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SAS  作者: 洗濯バサミ
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第二十五話


【テストを開始します】





 少しの沈黙のあと、トランシーバーからノイズの混じった声が聞こえる。


『才花、革獅子が来た。ん~時間ぴったりだね』

「分かった。夏美、始めて」


 冬弥を見ると頷いて同意を示される。


『了解。開始します』


 数秒後、離れた場所から小さな爆発音が聞こえる。窓の外を確認すると煙が上がっているのが見える。

 よし、いい感じ。




【陽動担当火炎班・夏美、蘭】


 才花の指示の後すぐに仕掛けてあった小型爆弾のスイッチを入れる夏美。


「蘭姉さん、大丈夫ですか?」


 それを見守っていた蘭は嬉しそうに笑う。


「おう、ばっちりだぞ」

「やった!」


 小さくガッツポーズをしている。


 夏美たちが担当しているのは、その名の通り陽動。今回の革獅子と冴苗の取引は政府も関わっているため、当然廃工場には見張りが立っている。それを持ち場から離れさせるために小規模の火災を起こすのだ。もちろん廃屋で行っているし、他に燃え移ったりしないようにしている。


「よっしゃ、次行くぞ」

「はいっ!」


 ある程度火が回ったのを確認して移動する二人。

 小規模な火災のため、一箇所だけではすぐに消し止められてしまう。そこで数箇所ランダムに発生させるのである。


「夏美です。一箇所目、成功しました。次のポイントに移動します」


 移動しながら才花報告を入れる。


『分かったわ。そのまま予定通り進めて』

「了解です」




「夏美たちは予定通りよ。見張りの様子はどう?」


 冬弥が監視カメラに映る見張りの様子を見ている。


「異変に気が付いたみたいだよ。なかなか反応がいいね」


 楽しそうに微笑んでいる冬弥。


「残りの見張りの人数は?」

「5人いるうち2人が確認に行った」


 冬弥がそう言った時、別の場所でまた爆発音が聞こえた。


「どう?」


 聞くと、冬弥は映像から目を離さず答える。


「うん、さっきより慎重だね。三人で相談してるみたいだ。・・・・・・結局一人残った。彼がリーダーってとこかな?」


 画面に映る男を指差す。覗き込むと、厳つい顔の男がひとり立っている。


「多分、彼が一番の手練れだよ」

「いかにも、って顔してるわね」

「確かに」


 ふたりでくすくすと笑ったあと、にこりと笑う冬弥。


「本当に、騙しやすそうな顔してるよね」


 その笑顔は穏やかなのに、どこか冷たくて、少し、背筋が冷えた。


「・・・本当、味方で良かったわ」


 小さく呟くと、冬弥がこちらを振り返る。


「言っとくけど、才花も似たような顔してたからね」


 しっかり聞こえていたらしい。そう言って笑う冬弥の笑顔に、もう先程までの冷たさはない。


「あら、そうだった?」

「まったく・・・よく言うよ。僕よりよっぽど性格悪いくせに」


 わざと惚けてみせると苦笑された。


「どうせ五十歩百歩じゃない。それより、秋奈に指示出しちゃっていい?」


 視線を画面に戻して状況を確認する冬弥。


「大丈夫だよ。まだひとりで居るから」


 それを聞き、トランシーバーを繋ぐ。


「よし。秋奈、出番よ」

『行きますわ!見ていてくださいませ・・・え、えっと』


 張り切った声が聞こえたかと思うとごにょごにょと口ごもった。


『・・は、はる、き・・・さん』


 わー初々しいー。


「はいはい、頑張ったわねー。いってらっしゃーい」

『ちょっと、なんですのそのたいっ・・』


 秋奈の言葉を遮るようにトランシーバーを切る。


「まったく・・・テスト中に練習しないで欲しいわ。わたし相手に」


 聞こえてないことを承知で文句を言った。


「意外と純情だからね、秋奈は」


 くすくすと楽しそうに笑う冬弥。


「それにしても春貴も鈍感よね・・・。あんなに分かりやすいのに」

「・・・君にだけは言われたくないと思うよ」

「わたしのどこが鈍感なのよ。秋奈の気持ちに最初に気付いたのわたしだったじゃない」


 納得がいかず言い返すと、深いため息を吐かれた。


「・・・才花、君が一番残酷だよ・・・」


 何なのよ、一体。




【陽動担当・秋奈】


 才花に一方的に会話を切られしばらくはぶちぶち文句を言っていた秋奈だったが、軽く取り出し身だしなみを整えた後、ターゲットである見張りの男の方へ歩いていく。


 コツコツと足音を響かせながら、寂れた人気のない住宅街を、メモを片手に歩く秋奈。さっきまで見せていた強気な態度はすっかりなりを潜め、不安そうにあたりを見渡している。近づいてくる足音に警戒を強める見張りの男。険しい表情を浮かべている。


 秋奈がそれに気付かない様子で男の前を通り過ぎようとしたとき、秋奈の体がぐらりと傾く。


「きゃあ!・・・・・・あ、あれ?」


 瞑っていた目を恐る恐る開けると、転んで地面に打ち付けられるはずだった体は斜めに傾いたまま止まっている。見ると、秋奈の細い体は見張りの男の逞しい腕にしっかりと支えられていた。


 秋奈をゆっくりと立たせながら低い声で尋ねる男。


「・・・大丈夫ですか?」

「は、はい。すみません。・・・ありがとうございます」


 にっこりと微笑むと、男が僅かにたじろぐ。


 忘れかけているが、大変顔が整っている秋奈。その笑顔の破壊力は半端ないのだ。まさに花も綻ぶ、というやつである。そのため、男子に大変人気がある。普段の尊大な態度がなければもっとモテるのではないだろうか。


「・・・いえ」


 そしてこの男も、例外なく秋奈の笑顔に魅了されたようである。


 しばらく宙を彷徨っていた男の視線が掴まれた自分の腰に向く。正確には、腰の辺りの服だ。もちろん掴んでいるのは秋奈である。


「あの・・・」


 どうしていいのか分からないといった様子で、おずおずと声をかける男。


「え・・・?あ!あぁ、す、すみません」


 自分が相手の服を掴んでいたことに気付いた秋奈は、手をさっと放し素早く後ろに回した。申し訳なさそうに謝るその顔は、恥ずかしいのか少し赤く染まっている。


「じゃ、じゃあわたしはこれで。本当にありがとうございました」


 にこやかに立ち去っていく秋奈の後姿をぼんやりと眺める見張りの男。




「完全に落ちたね」


 一部始終を見ていた冬弥が満足そうに頷く。


「相変わらず鮮やかな手口よね・・・誰も演技だなんて気付かないわよ」


 塀に凭れ掛かりながら手に持ったトランシーバーをくるくると回す。


「特にああいう仕事しかしてこなかったタイプは弱いね」

「割とかっこいい顔してるのに、もったいないわね」


 目つきの悪さを差し引けばそれなりに整った顔をしている。もう少し人当たりのいい性格をしていたら、恋人のひとりもいただろう。

 などと、とりとめも無いことを考えながら画面を眺めていると、手の中のトランシーバーが小さく震えた。誰かが通信を求めてきた様だ。


「ん、夏美?どうかした?・・・って蘭じゃない。何かあったの?」


 心底楽しそうな蘭の声が聞こえる。


「・・・ええ、・・・いいわよ。・・・ええ、わかったわ、よろしくね」


 通信が切れた後、思わず顔が緩む。


「何?あくどい顔して」

「失礼ね、してないわよ、そんな顔」


 ただ、そろそろ。


「面白くなってきたと思ってね・・・」





【蘭・夏美】


「ありがとな。・・・うっし」


 先程借りたトランシーバーを夏美に返すと、立ち上がって大きく伸びをした。


「蘭ねえさん、何の話してたんですか?」


 受け取りながら首を傾げる夏美。


「んー?鬼ごっこだよ」

「鬼ごっこ・・・ですか?」

「そ。このままじゃ火を消されておしまいだろ?だから、あたしたちがわざと見つかって、あいつらが戻らない様にするんだ」

「なるほど・・・さすが蘭ねえさん、頭いいですね!」


 きらきらと尊敬に満ちた瞳を向ける夏美。


「へへへっ、だろ?」


 考えたのはわたしだけどね、と才花がこの場にいたら確実に抗議しているところだが、あいにくつっ

こみを入れてくれる人間はここにいない。


「んじゃあ、あたしがこっちのふたりを担当すっから、夏美は向こうのふたりを頼む」

「分かりました、任せてください!」


 敬礼でもしそうな勢いだ。


「あぁ、これはどうしますか?」


 すっと真剣な顔になりトランシーバーを指しながら言った。


「あー・・・じゃあ、あたしが持ってっていいか?」


 いいですよ、と言って、差し出された蘭の手にトランシーバーを乗せた。と思ったら。


「ぅおっと!・・・あっぶねえ」


 うっかり落としかけた。そこまでは良かったのだが・・・。


「蘭ねえさん!声、声!」


 夏美に肩を叩かれ自分の失態に気付いた蘭。


「おい!誰だ!誰かいるのか!?おい、班長に連絡しろ!」

「分かった!・・・もしもし、班長ですか!?」


 調べにきた男たちにの声が近づく。


「あ・・・やべぇ」


久しぶりの更新になってしまいました・・・。

一ヶ月に一回更新とか・・・やばいですね・・・。


目標!一ヶ月二回!(低いw)


読んでくださった方、ありがとうございます。

これからも頑張りたいと思います!


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