第十八話
理事長の執事さんがタイムを確認し、発表する。
「只今、All Seasonチーム・天からの使者チームが共に正解いたしました。タイムはAll Seasonチームがわずかに勝っております。0.48秒差でございました。両チームミスは一度もなしでございます」
執事さんの実況は大変分かりやすいが、内容は悔しいものだった。差はかなり縮めたもののまだ負けている。
「くっそー!次こそは勝つ!」
蘭は決意を固めているようだ。
「ええ、そうね。てゆうか次最終問題だから負けたら終わりよ」
結構興奮してるみたいだなと思っていたら、急に冷静になった。この辺のテンションの変わり方はいまだに謎である。
「あっそうだ。さっきの問題の答えなんだったんだ?あたし見損ねててさ」
“説明つきで頼む”と続ける蘭は本当に生徒のようだ。
「答えは“韓国”よ」
わたしはちょっと先生ぶって人差し指を立てた。
「“韓国”・・・・?」
「さっきわたしが“蘭のおかげ”って言ったでしょ?」
「おう、それに“重要なことを言った”って言われたけど・・・あたしそんなこと言ったか?」
「言ったのよ、無意識にね。蘭が言った、“理事長のコメント”こそが、今回の鍵よ」
「“理事長のコメント”・・・?悪い、全っ然分かんない」
申し訳なさそうな顔をしている。
「じゃあ一度言ってみて、理事長のコメント」
「えっと確か・・・“最終問題の前だから気を抜いて答えていいわ”って感じだったかな」
きちんと理事長の真似をしているのが何だか面白い。
しかも地味に似てるし。
「正確に言うと少し違うけど、重要な部分は押さえてるわ。ここで重要なのは、“気を抜いて”という部分よ」
「気を抜いて?・・・気を抜いて・・・きをぬいて・・・」
蘭がぶつぶつと反芻している間に、次の問題に目を通す。
「・・・は?」
おっといけない、うっかり声が漏れた。
「才花?どうかしたか?」
いつの間にか顔を覗き込まれていた。
「・・・なんでもないわ。それより分かったの?」
「多分だけど分かった。“気を抜いて”っていうのは“き”を抜いて、って意味、だよな?」
「ええ、そうよ」
ほっと息をつく蘭。
おそらく自分の推理に確信が持てたのだろう。さっきよりも安心した顔をしている。
「えっと、だからな、柿と金庫と菊から“き”を抜くんだ。そうすると、柿は“か”、金庫は、“ん”と“こ”、菊は、“く”が残る。それを繋げると“かんこく”・・・韓国になる」
「正解!」
蘭は嬉しそうに笑う。
ふと陽牙の方を見ると心なしか頬が赤い。
・・・・ベタ惚れすぎる。
「春貴、あたし自分で解けたぞ!」
自慢げに報告している。
「俺も解けたよ。冬弥にヒントもらって」
「へへっあたしも」
陽牙の表情が途端に曇る。
うーん分かりやすい。ここは敢えてほっとくのもいいけど、次の問題が待っている。
「蘭、戻ってきて」
「あっ悪い」
そう言って駆け寄って来て、そのまま画面を覗き込む。
『最終問題 わたくしの好きな食べ物は何でしょう。
作者:本宮 伸子 』
「・・・?」
蘭は無言で首を傾げている。
「どうゆう意味だ?」
「・・・どうゆう意味でしょうね」
※今回の問題は知らないと解けないものです。
ひさしぶりの更新になってしまいました。
もともと書くのが遅いのもありますが、今回はパソコンがトラブって使えなくなりまして・・・。
言い訳ですねw
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます!




