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一日目:昼
参加者の一覧です。
旅人:マコト
小間使い:ナナ
衛士:リザード
音楽家:セリーヌ
物乞い:トロイ
楽天家:ジョン
内訳:人狼1狂人1占い師1狩人1村人2
一日目の朝が来ました。
「ねぇ君……。ねぇ、君ってば」
そんな声と共に体を揺られて目を覚ましてみると、そこには線の細い青年の顔があった。青年は俺が起き上がるのを見るとそっと微笑んで、こちらに向けて手を伸ばした。
「よかった……ようやく起きてくれたね。色々と混乱することも多いと思うけれど、とにかく今は落ち着いて欲しい」
そこは学校の教室のような空間だった。木製の机に身をゆだね、椅子に座っている。俺はあたりを見回した。見たことのない教室だ……、それと、見たことのない人たち。
そこには俺を除いて四人の人がいた。俺を起こしてくれた背の高い青年。メガネをかけて髪をまとめた女性、大柄な男、ショートカットの少女。青年は俺の方を優しげな表情で見詰めてから言った。
「僕らがおかれた今の状況を説明しておこうか。といっても、僕も君以上のことは何も知らないんだけどね。目を覚ましたのは僕が君の一つ前、気がついたらこの部屋の中にいた」
「気が……ついたら?」
「そう。気がついたら。正直、前後の記憶も曖昧だ。おそらくは君と同じにね。何も分からず、目が覚めたらここにいた。いや、正直意味が分からないよ」
「そんな……」
「うろたえるのも無理はないね。ここがどこかもよく分かっていなくてさ。確かなのは、僕らがおそらくは誰かに連れてこられたということと、今のところこの部屋から開放してくれる様子がないってことだね」
冷静に、ともすれば飄々とした響きでそういう青年に、俺は目をむいた。
「どういうことだ、それは?」
「怖い顔しないでよ。僕だって君とおんなじ気持ちさ」
「確かに。この学校の教室みたいな部屋は、窓も開かなければ出入り口にも鍵がかかっているわ。誰かから連れてこられたことの証拠に、携帯電話だって没収されている」
メガネをかけた女性が冷静そうに言った。
「現実をよく見なさい。あまりにも荒唐無稽なことだけれど、私たちは確かに誰かに誘拐されて、監禁されているのよ」
「まさか……」
俺は頭に血が上ってくるのを感じる。
「窓ガラスってことは、外から様子が見えるんだろ? 合図で助けをよべないのか? 学校の教室なんて場所に監禁なんて、ふざけた連中だ」
「おまえには目がついてるのか?」
大柄な男が粗暴に言った。カチンときたが、すぐにその言葉の意味に気づいて愕然とする。
窓ガラスの向こうに、まともな景色というものはなかった。ただ、灰色の壁が視界をさえぎるように聳えたっていた。
「そうなんだよ。ここは学校の教室としかいいようがないけれど……でも確かに、大掛かりな牢獄でもあるんだよ」
青年が言う。
「まずは。自己紹介からはじめようか?」
のんびりとした声で言ったのは、俺と同じくらいの年代のショートカットの少女だった。さっきからずっと、椅子に腰掛けて両手を机の下に隠している。
「脱出は難しそうだし、まずはわたしたちで一致団結しよう。大丈夫、きっとでられるよ。わたしはね……」
穏やかな声で、少女は胸元の名札を左手で指差しながら
「『小間使い:ナナ』だってさ。ナナって呼んでね。せっかくかわいい名前になれたから」
その名乗りを聞いて、俺は自分の胸元を覗き込んだ。そこにはナナと名乗った少女と同じものが確かに貼り付けられていて、『旅人:マコト』と大きく書いてあった。
「ちょっと待てよ。こんな訳の分からない名札で名乗るのか? おれたちを浚った連中がつけたものだろう、こんなの」
大柄な男が憤慨したように言う。そこを青年がとりなすように。
「まあまあ。無理に身分を明かす必要もないんじゃないかな。ひょっとしたら、それがこの名札の意味なのかもしれないよ」
ニコニコとしながらやわらかい声で言う。
「名札の意味、だぁ?」
大柄な男がいらいらとした様子で言う。
「ここに浚われてきた者全員が、自分の名前を簡単に明かせるような人間だとは限らないってことね」
メガネの女性が首を振ってから言った。
「そういうことだね……。先に言っておくけれど、僕だってあまり自分の名前や身分は明かしたくない……んだよね。それについてはどう誤解を受けたってかまわない。言えるのは年齢と血液型くらいだ。あ、ちなみに十八歳のAB型だよ?」
十八歳……俺より一つ上。落ち着きの加減からもう少し年上にも見えたが、確かにその表情にはあどけなさが残っている。立ち振る舞いこそ落ち着いているが、顔つき自体は確かに俺と同じくらいの世代か、少し下でも違和感がないだろう。
青年は飄々と両手を晒して
「ここでの名前は『物乞い:トロイ』ってことになるらしい。みんな。よろしくね」
にこやかにそう名乗った。
「『旅人:マコト』だ。よろしく頼む」
俺は言った。トロイは興味深そうに俺の方を見て
「今起きたばかりだって言うのに冷静そうだね。君は頼りになりそうだな」
と微笑んで言った。
「おれは『衛士:リザード』だ。……本名は佐内秀隆」
この大柄な男は名前を名乗ることを無駄なこととは思わなかったらしい。
「最後ね。私は『音楽家:セリーヌ』。二十歳よ」
そう言ってめがねの頭を抑えた。
「自己紹介もすんだことだし……。それじゃ。少しお話しようか」
ナナがそう提案する。セリーヌが首を振った。
「そんなことをしてどうするの? 何か変わる訳?」
「変わらないと思うよ? けど、何かしたって、閉じ込められているのが確かなら、どうしようもないし。体力を温存する為と、親睦を深める為には、それがいいかなって」
「どうかな……」
俺は言った。ひょっとしたら俺が寝ている間に十分に脱出を試みての発言かもしれないが、それにしても、現状を認識する為の行動はきちんとするべきだと考える。無駄だと悟っても、このわけの分からない状況を打開する為に、脱出を試みるべきというのが俺の意見だ。
「僕はナナさんの意見に賛成かな」
トロイが言った。
「こんな大掛かりなことをしたからには、向こうから何かしてくるでしょ。あくせく脱出を試み無様をさらすよりは、落ち着いて話でもしていたいかな?」
「向こうってのはなんだよ?」
リザードがいぶかしむように
「あの監視カメラの向こうの人たちのことだよ。多分、というか九十九パーセント、僕たちを誘拐したのと同一人物なんじゃないかな?」
そう言ってトロイが指差した先には、天井から吊り下げられた監視カメラがあった。俺は息を飲む。
「それから……教室の前の白いボード。よく見たら液晶だよ? お約束だと……そこから誰かがこんにちはして、僕らの状況を説明してくれるんじゃないの?」
「……誰か?」
俺は尋ねる。トロイは口元に笑みを浮かべる。何かおもしろがるような、あざけるような……それはどことなく邪悪な笑みだった。
「そうだねぇ。この名札を『そういう意味』に捉えるのだとすると……ゲームマスター、いや、初日犠牲者かな?」
「何を言って……」
そう言った途端に、教室の前の白いボードが、ぱちりと音を立てて光を放ち始めた。
俺達の視線がそこに釘付けにされる。そこには紙袋をかぶった一人の男が表示され……同時に、どこからともかく音楽が響いた。
「グッドモーニング。村人達。これから初日の昼時間が始まるのであるっ。といってもこれはただの初日だから、役職情報一切なしのただの説明であるなっ!」
どうやら目の前の紙袋が喋っているらしい。紙袋にはマーカーで大きく『初日』と書かれていた。
「ようやく現れたね誘拐犯さん。何? 君たちにはこれから殺し合いをやってもらいます、とでもしゃれ込むのかな?」
そう言ってトロイは両手を晒す。『初日』は首をぶるぶる振るって。
「ナンセンスっ!」
と叫んだ。
「これから君たちにやってもらうのはルール無用の殺し合いなんかではなく……もっとエクセレントな推理と考察のシミュレーション・ゲームなのであるっ!」
「何を言って……」
俺はついそんなことを口に出す。セリーヌも、リザードも、うろたえた様子でそれを見詰めていた。トロイは『初日』の言葉をどこか楽しむようににやにやと見詰めていて、ナナはどこかしら呆けた様子でぼんやりと画面を眺めていた。
「端的に言おう。君たちはあるひとつの小さな村で暮らす村人だ。しかし事件が起こった……君たち村人達の中に一人、殺人者が紛れ込んだのだ」
『初日』のその言葉に、俺達ははじかれたようにお互いの顔を見詰めた。
「殺人者というのは……巷で噂になっている『人狼』というものだ。それらは人間の皮をかぶって村に紛れ込み、毎晩一人ずつ村人をかみ殺していく……」
初日はハイテンションな語り口で説明を続ける。
「君たちの目的は、その『人狼』を見つけ出して始末することだ。これから君たちは昼間の間に、『人狼』と思わしき人物に『投票』をして、最多得票者を『処刑』していく。そしてまた夜が来て一人が襲われ、次の昼へ……。これを繰り返し、『人狼』を駆逐できれば君たちの勝ち、君たち『村人』を食い尽くせば『人狼』の勝ちだ……」
「……『人狼ゲーム』」
ナナがつぶやくようにそう言って、『初日』に視線を向けた。
「その『人狼』っていうのは、あなたたち誘拐犯の一味なの?」
「ノットっ! 君たちの中から無作為に選択した」
「ちょっと待てっ!」
俺は叫んだ。
「『人狼』を殺す? 『人狼』は俺達の中の無作為に選択された誰か? 俺達に殺し合いをさせるつもりなのか?」
「殺し合いではない。崇高な心理ゲームなのだ」
「ふざけるなっ!」
俺はそう言って監視カメラのほうに目を向ける。
「おまえらの言うとおりにすると思ってんのか? ふざけたこと言ってないで早くここから出せっ!」
「言われなくとも、なのである」
そういうと、『初日』は手袋に包まれた指を鳴らす。とたん、教室の扉が音を立てて開いた。
「もうすぐ初日の『昼時間』も終わる。初日は投票も行わないので、説明のみなのであるっ!
理解したものから、外へでてよい」
俺達は騒然となった。誰もが、この教室から出てよいのか悪いのか、分からなくなっている。落ち着いてモニターを眺めているのはトロイとナナの二人だけだ。俺は迷った後で、外にはでずにモニターの方に視線を投げた。
「まずはゲームの世界観と流れから説明するぞ。
ここは山奥の孤立した小村だ。そういうことになっている。その中に村人に扮した『人狼』が紛れ込み、『夜時間』ごとに村人を一人ずつ襲って食べていく。故に、君たちは『人狼』が誰かを暴き出し、『投票』で処刑することが求められるわけだ。
ゲームは『一日目』の『夜時間』に『人狼』が村人を襲撃するところから始まる。そして翌日、『二日目』の『昼時間』に、誰が『人狼』なのかをさまざまな要素から推理して、もっとも疑わしいものに『投票』し『処刑』、ゲームから退場してもらう。
『処刑』が終わったらまた『夜時間』がやってくる。そこでまた『人狼』が襲撃を行いさらなる犠牲者が出る。そして一人減った状態で、再び次の……『三日目』の『昼時間』を迎えるのだ。これを繰り返し、それぞれの陣営が勝利を目指す。
さて。今回のゲームで登場する、『人狼』や『村人』のような、五つの役職を紹介しよう。
一つ。『人狼』これは先ほども説明したとおり、毎晩君たちの中の誰かを襲撃する。襲撃されたメンバーはそこから先の議論および投票には参加できない。
一つ。『狂人』これは村が『人狼』のものになることを願う変わりもの。『人狼』の勝利が『狂人』の勝利になるぞ。
一つ。『占い師』これは『夜時間』が来るたびに一人だけ人物を指名して、その人物が『人狼』か人間かを知ことができる。なお、分かるのは『人狼』かどうかなので、『狂人』を占っても人間と出るぞ。
一つ。『狩人』これは『夜時間』が来るたびに人物を一人だけ指名して護衛する。護衛された人物は『人狼』に襲撃されても死なないぞ。ただし、自分自身は護衛できないっ!
最後に『村人』これは何の能力も特性も持たない。ただのなんでもない村人だ。『人狼』が誰なのかを推理し、村を勝利に導くのだ」
そう言って、『初日』は説明を打ち切る。
「以上が今回のゲームの概要だ。おおよそ一回の説明では理解できなかったと思うが、なに、プレイしてもらいながら飲み込んでくれればいい。やってみれば簡単だ。質問はあるか?」
そう言われ、俺達はきょろきょろと顔を見合わせる。
「質問? あるよ。大事なことが抜けてる」
言ったのはトロイだった。彼は説明が不十分なことが純粋な不満なような、そんな無邪気な顔で
「今が『昼時間』ってことは、これから『夜時間』が来るんだろう? そして『人狼』は『夜』に村人を一人襲う……。そしてその次の『昼時間』で始めて議論が行われるわけだ。だったら、今晩襲われる村人っていうのも、僕らの中のだれかなのかい?」
「ノットッ!」
『初日』は叫んだ。
「何のためにワタシが『初日』の面をかぶっていると思っている? 君たちは全員『二日目昼』の議論に参加できるぞ? せっかく浚われてきてもらったのに、いきなりゲームから除外というのは、あまりにも酷い。『初日犠牲者』は、進行役であるワタシがやろう」
それを聞いて、セリーヌが安心したようなため息をついた。
「それからもう一つ。『人狼』に襲撃されたといっても、実際に死ぬ訳ではない。あくまでもゲームに参加できなくなる、それだけなのである」
「本当?」
セリーヌが顔を上げた。すがるような視線。冷静そうに見えて、参っているのかもしれない。
「保障しよう。君たちは……ゲームに勝利し続ける限り、生きて日常に戻れると」
それを聞いて、俺は『初日』に詰め寄った。
「なんだよ、勝利し続ける限りって……」
「言ったとおりである」
『初日』はそれだけしか答えない。
「質問はもういいか?」
それ以上質問はあがらない。ただ、互いの顔を見合わせるだけだった。
「では。各自個室に戻って『夜時間』をすごしてくれ。自分が何の役職を引いたのかも、きちんと確認しておくようになっ!」
そう言ってから……『初日』は画面からフェードアウトして言った。
「……どうやら本気でその『ゲーム』とやらをさせるつもりみたいね」
セリーヌがあきれたような声で
「投票して殺す? ありえないわ。そんなことしたら、殺人じゃない……」
震えたような声で言うセリーヌ。
「襲撃されてもすぐには殺さないって言ってたぞ? 投票もそうなんじゃないか?」
リザードが言った。
「……ゲームが終わって、もし『人狼』に負けたら殺されるとか……」
セリーヌが震えた声で言う。
「やめようよ。そんないやな話」
ナナが言う。
「とにかくさ。この教室から出て行けるようになったんだから、いったん外にでよう? おかしな状況だけど……殺されるなんて、滅多なことはないよ」
「そうだな」
俺は言った。
「……犯罪に巻き込まれたかどうかだって、まだよく分かっていないんだ。だが俺は、言われるとおりにはしないぞ?」
「頼もしいねぇ、マコトくんは」
トロイは言った。
「まあ。そうはいっても、意地を張ってここに残り続けてもしょうがないでしょ? 『夜時間』とやらで何が起こるのか、確認してからにしよう。外がどうなってるかも知りたいしね」
そう言って、最初に扉に向かったのはトロイだった。それに続いたのが、ナナだ。
ずっと席に座っていたので、ナナが立っていたのを見るのは初めてになる。俺はナナに続こうとして彼女の後ろに立って、気づいた。
ナナには、右手がなかった。ずっと席に座って机の下に手を入れていたので、気づかなかったらしい。
頭に電流が走ったような感覚があった。思わず彼女ににじり寄って、そのふらふらと揺れる服をすそを掴む。
「なに?」
すそをつかまれたことを意に介していない様子で、ナナはあくまでマイペースに、俺にそう言ってくる。
俺は震える声で言った。
「俺達……昔会ったことがなかったか?」
「ううん。なかったよ」
ナナの返事はそっけなかった。
「人違い……だと思うよ? いつあったの?」
「いや……」
「ごめんね。……本当に、心当たりがないんだ」
ナナはそう言って目を伏せた。
「なんだなんだ? こんなときにナンパか?」
リザードが下卑な声で言う。俺は首を振るってそれを黙殺する。
「……早く行って。後がつかえてるの」
そう言ったのは最後尾に立つセリーヌだった。ナナは俺のほうに視線を向けて微笑んでみせると、歩きながら言った。
「ごめんね。だけど、ひょっとしたら思い出せるかもしれない。後でお話……しようね」
「あ……ああ。分かった」
彼女の後ろを歩きながら、俺は記憶の糸を手繰り寄せ……そしてたどり着いていた。
幼い頃わずらっていた大病。そこで入院していた病院から、一人の女の子と抜け出したこと。公園で話をしたこと。それっきり、彼女とは会えなかったこと。
腕のない彼女……そのあどけない顔と、こうして再びであったナナの顔とが、俺の中で完全に合致した。
一日目:夜
教室の外がいったいどうなっているかというと、そこはきちんと学校の廊下のようになっていた。どうやらここは本当に学校の校舎であるらしい。そこで俺達を出迎えたのは、『初日』というマスクをかぶった背広の男達だった。
「お一人ずつ個室にご案内いたします。どなたからご案内いたしましょうか」
「じゃあおれから行く」
そう言って立候補したリザードは、『初日』達に囲まれて外に出て行った。
「おかしいね。マコトくん」
ナナは俺の方を見てそう言ってほほえんだ。
「なにがだ?」
「ほら。『初日』ってお面をかぶってる人たちが、こうずらりとならんじゃうと。なんだかおかしくないかな?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろう」
俺が言うと、ナナは首をかしげた。
……マイペースな奴だな。
俺が思っていると、セリーヌがこちらの方をじっと睨んでいた。どうやら次の奴が案内される番になったらしい。『どうするつもり?』と疑問を投げかけているわけだ。
「あ。ああ。俺が行くよ」
「気をつけてね、マコトくん」
トロイにそう言って見送られ、俺は一人個室へと向かっていった。
○
『個室』というのは廊下を進んだ先にある別の教室のことでしかなかった。そこで俺は『初日』から一枚の資料を受け取る。
「……あなたは『村人』です。特別な能力は持ちませんが、『人狼』を推理し村を勝利に導くのが仕事です」
……少なくとも『人狼』や『狂人』は引かなかったことに安心しつつ、資料の続きに目を通す。
あなたは『村人』です。特別な能力はもちませんが、『人狼』を推理し、村を勝利に導くのが仕事です。
今回の役職内訳は、『人狼』一人『狂人』一人『占い師』一人『狩人』一人『村人』二人の、合計六人です。
この内『人狼』『狂人』が人狼陣営。『人狼』の人数がそれ以外と同じ数以下になれば勝利となります。
『占い師』『狩人』『村人』は村人陣営です。『人狼』をすべて投票で処刑すれば勝利です。『狂人』の処刑は条件に含まれません。
『人狼』は夜時間に村人を一人選んで襲撃します。襲撃された村人はゲームから退場します。
『狂人』は人狼陣営に所属しますが、『村人』としてカウントします。
『占い師』は夜時間に村人を一人選んで占い、『人狼』かどうかを知ることができます。
『狩人』は夜時間に自分以外の村人を一人護衛します。護衛された村人は襲撃から免れます。
夜時間は十分間、昼時間は十五分間、投票は五分間です。
今はこの『夜時間』に該当することになる訳だ。これを読み終えて尚八分以上余っている。正面のモニターにはデジタルの時計が『8:23』と残り時間を表示していた。
……しかし。真面目にゲームを行う輩など、いるのだろうか。
このふざけたゲームをさせるのが誘拐犯の目的なのだとすれば、俺達がそのゲームを放棄してしまえば済むことだ。ふつうなら、何か自分達にゲームをさせざるを得ない状況を作り出してくるはずだが、今までにそう言ったアプローチは感じられない。
……それよりも。
気になるのは『小間使い:ナナ』と名乗ったあの女の子のことだった。病院で出会い、そしてあれから会うことのなかった思い出の中の女の子。
『……生きるんだよ。死を乗り越えて、一緒に生きるんだよ』
あの子はそう言っていた。確かに俺はこうして生きている。そしてあの子が『ナナ』であるのならば、同様にあの子も生きている。
……こんな状況でもなければ、感慨深い気持ちで話ができただろう。俺はあの子に感謝をしていた。あの絶望的な病魔に打ち勝てたのは、あの子が俺を励ましてくれたからだと思っている。それゆえに、こんなわけの分からない状況で再会したことが、少し残念ではあった。




