第五話
「ほーら、ふたりとも本来の目的忘れてるでしょ。いいかげんにしなさい」
少し大人びた感じで仲裁に入った彼の名前は椿 冬弥。殺翁と同じ黒髪短髪に、知的な雰囲気の銀フレーム眼鏡がやけに似合う。性格も大人びているが顔も大人びていて、イケメンというよりはハンサムの部類だろう。「AS」のリーダー兼参謀を担当する天才ハッカーで、ハッキングの腕とIQはわたしと互角である。
冬弥に続き、わたしたちに向かって可愛い声がかけられた。
「冬弥の言うとおりですわ」
お姫様の様な少し高慢な雰囲気を含んだ甘い声で、どこか怒ったように冬弥に賛同する彼女の名前は蘭姫 秋奈。整いすぎて人形めいた顔立ちに、フランス人である母親譲りの金髪が映える。中世ヨーロッパの様、とまではいかないが、フリルのふんだんに使われたボリュームのあるスカートが妙に似合っている。さらに髪型は所謂縦ロール。これもまた妙に似合っていて、存在自体が時代錯誤というか、ちょっと浮いている感じだ。その持ち前の美貌をいかし、陽動・・・というか誘惑を担当している。これを本人に言うとかなり怒られるけど。
「ごめんね、冬弥、秋奈」
「謝るくらいなら、最初からなさらないでいただけます?」
やはりまだ棘のあるセリフを聞きながらわたしは密かにため息を吐いた。普段は別に仲が悪いわけじゃないのに、春貴が関わると何故かやたらと突っかかってくる。
「ごめんな、秋奈」
顔の前に片手を出して申し訳なさそうに謝る春貴を見た途端、コロッと機嫌がよくなる秋奈。笑顔で返事をする。
「いいえ、反省してくださっているのなら、いいですわ」
少し頬を染めて嬉しそうに笑う秋奈はすごく可愛い。この態度を見れば秋奈の気持ちなんてすぐに分かりそうなものなのに、春貴は鈍いため全く気付かない。その所為でわたしにとばっちりがきているのだ。でも、何故わたしなのかは分からない。
他にも春貴仲のいい人はたくさんいるのに・・・。
わたしの思考を中断させるように、冬弥が手を叩いてみんなを静まらせた。
「みんな、これじゃあ何のために集まったの分かんないでしょ。春貴はおとなしく座ってて、秋奈も。才花も悪い癖だよ、すぐに目的忘れて人をからかうのやめなさい」
冬夜に叱られて少ししゅんとなるわたしたち。というか、特にわたし。ほんと、冬弥の言う通り、悪い癖だわ。
「うっ、ごめんなさい。・・・じゃあ本題に入るわね。説明はわたしからでいい?冬弥」
「ああ、いいよ。でも、夏美がまだだからちょっと待ってくれるかな」
「分かったわ。でも・・・すぐに始められそうね」
「ああ、そのようだ」
すごい勢いで近づいてくる足音を聞きながらふたりで思わず苦笑する。
どうやったらあんなに大きな音を立てて歩けるのかな・・・?永遠の謎かもしれない。
変なきり方で大変読みづらいかと思います・・・;;