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やっぱり6時にするごめん★
理由はなんとなく。
ころころ変えると「おい大丈夫か」と言われそうなんで断言しときますがこれっきりかえません。
原稿用紙にして六百枚分くらいのストックがあるので投稿遅れはまず出さないと思います。
四日目:夜
『旅人:マコト』は『負傷兵:オーヴェン』を占いました。
『負傷兵:オーヴェン』は『人狼』でした。
五日目:昼
旅人:マコト
小間使い:ナナ
×物乞い:トロイ
青年:ハンニバル
×ならず者:メアリー
×酒浸り:サイモン
×老婆:コーデリア
商人:ケヴィン
盗賊:マスケラ
負傷兵:オーヴェン
×楽天家:ジョン
『小間使い:ナナ』は無残な姿で発見された。 残り五人
占い師
マコト:サイモン●ーハンニバル○ーオーヴェン●
ケヴィン:ハンニバル○ーコーデリア○ートロイ●
霊能者
サイモン:メアリー○
処刑:メアリーーサイモンートロイ
死体:コーデリアーなしーナナ
「んんんん~っ! 見つけましたぞっ! 『商人:ケヴィン』が占い結果を宣言ずるんですなっ! 『盗賊:マスケラ』は『人狼』なんですなっ!」
ケヴィンの宣言から、その日のゲームは始まった。
「ほう」
ハンニバルがそう言って額に皺を寄せる。それから僅かに唇の端を持ち上げてこう口にした。
「ナナが噛まれたか……。俺様と同じ確定シロとは言え、良い度胸だ。『護衛』されていると見て俺様を噛まなかったのか? まあいいだろう。俺様を残したことを後悔させてやる」
「ふーははははっ!」
マスケラが哄笑しながら宣言する。
「『盗賊:マスケラ』が昨日の護衛先を宣言するっ! 昨日も引き続き『ハンニバル』を護っていた。
しかし……不覚っ! まさかナナが襲われてしまうとはな……。ぐぬぬ……弱き女性を狙うなど、なんと卑怯な人狼なのだろうっ! ふふ、いいだろう。今日こそは我輩の力によりすべての人狼を駆逐してくれようっ!」
「やれやれ……。ナナさんまでいなくなってしまうとは。最後に残されたのは男五人……ああ。本当にここの人狼はラノベというものを分かっているのですか?」
オーヴェンが不満げな顔でため息をついた。
「『負傷兵:オーヴェン』が護衛先を宣言します。昨日の護衛先はハンニバルくんでした。
ここへ来て『人狼』は『占い師』を襲わないでしょう。襲われれば襲われた方が本物濃厚になりますからね。ですから引き続いて確定シロを護衛。それは『ナナ』さんでも同じことだったのですが、より発言力の高いハンニバルくんを護衛しておきました。『ナナ』さんは『人狼』の言葉にころっと騙されてしまいそうな危うさがありましたからね」
「ふーははははっ! ところでマコトよ、貴様に質問があるっ! 何故占い結果を報告しないのだ?」
マスケラに問われて、俺は首を振ってから答えた。
「昨日の占い先は『オーヴェン』。昨日と同じ奴を占った。どうせ俺は『人狼』を二人見つけているんだ、これ以上の宣言は不要だろう。当然、占い理由もな」
「では。我の占い理由を述べますぞ」
そう言ったのはケヴィンだった。「聞かせろ」とハンニバルが促す。
「『マスケラ』を占った理由はそこを最後の『人狼』で見ていたからですぞ。
昨日の占い先は、総合的にロジックするまでもなく『狩人』のどちらか以外ありえない。ここは確実に『人狼』を引いて『マコト』を『狂人』で確定させておきたいところでしたな。それでどちらを選ぶかと問われれば二日目から発言が怪しく、なんだか不穏な匂いを漂わせていた『マスケラ』しかありえないんですな。『オーヴェン』は我を本物で見ている位置で、護衛記録もしっかりとしている。本物『狩人』なアトモスフィアがしっかりと漂っていたんですぞ」
「君が『オーヴェン』に『クロ』を出してくれるのを、俺様は少しだけ期待したんだがな。そうすればどちらの『占い師』視点でも『オーヴェン』が最後の『人狼』で確定し、問題なくそこを処刑できた」
ハンニバルがそう言って首を振る。俺は言った。
「そんなこと起きる訳ないだろう。狂人の『ケヴィン』だって『オーヴェン』が『人狼』なことは見れば分かったはずだ。何せ本物の『占い師』である俺が『クロ』を出したんだ。わざわざそこに『クロ』をかぶせたりはしない」
「まあそうだろうな。しかしこれでラインは完璧にはっきりした訳だ。
マコトとマスケラはオーヴェンに入れるだろう。『クロ』を出したマコトはもちろん、マスケラにとってもオーヴェンは対抗の『狩人』で敵陣営が確定している。
そしてオーヴェンとケヴィンも同じ理由でマスケラに入れるはずだ。中立の俺様がこの二人のどちらがより怪しいかを判断し、投票する。当然投票された方が最多得票で処刑され、『人狼』が処刑されれば村の勝ち、『狩人』が処刑されれば人狼の勝ちという訳だ」
「つまり。これは単純に、ワタシとケヴィンくん対マコトくんとマスケラくんの対立状況ということになりますねぇ。相手が怪しい理由を説明し、ハンニバルくんを納得させた方が勝つ、ということでしょうか」
オーヴェンが言った。ハンニバルは「そういうことだ」とうなずいた。
ケヴィンが「んんん~」と表情を捻じ曲げてこちらを見詰める。オーヴェンは鼠をいたぶる猫のような悪意ある表情で俺を一瞥した。二人ともマスケラのことなど意にも介さない。完全に俺に焦点を合わせている。
……クソ。このてごわい二人を相手に言い合いをしなくちゃいけないのか。負ければ命の保障はされない、霊界へいったナナや皆の命は俺にかかっているのだ。
「ではとっかかりとして。昨日のマコトくんの主張を思い返してみましょうか。
マコトくんは昨日、『俺視点オーヴェンが最後の人狼だ。そこを処刑してゲームが終わらなければ、そこで俺が本物である可能性を切れば良い』と発言していましたね? これはあまりにも都合が良すぎるのではないですか?
昨日ワタシを処刑すれば当然、『トロイ』『マスケラ』『マコト』で『人狼』二人『狂人』一人が残ってパワープレイが発生していた。ワタシ視点だとこれは確定事項ですが、中立のハンニバルくん視点でもそれは危惧すべきことのはず。にも拘らずしつこくそれをハンニバルくんに主張して、ワタシ処刑に踏み切ろうとした。昨日のうちに勝利を決めてしまいたかったのでしょうね?」
オーヴェンが俺を見ながら主張する。……ここで沈黙してしまってはダメだ。俺は自分に活を入れて、間髪入れずにそれに答える。
「昨日の俺の発言が間違っていたのは認める。『人狼』をすべて処刑することに意識が行き過ぎて、ハンニバル視点での安全な進行である『トロイ』処刑に目が行かなかったのは事実だ。
だけど、『占い師』である俺が『人狼』であると分かっているおまえの処刑を主張することは、本来おかしなことでもなんでもないだろう? 確かに俺の視野が狭かったことは事実だが、それだけで俺が偽者だと決め付けてしまえる訳じゃない」
ここで重要なのは、俺のすべきことがなんなのかということだ。それはオーヴェンを言い負かすことでは決してない。大切なのはハンニバルを説得することの方なのだ。確かにオーヴェンの方が人狼ゲームに対する理解は深く、弁も俺なんかよりはるかに立つようであるが、別に言い負かされたからといってそれで負ける訳でもない。俺は本物の占い師なのだから、真実をしっかりと伝えて理解してもらうだけのことだ。
「つまり。……自分はバカだからおかしなことを口にしても仕方がない。あなたはそう言いたい訳なのですね?」
あおるようにして、オーヴェンが口にする。俺はカチンと来て反論した。
「確かに俺はおまえと比べて人狼ゲームへの理解は浅いよ。それで失言だってしたかもしれない。だがそれでも、おまえが『人狼』だって証拠をハンニバルに示すことはできるんだ。
いいか? 今日は『ナナ』が襲撃されて死んでいたよな? 昨日の時点で『人狼』が襲撃すると思わしきところは、『村人』であることが確定している『ハンニバル』と『ナナ』の二人だった。そしてこの内、『ハンニバル』は発言力が高く『人狼』にとって厄介で消したい存在と言える。
なのにどうしてナナが噛まれたのか? それは、ナナが俺のことを本物の『占い師』で見ていたからだ。三日目の時点からナナは俺を信用するような発言をしてきてくれた。両『占い師』視点で『人狼』が一匹残りで、実質的な最終日である今日、ナナを残すことを『人狼』が恐れたんじゃないか? 今日重要なのは中立ポジションにある人物が持つ一票の行方、それで勝負が決まる。俺を本物で見る『ナナ』を残すわけにはいかなかったんだろう?」
俺の反論に……答えたのはケヴィンだった。
「んんん~。その意見は少々ばかり通りませんぞ。
もし『人狼』が好きに襲撃先を選べたのであれば、当然マコトのその意見も考慮には値するんですな。しかし昨日の時点では『狩人』は確実に生存していたんですぞ。つまり『人狼』は『狩人』の護衛先でないほうを襲撃する必要があった。であれば三日目の時点から村の中心人物であり、高い発言力を有していた『ハンニバル』など襲撃できたでしょうか? 実際『狩人』はどちらも『ハンニバル』を護衛していたと宣言しています。総合的にロジックすると、『ナナ』襲撃はあくまでも護衛成功を恐れたものと考えるしかありえない」
「それはおかしいぞ? どうして『人狼』が護衛成功を恐れる必要があるんだ?
『ナナ』を残せばその投票先は高い確率で『オーヴェン』になる。俺が人狼陣営でそこを襲ってしまうくらいなら、護衛成功されてでも『ハンニバル』を襲撃するのが上策のはずだ。
何せ昨日の夜の時点で村には六人が残っていた。護衛成功が起きていても起きていなくても、村の人数が六人でも五人でも、処刑につかえる回数は二回で変わりない。人狼陣営にとって護衛成功を出されるデメリットは小さかったといえるんじゃないか? それなのに護衛成功を恐れて『ナナ』襲撃なんて、俺が人狼陣営にいるとしたら起こりえないことなんだ」
俺の反論に、次はオーヴェンがこう切り返してくる。
「そもそも襲撃先は『人狼』が自分で自由に選べるのですよ? つまり『人狼』に見せられているものです。あなたの意見は翻せば、人狼が村にそう思わせる為にナナを襲ったともいえます。『自分を信頼していたナナを残せば自分達が有利になっていた、だからナナが襲われた以上自分達は人狼陣営ではない』……そう主張したいが為にナナを襲撃したのでしょう?」
「おまえ視点での『人狼』濃厚位置は『マスケラ』だ。襲撃先は『人狼』が選ぶ。マスケラがそんなことをしたとおまえは本当に思うのか? マスケラが『人狼』だとして、そんなこすくてあざといことをするような奴には見えないだろう? なあハンニバル」
俺の反論に、マスケラは「ふーはははっ!」と哄笑してから
「話にまったくついていけないが……もしも我輩が『人狼』であったとしても、婦女子に手を上げるような卑怯な真似は絶対にしないとここに断言しようっ!」
「……それについては同感だな。俺様にもこの襲撃が『マスケラ』のものとは思えない」
ハンニバルが考え込むようにしてそう言った。オーヴェンがその覇気のない声で淡々と
「これは騙しあいのゲームです。『マスケラ』の態度が道化染みているのは、ワタシたちを騙すためにそうしているのだといえばそれまでです。『人狼』の術中にはまってはいけませんよ、ハンニバル」
「……それが貴様の反論か?」
ハンニバルが抑えたで言った。オーヴェンはいぶかしげに沈黙する。
「俺様はもしこの襲撃が『マスケラ』のものだとすれば、それは奴が『ナナ』を残す意味を理解していなかったゆえに行われたものだと考えていた。人狼ゲームは複数人の意見がめぐるましく入り乱れるゲームだ、誰が誰を疑い信用しているのかを完全に把握することは難しい。確かに俺様でなく『ナナ』を残せば、彼女は高い確率で『オーヴェン』に票を入れただろう。だがそれを『マスケラ』が理解していなかったとすること。これが自然な考え方のはずだ」
「そう考えるのであれば『マスケラ』に投票していただけませんか?」
「……昨夜の襲撃先がどの程度参考になるのかは分からない。君の言うとおり、襲撃先なんてものは村が人狼によって見せられるものだ。そればかり参考にしていれば『人狼』の術中にはまりかねない。故に、俺様は自分の目で見えるものを信じて投票先を決めることにする。……マコト」
そう言って、ハンニバルは腕を組んで俺の方を見詰めた。
「……なんだよ?」
「虚を突くものは必ず破綻する。これを覚えていることだ」
「は……?」
意味を図りかねて唖然とする俺の耳朶を、無機質なアナウンスが通り過ぎていった。
「投票の時間になりました。議論を取りやめ、順番に個室にお回りください」
0『旅人:マコト』→『負傷兵:オーヴェン』
0『青年:ハンニバル』→『負傷兵:オーヴェン』
0『商人:ケヴィン』→『盗賊:マスケラ』
2『盗賊:マスケラ』→『負傷兵:オーヴェン』
3『負傷兵:オーヴェン』→『盗賊:マスケラ』
『負傷兵:オーヴェン』は村民会議の結果処刑されました。
○
「人狼の血を根絶することに成功しましたっ! 村人の勝利ですっ!」
無機質なアナウンスが流れる。水族館内で、集められたメンバーたちが悲喜入り混じった反応を見せていた。
俺は一人、その場でひざをつきそうになりながら脱力した。
……生き残った。
勝利し続ける限り、殺害されることはありえない。俺は自分自身の生き残りの為に戦い、そして勝利した。敵である人狼陣営の命を危険にさらしてでも、俺は俺のみの生命を護りにいったのだ。
……それを誤魔化すつもりはない。誤魔化す必要なんてない。俺は死にたくないし生きていたい。自分の生命に対して投げやりにならないことが。俺の持つ数少ない胸を腫れることなのだから。
「やっぱりマコトくんが本物だったんだね。わたしの言うとおりだったじゃない。ふふふ」
その場で膝に手をついている俺に、ナナがやってきてそう言った。どことなく得意そうなその様子で、微笑みながら俺をねぎらってくれる。
「最後はマコトくん、すごく格好よかったよ。でも、お疲れみたいだね。……やっぱりあの二人との言い合いは、大変だったかな」
「……そうだな。へこたれた」
もう後何回かこんなことが続くことを思うと、胃がきりきりといたむ。しかも次回以降、敵陣営にナナがいないとも限らないのだ。
俺のことを忘れているのだとしても、俺にとってナナが特別な存在であることは間違いなかった。俺に前向きに生きることを教えてくれたのは、彼女だった。
「わたしが死んじゃった時は、これでオーヴェンくんに投票できなくなるって、すごくあせったんだけど……あなたが頼もしかったお陰で、ちゃんと勝つことができた」
ナナは笑いながらいう。俺は首を振った。
「別に俺の功績じゃない。俺はたまたま最後に残っただけだ。礼ならハンニバルに言ってくれ」
「いや。確かにハンニバルくんもすごかったけどさ。最終的に彼を納得させたのはマコトくん、君なんだと僕は思うよ」
そう言ったのはトロイだった。ゲームが終わって気が抜けた様子も喜ぶ様子もない。ゲーム中と何一つ変わらない態度で、気さくに話しかけてくる。
「いくらハンニバルくんが優秀でも、君の発言が怪しかったらオーヴェンくん投票に踏み切れたかどうかは微妙なところだ。その点、君に最終日を託して本当に良かったと思ってるよ。MVPは最終日に残った君とハンニバルくんと、後はまあ……、マスケラくんもそうだね」
「よくもいけしゃあしゃあとそんなことが言える」
そう言ったのは……憮然とした表情のハンニバルだった。
「やあおつかれ。ハンニバルくん。今君の活躍について話していたところさ」
「そうか。俺様の大活躍については俺様自身が良くしっているが……。しかし今回のゲームで村が勝てたのは、トロイ。他でもない君の功績だろう?」
「最終日に残れもしないで途中で退場した僕に、功績なんてものはないよ」
「いや。今回のゲーム、決着がついたのは五日目だったが、ハイライトと言えるのはむしろそれよりずっと前。三日目で『マコト』か『サイモン』のどちらかを切り捨てた場面だった。あそこで間違って『マコト』を処刑してしまっていたら、もう村に勝ち目はなかっただろう。
トロイ。君はあそこで明確な根拠を持ってサイモンの偽を強調した。その上仲間の人狼であるオーヴェンの位置まで見抜いたんだ。あれがなかったら俺様でも正確にサイモンを投票先に選べていたかどうかは分からない」
「やめてよ。褒めたってちゅーくらいしかしてあげられないよ?」
唐突にそんなことを言い出すトロイに、ハンニバルは眉を潜めて
「おぞましいことをいうな」
と返答した。トロイは「いらないのかい?」と目を丸くして
「まあ。正直なところを話すと、四日目に退場した後も僕は負けるとは思っていなかったんだよ。あんなザルが相手ならハンニバルくんとマコトくんの敵じゃなかっただろうからね。僕なんかいなくたって結果は変わらなかったよ。あの程度の相手に君たちが負ける訳ないって」
「敗者を愚弄するのはよしておけ」
ハンニバルは少しだけ険しい顔で言った。
「トロイ。君が賢いのは見ていれば良く分かる。ただし、君はどちらかというとこのゲームには向いていないような気がするな」
「そうかな? どうしてそう思うの?」
トロイが両手を晒して尋ねると、ハンニバルは「いや」と口ごもり
「今のは忘れてくれ。どちらにせよ、君が優れたプレイヤーであることには異論はない。今後君を敵に回すことを考えれば、酷くおぞましい気持ちになる」
「だから褒めても何もでないよ。僕はたいしたものは何も持っていないからね」
俺はモニターに表示されている今回の役職内訳に目をやった。
負傷兵:オーヴェン 人狼
酒浸り:サイモン 人狼
商人:ケヴィン 狂人
旅人:マコト 占い師
楽天家:ジョン 霊能者
盗賊:マスケラ 狩人
小間使い:ナナ 村人
青年:ハンニバル 村人
ならず者:メアリー 村人
老婆:コーデリア 村人
物乞い:トロイ 村人
やはり『霊能者』が初日だった。驚くべきことは、二日目の時点でトロイが『狩人』を除くすべての内訳の位置を言い当てていたことだ。いやひょっとしたら、その『狩人』にしたってある程度辺りはつけていたかもしれない。
いったい奴は何ものなのだろう。
自分のことを頭が良いと自覚するトロイ。それでいて自分のことをたいした人間でないと言うトロイ。自分の頭脳を優れていると思うだけならただの自惚れということもあるだろうが、奴は自分の頭脳の優秀さを『知っている』か、ほとんど『確信』してしまっている。そして彼のその確信が間違っていないことは、傍から見ていても明らかだ。
「やめろっ! 離せっ! 死にたくないっ!」
その大声に気づいて振り向くと……そこには二人の大柄な『初日』に囲まれてどこかへ連行されていくサイモンだった。奴と同じ人狼陣営だったケヴィンもオーヴェンも、ほとんど諦めたように覇気のない表情で『初日』に従っている。
俺の視線に気づいて、サイモンは血走った目でこちらを見詰めた。「おい、てめぇっ!」サイモンは狂気染みた表情で俺を睨みつけ、それから泣きそうな声でこう言い放った。
「恨むからな……。オレはてめぇのことを死ぬまで……死ぬ間際までずっと呪っていてやるからなっ!」
……勝手にしろ、とは思えなかった。あんなに憎たらしかったサイモンだったが、こうして生命の危機にさらされているのを目にすると、胸が締め付けられるような思いがした。なんと言葉をかけてよいのか分からず、そもそも言葉をかけるべきかも分からず、俺は思わずその場で目をそらすことしかできなかった。
「……仕方がないよ。マコトくん」
ナナが慰めるような声で言った。
「だけど……。俺のためにあいつらは……」
「せめて。わたし達を呪うことが彼らの支えになるように……。最後の日、あなたはわたし達の為に勝ったんだ。わたし達の命を救ったんだ。だから……悪いのは全部、黒幕」
「……黒幕」
随分と具体的で、実態のある言葉のように思えた。黒幕……俺の中で酷く漠然とした概念だった『俺をこんな目に合わせている奴』の姿が、黒幕という言葉酷く明確に形になっていく。
……そうとも。していることは大掛かりでも、こんな気の狂ったことを考える奴は、ほんの少数の、或いは特定の個人の黒幕に違いない。俺は心の中にくすぶっているどす黒い感情をすべてその黒幕に注いだ。この強い感情を糧にこのゲームを生き残り、必ず一矢報いることを心に誓った。
「コングラッシュレーションっ! 村人達っ! 素晴らしいゲームであったぞっ!」
モニター一杯に紙袋の『初日』が表示される。奴はモニターの向こうで俺達に拍手などして見せて、咳払いをしてからこういった。
「これにて予備選考の方は終了したのである。諸君らはこの勝利を持って、一先ずの振るいを乗り越えたのだ。よってっ! これから諸君らをここに呼び寄せた高貴なるお嬢様本人による、本番選考の試合を開始するっ!」
「……お嬢様、だって?」
俺が口にすると、『初日』は「うむ」とうなずいて見せて
「次の試合はお嬢様本人が一つ一つをその目でモニター越しに視聴される。ここまでの予備選考はあまりにも村の数が多かったのでな、我々で大まかな振るいをかけさせてもらっていたのだ。喜べ諸君っ! 次の試合に勝利しお嬢様のおめがねにかなうことができれば、諸君らはお嬢様の欲している十五人の人狼プレイヤーに抜擢され、最終的な勝者になる為の王手をかけることができるのだっ!」
「お嬢様……その、お嬢様って奴が、おまえ達を操っている黒幕なんだな?」
俺が噛み付くような声でそういうと、『初日』は一瞬だけ沈黙した上で、「そのとおりである」とうなずいた。
「……そうか。だったら、そいつには言いたいことがいくらでもあるな」
押し殺した声で言う俺に……後ろから声がかかった。
「マコトくん。お怒りはもっともなんだけどさ、ちょっと抑えた方がいいかもしれないよ? ここでは僕らの命はその『お嬢様』とやらの指先一つなんだしさ。それに、怒りの感情はずっと持ち続けると、酷くへこたれる」
トロイは憂いるような表情でそう言って、次にいつもの柔和な笑みへとすぐに戻った。
「ほら。今のうちに媚びる準備をしておこうよ。よし、それじゃあ一緒に靴をなめる練習をしようか。先に、僕の靴をなめさせてあげるからほら。その場で這い蹲ってよ」
「……誰がするかよ。一人でやってろ」
「あれ? 先にやらせてくれるのかい? 分かった、じゃあマコトくんの靴をなめさせてもらっていいかな?」
「もういいから黙れ……」
俺はそう言って首を振った。確かに頭に血が上りすぎていたかもしれない。
ナナはどこか思いつめたような表情で、視線を曖昧に漂わせてぼんやりしている。「おいナナ?」俺が声をかけると、ナナは驚いた様子で
「えっと。マコトくん、どうしたのかな?」
「ああ。いや思いつめた顔してたからさ」
ナナは少しだけうつむいてから
「そうかな?」
「ああ……でも無理もない。俺達をこんな目に合わせた奴がはっきりしたんだからな」
「……うん。そうだね」
ナナはそう言ってから視線をそらす。俺はこぶしを握り締めてこういった。
「大丈夫だ。俺達はきっとここから脱出して、その黒幕を引っ張り出すんだ。気の狂った奴に天罰を浴びせて、こんな残酷な茶番はやめさせてやる」
俺がそういうと、ナナは少しだけおかしそうに笑った。
「マコトくんは……強いね」
その儚げな笑いの意味が分からなくて、俺は少しだけ困惑した。
「……マコトくんなら。きっと生きて帰れる。そんな気がするよ」
第二ゲーム完。
最近11A12Bよくプレイするんだけど、いろいろ意外な内訳に出くわすもんだからいつもびっくりする。
俺の小説みたいな内訳は、わかりやすすぎて逆になかなか見ないくらいの内訳。11人もいる時点で人狼知らない人には把握がきついだろうし、2ゲーム目ってことでまあこのくらいがちょうどいいかなとは思うけれども。
村民名鑑
サイモン
得意役職は人狼。モデルは鼻に突く中級者。多弁でノイズ振りまくタイプ。たぶんそこまで上手ではない。
一回目とは違い、今回の人狼はちょっと嫌味なキャラにデザイン。一回目のセリーヌは人狼ゲームの悲惨さを演出する為に哀れな感じにしたが、今回はマコトが人狼陣営に打ち勝つカタルシスを演出したかった。
●ぶちあてられれば霊能で回避するなど基本は抑えている。しかし●ひかれてからCOまでが長いなど、ちょっと脇は甘い。ただ二日目の身内切りの投票ができたあたりや、トロイの追及に対してボロは出しても退きはしないあたり、強気で強弁な振る舞いはできる感じ。
オーヴェン
得意役職は人狼。モデルは鼻に突く上級者。
人狼陣営のブレイン。余裕を装いながら飄々と振る舞いつつ、迷いなく強気に意見を述べてくる。イメージは皮肉っぽくて胡散臭いおっさん。
霊能欠けを見てここぞとばかりに真占いの信用を落としまくる。たいした根拠ではない癖に自信満々。狂人が●を出せば、さも「自分は最初からそこを疑っていました」といわんばかりの態度で嫌味を言う。どんなに小さくとも失言をすればネチネチ責め立ててSGに仕立て上げてくる、たいへん面倒でイヤな奴。
マコトが最初に出くわす壁としてデザイン。遅くとも三日目くらいにはだいたいの読者にはこいつがLWで透けていたと思う。余裕綽々な大物というコンセプトだったが、結構素で臭くなってしまった残念。
ケヴィン
得意役職は霊能者、占い師。モデルはアシストでいい仕事をする狂人。人狼ゲームには手馴れているので、村陣営の進行に大きくかかわる役をひいた方が強いと思う。
決して主役にはならないが、人狼陣営の求めていることをくみ取ってそのとおりに行動できる優秀な狂人。ハンニバルはサイモンを切ってこそいたが、マコトの対抗であるケヴィンのことは終盤まで偽で決め撃てていなかったと思う。ハンニバルの保守的な傾向を汲んで、厄介なトロイに●を打って処刑させたのはなかなかファインプレイ。
彼の喋り方は「ロジカル語法」とか「役割論理」で検索してくれたらわかると思います。こういうRPは実際の人狼ゲームでやると「真面目にやれ」と割と本気で怒られるので非推奨です。




