表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
56/105

様々な助け



レーザーメス×四=二千ボタ。一つ五百ボタ。


単分子メス×六=千二百ボタ。一つ二百ボタ。


メディカルゴーグル×二=四千ボタ。一つ二千ボタ。


メディカルゴーグル(バッテリー切れ)が千七百ボタ。


メディカルゴーグル(バッテリー損傷)が千ボタ。


HC型11式×二=九千。一機四千五百ボタ。


LG式の部品×三十一機分が、一万と二千四百三十ボタ。


LG式の弾薬5.7x28mm弾が千と五十二発分で、四千と二百八ボタ。


俺の笑顔、priceless。



最後は抜きとして、締めて三万と五千、細かいのは五百三十八ボタだ。

とまぁ、ここまでは良い。これだけでもかなりの儲けだ。しゅんごいよね。

流石にあれ程の施設を一つ攻略すれば大変な額を手にする事が出来る様である。命を掛けて苦労した甲斐があると言う物だ。


後の品物である手術室で見つけた冷凍保全コンテナ二つ、死亡したスカベンジャー達の武器が入った気密保全コンテナ、さらには院長室で見つけた小型の金庫なんかはロックが掛かっており、中を確認できない。


唯一、ロックが掛かってないのは生体義手を運んだ時に使った冷凍保全コンテナだけだ。


里津さんの説明によると、やはり保全機能が備え付けられているコンテナや金庫自体も結構な額になるらしく、無理矢理に解除しない方が良いらしい。

今日一日を使って彼女は解除を試みてみる様だが、それで無理ならお手上げらしく、専門の知識を持った人を当たるしかないとの事。


保全機能付きの品物が高いなら、棚とかも高かったのかな……?

いや、アレは無駄にデカイし、荷台からはみ出す危険性もあったしな。仕方ないと割り切っておこう。


一応、ラビィも里津さんから工具を借りて黙々とコンテナの解除に奮闘しているが、今の所は動きが無い。

彼女が言うにはハッキングした方が手早いらしいのだが、専用の機材かこれまたPDAとコンテナを繋ぐコネクタ等が必要らしい。とんだ万能アイテムである。


ちなみに、こういう電子施錠が掛かった物にはファイアーウォールやらの防壁が設定されてるらしいので、下手をすればPDAの回路が焼き切られる可能性もあるとか、ハイリスクハイリターンだな。


ちなみに各物資のお値段は冷凍保全コンテナ一つで三千ボタ、気密保全コンテナが二千五百ボタ、小型金庫は千五百ボタである。やはり無傷で開錠したい。


冷凍保全コンテナ自体は手術室で見つけたロック付きが二つ、生体義手を運ぶのに使ったロック無しが一つだ。

これ等を無事にロック解除できたならば、かなりの儲けになる。


里津さんの話ではコンテナ二つと金庫はテンキー式であり、暗証番号を打ち込む形式らしいのだが、どちらもボタンが一つしかなく、番号を打ち込むボタンが見当たらない。


試しに金庫の方にあるボタンを押してみたら、金庫に小さく開いた穴から光が迸り、空中に番号を打ち込むディスプレイが投影されてしまった。

未来チックで格好良いとは思うのだが、用途がようと分からん。なんちって。


俺が動物園に初めて設置された遊具を見る猿の様に、空中に投影されたディスプレイを見ながら頭を悩ませていると、里津さんが横から説明してくれた。


彼女の言葉によると、指紋やら摩擦とかで番号を特定されない為の機能らしい。

確かにこういうホログラムには番号を打ち込む部分に指紋も付かないし、摩擦もしないわな。

全くもって素晴らしい発想だよ。実際、こうして遠い未来で悪戦苦闘してるんだからな。畜生め。

ここまで徹底していると指紋照合やら網膜スキャンなんかもありそうだし、番号をどうにかした所で開錠は無理そうだがな。


そこまで確認が済んだ所で、病院で地味に幾つか見つけていた情報保存チップに里津さんが触れてない事に気付いた。

俺は態々とそのチップを幾つか手に持つと、彼女がコンテナの施錠を一旦止め、額の汗を拭った所を見計らって値段を聞いてみる。



「里津さん。コイツは幾らするんですかね?」


「ん? あー……チップ単体なら五十って所だけども、問題はそこじゃないのよ」



里津さんは言うと俺から情報保存チップを受け取り、ソレを宙に翳しながら瞼を細めて言う。



「コイツは廃病院で見つけたんでしょ? なら、診療録が記録されてる代物かもしれないわよね? だとしたらコイツに付ける値も変わってくるのよ。前世界が終わってから失った物は色々あるけど、病気の治療法なんかもその一つよ。もしかしたらコイツに今は失われた治療法や、薬の作り方なんかが記録されてる場合もある……。だから、値を付けるなら中のデータを確認しないといけないわね」


「……え? じゃあ、もしそんな物が記録されていたら……かなりの額になったりするんじゃ?」


「うん。だから場合によっては余裕で何十万って値が付いて、市が買い取っていく場合もあるわね」


「ぶっ!! にゃ、にゃん十万だとぉ……!?」



まさか、こんな小さな物にそんな可能性が秘められていたとは……。人と物資は見かけによらないって事だな。

某DBで出てきたフリ○ザも、あんな姿で『五十三万』がどうちゃらとか言い出しやがったからな。ビックリだよ。


俺が某サイヤ人の王子の如く震えながら情報保存チップの戦闘力……もとい、価値に恐れ戦いていると、里津さんがピシャリと言う。



「まぁ、でもそんな代物が簡単に見つかる訳ないからね。あんま期待しない方がいいわよ?」



ですよねー。正直、そこまで出来すぎた話があるとは俺も思えない。

言ってしまえば、こういう前世界の情報が記録されたチップは宝くじ的な見方をすれば丁度良い感じなのかな?

利益のある情報が、中に記されてれば一攫千金のチャンスなのだろう。


思った以上の収入と情報保存チップの新たな価値に、俺は興奮で胸の高鳴りが大きくなっていく事に気付いた。

何とかソレを抑えようと静かに息を吐きながら、声の震えを抑えつつ口を開く。



「そうですか。じゃあ……早速中身を見てみましょう!!」


「いや、無理。PDAやPCを持ってないし」


「……まーたPDAですか。持ってた方がいいのかなぁ……」



地図やらチップの解析やら、遂にはハッキングと連絡手段やらで色々と便利そうではあるんだが、最低でも一万だからなぁ……。

0円携帯ならぬ、0円PDAとかないの? 契約会社とか無さそうだからある訳ないか。

俺はともかくとしても、ラビィが上手く扱えるならPDAを持っておいた方がいいのかな?

物資を纏める袋を買うついでに組合所で少し覗いてみるか……? ってか、最低ランクで買えるか? 一万もする品だからな。五階までのショップには置いてない可能性が濃厚である。



とりあえず、情報保存チップも値が不確定だ。

しかし、一番重要なのは生体義手の値段である。

もしかしたら値がハッキリしている他の物資の総額と同額、上手くいけば超える可能性があるのだ。


俺は努めて冷静を装いながら、何気ない口振りで里津さんに話を振る。



「ふーむ。じゃあ……生体義手の値段はどうですかね? 軽く五万くらいしますか?」


「え? いや、分かんないわよ。専門外の代物だもん」


「ぅえぇ!? でも、医療用ナノマシンを売ってたんですよね!?」


「あれは注射を打つだけのお手軽な物だしね。生体義手は施術代金やら、右腕か左腕かの違いで値も変わってくるし、ちゃんとした医療施設へ持ってかないと売り捌けないと思うわよ」



な、なるほど。そう言われてみれば納得できる。

確かに、あんな物を取り付けるのには大変な手間が掛かると思う。

医療用ナノマシンの使い勝手の良さが異常なんだろうな。


一通りの会話を交わすと里津さんはまたコンテナの施錠に挑戦し始めた。

ラビィも相変わらず真剣な様子で取り組んでいるので、俺は手持ち無沙汰に生体義手を確かめてくる事にする。


工房内に足を踏み入れると、作業台の脇に置かれた非常用電源装置が小さく唸りを上げて出迎えてくれた。

燃料を消費して電気を発電するらしいが、燃料の量を表すメモリを見る限り、今の所はまだ切れそうな様子は無い。燃費が良いな。

電源を供給されて稼動している保全ケースの中には生体義手が納められており、病的に白い肌が僅かに日の光を反射している。


こうして見るとかなりグロテスクな感じだが、肘に繋がる部分から僅かに機械部分が覗き見えているから安心だ。

生体義手はこれで完成している訳ではなく、装着する人物のDNA情報が刻まれた培養液に浸して最後の調整を促すらしい。

それで拒否反応やらを無くし、さらには装着する体のサイズに合わせて、ナノマシンが生体部分の最終的な微調整をしてくれるとの事。


そうでもしないと片腕だけポ○イみたいになりそうだからな。流石の技術力と言った所か。

今目の前にある生体義手は親指の位置を見るに、どうやら右腕に使う物の様だ。

大半の人の利き腕が右だろうし、需要が高そうだ。そうなってくると高額で売り捌ける可能性も出てくる。


これまた新たな幸運に俺はニヤケを抑える事ができず、しばし一人で満足感に浸ってしまった。


そのまま放置してれば余裕で一日を過ごせそうな時だった。

ふと、裏口の玄関から戸を叩く音が聞こえてきたのに気付いたのである。


最初は誰かの悪戯かと思いきや、直に来客が訪れたのだと思い至って俺は大変に驚いてしまった。

里津さんの家に居候してから大分経つが、今まで来客なんぞ全く来ていなかったし。そんな風に驚愕しても仕方ない。

さらに驚くべきなのは、里津さんが一向に裏口へ向かう気配がない事だろうか。

流石にコンテナの開錠に集中していたとしても、今のノック音は聞こえてたと思うのだが……。


居候である俺が勝手に出る訳にもいかないし、何となく息を潜めて居留守を使う。

しかし、裏口を叩くノック音は止まず、それどころか段々と叩く間隔が短くなり、それに比例してノック音も大きくなってきている。


気分はまるでN○Kの徴収を避ける大学生か、借金取りに怯える貧乏少年である。

いや、よくよく考えたら『まるで』じゃねぇわ。普通に借金があるんでしたわ。

もしかして……俺が廃病院を攻略したとの報を聞いた軍が、早くも借金を徴集しにきたのかもしれない。


そう思うと唐突に胃が痛くなってきた気がして、自分のメンタルの弱さに驚きである。

世界を拒絶する某エ○ァのパイロットの如く、そろそろ俺が耳を塞ごうとした所で遂に里津さんが怒声を放つ。



『あーもぉ!! うるっさいわねぇ!! 集中が切れちゃったじゃないのよぉ!!』



そう聞こえたと同時に床をドスドスと踏みしめる音が聞こえ、僅かに床が震える響きも感じ取った。

流石にその声を聞いて肝を冷やしたのか、裏口を叩いていたノック音が止む。


里津さんのヒートアップ具合に少し不安を覚えた俺は、恐る恐る裏口に足を運ぶ事にした。

すると当の本人は苛立ちを隠さない様子で、右手に開錠に使っていた先の尖った工具を手にしたまま裏口に向かう所であった。

このままだと裏口で殺人事件が起こりかねないと判断した俺は、まるでスタ○ドの如く里津さんの後ろに付き添うことにする。

俺の能力的には射程距離Eだが、いざとなれば彼女を羽交い絞めしてでも止めるべきだろう。


そんな覚悟を俺が密かに心中で立てていると、遂に里津さんが少し乱暴な手付きで裏口の戸を開けた。

室内に流れ込んできた空気に僅かな土の匂いが混じっており、少し顔を顰める。

が、そんな不快感は一気に驚きで晴らされてしまい、気付けば表情は笑顔を形作っていた。



「弦さん!!」


「よ、よぉ。久しぶりだな、木津……。里津よ、その右手に持った物騒な物を下してくれねぇか?」



堅い表情で弦さんは挨拶を返したが、それは里津さんの表情と手にした工具を見たからだろう。

彼女もまさか訪問者が弦さんであるとは予測してなかったのか、少し慌てた調子で背後に工具を隠す。



「げ、弦? いや、これは違うのよ? これはちょっと取り組んでた事があったから……」


「そ、そうそう。実は里津さんにコンテナの開錠をしてもらってたんですよ」


「コンテナ? ふむ、噂は本当だったか……」



俺の言葉を聞くと、弦さんは我が意を得たりと言わんばかりに大きく頷いて一人で納得した。

そのまま暫く沈黙が続いてしまったが、俺はふとある事に気付いて疑問の声を出す。



「弦さん。弓さんは一緒じゃないんですか?」


「ん? いや、此処に……おい、弓!! 何してんだ、オメェは……」



弦さんは己の背後を振り返ると少し戸惑い、次に視線を遠くに向けると呆れた様に言葉と息を零す。



「い、いやー。丸々と太った鼠が居てさ、少し気を取られてたの」



そんな事を言いつつ、後ろ頭を掻きながら姿を現した弓さん。


確かに、街中ではゴキブリの如く鼠が四方八方を走り回ってる姿をよく見かける。

そしてそんな鼠達を袋を片手に追い回す市民の姿は、もはや俺の中では微笑ましい日常風景となっているのだ。慣れたもんだな。



「お久しぶりです!! 弓さん」


「ぁ……ぅ、うん。久しぶりだね」



これが挨拶の見本だと言わんばかりのテンションで俺が挨拶すると、弓さんは少し口篭りながら言葉を返してきた。

何時も元気一杯な彼女には珍しく、少し俯き加減だ。

暫く沈黙が場を支配してしまい、徐々に居心地の悪さを感じ始めていると、俺は其処でようやくとんでもない事に気付いてしまった。



――そうか、街の噂で俺が色々と嘘を吐いてた事がバレてるんじゃね?



そう自覚した途端、一気に冷や汗が全身に吹き出てきたのを感じ取った。

今の俺は、まるで炎天下に放置された冷え冷えの缶ジュースぐらいの湿り気具合である。


前にも右腕が義手とか、ハンターどうこうなんかで嘘を吐いた件があったのだ。

あの時は弓さんが『自分の勘違い』と言ってくれて何とか和解を得たが、今回ばかりは流石に思う所があるのだろうか?

そう思って玄関に立つ二人を見ると、心なしか視線に責める調子が浮かんでいる気がしないでもない。

態々と自宅に訪問する程、今回の件は腹に据えかねているのだろうか?


そうだよな。二人はクースの件でも助けに来てくれたり、ラビィの事を黙ってくれたりしたのにも関わらず、俺は何から何まで嘘を吐いていたのだ。


これには流石の弓さんだって、助走を付けて殴りかかってきてもおかしくないであろう。

少し俯き加減なのは、恐らく彼女の中で憎しみを掻き消そうと悪戦苦闘しているからなのかもしれない。


俺が悶々と妄想を繰り広げて時間を消費していると、遂に痺れを切らした里津さんが弦さん達を家に上がる様に勧めだした。

弦さん達は素直に感謝の言葉を告げると、少し緊張した面持ちで家に入ってくる。

応接室なんかは当然ないので居間に案内する形になったのだが、二人は居間の入り口で足を止めてしまい、僅かに息を飲んだ音が聞こえてきた。

それは居間に置かれた大量の物資を目にしたからか、それともどこに腰を下せばいいのかで迷ったのかは分からないが、恐らく前者だろう。


何とか居間の隅に空いているスペースに全員が腰を下ろし、狭い距離で向き合う事となってしまった。

唯一、ラビィだけが皆から離れた場所で黙々とコンテナの解除に勤しんでいる。

彼女としては弦さん達は俺以外で初めて出会った人間だし、自己紹介も済ませているので特に気になる対象でもないのだろうか。


居間に座って暫く無言で時間を過ごしていたが、俺は一つ覚悟を決めて此方から先手を切り出した。



「あの……すみませんでした。俺が色々と嘘を吐いてたって……もう、知ってますよね?」


「……おう。まぁ、色々と驚いたが、不思議とスンナリ納得できたと言えばそうだ。お前には、色々と不自然な所があったからなぁ」


「はははは、そ、そうですか」



初対面の時にしたって俺は荒野を彷徨ってた警備ロボを素手で仕留めてたり、後にしたってゴミ山で血塗れになって倒れてたり、百式と相対して生還したりとしてたからな。


最初の件は義手がどうこうで誤魔化せてたが、後の部分は色々と苦しい言い訳をしてたよな。今思えば、どうして誤魔化せてたかが不思議だよ。


俺は過去の出来事を思い返しつつも、弓さんに頭を下げた。



「弓さんも……本当にスミマセンでした。その……怒ってます?」


「ぇあ、いや!! 怒ってないよ?! 本当に!! うん、ただ……少し恥ずかしくて」


「は、恥ずかしい?」



何? もしかして『一緒に居て、噂とかされると恥ずかしいし……』と言う、とき○モ的な? 最高難易度なの?


そんな事を俺が思い浮かべていると、弓さんは徐々に頬を赤く染めてポツポツ語りだす。



「うん……私ったら沿矢君に『助けが欲しかったら何時でも言ってね』なんて言ってたじゃない? けど、沿矢君はそんなの必要ない程に凄かったと言うか……」


「え!? あ、いやいやいや!! それは違いますよ!! 俺ってばそんな大層な人間じゃないですから!! 今だって里津さんやラビィとか、それと教会のみんなに支えてもらって何とかやっていけてるんですから!! 手助けは何時だってウェルカムなんです!! だから、前に弓さんが言ってたその言葉だって、安心したと言うか、心の支えになってましたから!!」


「そ、そうなの? 本当に?」



弓さんは俺の余りの勢いに僅かに飲まれながら呆然と言葉を吐く。

その隙を見逃さずに大きく何回も頷きを返すと、ようやく彼女は笑顔を覗かせた。



「……そっかそっか。ごめんね? 私ったら、何か少し思い悩みすぎてたみたい」



えへへ、と可愛く笑いながら後ろ頭を掻く弓さん。

まるで少女マンガに出てくる様な仕草だが、彼女みたいな美少女がやると一段と可愛く見える。

此方としてはそんな笑顔を見てしまうと、思わず『うへへ』と人前では見せてはいけない笑いが出そうだ。


そんなこんなでようやく場に和やかな空気が流れ始め、自然と強張っていた体の筋が解けていく感覚が心地良い。


その後は互いの近況報告や、俺の異常性に少し触れたりした。

弦さん達は俺の新たな借金額を聞くと驚いていたが、直に気を取り直して慰めの言葉を送ってくれる。

どうやらヤウラでは俺の借金に関する噂も流れていたらしいので、そんなに驚かなかったみたいだ。


流石に額までは分かってはいないそうだが……。そもそも何処から漏れたんだよ? 軍しかねぇよな? 規律がなってないぞ。


最終的な話題はやはり廃病院で俺が見つけた物資の事に変わっていく。

弦さん達としては、これでも物資の量は少ないとの言葉だった。

やはり、あれ程の広さとLG式の群れ、更には百式が居たにしては"割に合わない"のだそうだ。



「まぁ、でも……やっぱりラビィを守る為の防衛体制だったんでしょうね。彼女が居たから、LG式を軽々と一掃出来ましたし。凄いんですよ、本当に」



俺がラビィの事を口にすると、コンテナの開錠に精を出していたラビィが手を止めて此方の様子を伺ってきた。

軽く手を振って異常が無い事を伝えると、彼女は一つ頷いてまた作業に戻る。

そんなラビィを見つめながら、弦さんも細かく頷いて賛同の意を口にした。



「そうだな。その凄さ故に軍もフルトに目を付けたんだろう。組合所の件では、ミシヅの凄腕を"押してた"んだろ? 大したもんだ。借金を理由にした建前はあるが、軍の芯は強欲で腐ったままさ。昔と何も変わってはいやしねぇ……」



そう言うと、弦さんは眉を顰めてきつく瞼を閉じた。

そんな彼の姿は、過去に起きた軍の蛮行を思い出して怒りを抑えている様に見える。


滲み出る不快感は他者に浸透する程に強かったが、それも無理はないだろう。

下手したら、弓さんも軍に連れて行かれていた可能性もあるのだから。

南駐屯地で出会った若い訓練兵達の姿は、俺に刻み込まれた記憶の中でも新しい物だ。


場が暗い雰囲気にまた戻りつつある事を敏感に感じ取った俺は、少しオーバーリアクション気味にテンションを上げて重い空気を打ち払う。



「まぁ、でも結構なんとかなりそうなんですよ!! 廃病院では生体義手も見つけましたし、コンテナの中に納められている物資もまだありますしね!!」



何だかんだで十万ボタ位は軽くいきそうだ。今、確定してる額だけでも三万五千だからな。


流石に生体義手と言う大物を見つけていた事は度肝を抜いたのか、弦さんは僅かに目を見開き、弓さんは輝かしい笑顔を浮かべた。



「生体義手!? 凄いよ!! おめでとう、沿矢君!!」


「いやー、どうもどうも……。ラビィの協力があってこそですよ」



そう謙遜を口にしながら、俺はクースから帰還する時に覚えた荷台の揺れを思い出して僅かに吐き気を堪えた。

そんな風に少し顔を青くしながら僅かに俯いていると、弦さんがポツリと横から口を出す。



「それで? 生体義手を売る当てはあんのか?」


「え? あ、いや……。里津さん?」


「悪いけど、流石の私も医療関係の知り合いは居ないわよ」



思わぬ所で望みが絶たれた。

生体義手を売り捌けないなら、ただ無駄に非常用電源装置の燃料を奪う負担にしかならない。

予想外の展開に俺は少し慌ててしまうが、直に次の手を思いつく。



「あ!! じゃあ組合所は!? 買取とかしてないんですか?!」


「組合所では買取はしてねぇよ。物資を納めると、引き換えに相応のポイントが加算されるくれぇだな」


「ぐぐぐ……」



今の俺にはポイントなんて何の価値も無い。手にしたボタだけが全てなのだ。

頼りにしていた里津さんも当てが無いみたいだし、これはマジで手詰まりじゃなかろうか?

やっぱり神なんて居ないんだな。それとも、これは腹痛の時ぐらいしか神に祈りを捧げていなかった俺への罰だろうか?


過去の自分の行いに僅かな後悔を覚えていると、ニヤニヤと可愛く弓さんが意地の悪い笑顔を形作っているのに気付いた。


まさか、彼女には『S』の気質が備わっていたのだろうか?

天使の○な悪魔の笑顔なの? 等と、思わず某マ○チさんが歌ってた歌詞の一文が脳裏に浮かんだよ。


弓さんは俺の視線に気付くと、得意気に胸を張り……張ったよな? うん。

彼女はそのまま皆の注目を集めると、焦らす様な手つきで懐からゆっくりライセンスを取り出して見せた。



「ふふーん。私のクラスはDなんだ!! つまりはメイン居住区に出入りできるのです!! 沿矢君がどうしてもって言うなら、代わりに生体義手をメイン居住区にある病院で売り捌いて来ても良いよぉ~?」



世紀の大発見、天使は此処に居た。

前々から抱いていた弓さん天使疑惑は、遂に確固たる事実となってしまったようだ。

当然の事、その好意を無下にする筈も無く、俺はすぐさま頭を下げて見せた。



「それは助かります!! 是非、お願いします!!」


「え? ぁ……躊躇したりしないんだ? あははは……予想外だなぁ」



頭上から聞こえて来たのは快諾の声ではなく、少し気恥ずかしそうな弓さんの声色だった。

次に彼女は誤魔化す様に小さく咳をすると、俺の頭をくしゃくしゃと撫でて元気一杯の声を上げる。



「うんうん!! 素直なのは良い事だよぉ? 弓お姉さんに任せてくれたら、何でも上手くいくからねっ!!」



そう言いながら弓さんは手の動きを早め、俺の頭皮と毛髪へ徐々にダメージを与えていく。

俺の耐久力がその二つにも付加されている事を祈りつつ、暫くその心地良い感触に瞼を細めた。


その状態が数秒続き、危うく『わん』と俺が口走りそうな時であった。

弦さんが大きく咳を零し、少し堅い声で釘を刺してくる。



「んん!! 弓よ……安請け合いするのも良いが、お前はメイン居住区に足を運んだ事はねぇだろ? 病院っつたって複数はあるぞ? 適切な値を付けてくれる所を探せるのか?」


「……大丈夫!! 弦爺は知ってるんでしょ?! なら、何の問題もないよ!!」


「なんでぃ、結局は俺頼りかよ? 仕方ねぇ奴だな……」



とは言いつつも、弦さんの瞳に暖かい物が宿るのが分かった。

しかし、それを見せたのは一瞬であり、直にそれを打ち消すと彼は俺に向き直る。



「まぁ、お前は知らない仲でもねぇし、借金の返済を成し遂げて軍が悔しがる所も見てぇからな。協力するのは俺としても吝かではないぞ」



そう言うと、弦さんはニヒルな笑顔を浮かべて見せた。ヒュー!!!!


二人が協力してくれるとなると心強い。鬼に金棒、ラビィに銃器、分かりやすく言うと怖い物無しである。


まず、弦さんは工房に向かうとケースに納められた生体義手の写真をPDAで撮った。

電気の供給が必要なケースを持ち歩いて出歩く訳にもいかないので、コレを相手方に見せて交渉するみたいだな。

交渉が纏まると相手側が生体義手を運ぶのに使う配送用のコンテナを持参して、此処を訪れる流れになるだろうと弦さんは告げた。


流石に配送用のコンテナを手渡すほど相手側も馬鹿じゃないだろうし、俺もそうなると思う。ってか、地味にPDAの多様性に驚きだよ。

やっぱり俺も買うべきだろうな。交渉が纏まったかどうかで弦さん達と連絡取れた方が都合も良いだろうしな。良い機会だと思う。


そうと決めると話は早い。

俺は早速、弦さんに何処でPDAを買えるのか質問してみた。

彼の話ではCクラスから使用可能な十五階付近のショップで売ってるらしい。

勿論、他に売ってる店舗は外にもあるのだが、そういう店舗では品物に不備があったりする事も珍しくないとの事。

後で気付いてもマトモに取り合ってくれる可能性も無に等しいらしいので、組合所で大人しく買った方が良いだろうな。

だが、俺のランクでは十五階付近のショップは使えない。


――となると、外にある店舗を頼りにしてみるしかないだろうか……?


僅かにそんな考えが俺の脳裏に浮かび始めた時、弦さんが訝しげに問うてきた。



「木津よ。オメェ……PDAが欲しいのか?」


「はい。色々と便利そうですし、これから長く探索を続けるなら必須になってくると思います」


「そうか……丁度良い。今日はもうやる事もねぇし、今から組合所へ買いに行くか?」


「……? ぇ、あ、あぁ!! 俺の代わりに弦さんがPDAを買うなら特に問題は無い……って事ですか?」


「まぁ……あまり褒められた行為じゃねぇが、ガチガチの規律で固めると反発を招くからな。"やりすぎない"限りは、組合側も見逃してくれる。そもそも、人の繋がりってのも簡単に手に入れられる物じゃねぇ。こういう適度な緩さも、組合所に所属する荒くれ者達を纏め上げるのに必要なのさ」



ふむふむ、思わぬ裏技ですな。

しかし、ボタを払う事に間違いはないし、組合所も所詮は"人"が運営している組織だからな。そういう見逃しもあるのだろう。

ってか、十五階付近のショップを利用できるって事は、弦さんのランクってC以上あるんだよな? やっぱりこの人は凄いですわ……。


此処に来て大きな幸運の連続だ。

弦さん達が協力してくれたお陰で生体義手も何とか売り捌けそうだし、PDAを手に入れることも出来そうだ。


新たな協力を申し出てくれた弦さんに俺が感謝の言葉を向けると、彼は気恥ずかしそうに『おう』と応えた。

そんな彼の態度に俺は思わず笑みを隠しきれず、気付けば弓さんや里津さんも意地の悪い笑みを浮かべている。

弦さんはそんな俺達を見ると軽く舌打ちを放ち、少し早足で工房から出ながら組合所に向かうと告げた。


此処に来て俺は色んな人に助けられている事を再度自覚し、じんわりと胸が暖かくなっている事に気付く。

願わくば、この穏やかな気持ちが永く続いてくれる事を祈りながら、俺も組合所に向かうべく弦さんの後を追った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ