第十四話
「ほら才花、次のゲーム始まるよ」
今度は頭を叩かれる。陽牙はわたしよりはるかに背が高い。確か175cmは軽くあったはずだ。わたしは150cm後半。身長に関しては今まで困ったことがないので気にしてはいないが。
「次で最後ね。誰が戦うの?」
「冬弥と蘭みたいだね~」
陽牙がステージの方を指しながら言った。蘭がこっちに手を振っているのが見える。
「じゃあわたしはゲームに参加できないのね・・・」
「いや、そうでもないみたいだよ~」
理事長の説明が始まる。
「次のゲームは“クイズ”だ。だが今回のゲームは二人一組で行ってもらう。まだゲームに参加していない者とペアを組むように」
ステージ上の冬弥と自然に目が合う。どちらともなく笑みがこぼれた。
「楽しみだわ。・・・そういえば、なんで陽牙分かったのよ」
まだ理事長の説明は始まってなかったのに。
「なんとなく?」
いつもの笑顔で陽牙が言った。・・・陽牙ってつくづく食えない奴。
「才花―!」
ステージの上で蘭が呼んでいる。春貴はすでにステージの上に立っており、残りはわたしだけのようだ。少し急いでステージに上がる。
「ごめんね、ちょっと陽牙と話してて」
「それは別にいいんだけど・・・あのさ、陽牙って」
「才花ちゃん!久しぶり」
蘭が何か言いかけたところに春貴が乱入してきた。タイミングが悪いのよ、まったく。珍しく蘭が陽牙のこと言いそうだったのに。
「蘭?陽牙がどうかした?」
「あ、いや、なんでもない」
まだ何か言いたそうな顔をしているが、この様子ではこれ以上聞いても教えてくれないだろう。
「そう?ならいいけど」
ちっ、進展しそうな予感だったのに・・・。
「才花ちゃん、無視しないでよ」
「うっさいわね。何が“ひさしぶり”よ。朝にも会ったじゃない」
「ちゃんと聞いててくれたんじゃん。嬉しいな」
本当に嬉しそうに、しかしへらへらと笑う春貴。
「てかさ、まじで久しぶりだから!勝負中全然しゃべれなかったし、近くに居るのにしゃべれないもどかしさを味わってたよ、俺は!」
「全然久しくないから。そういうのはせめて一週間以上会わなかったら言ってよ。学校で普通に見かけるでしょ」
「才花ちゃんは男心が分かってないなぁ、好きな子見かけたらしゃべりたいもんなんだよ。ましてや他の男としゃべってたりなんかしたら、気になってしょうがないんだって」
駄目だなぁ、というように頭を横に振る春貴。何かむかつくんだけど。
「男心はどうか知らないけど、とりあえず春貴の考えてることは全然分からないわ」
「才花ちゃんってスルーの天才だと思うよ」
「・・・どこがよ」
「ふたりとも静かにしろって」
蘭に止められる。
「あぁもう、春貴のせいで・・・」
「俺のせい!?」
「いや、普通にそうでしょ」
「君たちには緊張という概念がないのか?」
ため息混じりに冬弥が言う。
「冬弥だって緊張なんかしてないくせに」
「絶対そうよね」
「そんなことないよ」
にっこりと笑うところが逆に怪しい。
「ほらほら、静かにしないと」
冬弥がそう言ったのをきっかけに黙る。というか、わたしたちはきっかけがないと黙れないのだろうか。もはや口喧嘩がパターン化しているな・・・。
理事長が説明を始める。
「今回のゲームは、一人に棒を登ってもらい上まで達してボタンを押すともうひとりに解答権が与えられる。なお、棒を登るときのお互いへの妨害工作は有りだ。チームメイトが助言するのも許されるが、手助けをしてはならない。あくまでアドバイスまでだ。では、クイズの解答者と棒を登る者を決めなさい」
これは迷うまでもないことである。クイズの解答者になったわたしと冬弥はステージ上の椅子に座り、蘭と春貴はさっき陽牙たちが使っていた専用フィールドの隣ある、15m程の棒が何本も立ち並ぶフィールドに移動した。わたしたちの座った椅子の前には教室で使われるような机があり、それぞれ小さなモニターが置かれている。一方蘭と春貴はフィールド内をゆっくりと歩き回っている。棒の太さや形が少しずつ違うため、二人ともどれに登るか悩んでいるようだ。悩んだ末蘭は、少しねじれていて軽い螺旋状になっている棒にした。春貴は何の変哲もないまっすぐな棒を選んだ。
「では、最終ゲーム、始め!」
観客の興奮した声が聞こえ、春貴と蘭が同時に棒を登りだした。
今回会話文多いですね・・・
本文若干修正いたしました、そんなに問題はないと思います(多分