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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第一章 目覚めた世界は……
2/105

見知らぬロボには気をつけろ。

基本は主人公視点ですが、物語を円滑にする為に後々視点が変わる時があります。


8/22 誤字や脱字修正を行いました。



目を覚ますと、俺は荒野にいた。

こう聞くと俺が突然狂ったように聞こえるかもしれないが、それが事実だから仕方が無い。


まずは自分の状態を確かめよう。

体に痛みは無い、パッと見どこも欠けてない、俺が女の子になってるというラブコメちっくなTSもしていない。

少し残念な気持ちで股間を覗くのをやめ、次に身辺整理する。


携帯は予想通りと言うか、圏外を表示している。

ただ圏外と言うのがここは奴等の惑星で、もしかしたら地球圏外と言う意味では無い事を祈ろう。

鞄は俺から少し離れている所に落ちていたが、中身の教科書等は別に紛失した様子は無い。

周りの状況から見ても先程の出来事が夢では無い事は確かだろうが、結局宇宙生物共が俺に何をしたかったのかが分からない。


とりあえずここはどこだろう。

某DBでよく戦ってる荒野と違うのは、岩の塊が無いって事くらいかな。

だが先程まで宇宙生物共に取り囲まれていた俺には大分マシな環境だ。


太陽は雲が邪魔して見えないが、恐らく昼ごろではなかろうか。

問題はここがどこか、と言う事だ。


こんな広大な荒野は恐らく日本にはないと思う。

だとすると外国の可能性が高い。

そもそも、あんな事の後では最悪ここはやはり地球では無いと言う可能性も捨てきれない。

いや、だが重力の感じや呼吸も普通にできている事を考えると……うーむ。



『――警――! 警――中! 警戒中! 市民の皆様! お近くのシェルター、もしくは地下街への避難を開始して下さい!』


「なんだあれ……」



遠くから聞こえて来た声に顔を向けると、奇妙な物体が同じ言葉を繰り返しながらウロウロしているのが目に見えた。

とりあえず迷ったら行動、暇になったら即オナ○ーが信条の俺としては、すぐ様その正体を確かめるべく動き出した。


川○探検隊に負けない好奇心と無謀さを兼ね備えていると自負している俺だが、その物体に徐々に近づくにつれて少しづつ歩みが遅くなるのは否定できなかった。


率直に言うならば、謎の物体はロボットだった。

しかし、その状態は旅行から帰ってきて覗いた冷蔵庫の中身並みに酷い有様だ。


青を強調としていたであろう塗料は所々剥がれ、今では下から覗く薄汚れた鉛色がメインカラーと成り果てている。

次に装甲らしき部分は穴は勿論の事、酷い所だと装甲板自体が剥がれ落ちており、下のフレームがバッチリと見える。

そしてそのフレームに纏わり付いている配線がまるで人の筋肉の様に見えて吐き気を誘うし、その配線が所々千切れかけているのも、その不気味様に一役買っている。


もはやロボットと言うよりかは、ボロットと呼称した方が合ってる気がする。

だが何よりも不気味なのは、その状態で動き回ってるという事実だ。


多分、前にTVで見たア○モより軽快に動いているのだ。

もしあれが完璧な状態ならば、どれ程のスペックを披露してくれる事だろう。


それに壊れかけのロボと言う物は、少なからず男の浪漫をくすぐる部分があるのも否定できない。

しばらく遠目から眺めていると目が合った。


目と言うかバイザーみたいな物が俺の視線と合致したのだが、すると一目散に此方へと駆け寄ってくるではないか。

お手本のようなランニングホームで此方に駆け寄ってくる姿は、某ター○ネーター2に出てくる敵役にそっくりだ。


一瞬逃げるべきかの考えが過ぎったが、相手の速さがそんな考えを吹き飛ばすほど圧倒的だったので大人しく待つ事にした。

それに日本語で周囲に何かしらを呼びかけていたので、もしかしたら言語機能があるやもしれん。



『政府が発令した避難警報から、九万九千九百九十九日と二十三時間五十九分五十九秒が経過しています!! 警報が解除されるまで市民の皆様は私の誘導に従い、お近くのシェルター、もしくは地下街への避難を開始して下さい!!』



ロボは俺の前で急停止すると、中々に狂った内容を流暢に話してくれた。

勿論、シェルターも地下街も近くには見当たらない。



「あ……はい、分かりました。あ、お先に失礼します。おつかれっしたー……」



どうやら関わってはいけないロボに関わってしまったかもしれん。

腰を低くして、脇を通り抜けようとした瞬間、俺の右腕に衝撃が走った。



『市民の皆様は、わたっわたwtttttttttttttsyuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu』


「お、おっふ」



あかん、漏れた。

気付けば俺の右腕は、ロボにがっちりと掴まれている。

しかもその掴んでいる本人は首から上をグリングリン振り回して、もはや言語になってない音を撒き散らしている。



『ゆ、誘導をををををををををををををを開始します!!』


「あっ、ちょっ!」



俺のそんな抗議の声を無視し、ロボは俺を引き摺り倒すとそのまま走り出し始めた。


い、いかん。このままではとても良くない事が起きるのは確定だ。

と、言うよりどこに向かってるのか分からんが、この勢いでは現地に着く頃には俺の下半身は擦り切れて無くなっている事だろう。



「ちょ、調子に乗ってんじゃねぇ!!」



反撃を開始すべく、装甲版が無くなっている箇所に左腕を突っ込んで、何かの線の束を勢いよく引きちぎってやる。

俺が一通りのプランを立て、ロボの装甲の隙間に渾身の左パンチを叩き込むと、その破壊力は俺の想像を超えてフレームを破壊し、反対側の装甲まで突き抜けていた。


その衝撃でロボは体勢を崩したが俺の右腕を離そうとはしない、とはいえ余程のスピードがついていたのだ、俺のおニューの制服はその衝撃に耐え切れず、肩口から一気に千切れてしまった。

制服が千切れ、勢いよく荒野を土埃を上げて転がるロボを尻目に俺は立ち上がると顔を拭った。



「は、ははっ、見たか。俺はパンチングマシーンで六十は出すんだ!」



動揺して変な事を口走りつつ、左腕を確かめる。

怪我は無い。

うん、怪我は無いのはいい事だ。

しかし、ガタが来ているとはいえ鉄の塊を貫いてかすり傷一つないとはどういう事だ?


土埃が収まり、ロボの姿が見え始める。

胴体を貫いた俺の左腕はよほどの破壊力があったと見える。

上半身と下半身を繋いでいるのはフレームでも装甲でもなく、もはや僅かな配線だけ。

転がった時の衝撃のせいか右腕も取れている。

ただ、俺の制服の袖を握り締めている左手はそのままで機能を停止している。

それがコイツの執念深さを表しているように見えて寒気が過ぎる。


くそ、お陰で制服は勿論の事、下のシャツまで一緒に持っていかれた。

今の俺は半身ケン○ロウスタイルである、まぁ今の状況にピッタリかもしれないが。



「はぁ……何? 本当の私、デビュー? 実は俺って心優しきサ○ヤ人だったの?」



だったら、もう少し真面目にかめ○め波の練習をしとけばよかったな。

壊れたロボに近寄って何か使える物がないか一通り眺めたが、よー分からん物ばっかだし、錆びてるし、どうしようも無さそうかな。



「ん……日……察……何だ……? 中国語か?」



よく見ると文字が刻まれている事に気付く事ができたが、擦り切れていてまったく解読できない。

一つ分かったのは、ここがアジア圏内である可能性が高いと言う事くらいか。



「いやいやいや、そもそもアイツは日本語を喋ってたんだぞ? え、じゃあ……ここは日本?」



俺が知らない間に日本語が世界共通語にでもなってない限りは、その可能性が一番高いはずだ。

それらの事実を認識して周りを見渡し、俺は愕然とする事しかできなかった。



「あの宇宙生物共は、一体俺に何をしてくれやがったんだ……?」



まず間違いなく今の最悪な状況に奴等は関わっているだろう。

しかし、それを俺が確かめる術は今の所全く無い。


どうしたもんかと悩んでると、遠くから何か聞こえて来た。

もしやコイツの増援かもしれない、慌てて周りを見渡して隠れる場所を探すが岩陰等は無い。


仕方なくその場に這い蹲り、音が聞こえてくる方向に顔を向ける。

そして見えて来た物体を見て俺は大きく安堵した。


自動車だ。

此処に来てようやく見慣れてる物を発見できた。


助けを求めようと膝立ちになるが、よくよく見れば既に車は此方に向かって来ているではないか。



「助かっ……て…………なくないっすか?」



近づいてきた車両を見て俺は絶望せざるをえなかった。

パッと見は普通の田舎をよく走ってる軽トラだが、今此方に向かってきている軽トラは後部の荷台に大きな大砲らしき物を装備しているのだ。

あれでは重トラと呼ばざるを得ない、もしかして此処はアフリカの紛争地帯か何かだったのだろうか? TOY○TAウォーなの?


そうこうしている内にトラックは俺の数十m先に止まると、一人が後部の荷台から降りてきた。

砂漠を横断する時に着るようなローブを装着していて顔は見えないが、背は大きくは無いように見える、俺と同じくらいかな。

ただ一つ気になるのが背中に背負ってる物体である、恐らくあれは銃ではなかろうか?



「驚いた、君がコイツを仕留めたの?」


「うぇ?! あっ、はい。お、俺がやっちゃいました。偶然ですが……」



声をかけてきた相手は有り難くも友好的な態度だった。

多分、女性……に見える。

もしくは女顔のジャニーズ系男子という可能性もあるが、体の線がローブで見えないので何とも言えない。



「謙遜しなくてもいいじゃない。コイツがここら辺をうろついてるのは知ってたけど、このタイプは軍事用でも無いのに丈夫だからね。下手すりゃ弾薬費が収入を上回るし、無視してたんだけど……。そっか、やっちゃったのね」



言いつつ彼女がローブを下ろすと顔が露になった。

黒い髪は一見ショートに見えるが、耳周りや首に掛かる部分は長めで女性らしさを醸し出している。

切れ目な瞼から見える茶色い瞳は真っ直ぐと此方に向けられており、少し黒く薄汚れているピンク色の唇は不敵に見える笑みによって少し歪んでいる。


う、うーん。美少女だ。

何だろう、TVで見るアイドルとは違う美しさというか……力強いものを感じますなっ!



「どうやって倒したの? あ、待って! 当ててみるから! えーっと……電磁銃かな? それもライフル用! どう? あってる?」



クール系美女かな、と思ってたら意外に子供っぽい所がある。

表情をコロコロ変えつつ楽しそうに喋る彼女を見て、ようやく心を和ませる展開に出会えた喜びに自然と此方も笑顔になってしまう。



「あ、いや……。ほら、コイツ思った以上にガタが来てたみたいで、素手で倒せちゃったんですね。はい」


「え、えぇ~? い、幾らなんでもそれは……。あっ、なるほどね」



俺の答えが気に食わなかったのか、彼女はつまらなそうに唇を尖らせたと思ったらいきなり俺の右腕を掴んできた。

先程生まれたトラウマが蘇り一瞬体をビクつかせてしまうが、直に彼女の体温を感じ取ってなんとか心を落ち着かせる。



「うわ~……こんな精密な義手初めて見た。このフレーム部分が見えてなかったら本物と見分けがつかないよ。なるほど、これ程の義手ならパワーもあるんだろうね~」



彼女は俺の右腕にある例の宇宙人によって埋め込まれた黒い線が見える異物の部分、そこを人差し指でなぞりながら感嘆の溜め息を零す。


いやいやいや、俺の右腕は義手ではないし、そもそもロボを貫いたのは左腕だ。

俺が彼女にその趣旨を伝えようと口を開きかけた瞬間である、トラックからこのいい感じの雰囲気を掻き消す野太い声が聞こえてきた。



『おい! ぺちゃくちゃ喋ってないで交渉をさっさと済ませないか!』



トラックの運転席の窓から身を乗り出している男性は、遠くからよく見えないが白髪なのは分かった。

声の感じからして結構お歳を召していらっしゃるのではなかろうか。



「わぁかってるぅ!! ジージは黙っててよぉ!」



慌てた様子で俺から手を離すと彼女は後ろを向いてそう怒鳴り返す。

そこで初めて彼女が背負ってる銃の全容を見る事ができた。


何だろう、全く知らない銃だ。

いや、そもそもそんなに銃の事に詳しくは無いのだが。

と、言うかなんで銃を持ってるん?

あれ、何か色々と疑問が湧いてきたぞ??



「ねぇ、君。見たところ……移動手段を持ってないようだけど」


「え? あ、へぃ」



考えてる最中だったので生返事になってしまった。

しかし、それでも彼女は安心した様に顔を綻ばせた。



「だよね?! それでさ……物は相談なんだけど~~。君を町まで送る代わりに、そいつのパーツを幾つか譲ってくれない?」



そいつ、と指差されたのは先程俺が撃破したロボだ。

俺としてはコイツにトラウマを植え付けられた関係でしかないので、未練も糞もない。



「ああ、どうぞどうぞ。どれでも好きな部分を持ってって下さい。ちなみに俺の一押しはこの袖口を掴んでる左手です」


「え? あっ、なるほど。派手にやりあったみたいだね~。ふふっ」



口を両手で隠して嬉しそうに笑う彼女を見ると、先程まで湧いていた疑問が吹っ飛んでしまった。

可愛いは正義。とりあえず、近くの町まで戻ってから考えよう。


彼女がトラックに向かってOKサインを出すと、ようやく近くまで寄って来た。

そこでようやく彼女達が俺の事を警戒していた事に気付く、とはいえ女子に偵察に行かせるとは男の風上にも置けねぇな。

そんな事を思いながら運転席の男を見つめていると、ただでさえ皺が多い顔をさらに歪ませて皺の数を増量させて睨み付けてきた。


あかん、あの爺は何人か葬ってますわ。

あれが交渉に来てたら俺はロボの全部品と、俺の所持品も一緒に差し出して命乞いしていたかもしれない。


俺は爺から視線を逸らし、何でもない風を必死に装いながらロボの残骸をかき集めて荷台に乗せる準備をした。



『な――て?』


『了――てく―よ――い―子――』


『あん―――断――ゃ―ぇぞ』


『はぃ――い』



盗み聞きするつもりはないのだが、やけに聞こえが良い気がする。

先程のトラックやロボを見つけた時も、そういやそれなりに距離があったような気がするな。


何だろう。さっきの事といい、俺の体ってば今日は調子が良すぎる気がする。


細かい部品はともかく、大体の部分は集まったので持ち上げてトラックに近づく。

顔に千切れた配線がチクチク当たって地味に辛い。



「これ、どこに置けばいいですかね?」



運転席にいた爺さんは女の子みたいにローブを着ていなかった。

だから肘にプロテクターを付け、胴体には防弾ベストらしき物を着ている姿がハッキリと見えてしまった。

さらには皺が目立つ顔とは別に、少し覗き見える首元は張りがあって筋肉質に見える。

しかもよーく顔を見てみると、皺に隠れて細かい切り傷やらが無数にある様に見えた。


ふえぇぇ……。とりあえず、この爺さんに逆らう事は今後一切しない事を此処に誓いました。



「おう。適当に空いてるトコに放っておいてくれや……。お前、力あんだな」



爺さんが少し意外そうにそう語りかけてくる。

そりゃあ、アンタくらいの歳になってくるとこういう作業は腰に来るだろうが、こちとらまだ十五だぞ。



「この子って、こう見えて凄い義手を使ってるんだよ」



そんな爺さんのメンタル面を気にしてか、すかさずフォローを入れる女の子。

義手どうこうはUFOの話をする訳にもいかないし、このまま勘違いさせておくか。



「ん、ああ……そうなのか。若いのに大変だな」


「いえいえ、そんな……僕なんてまだまだです」



なにがまだまだかは定かではないが、大抵こう言っておけば丸く収まる不思議な言葉だ。


恐る恐る荷台に設置してある大砲らしき物に接触しないよう、慎重に部品を置く。

後は細かい部品も回収しようと思ったら、既にあの子が抱えて持ってくる所だった。


女の子は部品を下ろした後に荷台へ軽やかに飛び乗ると、そのまま俺に手を伸ばしてきてくれた。

やだ、彼女が男で俺が女性ならキュンとくる場面だわ。

しかし、逆の立場だと少し気恥ずかしいと言うか、男として少し情けない感じがしてしまう。不思議だよね。



「あ、あざーっす」


「ん? んん~? 変わった言葉だね」



また一つ世界の真実に気がつきながら、俺は苦笑する彼女の手を握って荷台に飛び乗った。

その直後にいきなりトラックが動き出した。

少しバランスを崩しかけつつ運転席に目をやると、またもや爺がバックミラー越しにこちらを睨みつけていた。


何なんだよ、そんなに睨んでも俺の防御力は下がんねぇぞ。

釈然としないまま、適当に腰を下ろすと一気に気が抜けるのが分かった。

やはり、相当疲れが溜まっているらしい。


それもそうだ。高校初日を過ごし、帰り道で拉致され、UFOで何かされ、気がつけば荒野でロボとバトルと来たもんだ。

この体験を語ったら、恐らく俺は二度と精神病院の中から出れないこと間違いなしだ。

俺がいつか人生に疲れ切ったら、是非そうしよう。



「ねぇ、君いくつ?」


「ぅえ? あ、十五です」


「きゃー! 年下なんだ! 私より若いハンターは初めて会ったよ! 私は十六だよ!」



足をドタバタさせつつ、何が嬉しいのか笑顔ではしゃぐ彼女。

その落ち着きの無さは、下手をすれば俺より年下に見えてもおかしくはない。

だが彼女のそういう振る舞いは本当に自然で、煩わしい所は一切無い。



「ははは……。俺もモン○ンなら得意っすよ。初期武器縛りでドス○ァンゴまでクリアしましたから」


「う……ん?? あ、自己紹介がまだだったね、私は志菜木 弓(シナギ ユミ )。で、運転してるのがお爺ちゃんの志菜木 弦(シナギ ゲン)だよ」



言われて、運転席に目を向けると弦さんはクールに片手を上げて無言で挨拶してくる。ヒュー!



「俺は木津 沿矢です。遅れましたが……助けて頂いて、ありがとうございます」



両膝に手を置いて頭を下げる。

正直、あのまま荒野に一人でうろついてたら良い目に合う事はなかっただろう。

だからこの二人には感謝の気持ちで一杯だ。



「いいって、そんな事しなくてさ。お互いに利益ある取引をしたんだからさ。対等だよ、ね? ねっ?」



少し慌てた様子で弓さんが答える。

俺も彼女を困らせるのは本意では無いので、後ろ頭を掻きつつ顔を上げた。



「いやー、そう言ってくれると助かります。 今日は色々と大変だったので……本当に」


「うんうん、服もボロボロだもんね~。あ、町に着くまで横になってても良いよ? あ、その……私達を信用してくれれば、だけど」



此方としては最高に有り難い申し出なのに、何故か弓さんは不味い事を言ったかのように言葉が尻つぼみだ。



「あ、じゃあ有り難くそうさせてもらいます。町に着いたら、適当に駅の近くで下ろしてくれればいいんで……じゃあ」



言いつつ荷台に横になると車の揺れもなんのそので、すぐさま眠気が襲ってくるのが分かった。

その流れに逆らうような事は勿論せずに瞼を閉じると、すぐに世界が遠ざかっていくのが分かる。



「――駅―て――軍―っ――な……」



弓さんが何事かを呟いているのがわかったが、俺にはもう返事をする気力が無かった。




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