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 二日目:昼


 旅人:マコト

 小間使い:ナナ

 物乞い:トロイ

 青年:ハンニバル

 ならず者:メアリー

 酒浸り:サイモン

 老婆:コーデリア

 商人:ケヴィン

 盗賊:マスケラ

 負傷兵:オーヴェン

 楽天家:ジョン


 人狼2狂人1占い師1霊能者1狩人1村人5


 『楽天家:ジョン』は無残な姿で発見された。 残り10人


 昼時間になって、例の大水槽の前に集れると、トロイが親しげにこちらに手を振ってきた。

 「やあ。おはようというべきかな? マコトくん、今回も味方同士だといいね」

 水槽の向かいのデジタル時計は『24:51』を示している。今回は昼時間が長いとは言え、宣言は早めにしておくべきだろう。

 「おはようトロイ。早速で悪いが、俺の宣言を聞いてくれ」

 俺がそう言ったとたん……周囲の面子の視線が一斉にこちらに集まった。さっきの試合の倍にまで増えた人数に見詰められると、少しばかりだが萎縮するものを感じてしまう。しかし、俺は今回、村を勝利に導く為のもっとも重要な役職を引き当てた。堂々としていなければ、皆を不安にさせてしまうだろう。

 「なんだ。何かあるのか? さっさと言え」

 そう答えたのは、神経質そうな表情をした長身の男だった。『青年:ハンニバル』と胸元に引っ付けてある。

 「あ。ああ。『旅日:マコト』が『占い師』を宣言する。『酒浸り:サイモン』は『人狼』だった」

 「ちょっと待てっ! てめえが占い師を騙るだと? はん。無謀なことをしてくれる」

 サイモンは憮然とした顔でそう言った。もう少しあせってくれると思ったが、そうもいかないらしい。

 「サイモンはこういっているが、この村には『霊能者』がいるだろう? 何はともあれこいつを処刑してくれないか? 明日『霊能者』に宣言してもらってサイモンが『人狼』であるといってくれたら、俺が本物の『占い師』だって信用してもらえるはずだ」

 「にゃはは。それじゃあ今日は『霊能者』は伏せておくんだあね」

 そう言ったのは『老婆:コーデリア』。『老婆』という冠詞だが酷く幼い顔をした小柄な女で、緑色のフードを頭にかぶっている。猫のような笑い方は特徴的だった。

 「下手に宣言したら『人狼』に殺されちまうぞよ。あと、『マコト』の他に本物の『占い師』がいるのなら、そいつも伏せでいいだぁね」

 「ふーはははっ! 怪盗:マスケラ、ここに参上っ! 『人狼』跋扈する村に現れた救いのダーク・ヒーローっ!」

 などと叫びながら猛烈にアピールしてきた輩に、みなの視線が集中する。そこには、確かに昔のアニメに登場する怪盗のような、蝶をあしらったおめでたいサングラスを着用した男が立っている。体はよく引き締まっており長身で、その表情は活力にみなぎっている。『盗賊:マスケラ』とあった。

 「さてさて。わたくしからそこのお嬢さんに一つご質問」

 「んにゃ? 何の御用だい? 怪盗さん」

 コーデリアは動じた様子もなく尋ねる。マスケラは「ふむ。質問というのはだな」と一拍おいて、サングラスに手を触れてみせ

 「何故本物の『占い師』が伏せておかなければならないっ! 本物なのであれば、堂々と宣言すればいいではないかっ! この我輩は考える、どうせこういうのは様子見してあとから出てきたほうが偽者なのだっ!」

 「おめでたいのは格好と口調と性格だけにしておくんだな」

 ハンニバルが辛らつに言った。

 「シットっ! 我輩のどこがおめでたいというのかね?」

 「すべてだ。……いいか。『人狼』判定を出した『マコト』と、もう一人『村人』判定を出した『占い師』が出てきたとしよう。『狩人』はどちらかの『占い師』を選んで守るしかなくなるな? それでもし無防備な方が『本物』だったら?」

 「それは困るな……」

 「そのとおりだ。そして、人狼は高い確率で本物の『占い師』を襲撃してくる。片方が『人狼』であればもちろんもう片方が本物と分かるし……『狂人』が混ざっている場合でも、片方の『占い師』から『人狼』判定が出ている以上、それを元に本物か偽者かの判断ができる。『人狼』判定が出た人物が本当に『人狼』なのかどうか、他でもない『人狼』は知っているのだからな」

 「『人狼』にいきなり本物の『占い師』を抜かれると困る。だから、『占い師』を宣言する人は、少なくとも今日の内はグレーの中に身を潜めておくのが無難ってことなんだね」

 ナナがそう言って解説を締めくくる。マスケラは納得したように高笑いを浮かべた。

 「ふーははははっ! また一つ賢くなってしまったぞっ!」

 「そうか。おめでたいことだ」

 ハンニバルが吐き捨てるように言った。

 「うーん、マコトさんの真偽はさておいて、今日は『人狼』判定の『サイモン』さんに投票すれ良い、というのは分かるのですが……」

 そう言ったのは、『ならず者:メアリー』。メラニン欠落症らしく、一目見て目立つ真っ白の長髪と、赤い目をした輝くような女だった。驚く程人目を引く端正な容姿を持っているが、その言動は少しばかり間延びしている。

 「わたくし。あまり賛成できませんわね」

 「ほほう。それは何故でしょう?」

 『負傷兵:オーヴェン』が言った。先ほど『初日』の見せ付けた金を『十億ほど』と正確に見抜いた男だ。声に張りがなく、振る舞いもおだやかでどことなく年配者のような雰囲気が漂っている。

 「今回の村は十人からスタートです。処刑と襲撃で二人ずつ減っていくのだとすると、四回処刑のチャンスがある。そして処刑すべき敵陣営は『人狼』二人と『狂人』一人で三人です。一つ余裕がある。『サイモン』が『村人』だとしても、問題なく処刑して良いと思いますがねぇ」

 オーヴェンのその冷静な意見に、俺は強く賛同したくなった。かまわないから『サイモン』を処刑してくれればいい。それですべてはっきりするはずだ。しかしメアリーは、

 「いえその……あまり言いたくはないのですが。わたくし、太った方ってどうしても苦手なんです。なんだかこう、暑苦しくて。たとえばそちらの、『ケヴィン』さんという方のような」

 メアリーに指差しで指摘され、とうの『商人:ケヴィン』は「んんん~。感情吊りはありえない」と口端を大きく吊り上げた笑みで応じた。

 「ありえない、ありえない。んんんん~。クロが出た二日日にグレー吊りはありえませんぞ。まして我を処刑など異教徒もいいところですな。んんんんん~。総合的にロジックすれば、今日は『サイモン』処刑以外ありえない」

 酷く特徴的な口調で、『んん~』と独自の笑い声を上げるその男は、確かに肥満体だった。ズボンの中に入れた薄っぺらいシャツを汗で湿らせたその様子は、確かに暑苦しいとはいえたが。

 「申し訳ございません。別に、太った方に罪はないのです。太りたければ太ってもかまわないとわたくしは考えていますわ。ですが、わたくしがそういった方の近くに行くのは耐え難いのです。しかし今のこの状況に限っては、一緒にゲームをする以上近くにいないといけないのも事実……。ですので今日はわたくしか、或いはそちらのケヴィンさんを処刑してもらいたいのですが、お願いできませんでしょうか?」

 「おい。誰かそこのバカ女を黙らせろ」

 ハンニバルが面倒そうな表情で言った。「まあまあ」とトロイがとりなす為に前に出てくる。

 「そういわないでさ。確かに、彼の容姿は多少暑苦しいけれど、最大限に距離をとればそこまで苦痛は感じないはずだよ。我慢してくれないかな」

 トロイの説得に、メアリーははてと首をかしげるばかり。納得していない感アリアリだ。……よくこいつが生き残ったものだ。

 「ところでケヴィンくん……君のその喋り方って、『ラジカル語法』だよね?」

 トロイが親しげに尋ねると、ケヴィンはどこか得意げに

 「んんんんん~。そのとおりですぞ。我は論者である故、人狼をプレイする時はこの世でもっとも高貴な喋り方である、『ラジカル語法』を使うことに決めているんですな」

 「な、なんだよ、その『ラジカル語法』って……」

 俺がたまりかねて発言すると、トロイは苦笑しながら

 「いや。ネット上でこの人狼ゲームをやれるところがあるんだけどさ。そこで有名な上手なプレイヤーが、こんな喋り方をしながらゲームをやるんだよね。それがおもしろくってさ。一時、それがすごくはやったんだ。まあこういうものだと思って気にしないほうがいいよ。でも、分かる人にはすごく楽しいんだ」

 そういうものか……。と、他所で人狼をしたことがあるというナナに視線を向ける。ナナはふるふると首を振って

 「ごめん……。わたしあんまり知らないや」

 と言った。まあ知っていて欲しくはないというのが正直なところだ。

 「今日は『サイモン』に投票する。それで間違いないな」

 ハンニバルがそう言って取りまとめた。やった、俺は思った。これで『人狼』が一人処刑できる、村の勝利が近づく……。

 そう思った時だった。

 「ちょっとまてや」

 そう言ったのは、他でもないサイモンだった。

 「おまえらさっきからオレの話も聞かずにさっさと処刑先を決めやがって……。脳みそついてんのか? 何人かネットかなんかで人狼やったことある奴もまぎれてるようだが、だったらなおさら情けないぜ」

 「そういや。あんたのカミングアウト聞いてなかっただぁね?」

 コーデリアが猫のように笑う。ハンニバルは眉を潜めて

 「ふん。カウンターカミングアウトする役職があるなら、うながされるまでもなくさっさとすれば良いだろう。一応訊いてやる。『酒浸り:サイモン』にカミングアウトはあるか?」

 「あるよっ! あるに決まってんだろうがっ!」

 サイモンは吼えた。

 「『酒浸り:サイモン』が『霊能者』を宣言するっ! そこの『旅人:マコト』は偽占い師だっ! 残念だったな、マコトっ!」

 「な……」

 その発言を聞いて、俺はつい息を呑んでしまう。

 ……こいつが『霊能者』? いやありえない。こいつは『人狼』……つまり、苦し紛れの悪あがき、ただの投票先逃れに過ぎない。

 ……だったら。

 「本物の『霊能者』は出てくれっ! こいつの偽を証明するんだっ!」

 俺は叫んだ。

 しかし……しばらく沈黙が続くだけで、誰も宣言しない。俺の内心に少しずつ焦りが募り始める。

 「……でない理由がない、だぁね。いたらさっさと宣言する以外ない、はずぞよ」

 コーデリアが考え込むようにいう。

 「締め切るしかなさそうだな。つまり、そこの『サイモン』が『霊能者』で『マコト』が偽者か、初日犠牲者の『ジョン』が『霊能者』だったかのどちらかだ」

 ハンニバルがそう言って締めくくる。俺は主張した。

 「『霊能者』は初日だ。俺が本物だっ!」

 「そうはいいますがねぇ。証明する方法がないのでは、いやはや。初日犠牲者が持っているポストは『人狼』二人を除いて九つ。『霊能者』はそのうちの一つですから、『霊能者』欠けが発生するのは九分の一のレアケース。どちらが有利なのかは目に見えています」

 オーヴェンがけだるげに言った。その発言に追従して、村のうちの何人かから疑いの目がこちらに向けられる。俺が本物だというのに。

 ……いきなり逆境からのスタートだ。俺はそれを認識した。

 「はん。ざまぁねぇな。どう見たっておまえが偽者であることが濃厚だ」

 サイモンが言った。勝ち誇った顔で

 「待って……。九分の一の確率って言っても、『霊能者』欠けが可能性としてありうる以上は『占い師』を切るなんてできないはずだよ。まだ『マコト』くんが本物である可能性は残ってる」

 ナナが言った。コーデリアがうなずいて

 「そもそもこのゲームにおいて、確率なんつーのはさほど当てにならないんじゃないのかい。どうせ半分近い確率で何らかの役職者が消えた状態からゲームが始まるんだぁね。『霊能者』が欠けていて、『マコト』が本物だというのも十分にありうる話ぞよ」

 「しかし……。違和感がありますねぇ。そうは思いませんか?」

 オーヴェンがいぶかしむようにいう。隣に立っていたマスケラに視線を向けるが、彼は

 「ふはははははっ! なんのことだかさっぱり分からんっ!」

 そう高笑いするだけだった。オーヴェンはため息をついて

 「いいですか? なんと言っても、ワタシは『霊能者』が欠けた状態でゲームが始まるのを、珍しいケースだと考えています。ですので、今の『マコト』くんの宣言のように、『霊能者』が欠けていなければ成立しない宣言は、あまり信用できないと考えている。

 ならば。翻って『霊能者』を宣言した『サイモン』くんが本物かといいますと……これもおかしいんですねぇ。『サイモン』くんが『霊能者』ならば、本物の『占い師』はどこへいったのでしょう? 当然、『マコト』くんではありませんよねぇ? この場合も欠けなのでしょうか?」

 「対抗『占い師』カミングアウトですぞっ!」

 太った体躯ににあわぬ鋭い声でそう言ったのはケヴィンだった。

 「おまえが敵かよっ!」

 「占い結果、『青年:ハンニバル』は『人間』ですぞっ! んんん~。対抗の『マコト』は狂人特攻以外ありえない。霊能誤爆とか異教徒もいいところですぞ。んんんんんん~」

 「ごめん。マコトくん。何を言っているのか、ちょっと良くわかんないよ」

 ナナが困ったような顔で俺を見詰める。「俺もだよ」と返事をしてやるのが精一杯だった。トロイが苦笑しながら。

 「翻訳するよ。『ケヴィン』くん視点、対抗の占い師であるマコトくんは『狂人』で、いきなり『人狼』判定を出して飛び込んできたように見えるってことだね。根拠はまあ、ネットで人狼をやってきた彼の経験則じゃないかと思う。そしてその特攻が誤って単独『霊能者』にヒットした。それが間抜けだねって彼はいいたいんだと思うよ?」

 「んんんん。翻訳乙ですぞ。トロイ殿も論者になる以外ありえない」

 ケヴィンが満足げに言った。オーヴェンが苦笑いを浮かべなら発言する。

 「さて。これで『霊能者』の『サイモン』くん視点で、無理のない状況が出揃いましたねぇ。

 『マコト』くんは敵陣営で『霊能者』の『サイモン』くんに誤って『クロ』打ち。本物の占い師は『ケヴィン』くんという訳です。一人しか出てこなかった『霊能者』を『偽』と言い張っているマコトくんを本物と置くよりも、より可能性の高い内訳です。ネット人狼的な言い方をすると、『占い師―霊能者』の内訳は『真狂-狼』よりは『真狂-真』というところですねぇ」

 「つまり。そちらの暑苦しい方が『占い師』で、品のない方が『霊能者』ということなのですね? 確かにそれが可能性としてはもっとも大きそうな気もします」

 メアリーが邪気のない顔で言う。

 「……暑苦しい」

 「品がないってなんだよ……」

 美人のメアリーに毒づかれ、ケヴィンとサイモンがうなだれた。

 「待ってくれ。その内訳は間違っているっ! 俺が本物の占い師なんだっ!」

 「その可能性は薄いと見ていいとワタシは考えます。もちろん絶対にないとは言えませんが、最終的にどちららかを選ばなければなりませんので。『ケヴィン』くんと『サイモン』くんのラインと、『マコト』くんと『初日犠牲者』のライン。より確率の大きい方を有利に見るだけですよ」

 俺のつたない反論に、オーヴェンは余裕を持って答えてくる。

 「まあ、別に無理に今日決め撃たなくてもいいんじゃないのかい? 今回は人数が十人もいる、狩人が何回護衛成功するかにもよるだぁが、あたしたちに『処刑』が使えるチャンスは最低でも四回。そして処刑したい敵陣営は『人狼』と『狂人』で合わせて三人。つまり少なくても一回余裕があるんだぁね。今日無理に『占い師』や『霊能者』を決め打って処刑しなくてもいいはずだぁね」

 コーデリアがのんびりと言った。ハンニバルがうなずいて

 「同感だな。決め打ちは明日でかまわないだろう。今日はフリー投票にすればいい。どうせ確実に味方だといえる人間もいないんだ、誰かが意見を取りまとめることなんてできない。『ケヴィン』から俺様に『シロ』が出ているが、だからといって盲信するわけにもいかん」

 「ねぇマコトくん。あなた視点……対抗の『ケヴィン』くんの中身はなんだと思う?」

 ナナにそう尋ねられ……俺は一瞬戸惑いつつも

 「偽者なんだから『人狼』か『狂人』だよ。それ以外にないんじゃないのか?」

 「うん。確かにあなた視点だとそうなんだけど、そのどちらかを見極めることはできないかなって。ちょっと参考にしたいからさ」

 そう言われ……俺は少し考え込んでみる。『サイモン』が『人狼』だとして、『ケヴィン』の中身はいったい……。

 「『狂人』だ。多分そうだと思う」

 俺は答えた。ナナはちょんとうなずいてみせる。

 「もしも『ケヴィン』が『人狼』ならば、もう既に二人いる『人狼』は両方とも『占い師』と『霊能者』で露出していることになる。そんな危険なことをするよりは、グレーに一人、『人狼』を紛れ込ませたいと人狼陣営は考えるんじゃないか? あくまで推察だけれど、ケヴィンはただの『狂人』だと俺は考える」

 「そうだね。わたしも、マコトくん視点ならそれが一番しっくり来ると思う」

 ナナはうなずいた。彼女はまだ俺が本物であることも考えてくれているらしい。

 「うんうん。マコトくんの今の鋭い考察には、僕も納得がいったよ」

 トロイがそう言って俺に視線を投げかける。

 「ところでそこからさらに発展させてさ。マコトくん視点での潜伏中の『人狼』位置も推測できると僕は思うんだよね。いやこれはまだ考察の段階なんだけれど」

 「聞かせてくれ」

 俺が言うと、トロイは「いいよ」と笑って

 「いいかな? まず、マコトくんが『人狼』のサイモンくんを見つけて『人狼』判定を伝え、サイモンくんがそれにカウンターカミングアウトで『霊能者』を名乗った。これを前提にするね。

 そしたらさ。人狼陣営からすれば、サイモンくん視点『占い師』欠けで進行するよりも、自分達にとって都合の良い結果を出してくれる『占い師』役が欲しかったと思うんだ。だから『狂人』が『占い師』に出てきた。それがケヴィンくんだ。

 ところでさ。一人だけ、『ケヴィン』くんに『占い師』に出ろとうながした人物がいたはずだよね? それって誰だったかな?」

 ……『ケヴィン』に『占い師』に出ろとうながした人物?

 「それって『オーヴェン』のことじゃないのかい?」

 そう言ったのはコーデリアだった。トロイくんは微笑んで

 「正解。そのとおりだ。もしも『マコト』くんが本物だとすれば、残る『人狼』はそこなんじゃないかなと僕は思うよ」

 「ふむ。意味が分かりませんねぇ。説明していただけませんか?」

 オーヴェンがいうと、トロイは「うん。いいよ」と笑顔のままで

 「僕が言っているのは、君のこの発言だ。

 『「サイモン」くんが「霊能者」ならば、本物の「占い師」はどこへいったのでしょう?』

 これってさ。うがった見方といわれるかもしれないけれど、潜伏中の『狂人』へ『占い師』に出ろと合図をしているようにも見えるんだよね」

 「うがちすぎですねぇ」

 サイモンは首を振る。

 「君はこの前にも、『霊能者が欠けているとするマコトくんの宣言は、あまり可能性を追わなくていい』みたいなことを言っていたね。

 『今の「マコト」くんの宣言のように、いずれかの役職が欠けていなければ成立しない宣言は、あまり信用できないと考えている』

 だったかな? 自慢だけど僕は記憶力はいいんだ。これって逆に言えば、もしも『ケヴィン』くんというサイモンくん視点での本物『占い師』がいなければ、サイモンくんとてマコトくん同様信じるに値しない『霊能者』だと言えることになるよね? だからこそ、サイモンくん視点の本物『占い師』が必要だった。それがあれば『サイモン』くんは『マコト』くんよりも信用を稼ぎやすくなるからね。だから、露骨に『ケヴィン』くんに宣言を促した君こそ、『マコト』くん視点での人狼濃厚位置……僕にはそう思えるんだけど」

 「そうやって推察してくれるのは結構です。ですが、その発言にそんな意図はありません。むしろあなたのいう逆の意図、ワタシは『マコト』くんを偽で見ているから、それを証明するために本物の『占い師』に出て来いとうながした、そういう風にも取れませんか?」

 「ひょっとしたらそういう意図だったのかもしれないね? それで、けっきょく、本当はどっちの意図なの?」

 「どっちでもありませんねぇ。なんとなく感じたことを感じたままに、自分の意見として発言したまでです。結果として本物の『占い師』に出てきてもらえたのですから、無駄な発言ではなかったと考えていますが」

 「なるほどね。了解。その話はやめにしよう」

 トロイはそう言って肩を僅かに動かす。ハンニバルがうなずいて

 「まあそうするしかないだろう。『占い師』や『霊能者』に出てきた輩の真偽判定ばかりに目がいって、グレーの考察がまだできていないが……。もう残り時間も迫っている」

 見れば、時計の残り時間は『0:49』をさしている。夢中で議論するあまり、もうこんな時間になっていたのか。

 「最後に誘導しておくぞ。マコト」

 ハンニバルがこちらに鋭い視線を向ける。「なんだ?」と返すと、彼は口元に笑みを浮かべて

 「今夜は俺様を占うがいい。意味は分かるな?」

 「は?」

 なんで占われたがるんだ? ……っていうかこいつ自分のこと俺様って。……意味? こいつを占う意味って……?

 「もしクロが出たらどうするつもりだぁね?」

 コーデリアが猫のように笑いながら、尋ねる。ハンニバルは不適に微笑み

 「そのときは、そのときだ」

 と、そう答えた。


 二日目:投票パート


2『旅人:マコト』→『酒浸り:サイモン』

0『小間使い:ナナ』→『ならず者:メアリー』

0『物乞い:トロイ』→『負傷兵:オーヴェン』

0『青年:ハンニバル』→『ならず者:メアリー』

3『ならず者:メアリー』→『商人:ケヴィン』

1『酒浸り:サイモン』→『負傷兵:オーヴェン』

0『老婆:コーデリア』→『負傷兵;オーヴェン』

1『商人:ケヴィン』→『旅人:マコト』

0『盗賊:マスケラ』→『ならず者:メアリー』

3『負傷兵:オーヴェン』→『旅人:マコト』


 同数票が発生しました。再度投票を行います。再投票が三回行われると、ゲームは引き分けになります。


1『旅人:マコト』→『酒浸り:サイモン』

0『小間使い:ナナ』→『ならず者:メアリー』

0『物乞い:トロイ』→『負傷兵:オーヴェン』

0『青年:ハンニバル』→『ならず者:メアリー』

5『ならず者:メアリー』→『商人:ケヴィン』

1『酒浸り:サイモン』→『ならず者:メアリー』

0『老婆:コーデリア』→『負傷兵:オーヴェン』

1『商人:ケヴィン』→『旅人:マコト』

0『盗賊:マスケラ』→『ならず者:メアリー』

2『負傷兵:オーヴェン』→『ならず者:メアリー』


 投票の結果、『ならず者:メアリー』さんは処刑されました。

 雑談:タイム


 人狼ゲームに興味を持ち、「これで小説を書こうっ!」と思い立った私は、「るる鯖」というオンライン人狼サーバーを尋ねました。

 まずは少人数の村からならしていこう、どうせ十七人村とか言われても理解がおっつかないし、という賢明な判断をしたわたくしは、『6B』と呼ばれるルールの村をまずはプレイすることにしました。

 とはいえこれはあくまで人狼に「なれる」ことが目的。人数が少ないだけに馴れるのも簡単で、まあこれで人狼の真髄はまだまだ味わえないだろう……とたかをくくっていました。ところがどっこい。6Bという配役はシンプルながら実に完成されたゲーム性で、非常に奥深くおもしろあったのです。それはもう、初日に占い師から『クロ』が出れば思考停止でそこを処刑して終了なことが多い『6Z(この小説の第一ゲームでやった奴です)』役職よりも、余程ゲームとしてよくできているっ! 小説的には、この6Bに登場する『妖狐』という役職がやや複雑で説明が面倒なため見送りましたが、興味のある方にはぜひ知ってもらいたい。

 という訳で。わたしの大好きな「6B」がどういうものか実際にお見せしたいと思います。


 よくわかる6B(六人村少人数向け)。

 配役は人狼1妖狐1占い師1村人3

 『妖狐』の特性。村人陣営にも人狼陣営にも属さない第三の陣営。つまり6Bは三つ巴。『妖狐』の勝利条件は『村人陣営ないし人狼陣営が勝利条件を満たす時、生存していること』。死亡する条件はちょっと複雑で『投票で処刑される』ほかに『占い師に占われる』ことでも死にます。しかし人間ではないので『人狼』から襲撃されても死体なしとなり、生き残ります。注意店として、『村人』とも『人狼』ともカウントしないので、もし『人狼一人村人一人妖狐一人』なんて風に残れば、『人狼の勝利条件が満たされた』扱いでゲーム終了、漁夫の利で妖狐の勝利となります。

 ほかは他のゲームと一緒。さて、では選りすぐりのキャラクターをここに召喚し、『6B』がどういうゲームなのかお見せしたいと思います。

 ではスタート




 プレイヤー一覧

 物乞い:トロイ

 盗賊:マスケラ

 ならず者:メアリー

 酒浸り:サイモン

 商人:ケヴィン

 楽天家:ジョン


 二日目の朝になりました。

 楽天家:ジョンが無残な姿で発見された。

 物乞い:トロイが無残な姿で発見された。 残り四人


ケヴィン「おはよう意外ありえないwwwwwwwwwwww」

メアリー「おはようございます。あら、死体が二つ出ていますわね。これはトロイさんが人狼でジョンさんを食べたところ、おなかを壊して死んだに違いありません」

サイモン「カアイソウwww カアイソウwww 初日呪殺とかカアイソウwwww」

ケヴィン「そういう煽りはどうかと思いますぞwwwwwwwwwwwwwwwww しかし『妖狐』のトロイが占われて死亡したというのに、『占い師』には誰も出ないんですな? 6Bは朝一CO意外ありえないwwwwwwwwwww」

サイモン「トロイーーーっ! 見てるーw なぁ、見てるかーwww」

メアリー「はあ。マスケラさんはお寝坊されたのでしょうか。なかなか来ませんね。あのアタマの悪そうな方が、きっと『占い師』なのでしょう」

マスケラ「ふーはははっ! ヒーローは遅れてやってくるっ! 『占い師』を宣言するぞ、結果メアリーは『クロ』人狼だっ! 吊ってくれっ!」

ケヴィン「これは……」

サイモン「うっわぁ」

メアリー「わあ『占い師(苦笑)』。わたくしに『クロ』だなんてそれはもう恐ろしい人狼に違いありません」

サイモン「マスケラ処刑待ったなしw」

マスケラ「………………はっ!」

ケヴィン「本物『占い師』はジョンなのでしょうな……。被初日犠牲者銃殺とか信仰心不足ですぞwww マスケラは破綻吊り以外ありえないwwwwwwwwwwww」


3盗賊:マスケラ→ならず者:メアリー

1ならず者:メアリー→盗賊:マスケラ

0酒浸り:サイモン→盗賊:マスケラ

0商人:ケヴィン→盗賊:マスケラ


 盗賊:マスケラさんは村民会議の結果処刑されました。


 村人の勝利ですっ! 




 こんな感じです。

 楽しいでしょう★ さあみんなもるる鯖にて6Bをプレイするのだっ! 「汝は人狼なりや」で検索すれば一番上の方に出るのが「るる鯖」ですっ! 登録簡単! 気軽に参加できるチャット形式っ! おすすめだぜっ!


 ……こうやってステマしておけばるる鯖の人から感想とかもらえんのかなー(白目)。

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