疎外感を受けて寂しいとです。



「怪我はない? どうして遅くなったの? どこに行ってたの? 心配したのよ?」



矢継ぎ早にルイに問いかけている女性はルイと同じ金髪でロングストレート、涙を溜めた瞳の色は茶色。

ルイと同じく白い肌は興奮のせいか、それともよほど泣いたのかスラッとした鼻の先端と頬は赤みを帯びている。

歳は二十代前半って所だろうか? いや、西洋人は年の割りに大人びて見える人もいるしなぁ。安易な予想はよしておこう。

着ている物は上にシャツとガウンを羽織った様な変わった風貌で、下は所々裂けている黒いロングスカートと目のやり場に困る装備だ。


よくよく思い返せば、この町でスカート類を履いている人を初めて見たかもしんない。



「あの、これサビをとったら売れると思うの。先生手伝って?」



ルイが手に持った鉄屑を先生に見せると、先生は驚きに目を見張る。



「ルイ。あなた……ゴミ山に? あそこにはもう行っちゃいけないって言ったのに……」



彼女は鉄屑に触れると困った様に微笑んだ。

怒っていいのか、喜んでいいのか分からないって感じがありありと見える。

ルイもその気配を感じ取ったのか、指先を合わせながらたどたどしく言葉を紡ぐ。



「あの、えっと。私……ごめんなさい。でもでも、良い物はやっぱりあそこにしかなくて……ぅーー」



あ、こりゃ泣くぞと思ってたら、ルイは踵を返して俺の腹部に顔を埋めてきた。

振り払う訳にもいかず、苦笑しながら頭を撫でてやる。

そこで初めて先生と呼ばれた彼女は俺に視線を向けると、頭を下げてきた。



「その子が大変お世話になったみたいで……感謝を申し上げます。私はペネロ・ブレナンです」


「あ、どうも……俺は木津 沿矢です。ルイ? 俺の服で鼻をかむのは勘弁してくれ」


「……ぅー、端っこならいい?」


「止めるという選択肢はないのかね、君は」



俺のおニューの制服が二日と持たずにボロボロにされていく、その内死闘を繰り広げたサイ○人みたいに半裸になるやもしれん。

俺とルイのやりとりを見て、少し警戒していたペネロさんの表情から険が抜けていくのが分かった。

まぁ女の人だし、こんな治安の悪い場所なら警戒するのは当然だろう。



「宜しければ家に寄ってって下さい。お礼もしたいですし、ルイも懐いてる様なので」


「ぅえ? あー……じゃあ、お邪魔します」



此方としても、歩きっぱなしで少し疲れているのでその申し出は素直にありがたかった。

また背後の瓦礫の山を休み無しで上り下りするのはキツイからな。


教会に向かう道中で、ルイがペネロさんに何があったのか話しているのだが。

所々内容が合ってないので、俺が修正をいれるツッコミをしなければならなかった。



「ソーヤはね、突然空から真っ直ぐ降ってきてね」


「二階からだよ、どんだけ正確に落ちてきたんだ俺は」


「うんと……それですぐに怖い人達を叩きのめしたの」


「のめしてないよ、転ばせただけだよ。まともにやってたら負けてたと思うよ」


「んで、ソーヤはいきなり私を抱えてはぁはぁ言いながら走り出したの」


「最初からはぁはぁ言ってないよ!? それだと変な風になっちゃうよ?!」


「それで、ソーヤはリモコンを探すのが得意らしいの」


「なんでソコだけ正確に覚えてるの? 印象深い所もっとあったはずでしょ?!」


「あとあと、お芋で火傷しちゃわない様に助けてあげたの」


「あ、うん……。その節はどうもね」



ルイは子犬の様にペネロさんに纏わりつきながら、表情をコロコロ変えて楽しそうに話しかけている。

ペネロさんは一つ一つ頷きながら、微笑みを絶やさない。


包容力抜群やな、大人の女性って感じ。

大人の女性? 里津さん? 義手、ナイフ、うっ、頭が……。


俺のトラウマが呼び起こされる前になんとか教会に辿り着くと、中からルイと同じくらいの歳の子達が一斉に飛び出してきた。

そしてルイとペネロさんを取り囲んで騒ぎ出し始めた。



「「「ルイ、大丈夫?!」」」


「オマエ本当にゴミ山にいったのかよ~!?」


「アイツだれ? ペネロ先生」


「……ルイ、良いニオイがする」


「え? お芋のニオイかなぁ?」


「芋?? いいなぁ~、どこに落ちてたの?」


少しは落ち着けと言いたいが、俺が言った所で効果は無いだろう。

ペネロさんが落ち着くように諭してはいるが、一向に騒ぎが収まる気配が無い。



「みんな、落ち着きなさい。お客様の前ですよ」



何時の間にか教会の入り口に立っていた人物の一言で、騒ぎは鳴りを潜めた。

白髪交じりの中年男性、彼もまた白人だ。

苦労が滲み出ているかの様に、目元には白い肌と合わさって隈が目立つ、だが視線は優しさを帯びており人柄の良さが伺える。



「ルイ、お帰りなさい。色々あったと思うが、みんなとても心配したのだよ? わかってるかい?」


「はぃ、ロイ先生……。みんな、心配かけてごめんなさい」



ルイが謝るとロイと呼ばれた男は小さく頷いて、子供達に中に入る様に促した。

子供達はルイを取り囲みながら教会に入っていく、ルイが此方を見ていたので小さく手を振って見せた。

子供達が中に入っていくのを見届けると、ロイさんは此方に向かって頭を下げた。



「お騒がせしました、私はロイ・ブレナン。ルイはどうやら君に世話になったみたいだね」


「木津 沿矢です。ルイが困ってたので、少し手助けしてあげただけです」


「手助け、ですか。 あなたは優しい人なのですね……」



ロイ先生は目を丸くして、ありえないものを見るかの様な視線を向けてくる。

そんなにマジマジと見られると、居心地が悪くて仕方が無い。

しばらく沈黙が場を支配していたが、ペネロさんが気を利かせたのか、俺の手をとると教会の中に案内してくれた。


教会の中は俺の予想とは大分違った。

長椅子は隅に撤去されており、開いたスペースは物や布で仕切りが作られプライベートな空間を無理矢理作っている。

十字架なんてのも何処にも見当たらないし、どうやら此処は宗教施設の体を既に成していない様だ。



「ご覧の通り、ここには子供達と一緒に暮らしております。騒がしいのは、どうかご理解の程を……」


「あ、いえ。気にしないで下さい。 子供は嫌いじゃないんで」



二人の案内を受け、部屋の片隅にある食卓っぽい所に腰を落ち着かせる。

ロイ先生が正面に、案内してくれたペネロさんはそのまま俺の隣に座る。

席に着くとロイ先生はテーブルに手を置いてまた頭を下げた。



「しつこいようですが、本当に感謝しております。ルイがいなくなった事に気付き、皆とても心配していたのです」


「いえ、そんな! 俺が好きでやった事なんで……。あの、失礼ですが此処の子供達は……その、親を……?」



気になっていた事を尋ねると、ロイ先生は悲しそうに瞼を閉じて頷いた。



「親を亡くした子は勿論、生活苦の為に捨てられた子もいます。珍しい事ではないでしょう?」



どことなく、訝しげに様子を伺われてしまった。

どうやら常識と言うか、今更な疑問であったようだ。



「そうですか、この辺りには来たばかりなので些か戸惑う所もあって……」



離れた所で遊ぶ子供達を見ていると、一人の男の子とバッチリ目が合った。

すると遠くから駆け寄ってきて、俺の顔を近くで覗き込んでくる。



「……どうした? お兄さんに何か用か?」


「……お前、ほんとうにルイがいうように強いのか? 変なカッコウだし」


「こら! お客様になんて事を言うの!」



突然俺に舐めた口を聞いたガキに向かって、ペネロさんが叱りつける。

どんな話をルイから聞いたかは知らんが、俺の実力を疑っている様だ。

態々何でそんな事を聞いてきたのかは大体想像は付く。


コイツ、ルイに惚れてるな?

子供らしい真っ直ぐな嫉妬心だ。

青春してるね~、等とニヤニヤしてると更に突っかかってくる。



「聞いたぞ。芋を食わせてルイをかいじゅうしたみたいだけど、そんな事したって無駄なんだからな」


「ほほ~、そいつは残念だなぁ。お近づきの印に余った芋をたった今プレゼントした所なのに、お前食べないんだぁ?」



がさこそと芋を鞄から取り出してペネロさんに無理矢理手渡す、ペネロさんは俺の突然の行動に困惑し袋を抱えている。



「いいから、ソイツを皆に配ってやって下さい。 ルイがやっかみを受ける訳にもいかないし」



子供ってのは平気で傷付くような事もしちゃうしな、ルイだけがいい目を見て仲間はずれになる様な事があったら気が気でない。

小声で囁くとペネロさんは納得が言ったように頷きを返し、一言お礼を述べてそのまま裏に引っ込んでいく。



「な……なんだよぉ。お前も軍の奴等みたいに油断させて、俺達を連れてくつもりか?!」


「ん? 軍だって? なんで軍が出てくるんだ?」



話が読めないにも程がある。

俺が困惑しているとロイ先生が助け舟を出してくれた。



「ベニー、もうやめなさい。ほら、皆の所へ行って」


「……はい、先生」



まさに渋々と言った感じで、ベニーと呼ばれた子供は唇を尖らせながら元居た場所に戻っていく。

ベニーが戻った事を確認すると、ロイ先生が頭を下げる。



「すみません。あの子が言っていた事は、半年前に起きた事が関わっているのです」


「はぁ……。軍が何かしたんですか?」



俺がそう問いかけるとロイ先生は一瞬驚きを見せたが、すぐに納得がいった様に小さく何回か頷いた。



「木津さんはこの辺りに来たばかりと仰っていましたね……。実は、私達も一年前にこのヤウラに来たばかりなんです」


「そうなんですか? それはそれは……」



何が『それはそれは』かは知らんが、こう言っておけば場を繋げる事ができる魔法の言葉だ。



「此処に住んで暫くたったある日、軍の方がお見えになって食料を恵んでくれる様になったのです。勿論突然の好意に疑問を持ちましたが、ただ『子供達の為』と食料を押し付ける様に置いて去っていくだけ。そしてその行為が半年程繰り返された時でしょうか、突然『今まで与えた食料の代金を支払え』と言ってくる様になったんです」


「そ、それはそれは……」



この世に救いはないんですか?! と言いたくなる。

そりゃ物に対価を支払うのは当然の事だが、タダと思わせておいて支払いを要求するなんて鬼畜ですわ~。

しかも明らかに払えない程の量を与えた後を狙ってるっぽいし。



「提示された代金はおよそ一万ボタだったでしょうか。仕方なく支払いに応じ、手持ちにあった三千ボタをまず支払いました。足りない分は返していくと言ったのですが、軍の方は『一年以内に支払いを終えないと、子供達を徴兵する』と通告したんです」


「ちょ、徴兵? あの子達を……」



自然と視線が子供達に向いてしまうのも無理はないだろう。

しかし、徴兵っつたって精々が十歳いってるのがソコソコいるって程度なのに。

もしかして隣国との情勢が切迫しているとかかな? いや、でも一年の猶予ってのがあるし。うーん?



「ええ……。聞けば、昔は問答無用で連れて行く事もあったとか。それを考えると……解決策を模索できる私達はまだ幸運かもしれませんが」


「……あの、支払いはどれくらい返せたのか聞いても?」



聞いた所でどうしようもないってのは分かるが、ルイも徴兵されるかもしれないと思うと、つい聞きたくなってしまったのだ。



「この半年で二千を新たに返す事ができました。この調子ですと足りない分は三千程と目安を付け、ボタを借りる手はずを整えていたのですが……。一月程前から、子供達が資源を集めてくれていたゴミ山を独占する人達が現れたんです。 ゴミ山からの収入も計算に入れていたので、困った事に」


「はぁ、そのゴミ山って公共の場と言うか……。独占とか許されないんじゃ? 軍は介入してくれないんですか?」


「それが壁に行っても門前払いで……。かと言って組合にゴミ山の件を依頼したのでは、結局ボタを消費する事になってしまう。正直、お手上げですね。今は知り合いにもっとボタを貸してくれないか、そうお願いしている最中なんです」


「そうですか……」



また子供達に視線を向けると、ペネロさんが切り分けた芋を配っている最中だった。


厳しい場所だ、厳しい世界だ。だけど此処で生きてる人達は、それを当たり前の事と捉えて普通に暮らしている。

同情と言う感情を違う場所から来た俺が持つのは、この人達に対する侮辱になってしまう様な気がしてしまう。

それとも違う場所から来た俺だからこそ、彼等に同情してしまうのだろうか。



「木津さん、ありがとうございます。子供達も喜んでおりました」



そうこうしている内に芋を配り終えたペネロさんが、近くに来てお礼を述べてきた。



「いえいえ……。それじゃあ、そろそろ帰ろうかと思います。 もう深夜ですから……」



残念ながら俺にできる事はもう何も無いだろう。

どことなく感じる空しさを隠しながら、笑顔を浮かべて別れの挨拶を切り出す。



「え? もうですか? お礼も何もできておりませんのに……。この辺りは治安が良いとは言えません。せめて今日はお泊りになってって下さいな。ね、お父様? そうしてもらいませんか?」


「そうですね……。木津さん、是非そうして下さい」



う、うーむ。宿に戻って主人に釈明もしたい所なのだが、ここに住む人達が治安が悪いと言うのなら、よほど悪いのだろう。

正直、帰り道をよく覚えている自信も無いし、お言葉に甘えるとするか。



「じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます。 お世話になりますね」



俺がそう言うと、ペネロさんは胸を撫で下ろして見るからに安堵した様子だった。

え? 何? そんなに危険な所だったの? 怖いなぁ、もう……。



「良かった……。では、寝床の準備をさせてもらいます。しばらくお待ちを……」



ペネロさんはそそくさと準備に取り掛かり始めた。

しかし、そんなペネロさんの周りを構って欲しい子供達が数人うろうろとついていってる。

ペネロさんはそんな子供達に構ってあげながらも、自分がやっている仕事を疎かにはしない。

やはり長年の経験と言うか、慣れている様だ。



「ソーヤぁ、ここにお泊りするの?」


「ん? うん、先生達が泊めてくれるってさ」



何時の間にか近くに来ていたルイに返事を返す。

するとルイは目を輝かせて満面の笑みを見せた。



「本当?! ねぇねぇ、私といっしょに寝よ!」


「ぅえ? え、いやぁ……。俺、イビキとか凄いし…………」



なんて事を言う子でしょうね、この子は。ベニーが聞いたらショックで泣くぞ。

まさか此処で俺の女の子から聞きたい言葉、第四位の『ねぇ、今夜は一緒に寝ましょ?』系が飛び出すとは。


うーん、でも子供の発言をカウントしていい物なのだろうか……。

いや、でもそうしないともう一生聞けない言葉かもしれん。


とはいえ誰かと寝床を共にしたことはないし、こんな小さい子が隣で寝てたら俺の寝返りで怪我とかしそう。

口を濁す俺の対応を受け、ルイは唖然とした表情を見せたと思ったら瞳に涙を溜め始めた。



「ぅー……」


「あ、いや、ルイと一緒に寝たいよ? うん。でもでも、先生達がどう思うかなぁ~? 先生達が許可をくれないと、ねぇ?」



分かってますよね? と話を聞いていたであろうテーブルの向こうに居たロイ先生に視線を向ける。

ロイ先生はニッコリと『分かってます』と言うように頷いてくれた。



「ルイ、木津さんと寝るなら水分を摂るのは控えておきなさい。君はまだオネショ癖が抜け切ってないからね」



アンタ何にも分かってねぇ! そうツッコミたいのをグッと抑える。



「ぅー……最近はしてないもん」



ルイはオネショ癖がばれたのが恥ずかしいのか、頬を赤く染めながら俯いた。

仕方がない、どうやら俺に逃げ道はないようだ。



「おーけー……。ルイ、俺の人間湯たんぽになってくれ」


「うん! 私、人間タンポポになる!」



なんだその人種は、少子化問題なさそうだな。


その後ペネロさんが寝床の用意を済まして戻ってくると、すぐにロイ先生が皆にもう寝る様に促した。

用意された寝床にルイと一緒に横になる。

最初は色々と話そうとルイが息巻いていたが、五分もしない内に眠りに落ちてしまっていた。


まぁ色々あって疲れていたのだろう。

それは此方も同じであり、ルイの寝顔を最後に目に焼きつけ瞳を閉じる。


ようやく、激動の一日が終わりを迎えたのだ。

こんなに密度が濃い日を過ごした事は初めてである。


明日はできれば平和な日である様に祈るばかりだ。



崩壊した世界も色々ありますよね。

この作品の様に何とか秩序が保たれてる崩壊世界。

全くの無政府状態でヒャッハーしてる崩壊世界。

下の混乱具合は物凄い欝な事になりそうなんで、上を選びました。

私はMETRO2033という崩壊世界を題材にした小説が好きです。

ゲームにもなってて、続編も出てるらしいので知ってる方は多いですかね?



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