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 四日目:昼パート


 旅人:マコト

 小間使い:ナナ

 青年:ハンニバル

×ならず者:メアリー

 老婆:コーデリア

×盗賊:マスケラ

 芸人:エイプリル

 羊飼い:ドナ

 掃除婦:エリザベス

×シスター:アイリーン

 学生:チサト

 技術者:アンナ

 殺人鬼:ナイヤ

×楽天家:ジョン


 小間使い:ナナは無残な姿で発見された。


 ……ナナが死んだ、か。

 頼もしい奴がいなくなった。信用できる奴が。まだしも俺が噛まれた方が村にとってはマシだったかもしれない。相方すらはじめからいない俺は、何の能力も持たないただの確定シロでしかない。『霊能者』のナナが生きていた方が、村には良かっただろう。

 だが『人狼』とてそれをわかっているはず。だからこそナナは襲われた。そして霊能者が消えた以上は……偽者の『占い師』は一気に動きやすくなったはずだ。

 「あ。あのあのあの。占い結果を宣言します」

 ドナがあせったような、それでいてどこか嬉しそうな様子で言った。

 「占い先は……『エイプリル』さん。結果は『クロ』、『人狼』でした」

 ……ここでクロか。

 「わ、私も占い結果言うよ。占い先は『ハンニバル』くん、『シロ』だったよ」

 おずおずとチサトが言う。続いて

 「占い結果を言うわよぉ聞いてねぇ。『コーデリア』さんは『シロ』人間よぉ」

 最後にエリザベスが宣言する。

 「『霊能者』が消えた途端に『クロ』かよ。きなくせぇな。けどまエイプリル『クロ』ってのは印象いーよな」

 そう言って無表情にナイヤはエイプリルの方を見る。エイプリルは、どこか飄々とした表情で

 「へー。ボクに『クロ』なんかだしちゃうの? ……えっとこれってどうなの? ボク視点だと……あっそうかそうか。そーなってるんだねー。へー」

 くすくす、エイプリルは笑いながら

 「ぶっちゃけさー。チサトのガキんちょが本物だとは微塵も思えなかったしー、ドナが本物ってのも? まーあありそうだとは思ってたけど……。うんうん、なるほどなるほどー。おもしろいなぁ」

 「どうしたぞよ? エイプリル、その反応は……」

 コーデリアがいぶかしげに

 「どうもただクロを出された村人の感じには見えないだぁね」

 その印象には納得だ。こいつの投げやりさというか、『クロ』を出されたにしてはあまりにも焦った様子がないのは……どういうことだ?

 この違和感、少し前にも別の人物に感じた気がする。そう、二日目にいきなり『クロ』をもらった『人狼』の……アイリーンのような。

 「……エイプリルの宣言を聞くのは後にしておく。『占い師』はそれぞれ占い理由を述べてくれ」

 俺が言うと。占い結果を宣言したとおりの順番で占い師たちが前に出てくる。まずは『ドナ』からだ。

 「えっと……。『エイプリル』さんを占ったのは、単純に臭かったというか……推理をする村人陣営に見えなかったことが理由です。『妖狐』ならば占いで溶けて欲しいですし、『人狼』なら『クロ』を見せて処刑して欲しかったので。

 エイプリルさんの発言には、な、なんというんでしょう、他の人とは視点が違うというか、そんな向きがありました。特に、『チサト』さんを本物『占い師』としてみる中で、エイプリルだけが偽者で見る発言をしていたのは、ちょっと浮いていますよね。チサトさんが偽なのは真実なんですが……そうやって独自な意見を言う割には多弁という訳でもなく、説得して自分の意見を通そうという意思も感じられません。

 敵陣営を探す姿勢も薄く、意見を言っているように見せているけれど、それを通そうという意思も感じないです。こうした動きがチサトさん『偽』を知っていてラインを切っているように見えての占い、結果は『クロ』、当たりだったようです」

 ……印象は悪くない。エイプリルの言動に感じていた漠然とした違和感が、彼女のその占い理由で浮き彫りになった気がする。

 「私が占ったのは『ハンニバル』くんだよぉ。こういうところが敵陣営だったら、『クロ』が出ない限りなかなか処刑できないだろうと思って、色を確かめておいたんだ。

 多弁で主張が多く、村の流れを作っている位置だね。敵だったら厄介っていうのは本当にそうだと思う。わたしに護衛先誘導をかけてくれるのはありがたいけれど、占われるのを嫌ってのすり寄りにも少し見えたんだね。

 結果は『シロ』。頼りになる人みたいだねえ。『背徳者』か『狂人』のどちらかは潜伏していると見えるから、迂闊に安心はできないんだけど……」

 チサトが言った。ここの占いは、彼女が二日目に示した『気になるところを潰す』というスタンスを体言しているようなもので。こちらも印象は悪くないと言える。ハンニバルは確かに色が気になった位置だったから。

 「ワタシは今日は『妖狐』を狙って占ってみたわぁん。投票で予告しなかったのはそこが『チサト』ちゃんの『シロ』だったから。朝ここが死んでいて、死体が二つならとうぜんとうぜん、それでチサトちゃんが偽だと確定するわよねぇ。だから、噛み合わされるリスクを回避する為に予告は避けたって訳ぇ。

 それでここを占い先に選んだ理由なんだけど……あのね、ワタシ『チサト』ちゃんを『人狼』以外で見ているの。だって『チサト』ちゃんは『人狼』である『アイリーン』ちゃんに『クロ』を出しているんだからねぇ。仲間に『クロ』を出すなんてやっぱりおかしいわ。それで『チサト』ちゃんを非『人狼』だと過程すれば、もう一人の対抗である『ドナ』ちゃんは『人狼』濃厚よね。『人狼』の誰かはゲームメイクの為に騙りに出ているはずだから。

 『背徳者』が『妖狐』を囲っている可能性があるとすれば、『ドナ』ちゃんより『チサト』ちゃんが濃いといえるわぁ。『チサト』ちゃんの囲い候補は『コーデリア』ちゃんだから、『妖狐』狙いで占ってみたのぉ。でもはずれだったみたいねぇ」

 エリザベスが言った。……納得できなくはないが、いささか考え方が恣意的、という印象がある。

 「……過程に過程を塗り固めた感じがするが。まあ納得できなくもない。占い理由としておかしいというほどでもないだろう」

 ハンニバルが尊大にそう言った。

 「あれま? あんたはチサトちゃんを本物で見ているんやなかったん?」

 アンナがきさくな感じでハンニバルに突っ込む。

 「すべての『占い師』の可能性を見たい。当然のことだろう」

 ハンニバルは静かにそう答えた。

 「へーん。これは興味深い占い結果だな。これ『チサト』偽の『ドナ』本物もあるんじゃねーの?」

 ナイヤがどうでもよさそうに言った。俺は尋ねる。

 「どうしてだ? おまえはずっと『チサト』を本物だと思っていたはずだろ、何か意見を変えるようなことでもあったのか?」

 「単純だ。ドナの『エイプリル』『クロ』が印象良くて、チサトの『ハンニバル』『シロ』が印象悪い。それだけだ」

 ナイヤは端的に言う。

 「『エイプリル』が敵陣営に見えるのはあたしも一緒だぁが……ここは敵だとしても『人狼』というよりは、『背徳者』か『狂人』のどちらかって感じに見えるだぁね。なんというか言動がぞんざいで、生存意欲を感じない場所に見えるぞよ。あえて臭くして、議論にノイズまいてるようにすら見えるだぁね」

 コーデリアが言った。「きゃははーん」エイプリルは笑って

 「あんたの意見なんてどーでもいーよ? とにかく一つ言っておくねー、ボクに『クロ』を出すドナは偽『占い師』ってことー。いーからここ処刑しちゃいなよ、もうそろそろ『占い師』切り始めないといけない時期だしさー」

 「……そうはいうが」

 俺は息を飲み込む。確かにもう四日目……順当にいけば今回のゲームは七日目で終わるから、今日を含めても後四回しか処刑に使えない計算になる。場合によっては『背徳者』や『狂人』は処刑せずに終わらせるにしても……そろそろ『占い師』の決め打ちは必要になってくるはずだ。

 「いっとくけどさー。ここでボクを処刑しちゃうのって、そこの根暗を『本物』で確定させるような処刑先だからねー? そのあたりわかってるのー?」

 エイプリルがうっとうしそうに言った。アンナが老獪な声で

 「いや、あんた処刑がそのまま『ドナ』を本物で決め打ちっていうのは、ちょっとおかしい気がするわ。あんたは別に他のどの『占い師』からも占われていない。立場としてはただのグレーや。『ドナ』の占い結果に関係なくあんた自身が臭うのであれば、処刑先として全然視野に入るで」

 「このゲーム最初っから処刑余裕ゼロじゃない。なのに昨日はグレーのメアリー吊っちゃってるんだよー。メアリーが敵陣営に見えた? 見えないよね? それなのに今日もただのグレーでしかないボクを処刑するの? おかしいでしょ? ありえないでしょ?」

 エイプリルは首を傾げて口元を緩めながら口にする。

 「ここで無駄に処刑回数稼ごうとするあんたのほうが敵陣営なんじゃないー? っていうかさ、ドナってあんたに『シロ』出してるんだよね? それってやっぱり囲いってことなんじゃないのー? もうここ吊っちゃわない? 絶対的陣営吊れるからさー。そう思わなーい?」

 エイプリルがこばかにしたように口にしたその発言に、ハンニバルは冷静に反論する。

 「その主張はおかしい、投げやりすぎる。処刑回数のことを危惧するのであれば、君はまず君視点で確実に敵陣営だと確定している『ドナ』の処刑を推さなければならないはずだ。それなのに『囲いがありうる』などという推論で『アンナ』を処刑先に推すというのは、村人陣営の動きには見えないな」

 「だから言ったろ。ここはくっせーんだって。こいつは敵陣営で見るのが妥当な位置なんだよ」

 ナイヤがけだるげにそう言った。そこでチサトが

 「うーん。エイプリルさんが味方に見えないのは私もそうなんだけど、でもやっぱり私は今日は『占い師』を処刑して欲しいなぁ。

 私視点、他の『占い師』宣言者は絶対に敵陣営だからねぇ。エイプリルさんの言動は、役職云々よりも性格によるものもあるかもしれないし……。占い師を決め打つなら今日が一番妥当なんじゃないかなあ?」

 チサトが言った。「きゃはははーん」エイプリルが腹を抱えて笑う。

 「今日『占い師』切るのはボクも納得だけどさー。でもそれであんたが生き残れると思ってるのー?」

 「……え、えっと。私は、その、二日目から本物だとアピールしてきたつもりだよお……」

 チサトが気おされた様子でいう。エイプリルは嘲るように

 「まあそうだよねー。うんぶっちゃけボクにもあんたが本物にしか見えなかったやー。っていうかさ。あんたってかわいい顔してるけど……腹の中、相当、真っ黒だよね? ボクのぶりっ子しそこないはぶっちゃけキャラなんだけどさー? あんたのそれは本物っていうか……くすくす、あんたが人狼ゲーム強いのも納得って感じー」

 チサトは顔を青くしてすくみきっている。エイプリルは、あくまでもさげすむような視線を浴びせるだけだ。

 「……ぅう。その、ごめんよぉ」

 チサトは体を縮めて、身を護るためだろう、訳もわからず謝っている。エイプリルはため息をついて

 「うん自覚なし? 知ってる。だから余計キモい。死ねば?」

 「おいやめろエイプリル。そんな追求でその占い師候補から何の情報が得られる? それ以上言ってみろ、貴様の信用は地の底だ」

 ハンニバルが厳しい声で言った。エイプリルは「きゃははーん」と笑って

 「ごめんねハンニバルくーん。ボクってばちょっとはしゃいじゃった。てへ」

 そう言ってエイプリルは自分の頭をこぶしで叩いた。

 「そいつの所為で無駄は時間を食わされたな……。おい『共有』、今日はどうするんだ? 妥当な進行なら『占い師』の決め打ちだが……」

 ハンニバルは険しい表情で言った。……いわんとしていることはわかる。

 ……エイプリルが臭う。ものすごく。

 なんだろう。あたりにヘイトを撒き散らしているというか、意図的に悪目立ちしているようにすら見える。……考えすぎか?

 単純に『クロ』を当てられた敵陣営が議論にノイズを撒いていると見るのが正しい……、いやそうとしか思えないはずだ。確かにエイプリルの性格には若干の癖がある。だがしかしここまで悪目立ちするような奴ではなかった。これは、明らかに意図的にやっているとしか思えない。

 「……エイプリルさんを処刑してくださいよぅ」

 ドナが言った。

 「そこは『人狼』です。……処刑余裕なんて最初からないんですってば。あたしで『占い師』を決め打ちはまだしてもらえないと思うので、今日はこのとおり敵陣営の動きをしているエイプリルさんを処刑して、あたしに猶予をくれませんか。もう一日あればきっと『妖狐』を占って見せますから……」

 ……エイプリルを処刑することで、『占い師』の決め打ちを一日引き伸ばしにできる。それは確かに大きなメリットだろう。正直誰が本物とも言い切れない……むしろ今回の占いでドナの信用はあがったと言えるのではないか? 

 「そいつが村人っていうことだけはない気がするだぁね。『占い師』決め打ちは保留っていうことで一つ、エイプリル処刑というのも一つの選択肢に入るんじゃないのかい。一番してはいけないのは、誰が本物か確信ももてないうちから『占い師』を処刑して、本物を吊ってしまうことだぁね」

 コーデリアが言った。

 「正直……あたしにも誰が本物かは分かっていないぞよ」

 「それは悠長なんとちゃうんかなぁ」

 アンナがそう言って水中ゴーグルに手をやる。

 「エイプリルちゃんを処刑することは、何も百パーセント処刑余裕を保つことにならへん。言動は臭いけど、今ある情報だけで見るならそこは『ドナ』から『クロ』が出ているだけの位置や。迂闊には吊れへんやろ。『ドナ』を本物濃厚で見るっちゅうんならともかくな」

 「その『言動の臭さ』が看過しきれないレベルの臭さなんだよ。『ドナ』の真偽にかかわらず。『エイプリル』に『クロ』出すなら、『ドナ』は少なくとも『狂人』はなさそうな位置ってことになりそうだが」

 ナイヤが無表情に言った。その考察に、俺は何か感じるものがあって追及する。

 「待て。ナイヤ、今の話の根拠を聞かせてくれ。どういう考察でドナの中身を『狂人』以外で見ているんだ?」

 「『エイプリル』が臭すぎるんだよ。『狂人』が『クロ』を出すには危険な位置だろうよ。仲間の『人狼』に『クロ』を当てちまうリスクを考えりゃ、ここまで怪しい奴に『クロ』なんかそうそう出せやしねぇ。まあドナは『本物』か、偽だとすると他の連中との内訳を考えるなら、『人狼』『背徳者』あたりがしっくり来る。

 ついでに他の『占い師』候補の話もしておくか? チサトも『本物』『人狼』のどちらかだろう。『霊能者』とラインも繋がっているし、占い先もピカイチ納得なんだが、『ハンニバル』『シロ』っていうのはちょっときな臭いな。ハンニバルは序盤からチサトとのラインを臭わせる発言が多かった。チサト『人狼』で『アイリーン』を身内切りした挙句、信用を勝ち得た後『霊能者』を襲撃。今度は仲間の『ハンニバル』を囲った。……そう考えればしっくり来なくもない。

 最後に『エリザベス』だが、これは正直よくわからねぇ。『マコト』『ナナ』に『シロ』出しながらのカミングアウト……そして今日対抗の『シロ』である『コーデリア』にさらに自分の『シロ』を乗っけてきた。仲間や主人を囲う『人狼』『背徳者』の動きには見えない。まあ偽なら『狂人』あたりだろう」

 ……すごいな。考察の量が半端じゃない。今回の十四人村は嘘をつく可能性のある人物が六人もいる、今まででもっとも複雑な難易度の高い配役だ。それで占い結果と占い先の態度だけでここまでの考察を落とせるというのは、本当にたいしたものだと思う。やる気のなさそうな態度ではあるが、この男の思考力は決して侮れないものがある。

 「たいした考察だが、それで結局君は誰を本物で見ているんだ? 最終的に重要なのは、誰を信じ、誰を切るのかということだ。君の考察では肝心のそこにたどり着いていないように見えるのだが」

 ハンニバルが言った。ナイヤはどうでもよさそうに。

 「もっともな意見だねぇ。……ま、誰を切るかって言われたらエリザベスなんじゃねぇの? 俺は最初っからそこが一番本物でなさそうに見えてる。『占い師』三人がオーソドックスな『真狂狼』だとして、エリザベスが『狂人』で残りの二人が『本物』『人狼』というのがしっくり来るパターンだな。今日エリザベスを処刑した上で、残り二人をキープして明日の朝『妖狐』と『背徳者』がそろって死体になるのに期待するのがいいんじゃねーかな?」

 「『狂人』で見て『エリザベス』を切るというのが君の意見か? 確かにエリザベスが非『人狼』というのには納得だ。俺様もそう考えていた。だが『本物』ないし『狂人』と見るなら尚更処刑しにくくなったとも言える。『狂人』は最悪放置していても勝利が可能な役職だからな。……『占い師』を『チサト』で決め打って、今日は『ドナ』を処刑するという手もある」

 「おまえは『チサト』妄信しすぎなんじゃねぇの? おまけにおまえは『チサト』の囲い候補だし、ここのラインは実際臭いんだよな」

 「もう『占い師』決め打ちは考慮に入れなければならない段階だ。むしろここまできて『本物』の目星がつかない方が問題だろう」

 「限界まで本物決め打ちを保留できる形をとるのが最善だろうよ。今日、敵陣営を処刑できれば、決め打ちは一日伸びるんだ。利巧な羊ならそこにしがみ付くのが妥当だろうさ」

 激しい議論を繰り広げるハンニバルとナイヤ。エイプリルがくすくすと笑んだ。

 「もりあがってるねー。くすくす。まーボクにはどうでもいいんだけど」

 「……おいエイプリル。今のはどういう意味だ?」

 俺が追求すると、エイプリルは嘲るような表情で

 「さーね? ボクってば難しい話よくわかんなーい。んでどうすんのさトンマ『共有者』。そこの根暗のこと信用してボクを処刑する訳? もしそうならボクには宣言する役職はないよ」

 「促されず自分から宣言なしって言うてまうんかいな。吊られたがってるように見えるで。村人としてはありえん動きや。こりゃ印象悪いなぁ」

 アンナはけだるげに言った。

 「そうだねー。ボクには『猫又』も『狩人』もありません。そんなので出て処刑先逃れをしようなんて思わないよー? ま。これもボクの仕事の内だしねー。はわわーん」

 ……なんなんだよこいつは。考えていることが分からない。……不気味すぎる。

 「……今日はまだ『占い師』は決め打てない。『エイプリル』を処刑してくれ。こいつは中身がわからない。あまりにも不気味だ」

 手をこまねくような気分だ。……散々引っ掻き回されたという気分しかしない。だがしかし確実なのは、こいつを終盤に残すわけにはいかないという紛れもない事実だ。

 「あらあら了解よ。ワタシ以外の『占い師』の『クロ』を処刑するなんて正直言って気が進まないけれど、まあ聞き分けのない子は退場してもらった方がいいわねぇ」

 エリザベスがどこか優しげな声で言った。

 「ふん。手をこまねくような真似をする。まあいいだろう、そこが『村人』だとは思わない。……だが明日には『占い師』を決め打ってもらう」

 ハンニバルが言う。……こいつはどこか、あせっているような感じがするな。一刻も早く『チサト』を本物で決め打ちたい、とでもいいたげな。

 「……ありがとうございます。これで『人狼』が一人処刑できました」

 ドナが安心したようにいう。

 「今日はどうしようかしらねぇ。『占い師』から決め打つのなら信用をとらないといけないわぁ。でも『妖狐』ちゃんはいったいどこにいるのかしらねぇ。案外と……」

 エリザベスはそう言ってぶつぶつと声を小さくする。それからチサト、ドナのほうに視線をやると、にやりと気持ちの悪い笑みをうかべた。

 「とにかく今日は『エイプリル』処刑だ。予告投票がしたい奴はしてもいい」

 俺が宣言する。エイプリルはにこりと微笑んで

 「はわわーん。ボクが吊られちゃうんだねー。了解。後は頼んだよ。ねぇ」

 そう言って飛びっきりの笑顔をチサトに向ける。チサトは怯えたように表情をゆがめた。

 「チサトちゃん。後のことは、おねがいねー。きゃはははは」


 四日目:投票パート


 0『旅人:マコト』→『芸人:エイプリル』

 0『青年:ハンニバル』→『芸人:エイプリル』

 0『老婆:コーデリア』→『芸人:エイプリル』

 8『芸人:エイプリル』→『学生:チサト』

 0『羊飼い:ドナ』→『芸人:エイプリル』

 0『掃除婦:エリザベス』→『芸人:エイプリル』

 1『学生:チサト』→『芸人:エイプリル』

 0『技術者:アンナ』→『芸人:エイプリル』

 0『殺人鬼:ナイヤ』→『芸人:エイプリル』


 芸人:エイプリルさんは村民会議の結果処刑されました。

 信じてくれと叫ぶ慟哭。

 忘れ去られる鎮魂歌。

 それがノイズ。

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