第二十七話
蘭と夏美が逃げているとき
【陽牙・秋奈】
「さすがに焦った~・・・秋奈、ナイス」
持っていたトランシーバーを少々乱暴に置くと、陽牙は椅子に深く沈みこんだ。勧めると、秋奈は先程のおしとやかさが嘘のように(実際に嘘なのだが)豪快に座り込んだ。
「いえ・・・あなたこそ、なかなかやりますわね」
こちらも少し息を乱しているところをみると、相当焦っていたようだ。
二人揃って深く息を吐いたところで秋奈のトランシーバーがブルブルと震えた。
『ふたりともお疲れさまだよ。助かった』
冬弥の声が聞こえてくる。
「本当ですわ・・・。もうこれ以上予定外の展開はないですわよね・・・?」
「秋奈の言う通り~・・・マジで焦ったんだから~。さすがに勘弁してよね」
額に当てた手にはうっすらと汗が浮いている。
「声真似って疲れるんだからさ~」
そう、さっき蘭を追いかけていたふたりが話をしたのは本当の上司ではない。陽牙の声真似だったのである。分かりきっていることだが、陽牙は陽動を専門に動いている。そのため、さまざまな人物に化けられなければならいのだ。そこで育ったのがこの声真似。もともと才能があったのか努力の賜物か分からないが、今では陽牙の声真似は真似の域を超えている。目の前で聞いていても間違えてしまいそうになるほどだ。
と、まあどうでもいい解説はここまでにして話を戻そう。
上司が陽牙であったことは分かってもらえたと思う。では、なぜ陽牙は班長(ふたり組の上司)に繋がるトランシーバーを持っていたのか。ここで活躍したのが秋奈である。
蘭が見つかる前、秋奈が班長と接触していたのを覚えているだろうか。トランシーバーを入れ換えたのはまさに、そのときである。班長のものを、陽牙に繋がるようになっているものに換え、本物を陽牙に渡したのだ。
本来ならばもう少しあとで使われるはずだったのにも関わらず、蘭のミスで計画が押されてしまったのだ。ふたりが焦り、疲れた顔をするのも無理は無い。
『後で蘭にたっぷり言い聞かせておくわ』
真剣な声の中に少し楽しげな色を含ませながら才花が言った。
「お願いしますわ・・・」
当然、即答した秋奈。その隣で陽牙も同意した。
「俺からもよろしく~」
惚れていてもミスなどの責任はきちんと取らせるという陽牙の姿勢が、才花は気に入っている。
『ふふっ、任せて。じゃあふたりは次の指示まで休んでて』
そう言って、ふたりの返事を聞く前に通信は切られた。残ったのは静まった空間と、ふたりの小さな息遣い。
それを肌で感じながら、蘭は大丈夫だろうかと、静かに心配する陽牙。秋奈がじれったいと思っていることには気付いていない様である。
【才花・冬弥】
陽牙たちとの通信を終えたわたしと冬弥は深いため息を吐いた。
「冬弥、幸せが逃げるわよ」
「・・・才花こそ」
くだらない掛け合いをしながらも、次の行動に移るべく、ふたりの手は休まらない。
「蘭と夏美は無事に追手を誘導してるわ」
「うー・・ん、まだ全然休ませてあげれてないけど・・・秋奈に行ってもらおうかな」
顎に手を当て、渋る様子を見せる。
気持ちは分かるが、あまり班長を放置すると部下に連絡を取ろうとするだろう。
「冬弥」
名前を呼べば
「分かってるよ」
手をひらひらと振って、いつもの食えない笑みを浮かべる。
「秋奈、悪いけど出番だ」
ぬあー・・・うまく話が進みません;
てゆうか課題多すぎて夏休みが悲しいです。
はい、関係の無い話でしたすみません
ついでにもっと関係の無い話をすると、今無性にタピオカが食べたいです。それかナタデココ入りのゼリー!(笑)
読んでくださった方、ありがとうございました!
これからも頑張っていこうと思うので、お暇なときにでも読んでいただければ幸いです!