表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SAS  作者: 洗濯バサミ
13/37

第十一話


「一本勝負で勝敗を決する。では・・・はじめ!」


 先行である殺翁の手が動く。

まあ、そこからは普通に、“ばばぬき”。ふたりは黙々とカードを引き合い、時折そろったカードを真ん中に捨てる。程なくしてふたりの手札が合計で三枚になる。大袈裟に始まった割には地味な絵面だ。


 わたしと冬弥の間で、呟きのような会話がされる。


「地味ね・・・」

「ああ、びっくりするほどに」


 そしてその決着も、大袈裟なほどあっさりとついてしまったのである。

ジョーカーが殺翁にわたって三回目のとき、秋奈が、ジョーカーではない方のカードを、引いた。

机の傍でずっと眺めていた理事長が判決を下す。これまたあっさりと。


「勝者、蘭姫秋奈」


 ゲーム開始からたったの十分弱。展開が早すぎて正直ついていけない。観客は数秒間の沈黙の後、わっと歓声を上げた。嘆くような声も混じっていることから、おそらく賭けでもしていたのだろう。

 殺翁はふっとステージから消えたかと思うとわたしの隣におり、秋奈は少し澄ました顔でステージから飛び降りた。もちろん今日も秋奈はドレス姿である。

 あの格好で荒っぽいまねをするのはやめて欲しいところよね。

 隣で殺翁が重々しく口を開いた。


「・・・すまない」


 どうやら負けたことに責任を感じているらしい。勝負の状況が流されているので、わたしたちに恥をかかせてしまったと思っているのだろう。いつもどおりの無表情だが、少し翳りが見えた。


「・・・気にしないでいいわ。まだふたつゲームがあるんだし」


 急展開過ぎてついていけていなかった脳を動かし、そう言って励ましたが、まだ気にしている様子の殺翁に蘭と陽牙も声を掛ける。


「そぉそ。才花の言うとおりだよ~殺翁」

「あたしが挽回してやるから安心しろ!」


 ふたりの言葉と笑顔で、ようやくいつもの殺翁に戻った。


「・・・・頼む」


 少しほんわかした雰囲気が流れた。

 ・・・これがもしゲームだったら“天からの使者の団結力が強くなった”とか出てきそうな雰囲気だわ・・・。

 何か救いが欲しくなって逆隣を見ると、いつの間にか秋奈が立っていた。澄ました顔をしているが、嬉しさを隠しきれていない。


「何故わたくしが勝てたのか、教えてさしあげましょうか?」


 うっ・・・確かにそれは気になってたのよね・・・。

 いくら秋奈が駆け引き上手だとしても、あんなにあっさりと勝敗が決まるのは少し違和感があった。いくら殺翁が駆け引き下手だとしても、感情を表に出さないことくらいしただろう。


「・・・・・・・・・ええ、聞きたいわ」


 沈黙によってささやかな抵抗をしてみたがもちろん意味はなかった。悔しさを押し込めて頷く。

 秋奈はわたしの反応に満足したように微笑んだ。


「先程、理事長がよく分からないことを語っていらしたでしょう?あのときから勝負は始まっていましたのよ」


 さり気なく失礼なことを言いながら理事長の方にチラッと視線を送る秋奈。

 さっきの理事長の話していたこと・・・心理戦、だろうか・・・?


「つまり・・・演技で殺翁を誘導したってこと?」


 ため息を吐いて首を横に振る秋奈。


「全然違いますわ。まったくもう、殺翁も才花も理事長の話を真に受けすぎですわ」

「真に受けすぎ・・・?心理戦じゃなかったの?」

「このゲーム、元から心理戦などというものは存在しなかったのですわ。最初から推理など必要なかったのです。今回のゲームは“ばばぬき”。相手が欲しがっているカードなど、推理するまでもなく分かっていることですわ」


 秋奈の言葉で気が付く。そうだ、今回のゲームは“ばばぬき”なのだ。必然的に相手の欲しがっているカードは決まってくる。


「・・・・・・・・ジョーカー以外のカードだわ」


 わたしの言葉に秋奈は満足気に頷いた。


「それが分かっていれば簡単ですわ。ゲームの中で必ず一回はジョーカーが回ってくる。そのときに傷などの印をつけておけば、ジョーカーがどこにあるか一目瞭然ですわ」

「でもそれだと、相手に先に引かれてしまう可能性もあるわ」

「・・・わたくしが、手品が得意なのはご存知でしょう?」


 知ってはいるが・・・今関係のあることだろうか。


「ええ、プロみたいに上手いわよね」

「わたくし、手元でカードを摩り替えていたのですわ。殺翁がジョーカー以外を引かないよう、カードに触れる瞬間に」


 秋奈の手品の腕は知っている。それで食べていけるくらいの技量は持っているはずだ。しかし、殺翁ならそんな小細工すぐに気付くはずだ。


「でも、殺翁が気付かないのはおかしいわ」


 不思議に思って聞いたが、秋奈の一言で納得がいった。


「普段の殺翁なら、そうですわね。でも殺翁はこのゲームが心理戦だと思い込んでいたのでしょう?そうなると、注意はわたくしの表情に集中しますわ」

「手元に注意を向けなくなるのね・・・」

「そういうことですわ。今回のゲーム、心理戦があったとするならば理事長とわたしたちの間に、ですわ」


 はあ・・・わたしは頭脳が取り柄だと思っていたんだけど、ちょっと自信無くすわね。


説明させるのって難しいですね

はい、私の文書力がないだけです・・・


感想などいただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ