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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第一章 目覚めた世界は……
26/105

俺ですが、車内の空気が最悪です

8/24 一部文章を追加

「ほら、コイツを付けろ」



軍用トラックに乗り込むと、さっそく宮木伍長が何かを手渡してきた。

一見するとタダのゴーグルだが、よく見ればそのゴーグルは淵に少し突き出ている部分が複数あり、スイッチの様な物が装備されている。

まさかコレがレイルガンと言うわけではないだろう? だが特殊な装備っぽい雰囲気はある。


俺は今更羞恥心とか気にしないし、知ったかするつもりも無いので素直に疑問を口にした。



「あのぉ……何ですか? コレ」


「ん? お、ぉお……木津は初級だもんな。こういう装備にはまだ縁がねぇか……いいから着けてみな」



宮木伍長に促され、少しづつ速度が上がって行く軍用トラックの不安定な揺れの中、少し手間取りつつ俺は素直にゴーグルを装着する。

その状態で目を凝らすも、やはり特別な所は何も見当たらない。

俺がそのままアホの子の様にボーっとしていると、対面に座って苦笑している宮木伍長がゴーグルに手を伸ばしてきた。



「ん……お、おお!? か、カッコイイ!!」



宮木伍長の手がゴーグルの淵にあったスイッチに触れたと思った瞬間、俺の視界に目まぐるしい変化が沸き起こる。


まず視界の中央には大きく円を二つ描いた、ロボットゲーのコックピット表示を思い起こす様な物が表示された。次に視界の右上に見知らぬ銃の形が浮かび上がり、そのすぐ下に残弾数らしき表示と共に僅かに端が減っている白いゲージも表れ、96%と記された数字も記載される。


おいおい、何なの? 今からカタパルトデッキで俺は打ち出されたりしちゃうの? 『ソーヤ、出るぞっ!! 』とか叫んでいいの?


昔、自転車に乗ってそんな事を言いながら家の敷地から飛び出して、死角に居た犬の散歩してる爺さんに生暖かい目で見られた事があるんだよね。犬がメッチャ吼えてたな。


とりあえず、男心をこれでもかと擽る素晴らしい景色だ。これに勝る景色は、某ポ○モン主人公も歌ってたあの子のスカートの中ぐらいだろう。



「ははは!! 良い反応だ。電子補助ゴーグルは中級辺りからようやく手が出る代物だろうしな。ゴーグルと同調が出来る銃を使えば、素人でもかなり高い命中率が叩き出せる一品よ!! おっと、初級だからってお前さんの腕の良さを疑ってる訳じゃねぇぞ? レイルガンの弾は高いんだからな。分かってくれ」



正直、ロボットやらHAを見た時よりも感動した。

まぁ上記の二つは命のやり取りをした訳だからその感想もやむなしだろうが、それでも、だ。


俺が高度な技術力を文字通り間近で目にし感動で打ち震えていると、宮木伍長の一声で他の兵士達が荷台の奥で布に包まれていた物を解きだす。


そして姿を表し始めた銃を見て、それがレイルガンだと直に気付いた。

何故ならゴーグルの右上に表示されている銃の形とソレが一致したからである。


銃――そう聞いて俺が思い起こすのは、闇夜を思い起こす漆黒で彩られた物が多数だ。

だが、今目にしているそれは眩いばかりの銀色で彩られており、まるで新調されたばかりの新品であると言われても納得が出来るくらいである。


兵士二人が慎重にレイルガンを抱え、荷台の入り口近くに座る宮木伍長と俺の元へと来ると、僅かに太陽光を浴びただけで鋭く光を反射して荷台の中の明るさが増す。



「どうだ? コレがレイルガンだ。凄いだろう」



宮木伍長が受け取ったレイルガンのストック部分を床に当て、ゆっくりとその場で回しながら俺に問いかけてくる。


銃身の長さはおよそ八十cmを超え、同時に太さも兼ね備えており、そこを通って打ち出された弾丸の威力は余程凄まじい物だと予測できる。銃身の先からストック部分までの長さが余裕で一メートル五十cmを超えるであろうソレは、レイルガンと言うよりかは、レイルキャノンと言われた方が納得できる出で立ちだ。


よく見れば銃身の所々に小さい穴が開いているが、あれは何だろうか?

その他にもマガジンとは別に装着されているカートリッジらしき物も気になる。あれがコンデンサーと呼ばれた物だろうか? 気になる部分が多すぎるぜ。


俺はレイルガンに目を惹かれながらも、宮木伍長に返答する。



「そうですね……。綺麗です」



昔、学校の行事で博物館へ見学に行った時、磨き上げられた日本刀を間近で見て似た様な感情を抱いたのを俺は思い出した。


美しく光を放つその二つが持つ共通点は、どちらも《武器》であるという事だ。

他者を打ち倒す為に改良が施され、無駄が削られて完成した一品は図らずとも美しい物になってしまうのだろうか。



「綺麗? あぁ……確かになぁ。良かったな、ケニー二等兵。お前のマス掻き技術は一流だそうだ! お前に任せて正解だったな! っははは!」



宮木伍長が下品な言葉を口走り、豪快に笑い声を上げると他の兵士達も釣られて笑い声を上げた。

ケニー二等兵と呼ばれ、ヘルメットからブラウン色の髪がはみ出した若い兵士は僅かに頬を赤く染め、視線を下げて気恥ずかしそうに笑みを浮かべている。


二等兵……と言う事は軍隊に良くある新兵弄りだろうか? とは言えその様子は陰険な雰囲気ではなく、どちらかと言うと寧ろ暖かさを感じる雰囲気だ。


その空気に当てられて、俺も自然と口角の端が上がるのが分かった。


マス掻きって単語は恐らく銃を磨く事を指すのだろうか? こういう軍人同士が行うやり取りはよく映画で見ていたのだが、現実で体験すると一際に楽しさが違うな。


ひとしきり笑い終えると、宮木伍長は俺に向き直りレイルガンを構えてみる様に進言してくる。

俺は素直にレイルガンを受け取ると、何の気にも留めずに普通に持ち上げようとして、すぐに自分の馬鹿さ加減に気付いた。


この大きさのレイルガンは大変重い物に違いない。

生半可な代物では重さを感じない俺は、こういう時にボロが出そうで困るな。


俺は慌てて武鮫を装備している左手を主軸にして持ち上げる様にし、銃身部分の根元下部付近を掴んで固定する。


映画やドラマで見たスナイパーライフルの構え方を真似しようと、ストックを右肩へ当てようとした所でこのレイルガンにはスコープが装備されていない事に気付く。


その事を疑問に思い宮木伍長に問うと、彼はHB仕様であるレイルガンの反動は強すぎて、とてもじゃないが顔を寄せる事はできない代物だと言うではないか。


戸惑う俺を見かねてか、隣に座っていた兵士がHB仕様レイルガンの持ち方を教示してくれた。

彼の言葉を頼りに右腕をストックの上を通し、ストックを軽く脇で挟むようにしながら右手はグリップを掴み、トリガーへと指が届く位置に添える。脇で抱える様に構えると、まるで大砲を携えているかの様な錯覚に襲われる。レイルガンの重厚な銃身が与える印象があまりにも強烈だからだろうか。


ふと、ゴーグルを装備した視界に変化が訪れた事に気付いた。

ゴーグル中央に大きく描かれていた二つの円の内部に更に小さい円が表示され、その中には十字を描いた線がある。


……もしやこれはゲームでよく見るようなレティクルか?! いや、もしくはターゲッティングサイトであろうか!?


俺は興奮を抑えながら確かめる様にレイルガンの銃身を僅かにそらすと、その円も動きに合わせて僅かに位置を変えた。

凄い便利な代物だ。なるほどな、リアサイトやスコープを使わずにどう狙いを定めて撃つか疑問に思ってたが、これで狙いを付けられる訳だな。



アカン。このゴーグル凄くほちぃ。誕生日には是非コレを頂きたい位だ。

床に転がって両手足をバタバタさせたら貰えたりしないかな? いや、貰えるのは精々脳天への鉛弾ぐらいだろうか?


とは言え、ゴーグル単品だけではこの機能は発揮できないのだろうがな。宮木伍長も『同調できる銃』とか言ってたし。


俺は視界の変化を楽しむ為、小刻みにレイルガンを揺さぶりながら宮木伍長に質問を飛ばす。



「凄い仕組みですねぇ。サイト部分とかって一体どうなってこうなるんですか?」


「銃口の近くに極小のカメラが装備されていてな、ゴーグルを通してソレが表示されてる。他にも便利な機能があるぞ、試しにゴーグルのスイッチを押してみな」



驚くのはなんとそれで終わりではなかったらしい。

宮木伍長の言葉に従いゴーグルの淵に複数あるスイッチの内一つを押すと、スナイピングモードとやらに移行し、視界の右半分だけレイルガンに備え付けられたカメラ視点になる。引き金の側面近くにはレイルガンに備え付けられたつまみがあり、それを掴んで回すとカメラのズーム倍率も調整可能だと教えてくれた。



「おぉ……!」



俺が感嘆の声を出してつまみを弄くっていると、宮木伍長は両腕を組んで話しかけてくる。



「電子制御されている銃の大半には似た様な装備が施されているぞ。木津よ、電子制御製の銃はそれなりに高値が付くぞ。いつか前世界の軍事施設か何かを探索する時は、その事を頭の隅に置いておくといい。コンテナ一杯に詰め込まれた電子制御銃なんかを見つけた日にゃあ、暫くは遊んで暮らせるぞ! そんな日が来たら是非とも一杯奢ってくれや!!」



宮木伍長は最後にそう言うと、また豪快に笑い声を上げた。


うーむ、電子制御銃かぁ。里津さんの店にも置いてあるのかな?


そんな事を考えながら俺はどの体制が一番撃つのに楽かを確かめるため、レイルガンを抱えている左手の位置を僅かに銃身の先へと持っていく。


すると俺の様子を見ていた宮木伍長は素早く笑みを引っ込めた。

俺は彼の変化を視界の端で捉え思わず動きを止めていると、長年使い古しているであろう所々解れが目立つ灰色のグローブを装備した手で指を一本立て、銃身にある穴を指差しながら注意してくる。



「おっと、そこは駄目だ。その穴は撃った時に加熱された銃身を冷やした後で、蒸気が噴射される廃熱口なんだ。HAを装備してるとは言え、気をつけてくれ」


「そ、そうなんですか? 廃熱口か……気をつけます」



銃身に空いた無数の穴の正体が分かり、俺は大人しく最初に抱えていた銃身下部根元付近に左手を戻す。


やっぱりと言うべきか、トンデモナイ代物っぽいなこのレイルガンとやらは。

宮木伍長のご好意が無ければ一生触れる機会さえ無かったんじゃないか?


最初は何だかんだで撃たずに終わっても構わないと思っていたのだが、徐々に『撃ちたい!!』って気持ちが強く湧いてきたぞ。

どこぞの心優しきサイ○人風に言うなれば『オラ、ワクワクすっぞ!』ってな感じである。


徐々に俺がテンションを上げていく間に建物の姿がポツポツと消えていき、次第に空間の間に開きができてくる。

そして気付けば荒野の茶色い地面が目立つ様になり、テントや塹壕等が視界に入る様になってきた。

たまにTシャツとカーゴズボンだけを装備し、ランニングを行う兵士の一団を追い越していく事もあった。


もうすぐ迎撃戦とやらが始まる場所の近くまで来てると分かり、俺は緊張からかゆっくりと息を吐いて心を落ち着かせる。

俺が緊張を解していると、対面に座っていた宮木伍長はふと何かを思い出したかのように視線を斜めに向け、近くの兵士に何やら耳打ちした。

耳打ちされた兵士は小さく頷きを返すと、素早く荷台の奥に詰まれた袋の中を漁りに行ってしまった。


俺が何をやってるのかと気になって好奇の視線を向けていると、宮木伍長は俺に向き直り短く問いを投げかけてくる。



「木津。お前さんの血液型は?」


「え? あーっと……A型です。はい」



まさか此処に来て、合コンで必ずと言って良いほどに行われると噂の血液型チェックを受けるとは思わなかった。


うーん、やはり定番通り『えー☆ 何型に見えますぅ?』的な返しをした方が盛り上がっただろうか?


俺が面白可笑しく返事をしていればと僅かな後悔を抱いていると、耳打ちを受けた兵士が紙とマジックペン、更にはガムテープを携えて戻ってくる。

それ等を受け取って宮木伍長は兵士に礼を言うと、スラスラと紙に何やら書き込んだと思ったら席を立って俺の傍に寄ってきた。



「さて、何処に張っておく? お勧めは足の脹脛辺りだな。そこに張っておくと目立つし、撃つ時にも邪魔にならんぞ」


「ぅえ? いや……その、何ですか? それ」



極自然な感じで宮木伍長は話を振ってくるが、俺は何の事か分からず戸惑いを隠せない。

ふと、彼の手に持っていた紙に大きく『A』と書かれているのを見つけ、俺は直にそれを指摘する。



「そ、それって俺の血液型ですよね?」



俺はとりあえず大人しく左足を差し出すと、宮木伍長は血液型が書かれた紙の周りをガムテープを使ってぐるりと一周させ、俺の左足の脹脛にジーンズの上から貼り付ける。



「ああ……そうだな、っと。よし、固定できたな……。木津よ、今回だけに限らず、探索や依頼を受けに行く時も自分の血液型が記された物を体の目立つ部分に貼り付けておけ。そうすれば大怪我した時の輸血がスムーズに済む。勿論ベースキャンプには血液型を判別する機材は常備されてるが、仮に動かせない程の重体だったらキャンプじゃなく、その場で治療しなければならん時もある。俺達は基本『探索場所』でスカベンジャーには干渉しない。他の慈悲深いスカベンジャーか、チームを組んでる相手の治療を受けるしか手段はない。キャンプ外での救助活動を行う事を俺等は許可されていないんだ。いいか? 長生きしたいならば信頼できる相手を見つける事だ。余程運が良い奴か……強者でなければ単独行動はしない方が良い」



宮木伍長は最後にそう言うと、同意を求める様に俺を見つめる。

先程までの気の良い人物とは同一人物とは思えない程、彼の瞳と表情は真剣さを帯びていた。

気付けば俺は、彼のその様子に圧倒され大人しく一つ頷いていた。


ただ、俺は気になる事があったのでそれを問うてみる。



「あの単純に疑問として聞くんですが……。何でベースキャンプから動かないんですか? 人手が減るのは組合所としても痛手じゃあ……?」


「勿論痛手だ。スカベンジャーの働きはヤウラにとって、とても重要な貢献となってるさ。……木津よ、ヤウラで昔大規模な徴兵が行われた事を知ってるか?」


「え? えー……っと。あ!! はい、昔は問答無用で連れて行く事もあったって知人から聞きました」



最初にこの町に来た日、弓さんは宿に向かう道中で同世代の子の大半がその徴兵でいなくなった事を。

教会ではロイ先生に子供達が徴兵の危機にあるとの話を聞かされた際、ロイ先生が昔はもっと酷かったらしい、そう言っていた事を俺は何とか思い出す。


宮木伍長は俺の返答を聞き、細かく頷きながら視線を下げた。それはさながら恥を認めるかの様な仕草に見えた。



「そうだ。戦力を増強する事は別段悪い事じゃない。お陰でヤウラ周辺の防衛線を押し上げる事もできて、無人兵器を食い止めやすくもなった。だが――あまりにも強引すぎた。軍への印象は当然最悪になり、身内を連れて行かれたスカベンジャーやハンターも居て、武装蜂起による大規模な混乱が起こって一時期組合所の活動を停止した時もあった程だ。その混乱は幾人か身内の返還が行われ、何とか沈静する事ができた。だが……そのまま軍に留まる事を自分の意思で選んだ者もいたんだ」


「え?」


「別段、可笑しい事じゃないさ。外と壁向こうの生活は段違いなんだよ。毎日食べ物を口にできて、物騒な輩に絡まれる事も無い。寒さで眠れない日も無い。そんな――安定した生活を知らなかった者が大勢居た。勿論、軍に入隊した以上は厳しい訓練を受ける訳だから、資産がある中級や上級の身内は戻る事を希望した。ただ、稼ぎが不安定な初級の身内の大半はそのまま軍に留まった者が多かった。辛かっただろうな、裏切られた気分だろう。家族の為に危険を承知で組合に所属した奴もいただろうからな」



そう沈痛に言葉を搾り出すと、宮木伍長はそこで一旦口を閉じた。

俺は過去の徴兵行為の詳細を頭の中で整理しながらも、それが何で探索地での救助活動が行われない事に繋がるのか分からなかった。


宮木伍長はそんな俺の戸惑う表情を見て、一言謝罪を口にした後で話を本筋に戻した。



「すまん、少し話がずれたな……。昔は軍も救助活動を積極的に行っていたんだ。生存者がまだ生きている事がわかれば、クースでお前がやった様に廃墟の中へ乗り込んでった時もある」



そう言って表情を緩め、宮木伍長は眩い物を見るかの様に瞼を細めた。

俺はそんな彼の視線受け、気恥ずかしさで顔を少し背けてしまう。


たが、次に宮木伍長の口から出た言葉を聞いてすぐに俺は視線を戻してしまった。



「混乱がある程度収まり、組合所が再開して久々に各所にある探索地に出向いた。だが、予定を過ぎても戻ってこなかったグループがあってな。勿論すぐに何があったか確かめる為に調査隊が出発して――ベースキャンプ跡地で兵士達の惨殺された死体を発見した。物資は勿論の事、送迎トラックも丸ごと持ってかれていた。ただ、ベースキャンプで見つけた死体の数が少なくてな。徹底的に調べるため、危険を承知で街中を隈なく探索して何があったかを調べた結果――」



そこで一旦言葉を区切り、宮木伍長は大きく息を吸った。

それはさながら、己の中に出てきた感情を抑える為の動作に見えた。それが悲しみなのか、怒りなのかは俺には分からない。

ただ、彼の手は強く握り締められ、グローブの擦れる音がいやに大きく聞こえてしまう。それは俺の優れた聴覚が無くても聞こえていただろう。



「廃墟の中で見つけた死体の傍の近く、医療品が入ってる事を示すマークが記された空の鞄を見つけてすぐに分かったそうだよ、怪我人が居るって騙して連れてきたんだってな。その行為を起こす原因となったのが徴兵のせいだって確証は無いが、時期的に高いって事は明らかだ。犯人達はその数ヵ月後、他の町で見つかってその場で射殺されたそうだ。結局ただの金目当てか、やはり徴兵で身内を連れて行かれたからか、それとも何も考えていなかったのか……。死んじまった以上、真相は分からん。とまぁ、犯人達が起こしたその行為を機に当然と言うべきか……廃墟内部への救助活動を行う事は禁止された訳だな」



『とまぁ』ってアンタ……。俺的には『ちょ、オマ……』って感じなんですが。


最後に少しおどけて見せたのは暗くなっていた車内の空気を紛らわせる為だろう。だが、その効果はいま一つである。

突然始まった過去話のお陰で車内に居る兵士達は、今やスターリング○ードに向かう第二次大戦下の○連兵並に士気が低くなってますがな。


俺としても過去の同業者がそんな事件を起こしていたと知り、少し居心地が悪いよ。


そんな車内の空気の悪さを気にも留めず、宮木伍長は再び口を開く。



「まぁ、元々救助活動ってのはプラントがあるお陰で物資に余裕があるヤウラ独自に行っていたモノなんだ。今のやり方は他の都市と変わらんって事だな。ただ、救助活動が受けられるならって事で昔は態々この街に登録しにくる輩が多くてな、全盛期の登録人数は凄まじい物だったらしいぞ。必然的に運び込まれる遺物も大量になってだな、ちょっとした……えーバブルだったか? って奴が起こったんだと」


「へ、へぇ! 凄かったんだろうなぁ」


「そうだなぁ。ただ、徴兵の所為で嫌気が差した奴が大勢他の町に行ってしまって、もう見る影もないんだがな」


「…………」



少しでも車内を盛り上げようと声を出した途端、すぐに気勢を挫かれて俺も他の兵士達の様に項垂れてしまう。

話が終わって数分後に目的地に辿り着いたのだが、車内の重たい空気の所為でその時間が永遠に感じられる程だったと言う事を、ここに記しておこう。






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