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 第一章

 人狼候補がただの五人。占いを真狂おきできれば候補はせいぜい二人。


 第二章。

 主人公が占い師。サイモンとケヴィンでのっけから二人敵陣営を公開。


 第三章

 そもそも主人公が人狼陣営。


 第四章←いまココ

 いよいよもって死ぬがよい。

 一日目:夜


 あなたは『共有者』です。信頼できる仲間を一人もち、夜ごとに相談しあうことができます。互いの潔白を証明しあい、村を導くのです。頼るべきあなたの相棒は『楽天家:ジョン』です。

 今回の役職内訳は、『人狼』三人『狂人』一人『占い師』一人『霊能者』一人『狩人』一人『共有者』二人『猫又』一人『村人』二人『妖狐』一人、『背徳者』一人の、合計十四人です。

 この内『人狼』『狂人』が人狼陣営。『人狼』の人数がそれ以外と同じ数以下になれば勝利となります。

 『占い師』『霊能者』『狩人』『共有者』『猫又』『村人』は村人陣営です。『人狼』をすべて投票で処刑すれば勝利です。『狂人』の処刑は条件に含まれません。

 『妖狐』は妖狐陣営に所属します。人狼か村人、どちらかの陣営が勝利条件を満たした際、生存していることが勝利条件です。

 『人狼』は夜時間に村人を一人選んで襲撃します。襲撃された村人はゲームから退場します。

 『狂人』は人狼陣営に所属しますが、『村人』としてカウントします。

 『占い師』は夜時間に村人を一人選んで占い、『人狼』かどうかを知ることができます。

 『霊能者』は夜時間に、処刑した村人が『人狼』であったかを知ることができます。

 『狩人』は夜時間に自分以外の村人を一人護衛します。護衛された村人は襲撃から免れます。

 『共有者』は自分以外の『共有者』が誰なのかを把握しています。

 『猫又』は自分を襲撃した『人狼』を道連れにします。処刑された場合、すべてのプレイヤーから無作為に一人を道連れにします。

 『妖狐』は『人狼』に襲撃されても死にませんが、『占い師』に占われると死亡します。

 『背徳者』は妖狐陣営に所属しますが、『村人』としてカウントします。『妖狐』が誰かを知っています。

 夜時間は十五分間、昼時間は三十分間、投票は五分間です。


 ……『共有者』

 前回ハンニバルが就いていた役職だ。村人陣営であることがほぼ確定する為に、村をリードする立場に着くことができる。

 しかし今回の俺の相方は……『楽天家:ジョン』。初日犠牲者、つまりいないということだ。ただ『共有者』というラベルがついているだけで、村人と同じ情報量しか得られないことになる。

 「……いや。違うな。村人よりも少ない」

 俺はみなに自分が『共有者』に選ばれたことを伝えるだろう。相方が初日ぎであることも。伝えない理由はない。さらに、村人は自分を村人と知っている分、俺より豊富な情報を持つことになる。

 もっとも少ない情報しか持たない俺だからこそ、フラットな判定役に徹するにふさわしいということだ。

 「それをまっとうするには、まずは信用を得ること……だな」

 選ばれたからには、『共有者』を宣言して確定村陣営となることが、まずは最初の仕事となってくる。しかし俺を『共有者』であると保障してくれる味方もどこにもいない。ならば俺のすることは、俺意外に『共有者』を名乗るものがいないことを確定させ、俺が『共有者』である証明とすることだ。仮に『人狼』二人にペアで『共有者』で出られれば、俺の信頼は絶望的……ゆえに俺がすべきことは。

 「まずは、『相方は生存している』と情報を偽って宣言する。その後、俺以外に『共有者』で出るものがないことを確認した後に、『相方死亡』を宣言しなおす」

 これが最善の形のはず。そしてそれは早ければ早い方がいいはずだ。タイミングを見て、的確に宣言することが求められる。

 俺には大役かもしれないが、自分が村人陣営であることを証明しやすい分、動きやすい。人狼ゲームの基本も分かってきた。大丈夫、やれるはずだ。俺は自分に言い聞かせた。


 二日目:昼パート


 旅人:マコト

 小間使い:ナナ

 青年:ハンニバル

 ならず者:メアリー

 老婆:コーデリア

 盗賊:マスケラ

 芸人:エイプリル

 羊飼い:ドナ

 掃除婦:エリザベス

 シスター:アイリーン

 学生:チサト

 技術者:アンナ

 殺人鬼:ナイヤ

 楽天家:ジョン


 『楽天家:ジョンが無残な姿で発見された』


 「……ここは?」

 『初日』に連れられて、俺はその部屋を思わず見回した。高い天井、におい立つ砂と鉄の香り。部屋全体は薄暗く無機質なカラーに塗り固められている。

 何より目立つのは、部屋の中央に置かれた階段だった。無骨で大きく見えるが、幅は狭く段差も小さい。視線を階段の上部に移していくと、階段の最上段の天井から、太く丈夫そうな首吊り縄が、生々しい存在感を持って垂れていた。

 「処刑室、だぁねか」

 コーデリアが言った。

 「悪趣味ここに極まれり……今度こそ負けは許されない、負けるようなことがあればこの首吊り縄で文字通り『吊り』にかけられるというところだぁね」

 「……や、やめてくださいよぅ。こんなの」

 ドナが震えた声で言った。

 「わあっ! すごいですわっ! 格好いいですわっ!」

 メアリーが頬に手を当てて陶酔したように言った。

 「わたくしこういったオプジェクトには目がないんですの……。ああ、数えてみてください、十三階段っ! 本当に十三段ありますわね。本当によくできていますわ」

 「黙れ」

 ハンニバルが辛らつに言った。

 「あ。あのう。いいかなぁ」

 これまででもっとも悪趣味かつ下劣なゲーム会場に目を奪われていたメンバーの中から、おずおずと小さな手が挙がる。皆の視線が集まったその先にいたのは……チサトだった。

 「えっと。『クロ』引きだから朝一番に宣言するよ。『学生:チサト』、『占い師』です。よろしくねえ。占い先は『シスター:アイリーン』結果は『クロ』だよお」

 ここだ……。俺は前に出て、指示を飛ばす。

 「『旅人:マコト』が『共有者』を宣言する。相方生存中。他に『占い師』を宣言するものは伏せておけ。『霊能者』もだ。アイリーンは宣言する役職はあるか?」

 ここでしっかりと、村をリードする姿勢を見せておかなければならない。リーダーシップをとるからには、堂々と胸を張っておくことが大切だ。

 「……『アイリーン』に宣言する役職はないの。ただの『村人』。『チサト』は敵陣営の嘘吐き。初手から『クロ』判定を出して特攻しに来た『狂人』あたりなの」

 アイリーンが淡々と言った。

 「だったら今日は村人でも吊られてくれ。明日の『霊能者』の判定が見たいからな」

 「…………そうなるしかなさそうなの」

 アイリーンはそこまで軽くうつむいたまま、表情を変えない。俺は奇妙な違和感を覚える。……冷静、そして素直すぎないか? どうして驚かない? 村人でも人狼でも、いきなり『クロ』を当てられたらもっとあせるような……。

 「ふわぁああ。朝から元気な『共有者』だね。なーんかあせってる感じもするな。確定シロはもっと堂々としているもんじゃないのかい?」

 考え込んでいた俺をリアルに引き戻すように、ナイヤが言った。コートを引きずるように立ちながら、どうでもよさそうに発言する。

 「マコトくんは人狼ゲームの経験が浅いから。ちょっと緊張してるんじゃないかな。……むしろ、その『確定シロ』であろうマコトくんに突っかかるのはどうかなって、思うよ?」

 ナナがたしなめるように言う。ナイヤは表情を変えずに

 「頼りなさそうなのが出たなと思ったんだよ。ふつうこういうのは潜伏させて、敵陣営の占い師に『クロ』でも出してもらうのが正しい使い方じゃねぇのかなって」

 「ならマコトの相方のスキルは、マコト自身よりも低めということが考えられると、そういいたいだぁか? せっかく『共有者』が相方を伏せてるのに、なんでわざわざそんなことを言うのかよく分からないだぁね。敵にその推測情報が渡るのは、デメリットしかないぞよ?」

 コーデリアが言う。

 「あれれー? でも今のコーデリアの発言も臭くなーい? 結局マコトの相方がどんな位置に入る奴なのかって情報を言っちゃってるのは、ナイヤよりむしろコーデリアの方だよー? ここ敵陣営で見ちゃおうかなー?」

 エイプリルがあおるような態度で発言する。

 「ふっははははっ! 朝から『クロ』判定とはっ! いきなり『人狼』を一匹見つけたとは、優れた『占い師』であるなっ!」

 マスケラが腹から声を出すようにしして言う。アンナが頬を緩めて

 「この子が本物ならそうやねぇ。しかしチサトちゃんも忙しい子やで。前は『背徳者』でその前は『狩人』、最初は『人狼』やったなぁ? 次が『占い師』やとすると、随分とまあ難しい役職ばっかり引いてる感じやね」

 「そうだねえ。でも『占い師』は好きなんだあ。村の主役って感じがするし。ちょっと緊張だけど、がんばるよ」

 チサトはそう言って照れたように笑った。……この笑みは虚偽でできるようなものではない。

 「しかしてマコトよっ! 貴様が『共有者』だというのなら……一つ尋ねたいことがあるのだが?」

 マスケラだ。「なんだ。なんでもきいてみろ」俺は言う。マスケラは「ふーはははっ!」と高笑いをしてから

 「指示を仰ぎたい。貴様は『霊能者』や、チサト以外に『占い師』に出るものは隠れていろといってはいたが……では『狩人』は宣言するべきか、否か?」

 「は……?」

 俺は目を丸くする。エイプリルが「えー?」と嘲るような声で

 「『狩人』はとことん潜伏でしょー? 何言っちゃてんのかなーこの変態サングラスはっ!」

 「へ、へんた……。我は変態などではないっ!」

 マスケラは慟哭するように言う。俺はつい苦笑して

 「ああ。『狩人』は潜伏しておいてくれ。出てくるタイミングは、今のところ任せる。こちらから指示を出す場合もあるかもしれないけどな」

 「あらんがんばってるわねぇマコトちゃぁん。ハンニバルちゃんほどじゃないけどかわいいわよぉはあはあはあはあ」

 エリザベスが鼻息荒くして言った。

 「ところで相方はまだ隠すのかしらぁ。占い師騙りからの『クロ』出し抑制ってことぉ?」

 「初手フルオープンに悪手なしとはいうがな。まあマコトにはマコトの考え……それから都合というものもあるのだろう」

 ハンニバルは言った。

 「さて。もうマコトが『共有者』の片割れということで確定でいいな。ここから先、マコトの偽を主張するものが出ても俺様は信頼しない」

 堂々と宣言するハンニバルに、俺ははっとした。そうだ、そろそろ言っておかなければならない。

 「ハンニバルの言うとおりだ。ここから先はもう対抗が出たところで、俺を『共有者』で決め打ってくれ。

 『相方生存』を撤回する。相方は『楽天家:ジョン』。片割れの『共有者』は初日犠牲者だ」

 これが言えてよかった。これを言っておくことで、万一俺が襲撃されても、もう一人の『共有者』だと敵陣営に名乗られる可能性は消えた。

 「あーそうかい。そんなことだろうと思ったよ」

 ナイヤがけだるげに言った。

 「……相方初日。いうことは、今回は役職欠けがないということでええみたいやね」

 アンナが言った。

 「そやったら『霊能者』は確実に生存していて、明日正しい霊能結果を伝えられるいうことやね。安心したわ」

 「今夜襲撃されちまったら元も子もないが……まあ流石にねーだろ。今夜誰が襲撃されるか、ぼくはもうなんとなし読めちまったし」

 ナイヤは面倒くさそうに言った。

 「ところでちょっといいだぁか? なーんか『クロ』出されたアイリーンの発言が気になるだぁね。どうもここは『クロ』を出されたのに落ち着いてるというか、自分が処刑されるのを納得するまでが早すぎるように思えるだぁよ」

 コーデリアがいう。

 「……進行の把握が早いのはいけないことなの? 今日私を処刑してもらって明日『霊能者』の結果を見る。それでチサトの偽が保障されるの。それで私はかまわない」

 「本当にかまわないだぁか? 今回の配役だと処刑につかえるのは十三人から十一人から九人から七人から五人から三人から一人で、六回。そして敵陣営の数が、『人狼』三人『狂人』一人『妖狐』一人『背徳者』一人で六人。あんたを吊ったら、もう『妖狐』の占いによる殺害や『背徳者』の後追い、『猫又』襲撃などがない限り処刑回数が足りなくなるじゃないのかい。あんたが村なら、この窮地に落ち着きすぎている感があるぞよ」

 「どう足掻いても吊れるなら、足掻かないんじゃないでしょうか……。その、吊って色を見れば済む話じゃないですかね……」

 ドナがおずおずと言った。

 「というか……本当にアイリーンちゃんが『人狼』なら、尚更この素直さは考えづらいと思うんですよね。その、もし本当に『人狼』なら、偽の『猫又』を騙ることで、本物の『猫又』をあぶりだしたりとか、一か八か『占い師』で出てくるとか……するんじゃないでしょうか。素直に処刑されますかね……?」

 「だったらアイリーンは本当に『村人』って言いたい訳―? ま、少なくともそのまま吊られたら即敗北の『妖狐』でないのは間違いないけどさ」 

 エイプリルがぞんざいにいう。

 「……私を『村人』で見てくれるっていうのなら、それはもう『チサト』を処刑してもらうしかないの。コーデリアのいうとおり、私を吊ったら処刑回数が足りなくなる可能性もあるの。ならばこそ、ここは私と『チサト』を見比べて怪しい方を吊るべき」

 アイリーンが淡々と言った。チサトが「うんと」と前に出て

 「ごめんね。アイリーンさんは、それを主張するならもっと早くできたはずだよね。『共有者』さんから君を処刑先に指定された時に、その指定をきちんと拒否できたはず。

 それなのに、君を『村人』で見てもいいっていう意見が出た途端に手のひらを返すのは、ちょっとおかしいなって思うよ」

 「…………どうせ処刑先逃れはできないと踏んでいたの。それだけ」

 アイリーンはそれっきり何も言わずにうつむいた。ナイヤは「はあん」と首を振るって

 「なーんか村人の反応にはみえねーんだよな。処刑先逃れって、『村人』の口から出る言葉にはちょっと思えないね。おざなりな抵抗しかしねぇし、ここは余計な情報を落とさずに消えたいっていう感じがする。素直に敵陣営じゃねーのかな」

 「そ。そうですかねぇ。アイリーンさんの言い分にもちょっと、一理あると思いますよ。最初に『クロ』が出たときはそこを処刑するのは定石だし、抗いようがないから諦めてしまったっていうのは、納得できるんです」

 ドナがおずおずという。ハンニバルが「ならば」と反論する。

 「君は今日アイリーンでなくチサトを処刑することを主張するというのか? ありえん。『クロ』にかまう暇があるなら、グレーから怪しい場所を探す為に会話を進める方が有意義だ。君の発言はさっきからノイズにしかなっていない」

 「す。すいません……ノイズで。でも、本当にそう思うんですぅ。アイリーンちゃんが『人狼』なら、なんで『猫又』なり『占い師』なり『霊能者』なりにカウンターカミングアウトしないんだろうな、って。そっちの方が人狼陣営の利益なるはずなのに……」

 食い下がるドナ。そこで発言したのはメアリーだった。

 「そんなことはどうでもいいのです。『クロ』が出れば吊ってしまえばいいだけのことですわ。それが正義です、善き行いです。だいたいにおいて、人狼陣営の戦略も分からないのに、『アイリーン』人狼仮定で『こう動かなければおかしい』などというのは、いささかナンセンスな気もします」

 「なに……? 不気味なんだけど。シラガ女がすっごいまともなこと言ってるっ!」

 エイプリルが震えた声で言った。

 「失礼しますわね。わたくしだって、気が向けば真面目にものを考えますわ。ぷんぷんですわ」

 そう言ってメアリーは頬を膨らませる。ハンニバルは「ふん」と息をついて

 「真面目にやればできるなら、普段から真面目にやって欲しいものだ。……が、一理ある。仮にアイリーンが人狼なのだとしても、『クロ』を出された彼女がどんな行動をとるかなんてものは、人狼側の戦略次第。すべては明日の『霊能者』結果を見てから、というしかないだろう」

 「そうだね。今日はアイリーンさん処刑、これに反対意見はないはずだよ。マコトくんだって、そう言ってるし」

 そう言ってナナがこちらを見る。俺はうなずいて

 「そうだな。今日はアイリーン処刑でいく。アイリーンは村人だとすればすまないが処刑されてくれ」

 「……了解した」

 アイリーンはそう言ってうなずく。

 「よかったあ。これで吊り数が減らなくて済むねぇ」

 チサトが安心したようにいう。

 「後、占い方針なんだけど。このルールだと敵陣営が六人もいるから、進行的にはクロばかり見つける必要もないと思うんだ。『シロ』を多く作っていけば、自然と敵陣営を圧殺できるしねえ。だから明確に『敵だと思う人』は占わずに処刑してもらう方針で、『気になる人』を占っていくのでいいかなあ」

 そう言ってチサトは俺の方を見る。なるほど、共有者の俺に意見を求めている、ということか。

 「そこは好きにしてもらってかまわない。ただ、早めに『人狼』や『妖狐』を見つけて信用を取ってもらった方が、分かりやすいような気もするな」

 「そうかな。共有さんが言うなら、そうしようかな。怪しいところは、なんとなくだけど分かってるし……」

 「怪しい場所……たとえばどこだ?」

 「ちょっとにおうのはエイプリルさん。隠れたがっているのはアンナさんかな? 今のところは、だけど……」

 「うんうん。納得かも」

 ナナが関心したように言った。ハンニバルが腕を組んで

 「意見するがマコト。チサトの占い方針はなかなか理にかなっているように思うぞ。おまえは『人狼や妖狐を占って信用を取れ』などという話をしているが、チサトは既に『クロ』を一つ出している。翌日『霊能者』が『アイリーン』に『クロ』を出せば当然チサトの信用は高まる。彼女が本物の『占い師』なら、信用をとる為に無理をするよりも、確実に気になるところを潰していきたい状況なはずだ」

 淡々とした言い方でそう言った。そういうものか……? 確かに信用を取ることに執着する必要はない、が。

 俺が考え込んだところで、アンナがハンニバルに口を出す。

 「それは一理あるわ。けれども、あんたの今の意見はチサトちゃんを本物で考えすぎちゃうの? 明日『霊能者』が『クロ』を出すって、あんたにはわかっとるんで?」

 「チサト本物視点、それは明確なはずだ。俺様はそれを代弁したに過ぎない」

 「そこや。あんたはチサトちゃんの味方しすぎや。クレバーっぽいあんたなら、占い師候補なんてまずは疑ってかかって揺さぶりを入れそうなもんやけど。意図的にチサトちゃんを真に持っていこうとうようにも見えるで」

 そう言われ、ハンニバルは考え込むように指を顎に添える。それから「くく」と軽く笑って言った。

 「一理あるな。確かにチサトに寄りすぎた意見だったかもしれない」

 「……素直に認めるんかいな、拍子抜けやけど。まああんたはチサトちゃんと個人的な知り合いやしな、しょうがないかもしれへんね。嫌な揺さぶり方してごめんな」

 アンナはそう言って微笑む。しかしその微笑みは、水中ゴーグルの奥に隠されて瞳までは伺えない。この女も要注意かもしれない。

 「俺は『共有者』として、『占い師』の方針にまで細かい指示は出さない。下手に指示を出せば、その『占い師』個人の意思や考えがわからなくなるからな」

 自由に占ってもらった方が、その占い師の真偽もつけやすくなるはず。とりあえずこの指示で問題ないはずだ。

 「分かった。私が本物の占い師って分かってもらえるようにがんばるね」

 そう言ってチサトは微笑む。

 「もうそろそろ時間もない。今日はアイリーン投票で頼む」

 時計の方を一瞥する。三十分は意外にも早く過ぎる。

 「……明日になれば。一気に情報も増えるはず……マコトくん。がんばってね」

 ナナが言った。俺は「ああ」と返事を返す。『共有者』難しい役割だが、なんとかまっとうし、村を勝利に導いてみせる。


 二日目:投票パート


 0『旅人:マコト』→『シスター:アイリーン』

 0『小間使い:ナナ』→『シスター:アイリーン』

 0『青年:ハンニバル』→『シスター:アイリーン』

 0『ならず者:メアリー』→『シスター:アイリーン』

 0『老婆:コーデリア』→『シスター:アイリーン』

 0『盗賊:マスケラ』→『シスター:アイリーン』

 0『芸人:エイプリル』→『シスター:アイリーン』

 0『羊飼い:ドナ』→『シスター:アイリーン』

 0『掃除婦:エリザベス』→『シスター:アイリーン』

 12『シスター:アイリーン』→『学生:チサト』

 1『学生:チサト』→『シスター:アイリーン』

 0『技術者:アンナ』→『シスター:アイリーン』

 0『殺人鬼:ナイヤ』→『シスター:アイリーン』


 シスター:アイリーンさんは村民会議の結果処刑されました。

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