↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く  作者: miniko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/100

85 季節は巡り

 無事に王家の認可が降り、私とアイザックは晴れて正式な婚約者同士となった。

 婚約披露のパーティーも開催する予定だが、そちらは準備に時間が掛かるので、半年から一年後くらいを予定している。



 そんなこんなで忙しく過ごしている内に、いつの間にか日々は過ぎ去り……。

 新たな風が吹く、出会いと別れの季節が訪れた。



 春らしい爽やかな青空が広がる今日。

 学園では入学式が開催される。


 本来ならば在校生達はお休みなのだが、私とベアトリスはアイザックに頼まれて、生徒会のお手伝いをする為に登校していた。


「ご入学、おめでとうございます」


 会場入りする新入生一人一人に挨拶をしながら、生徒手帳に一輪の花を添えて手渡す係だ。

 と言っても、おそらく女子生徒はアイザックから、男子生徒はベアトリスから受け取りたいだろうから、私は行列の整理をしたり手帳が入った箱を開封したりと、専ら雑用係に徹していた。


「入学おめでとう」


 作り笑顔で祝いの言葉を口にするアイザックに、新入生の女子達は皆、頬を染める。


「あ、ありがとうございますっ!」


 少し震える手で手帳と花を受け取る彼女達に、ほんの少しだけ胸の奥がモヤッとした。

 思わずジト目でアイザック見ていると、視線に気付いたのか彼が急にこちらを振り返り、ヘラッと締まりのない笑みを浮かべた。


(何でそんなに嬉しそうなのよ?)


「なぁベアトリス、僕の婚約者可愛過ぎないか?」


「オフィーリアが可愛いのは知ってるけど、今は仕事をなさいよ」


 ベアトリスの苦言を無視して、アイザックは私をチョイチョイと手招きした。


「何ですか?」


「疲れて来たから、ちょっと充電」


 アイザックは近寄った私の手を取り、その指先に素早く口付けを落とす。

 列に並んだ女子生徒から黄色い悲鳴が上がった。


「なっっ!?!?」


 真っ赤な顔で固まる私の髪をひと撫でして、満足そうに微笑んだアイザックは、何事もなかったかの様に再び手帳を配り始めた。

 受け取る女子生徒達の顔は心なしか引き攣っていたけれど、彼はそんな事お構いなしだ。


 私達の遣り取りに呆れ顔で肩をすくめたベアトリスだったが、初々しい新入生達の中に見慣れた顔を見付けて表情を一変させる。


「入学おめでとう、メイナード」


 二つ年下のメイナードだが、その優秀な頭脳を見込まれ、ゲームのシナリオ通りに一年前倒しでこの学園に入学した。


「今日からよろしくお願いします。先輩」


 メイナードは揶揄う様にニヤリと笑い、姉を先輩と呼んだ。

 姉弟が微笑み合う光景は優しさに満ちていて、ゲームの中の様に殺伐とした空気は一切感じられない。


(ベアトリス、良かったねぇ)


 ほのぼのした気持ちで二人を眺めていると、不意にメイナードが私にも視線を向けた。


「オフィーリア嬢も、おめでとうございます」


「え?」


 新入生であるメイナードから逆に祝いの言葉をかけられてキョトンとしていると、ベアトリスが耳元で囁いた。


「婚約の件よ」


「あ、はい。あの……、ありがとう、ございます。

 メイナード様も、ご入学おめでとうございます」


 意味を理解したら、急激に顔が熱くなった。

 まだ私達の婚約を知る人は少ないから、祝われる機会が滅多になくて、全然慣れていないのだ。

 ちょっと挙動不審になった私を見て、メイナードが口元を覆って小さく笑う。


「フッ……。僕、アイザック様の気持ちがちょっと分かったかも」


 アイザックが急に不機嫌そうな顔になり、ベアトリスは弟を軽く睨んだ。


「死に急ぐのはやめなさいよ、メイナード」


「やだなぁ姉上、単なる一般論ですよ。

 ねぇ、アイザック様」


「ん……。ならば許す」


 会話の流れがよく分からない。

 死ぬとか死なないとか、急に物騒な単語が出て来たけど、一体なんの話なの?


 私が首を傾げている内に、メイナードは「では、また後で」と爽やかな笑顔を残し、会場となる講堂へと入って行った。






 入学式の翌日からは早速授業が始まる。


 私達の学園生活も無事に二年目に突入した。


 この学園は基本的にはクラス替えと呼ばれる制度は無いが、成績が大幅に上昇、若しくは下落した者だけがクラスを移るシステムになっているらしい。

 私は幸いにもAクラスに残留する事が出来た。

 今回も同学年の生徒の何人かはクラスを移ったと聞くが、Aクラスは全く同じメンバーである。

 私の友人や知人なども皆、初年度と同じクラスだった様だ。



 新年度が本格始動してから、メイナードは頻繁に私達の教室を訪れている。

 きっと姉を心配しているのだろう。

 メイナードは意外とベアトリスに対して過保護な部分があるらしい。


 今も、休み時間にノートを買い足しに行くベアトリスに付き添って、購買の前まで来ていた。

 購買の中は狭いので一緒に入る事はしないが、買い物中の姉の姿を入り口付近からじっと見ている。

 因みに私も同行しているのは、アイザックに『自分がいない時はベアトリス達からなるべく離れない様に』と言い含められているからだ。


「メイナード様は、お姉様思いなのですね」


 思わずクスッと笑みを漏らしながらそう言うと、彼は恥じらいからか微かに顔を顰めた。


「貴女の所のジョエル殿程ではありません。

 ですが、昔の僕は姉に対して無関心過ぎたなと、少し反省はしています。

 以前から姉と殿下の関係が益々悪化しているという話は耳にしていましたが、実際に学園内での状況を目の当たりにすると、想像を遥かに超えていました。

 しかも、殿下にいつもくっ付いている、あの令嬢……」


「ウェブスター嬢の事?」


 メイナードがプリシラの話題を出した瞬間、背中に冷たい汗が流れた。

 今の彼が姉を蔑ろにするとは到底思えないけれど、やはりゲームの内容を思い出すと無意識に体が強張る。


「ええ。彼女は何を考えているのか全く読めなくて不気味です」


「彼女と面識が有るのですか?」


 メイナードは攻略対象者である。

 入学前にヒロインと接点を持っていたとしても不思議はない。


「あれは半年位前でしょうか?

 友人に相談された事があって、その件で一度だけ話をしました。

 ウェブスター嬢とクリスティアン殿下が貧民の為の炊き出しを行っているのをご存知ですか?」


「ああ、そう言えば、そんな計画があるって以前ベアトリス様に聞いた事があります」


 あれは、プリシラが孤児院に差し入れをしているって話をした時だったか。

 ベアトリスがそんな事もチラッと言ってた気がする。


「その計画が既に何度か実行に移されているらしいのですが、それによって僕の友人の家の領地が被害を被ってしまいまして……」


 ん?

 炊き出しによる被害って、どういう事?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。