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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第一章 目覚めた世界は……
32/105

貴婦人、来たる

「お、おい。アレ見ろよ……」



組合所の前で軍用4WDの車両『M2066』が停まり、中から人が降りてきた。

M2066は丈夫な軍用車両の中でもさらにオプション装備として装甲板の追加装備が可能な型で、単純な防御力と走行時の安定性は随一だ。

しかし、重量高による燃料の消費も激しく長距離には向かないと言う欠点があるも、追加装甲板自体は取り外しも可能にはなっている。

特殊な合金鉄を使った軽量装甲板も装備としてはあるが、それは前世界の技術力なくして開発できない装甲板。言わば遺物であり、レア物である。

状況に応じて拠点で装備を代え、損傷した箇所の装甲板の交換を行えば直に戦闘へ復帰できるこの型は信頼性も高く、人気が高い。

強力な兵器を取り付ける事ができたら、そこ等の戦車と同程度の活躍も可能だろう。


今組合所の前に停まったM2066は追加装甲をフル装備している。

先程述べた貴重な軽量装甲板を所々に紛れさせている事から、この車両の持ち主が相当な実力者か、財の持ち主であるかが推測できる。


それだけならば別段気にする事も無いのだが、その中から軍用車両には似つかわしくない妙齢の女性が姿を表したとなれば話は別だ。

組合所前で談笑をしていた男達は、自然と彼女へ興味を惹かれる形となる。


その女性は清潔感溢れる白いワンピースの上から光沢のある黒のボレロを身に纏っている。

ボレロにそれとなく施された薔薇の刺繍とフレア袖が、これから夜会へ赴く様な上品な気品さを漂わせていた。

両の手は白のレース手袋が嵌められており、そのお陰かスラリとした細長い指が強調され、印象を深くする。

靴は黒いヒールを履いているのだが、闇夜を思わせる黒よりも僅かに覗き見える彼女の透き通る様な白い肌の方が目立っていた。


服装だけでもインパクトが抜群だったのだが、その女性の穏やかな雰囲気と麗しい容姿がさらに服装とマッチしており、見守っていた男達の雰囲気を盛り上げる。



「……おいおい!! なんだあの上玉は?!」


「ばっ……大声を出すなよ。恥ずかしい奴だな」



一人が思わず大声を上げると、隣に居た男が注意を促した。

とは言え、注意をした本人もチラチラと女性に視線を送り続けている。


女性は緩やかな波を描いたブラウンのロングヘアーを風で揺れない様に片手で押さえ、柔らかな笑顔を浮かべている。

火器どころか、手荷物一つ持たない出で立ちは組合所では異質だと言うに、あまりに自然な様子で降り立った彼女に対して彼等はその疑問を抱かなかった。


彼女は自身を見つめる男達に向かって、軽く頭を下げて微笑んだ。

それを受けた彼等は気恥ずかしそうに片手を上げて挨拶を返すか、思わず視線を逸らしてしまうなどの様々な反応を見せる。

女性は青少年が見せる様な彼等の初心な反応に嬉しそうに頬を緩め、笑みを強くしながら車両の後ろにまわって荷台の扉を開けた。



「て、手伝いますぜ?」


「あ!! ずりぃ!! 俺がお手伝いします!!」



男達は女性が車両の荷台から何かを下ろそうと手間取ってる様子が見え、思わず我先にと駆け出していた。

女性は近づいてくる彼等に気付き、柔らかな頬に右手を当てながら素直に彼等を待つ事にしたようだ。



「まぁ、すみません。助かりますわ」


「へへっ。いえいえ、これくらいどうって事はありませんぜ」



真っ先に車両へ辿り着いた男に向かって女性が感謝の言葉を送ると、彼女の心を和ませる様な柔らかな声色を受けて男は頬をだらしなく緩ませた。

そのまま仲間が追いつかない内にと、男は女性が手に取ろうとしていた革製の黒い袋を勢いよく担ごうとしたが、袋は予想外の重みでそれは上手くいかなかった。


思わず男が手を滑らせ地面に袋を落としてしまうと、中から水が跳ねた様な不自然な音が聞こえてきて男は不意に動きを止めてしまう。



「な~にやってんだか!! 情けない奴だな。俺達が運びますよ!!」


「や、やけに重いな……。あ、これは組合所の中に運ぶんですよね?」


「えぇ、フロントまで運んでいただけたら助かりますわ」



それをチャンスと見た仲間達が動きを止めた男を追い抜いて袋に群がり、それを協力して持ち上げた。

男達は女性の言葉に従って素直に組合所の中へと足を進める。

ただ一人だけ袋を落としてしまった男は、残された事を気にも留めずその場に固まったままだ。

いや、よく見れば彼の顔色は青く染まり、大きな体を僅かに震わせていた。


まるで、その姿は気付いてはいけない秘密に気付いてしまった幼子の様で、酷く不安気で頼りなく見えた。


そんな外に残された男の様子に誰一人気付く事無く、仲間達は袋を担いだまま協力し合ってフロント近くへと歩みを進めていった。

女性は微笑を浮かべながら彼等の後をゆったりとした足取りで、フロアにヒールの音を響かせながら着いて行く。


不意に、彼等の前に警備員を数人従えた五階長の御川 啓が立ち塞がった。

当然と言うべきか、進路を遮られた事に腹を立てた男達のブーイングが御川に向かって放たれる。



「おいおい!! 五階長さんよぉ、嫌がらせはよしてくれよ。こちとら重い物を運んでんだぜ?」


「そうだぜ!! しかも、俺達が珍しく紳士的に女性の手伝いをしてるってのによぉ。水を差された気分だぜ」



誰一人『其処を退け』等と御川に言わない辺り、組合所に逆らう事を心の底では恐れている様子が伺えるだろう。

彼等は渋々迂回してフロントへ赴こうとするも、すぐに警備員が彼等の行く手を遮った。


そこで彼等はようやく御川と警備員達が纏う雰囲気が普段とは全く違う事に驚いた。

まさか組合所の怒りを買ってしまったのかと彼等の脳裏を不安が過ぎるも、御川達の視線が自分達ではなく背後の女性にだけ向けられている事にそこでようやく気付いた。


御川は一歩前に足を踏み出し、素早く腰を九十度に曲げてハキハキと言葉吐き出す。

紡がれた言葉はまるで何度も練習をしたかの様に詰まる事もなく完璧であり、感情の色を伺わせない物であった。



「お待ちしておりました、ノーラ・タルスコット殿。ミシヅでも名うてである腕利きの貴方様を出迎える事ができ、大変光栄に思っております」


「あら、こんな歓迎が受けられるとは思っておりませんでしたわ。ふふふ……お出迎えご苦労様です」



ノーラと呼ばれた妙齢の女性は微笑を絶やす事無くゆったりと頭を下げ、御川達に言葉を返す。

丁寧な返しを受けるも御川の表情に笑顔が浮かぶ事はなく、彼は一つ疑問を口にした。



「北駐屯地から連絡が入り、タルスコット殿がエルド・ククルスを……"運んで"来ると伺ったのですが。やはり……アレがそうですか?」



チラリと、男達が担ぎ上げている袋に視線を向けて御川がノーラに尋ねた。

男達は突然の事態に脳の処理が追いついてないのか、ずっと動きを止めたままだ。


ノーラは御川に向かって一つ頷くと、水気を帯びた唇を開いて本当に嬉しそうに語りだす。



「えぇ、そうですわ。ヤウラの皆さんは相変わらず親切な方が多くて助かります。ミシヅですと、わたくしに話しかけてくれる殿方はあまりいなくて……。ふふっ、いっその事コチラに所属を変更しようかしら? お友達の"キリちゃん"も居ますし、そう考えると悪くないと思いませんこと?」


「ただの一職員である私にはお答えする事ができない話題ですね……。ミシヅの不評を買う恐れもございますので、何卒ご勘弁を……」



御川はそこで初めて僅かに表情を歪め、それをノーラに見せまいとしたかの様にまた深く頭を下げる。

あらあらと、ノーラが困った様に笑って僅かに眉を寄せた時、組合所の奥から突然大声と駆け寄ってくる足音が響いてきた。



「ノーラぁぁぁぁぁぁぁ!! 待ってたよ~~!!」


「キリエ!! アイスクリームを持ったまま走るな!! ほら、床に落ちたぞ!! また落ちた!! そして跳ねたのが俺のズボンの裾に掛かった!!」



ドタバタと忙しく駆け寄ってくる人物を見て袋を担いでいた男達は勿論の事、御川や警備員達の間にも動揺が走る。

赤毛のロングポニーテールを盛大に揺らし、アイスクリームを片手に駆け寄ってくるキリエ・ラドホルトの姿。

彼女の姿をそのまま捉えるならば元気一杯の若い女性との評価だろうが、彼等は彼女がその見た目にはそぐわない部分を持ち合わせている事を知っている。


キリエの後を追う冴えない中年男は黒のスーツに身を包み、気疲れした表情を浮かべている。

その姿はまるで娘のショッピングに付き合う父親の様な雰囲気を感じさせ、コミカルな部分を演出している。が、誰一人としてその光景を見て笑みを浮かべてはいない。


こちらに向かってくるキリエを確認し、御川と警備員達は素早く道を空けた。

キリエはその間もスピードを緩める事はしなかった。まるで初めからそうなると分かっていたかのように。


彼女が御川達の間をすり抜けアイスクリームを手に持ったままノーラに抱きつこうとした折、ノーラは素早く右手を上げ、掌をキリエに向けた。


キリエはそれを見て物理の法則を無視したかの様に急激に動きを止め、瞼をパチパチと鳴らしつつノーラを見つめている。

プラプラと揺れるポニーテールが、まるでお預けの指示を受けた犬が振る尻尾のソレを思い起こさせた。


ノーラはキリエに向かって眉を寄せた笑みを向けると、嗜める口調で語りかけた。



「キリちゃん? アイスクリームを持ったまま人に抱きつこうとしないの。それに女の子ならもう少し落ち着きを持たなきゃね? 異性の気を惹けないわよ?」



キリエはノーラの指摘を受けると慌ててアイスクリームを口に全部入れようとしたが、まだコーン部分までも残っており手間取ってしまう。

仕方なく、キリエはコーンの上部分だけのアイスクリームを口の中へ全部納めると、近くに居た御川に向かって極自然な動作でコーンを差し出した。


その様子を呆然と眺めていた御川は慌てて気を取り直し、文句を口にする事もせず、素直にコーンを受け取ってから一歩後ろに下がる。

キリエはしばらく無心で口の中を動かしていたが、途中で諦めてそのまま口を開いた。



「むーっ、はって久しぶりにあえだんだよ? それひっ、わたひは異性なんかに興味……」



不満気に瞼を細め、もごもごと口を動かしていたキリエが急に動きを止める。

その様子を見てノーラの表情から初めて笑みが消え、代わりに驚きの表情が浮かび上がった。



「あら? あらあらあらあら!! まさか、キリちゃんの前に気になる男性が遂に現われたのかしら?!」



ノーラが楽しげに放った言葉がフロアに響き渡り、様子を伺っていた者達の気をこれでもかと言わんばかりに惹いた。



「むぐ……気になると言うか、何だろうね? "違和感"を覚える子には会ったんだけど……よくわかんないや」


「ふふっ。それが恋心ってモノかも知れないわよ? 青春してるのね、キリちゃん。少し羨ましいわ」


「恋~~? うーん……? どうなんだろうね」



まるで周囲に誰も居ないかの様に二人が会話を交わす様は、酷く違和感を覚えるものであった。

そのままさらにトークを弾ませようと二人が口を開きかけた時、キリエの後を追っていた中年男性がようやく追いついた。

彼は息を切らしながら己の気を静めるかの様に不精髭を一つ撫で、キリエに向かって声を掛ける。



「はぁはぁ……。キリエ、頼むから俺を振り回すのは勘弁してくれ。俺はお前の"ドライバー"であって、召使いじゃねぇんだぞ? 出かける時以外は呼ぶなって言ってるのに平気で呼ぶしよぉ。ったく……」


「相変わらず苦労してるのね? 速水さん。ご苦労様です」



ノーラに労いの言葉を掛けられた速水と言う男は、軽く片手を上げながらソレに答える。



「ああ、アンタも相変わらず美人で安心したよ。……それと、これはキリエが軍に"お願い"して渡してもらった例の事が載ってる資料だ。読み終わったら、燃やすなりして処分してくれだってさ」


「まぁ!! キリちゃん。今朝連絡したばかりだと言うのにもう手に入れてくれてたの!? ありがとう!!」



ノーラは速水が差し出した封筒を見ると驚愕に目を見開き、次に眩いほどの笑顔を浮かべてキリエを強く抱きしめた。

唐突に抱きしめられたキリエは『えへへ』と嬉しそうに声を漏らし、甘える様にグリグリと顔をノーラの胸元へ埋めていく。

思わず周囲の男性陣の視線がその光景に釘付けとなるも、御川が一つ大きく咳を零してそれを咎める様にすると一斉に彼等は明後日の方を向いた。


キリエはひとしきりノーラに甘えると、彼女から離れて懐からPDA(携帯情報端末機)を取り出した。



「久しぶりにPDAに着信が来た時は驚いたよ~。まぁ、狩りのお誘いじゃなくて少しガッカリしたけどさ。ノーラは友達だもんね、私にできる事があったら何でも言ってよ!! この街にいる間は手助けしまくっちゃうからねっ」


「……ありがとね、キリちゃん……。貴方の様な友達が居て私は幸せよ」



キリエの言葉を受け、ノーラは頬を赤く染めながら金の瞳に僅かな涙を浮かべそう告げる。

そんなノーラの表情は様子を伺っていた男達の心を深く捕らえ、思わず赤面してしまう程の威力があった。

ただ一人、彼女と付き合いがあった速水はそうなる事はなく、彼女に向かって落ち着いた調子で声を掛ける。



「ともかくだ、さっさと資料を確認したらどうだ? ……奴の事を調べてるんだろ?」


「えぇ……。皆さん、お騒がせしました。貴方達も、その袋は警備員さん達に渡してくれて構いません。手助けして頂き、本当に感謝致しますわ」



ノーラは僅かに陰が入った表情を浮かべると、次に周囲の人達に向かって謝罪の言葉を述べ、袋を担いでくれていた男達を労った。

男達はそこでようやく体の硬直をとくと、手を差し伸べてきた警備員達へ素直に袋を渡す。

彼等は後ろ頭を掻きながらだらしない表情を浮かべ、チラチラとノーラに目線を向けながら外へと出て行った。

ノーラはそんな彼等に片手を振って見せ、律儀に最後まで見送った後で御川に向き直り、笑顔を浮かべて話しかける。



「では、五階長さん。出迎えご苦労様でした。また確認をするのでしょう? あちらで私は待ってますので、ゆっくりと確認作業を進めて下さいな」


「えっ?! い、いや、お望みなら部屋の一つや二つを用意しますが?」



あちら、とノーラが指差したフロアにある備え付けの長椅子を見て、御川が慌てた様子で答える。

そんな御川の気遣いをノーラは静かに首を振って断ると、さっさと長椅子へ歩いていってしまった。


キリエと速水の二人もノーラの後を追っていき、ようやく周囲には部下の警備員だけとなって安堵した御川は深く溜め息を零す。



「あの……五階長殿」


「……? どうした? 何か問題があったか?」



おずおずと警備員の一人が御川へと声を掛けた。

御川は首を傾げながら彼に疑問を問うと、警備員は御川が持っているキリエから受け取ったコーンを指差して言う。



「それ……自分が貰っても良いですか?」


「「「うわぁ……」」」



コーンを指差した警備員から同僚達が一斉に距離を取った。

普段なら一喝する場面であった所だが、御川は警備員の思ってもいなかった言動についつい笑みを零してしまう。

それは緊張で塗り固まっていた御川の心を解きほぐしてしまい、思わず……と言った調子で彼は言葉を吐き出してしまった。





「駄目だな……。これは私のだ」



普段、真面目に職務を果たしている御川の口からこの様なジョークが出た事はあまり無い。

故に、警備員達はその言葉にどう反応して良いかが分からず、その場を痛い程の沈黙が包んでいった。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼






速水から資料を受け取り、備え付けの長椅子へと腰を落ち着けたノーラであったが、彼女は膝に置いた封筒をただ注視するだけで中を確かめようとはしない。

隣に座っていたキリエがそんなノーラの様子を見兼ねてか、ゆっくりと資料へと手を伸ばした。



「私が開けてあげようか? なんなら、音読してあげても……」



そう冗談めかした口調でキリエがノーラを気遣う、だがキリエに返ってきた言葉は彼女の予想に反した物だった。



「やめてっ!! あっ……。ご、ごめんなさい、キリちゃん……。あのね、悪いけど暫く一人にしてくれないかしら?」



突然怒鳴られ、目を丸くしていたキリエにノーラは謝罪を口にしながらそう頼む。

キリエは暫く困惑していた様子だったが、速水に肩を一つ叩かれると素直にノーラの傍から離れていった。


チラチラと己の様子を伺いながら遠ざかるキリエの姿に心を痛めながら、ノーラは静かに息を吐く。

まるで大切な宝物に触れるかの様に封筒を一つ撫でた後……彼女は意を決して封を破った。


封筒を逆さまにし、出てきた資料には迫田の事が記されていた。

推定死亡時刻、死因、死んでいた場所、体の欠損箇所、迫田が装備していたHA-75型の損傷度。

一つ一つの資料に目を通しながら、知らず知らずの内にノーラの口角の端が上がってきていた。


それは普段彼女が浮かべているモノとは違い……酷く生々しかった。



「ふふ……。私が思い浮かべていた結末とは程遠い有様ですが……。これはこれで中々……えっ?」



ノーラがふと目にした一枚の写真。


それには――満足気で、どこか安堵していて、そして穏やかにさえ見える迫田の表情が写っていた。


ノーラはそれが迫田である事が一瞬分からなかった。

彼女が毎日脳裏に浮かべていた迫田の表情には一度たりともこんなモノは浮かばなかったし、浮かばせる筈もなかった。


自身が気付かぬ内に手は震え、ノーラの表情には憤怒の色が浮かび上がる。



「何を……そんな、表情を浮かべてっ……!!」



思わず叫びだしそうになり、ノーラは慌てて周囲を見回した。

幸いにも誰も自分を注視していなかった事に安堵するも、ノーラはすぐさま写真へ再度視線を落として表情を歪める。



「っ……こんな結末許さない。許せないわ……。一体どうして……っ?」



写真を眺めるノーラの金の瞳には、新たな決意が浮かび上がり始めていた。



――物事には繋がりがある。知らずともその内の一つを崩してしまえば、それは連鎖反応を引き起こし、思わぬ結果を呼んでしまう。


――その結果が何なのかは、訪れたその時を迎えないと分からない。ただ、一つだけ言える事は……今回のそれは避けられないモノであると言う事だ。




「っ……私は…………!!」



ノーラの掌で不愉快な音を立てて写真が握り潰される。

それはまるで、起こった物事を掻き消そうと足掻くかの様に見えた。




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