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SAS  作者: 洗濯バサミ
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第三話

「暗殺者」といってもプロじゃないから、そう名乗るには少し語弊があるかもしれないけど。ここ、わたしたちの通う学校「ききょう学園」が、所謂「暗殺者育成学校」であることが秘密なのは言うまでもないだろう。表向きは「超」がつくような「エリート学校」。その所為もあるが「ききょう学園」の入学試験は、難易度の高さが半端じゃない。その上実技もあるため、頭がよければ入れるというわけでもない。頭脳も身体能力も人並み以上、ともに推薦がもらえるくらいのレベルが求められる。そして入学後に「頭脳科」と「実技科」に分かれるわけだ。わたしは前にもいったとおり「頭脳科」。殺翁や陽牙、蘭たちは「実技科」。基本、ひとつのチームに「頭脳科」はひとり。作戦を立てる際に問題が生じるからだ。方向性が違ったりして、ね。

 

 歩きながら、みんなにも配ったテストのプリントをぼんやりと眺める。ふと・・・、訳もなく、なんの前触れもなく、昔のことを思い出した。この学園に入ったときのことを。入るきっかけになったときのことを・・・。


 気が付くと寮にある自分の部屋の前に来ていた。相当ぼんやりしていたらしい。今でもはっきりしない意識のなか、習慣で鍵を開けて部屋に入る。ひさびさに昔のことを思い出したからだろう。・・・何故いまごろになっていきなり思い出してしまったんだろうか。ふかふかのソファに座り込みながら、記憶をたぐり寄せて原因を探してみる。が・・・それらしいことは、きっかけになるようなことは全くなかったように思う。否、きっかけなんて要らないのかもしれない。まだ、心のなかに、奥深くに、残っていたのではないだろうか。完全に消し去ったはずのあの忌まわしい“記憶”が。消し去ったつもりでいた、あの、“記憶”とも呼べないような、わたしの身体に刷り込まれて消えない、あの“悪夢”が。


「もう・・・乗り越えたと・・・思ってたんだけど、な」


 あのときのことがフラッシュバックして、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。一度始まってしまったらもう止まらない。“記憶”の渦に飲み込まれる。それに逆らう術を、わたしは持たない。世界が闇に包まれる。あぁ・・・まただ。始まってしまう。もう何度見たか分からないような、あの・・・。


「・・ぃか、さいか・・才花!!」


 わたしを呼ぶ声に、現実に引き戻された。世界に光が戻っていく。どうやら、無意識のうちに目を閉じていたらしい。


「殺翁・・・?どうして・・・」

 

 どうしてここに・・・?と、わたしを連れ戻してくれた声の主、殺翁に向けて尋ねたが、いつもの無口なやつに戻っている。でも、わたしの両方の頬にあてられた殺翁の手はとても暖かいし、瞳はいつもと変わらない闇のような黒。そのことが、わたしを安心させる。わたしは現実にいるのだと実感できる。少しの間そのぬくもりを堪能していると殺翁の二つの手がすっと離れた。そしてそのままわたしの隣に座ると、おもむろに口を開いた。


「・・・様子がおかしかった」


 もしかしてこれは「どうしてここに・・・?」に対しての答えだろうか。相変わらずだなあ。思わず笑ってしまう。


「ふふっ・・・そんなにおかしかった?」

「・・・・・」


 無言で頷く殺翁。この感じからすると、蘭と陽牙にもばれてるんだろうな。


「バレバレってわけね・・・。敵わないなあ、みんなには」


 少し自嘲気味に笑うと、殺翁がぼそっと呟いた。殺翁がはっきりしゃべることなんて滅多にないけど。


「・・・何年一緒にいると思っている」


 いつも仮面のような無表情を貼り付けた殺翁の顔に、少し得意気な微笑が浮かんだ。それは本当に短い間のことだったし、微笑というには少し控えめ過ぎるものだったが、確かに殺翁は微笑んだ。それはとても暖かい、才花を思いやる気持ちに満ちた微笑だった。

そんな殺翁の笑顔を見て才花は、やっぱり、と呟いた。


「敵わないなあ・・・本当に」

「・・・・・・・?」


 微かに首を傾げた殺翁に向かってゆっくりと首を振る。くすっと笑みを漏らすと、ますます訳が分からないという顔をする殺翁。その、どことなく子供っぽいあどけない表情がなんだかとても可愛く見えて、知らず知らずの内に笑顔になる。


「ありがとう、殺翁」

「・・・・・」


 まだ訳が分からないという顔をしていたが、しっかりと頷く殺翁を見て、安心したように、はにかむように、少しくすぐったそうな顔で、才花は微笑んだ。




―――――――――


 そのとき才花の部屋の前にはふたつの人影が。どうやら喧嘩がひと段落ついたらしい蘭と陽牙である。


「どうやら解決したみたいだね~」


 部屋から時折聞こえてくる才花の笑い声を聞きながら、安堵したように呟く陽牙。


「おう。さずが殺翁だな!」

「んじゃ、俺たちは退散しますか~」

「うん。じゃーなー、殺翁」


 陽牙達の存在には確実に気付いているであろう、部屋の中の殺翁に向かってあいさつをし、ふたりで肩を並べて歩いてく陽牙と蘭。なんだかんだいって仲のいいコンビである。


自分のタイトルをつけるセンスの無さに気付き・・・諦めました

誰かセンスを与えて欲しいですね・・・いろいろと。

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