第十九話
『最終問題 わたくしの好きな食べ物は何でしょう。
作者:本宮 伸子 』
「どうゆう意味だ?」
「・・・どうゆう意味でしょうね」
・・・・・・うーんでもなぁ・・・そうは言ったものの・・・意味って言ったらひとつしかないよわよね・・・。
「多分だけどね、意味はひとつしかないと思うの」
問題を睨み付けるように見ている蘭に言った。
「ひとつ?」
うん、と頷く。
「“わたくし”は作者を示していると思うのよ」
問題文を指差しながら言う。
「そうか、だったら簡単じゃないか」
蘭は納得したように頷いて、嬉しそうに笑う。
「それが・・・この作者の本宮伸子が誰なのか分からないのよ」
わたしの言葉を聞くと、蘭が驚いたように声を上げた。
「えっ?これって“のぶこ”って読むのか?」
「違うの?」
他に読み方があっただろうか。
「“しんし”じゃないのか?“もとみやしんし”。つーか、あたしこの人知ってるぞ」
「えっ!?・・・本当に?」
思わず裏返った声を抑えて尋ねた。
「おう、才花も見たことあるだろ?てか、今後ろに居るけど」
蘭が後ろを指差す。つられて後ろを見ると、少し離れたところに理事長の執事さんが立っている。周りを見渡しても、他に名前を知らない人物は居ない。
「もしかして・・・執事さんのこと?」
「そうだよ。あたし仲いいんだ~」
何故か得意げだ。
“執事”さん改め“本宮伸子”さんは、眼鏡の似合う知的なイケメンである。わたしの視線に気付くと上品に微笑んだ。
「へぇ・・・でもなんで?」
尋ねると、蘭は少し照れたように頭をかく。
「んー・・・それがさぁ、ほらあたし陽牙を追いかけててよく窓とか扉とか壁とか天井とか、壊すだろ?」
天井か・・・それは初耳だ。
「そんでさ、その度に執事さんに呼ばれて叱られるからだんだん仲良くなっちゃって」
「なるほどね。そう考えると、今回に限っては陽牙の行動も良かったのかもね」
そう言って苦笑いすると、蘭もつられた様に笑う。
「それで本題に戻るけど、好きな食べ物、知ってるの?」
「・・・・・・・」
無駄に笑顔のままだ。
「知らないのね・・・まぁいいわ。これだけ情報があればすぐ分かるし」
パソコンを開いて調べ始める。
「蘭、冬弥たちどんな感じか見てきてくれる?」
「おう!任せろ!」
頼むと嬉しそうに走っていった。視界の端に明らかに不機嫌になった陽牙の顔が映ったが、ゲーム上仕方がないことだ。そう、これは決して嫌がらせではないのだ。
意思に反して上がりそうになる口角を抑えてパソコンに視線を戻す。
理事長の執事さんだし・・・学校のデータベースでいいかな・・・・・・・おっ、プロフィール発見。
さっそく好きな食べ物を見る
「・・・!!」
意外性のあるものだろうとは思っていたけど・・・!
「これは・・・」
覚えず声が震えた。
「才花!向こうもまだ分かってないみたいだぞ」
嬉しそうに蘭が戻ってきた。わたしは動揺を堪えきれないまま答える。
「・・・そう、よかった。こっちは、分かったわよ」
「おっまじで?何なに・・・」
パソコンを覗き込みその項目を見た途端、蘭の表情が戸惑いに変わる。
「こ、これまじで・・・?」
声が若干震えている。わたしが頷くと、いきなりその場にしゃがみ込んだ。
気持ちは分かるが勝敗がかかっているので、とりあえず解答打ち込み、判断を待つ。
数秒後、ピロンッと電子音が鳴り画面に文字が浮かんだ。その瞬間、ピーッと笛の音のようなブザーが鳴り、ゲームの終了を告げた。
「両者誤った解答はないため、タイムの短いチームの勝利と致します。よって・・・」
執事さんの実況が始まり、観客が静まり返る。
「勝者、天からの使者チーム!」
執事さんの無駄にイケメンな声が珍しく大きく響き、観客たちは一転して沸きあがった。大勢の声が入り乱れる中、執事さんの声だけがマイクを通って響き渡る。
「全体の結果を発表したします。All Seasonチーム一勝、天からの使者チーム二勝により、天からの使者チームの勝利でございます」
いつもどおりの冷静な話し方に戻った執事さん。その隣に理事長が立ち、やはりどこか芝居がかった
仕草で両手を広げた。
「これをもって、ターゲット争奪戦を終了とする!」
拍手を送ってくれる人もいれば、賭けに負けたのか悔しがって泣きながら去っていく人もいた。海賊船チームは例によってわたしたちを睨み付けて帰っていった。
最後の問題は運が良かったというのもあるが、運も実力のうちだ。というか、これは理事長の軽いテストだったのかもしれない。自分の学校に関係している人間の情報ぐらい知っておけということだろう。
執事さんの指示により観客たちはスクリーンの向こうの部屋から出て行く。観客たちが全員いなくなったのを確認した後、座っていた理事長が立ち上がりわたしの方へ歩いてきた。その手には二枚の紙がある。
「では才花、どちらのターゲットが良いか、選びなさい」
そう言ってわたしの前に二枚の紙を差し出す。
わたしは少し迷った後、殺翁たちが興味を示していたことを思い出し右側のターゲットを選んだ。理事長はそんなわたしを見て満足そうに微笑んだ。
考えをすべて読まれているような意味深な笑みに少し悔しくなる。
その後理事長も執事さんも出て行き、部屋にはASとわたしたちだけになった。陽牙は蘭にさっそくちょっかいをかけ始め、夏美はそんな陽牙に敵意を超えてもはや殺意ではないかと思うような視線を向けている。その様子に笑みを零していると、不意に肩を叩かれた。
「才花」
振り向くと、冬弥がいつものように穏やかな笑みを浮かべている。
「あら、どうかした?」
「あの執事さんの好きな食べ物、何だったのかなと思ってね」
そう言って面白そうに笑う。
「多分びっくりするわよ」
「大丈夫、予想はしてたから」
・・・あまり自分の口からは言いたくない。
「んー・・・自分で調べたほうがいいかも」
まだ言いよどむわたしの顔を覗き込んでくる冬弥。
「いいでしょ、教えてよ。・・・駄目かな?」
下手に顔が整っているやつのお願いはずるいと思う。何処か子犬のような目を見てしまい、思わず声が詰まる。
「はぁ・・・」
ため息をついて覚悟を決めた。腹筋に力を入れる。
「・・・秋刀魚の目玉」
「え・・・?」
冬弥のびっくりした顔に、努力空しく噴き出してしまった。
今回はやっと勝負が終わるということで嬉しいはずなのになかなかうまく書けず悩みました。
載せている今でもちょくちょく違和感のある箇所が・・・w
読んでいただいた方、ありがとうございました。
どうでもいい話パート3(?)
これは今朝見た夢の話です。
何故かわたしは「ル○ン三世」になっており、どこからか宝石を盗んできて居ました。それを戸棚に隠して仲間とくつろいでいると、銭形警部が現れます。
「おい、ル○ン!盗んだ宝石をどこに隠した!!」
そう言って家の中を探し始め、宝石を見つけてしまいました。そしてそれを何故か、謎の液体で固め始めました。
何故か焦り始めるル○ン(わたし)。
「とっつぁん!なにしてくれんだよぉ」
そういって何故だか片栗粉を探し始めるル○ン。どうやら固まった宝石は片栗粉で溶かせるらしい。
銭形警部もそれを止めるため片栗粉を探し始めるが、ル○ンは片栗粉を発見して宝石を溶かして逃げ出してしまった!
それを追いかけるべく銭形警部が乗り込んだ車には何故か銭形警部の奥さんと息子が乗っている。
息子が言う。
「お父さん、そこの角を右に曲がって少し行くとお店だよ」
そして銭形警部は何故かル○ンをほっぽりだして息子の言うとおりのお店に・・・。
「何故か」がやたら多い夢でした・・・。とっつぁんには奥さんと息子がいたのかという驚きの事実もありましたww
こんなくだらないものまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。