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偏食ハスキーは馬のように歩く。〜こだわり強めな四つ足の「弟」

掲載日:2026/03/29

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

お待たせいたしました。

ひとときのほほんとよろしくお願いします。

不定期になりますが、のんびりお付き合い

いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)

 





 

 「……これ、少し後味が粉っぽいな」


 「そう? こっちは煮干しの香りが強いわよ。ダイスケ、これならいけるんじゃない?」


 茶の間のテーブルを囲み、僕ら家族は真剣な顔で小皿を覗き込んでいた。

 皿の上にあるのは、茶色くて丸かったり平べったいモノや、成分によって色分けのあるモノなど、味にも見た目にも多彩なドッグフード。

 それを父も母も、妹までもが、まるで利き酒でもするかのように一粒口に運んでいる。

 当の本人――いや、本犬のダイスケは、一歩引いたところで「勝手にやってれば?」と言いたげな顔で伏せていた。





 シベリアンハスキー、五歳。

 茶色の毛並みに、珍しい赤鼻。そして左右の瞳の色が違うオッドアイ。

 その神秘的な見た目に反して、中身は驚くほど頑固で、食にうるさかった。

 この「利きドッグフード」は、彼が五歳になるまで続く。成長するたびに好みが変わり、その都度、家族が先に試食しないと食べようとしない。

 更に味や食感が気に入らないと食べない。

 それはオヤツのジャーキーやクッキー(犬用)も同じで、「ダイスケの納得する味」を探す旅はなかなか大変だった。


 近所の人からも「あら、今日もダメだったの?」と余ったフードを引き取ってもらったり、「これは試した?」と分けてもらうのが、この町内の恒例行事になっていた。

 







 ダイスケは、家族一人ひとりと絶妙な距離感を保っていた。

 お父さんは、彼にとって絶対的なリーダーだ。

 あんなに嫌いなシャンプーも、お父さんが洗う時だけは別人のように大人しく、修行僧のように耐える。僕や母さんが洗おうとすると「ヒャンヒャン」と全力で拒絶するくせに……。


 おばあちゃんに対しては、騎士ナイトを気取っていた。

玄関で来客対応をするおばあちゃんの後ろに、必ずどっしりと控え、横になりながらも鋭い眼光で相手を観察する。

 クリーニング屋のおじさんに「賢いですね、守られてますよ」と言われるほど……。

 ダイスケは少しだけ胸を張りドヤ顔をする。

 








 夕方、河川沿いの土手を歩くダイスケは、この界隈の「顔」だった。

 小型犬たちがキャンキャンと吠えかかってきても、彼は完璧な「知らんぷり」を貫く。

 あまりにしつこいポメラニアンに、一瞬だけ「……うん?」と顔を向けると、相手は慌てて飼い主の足元に隠れる。

 それを見てダイスケは、満足げに鼻を鳴らすのだ。

 一方で、ボクサーやピレネーといった大型犬に出会うと、彼は紳士に変身する。

 互いに鼻先を寄せ、フンフンと匂いを嗅ぎ合う静かな挨拶。ゆったりと振られる大きな尻尾。

 そんな散歩の道中、最高に気分が乗ってくると、ダイスケは独特のステップを踏み始める。

 前足を高く上げ、パカパカとリズムを刻む「馬のような歩き方」だ。


「ボク、今最高に幸せですよ」


 その弾む背中が、そう語っていた。


 








 お正月……、父が「お年玉だ」と言って、ローストビーフとササミ、さらにチーズが乗った豪華なドッグフードを運んできた時のことだ。

 ダイスケは尻尾をブンブンに振って、「うわーー、美味しそう!」と、舌を出し目をキラキラにして、行儀よく待ちのポーズで待っていた。

 だけど……、父の足がコタツの紐に引っかかった瞬間、世界は一変した。


 スローモーションのように宙を舞うササミ。

 ヒラヒラと、蝶のように舞うローストビーフ。

 タタミの上にぶち撒けられ、ぐちゃぐちゃの塊になった。

 ダイスケの尻尾は止まった。

 そのままその場でフリーズしていた。

 口をポカーンと半開きにし、目を開いたまま固まって……。

 絶望という表情で惨状を見つめている。

 尻尾もシオシオと垂れていった。

 かつて掃除のためにトイレシートを外した時、二階のベランダからおしっこをするハメになった、あの「この世の終わり」のような顔だった。


 父が慌ててかき集め「すまん」て言って、渡されたボウルを前に、ダイスケはしばらくジーと眺めていた。

 母さんがキレイに盛り付けた豪華絢爛なドッグフードとは違い、ぐちゃぐちゃになり、なんとなくいつものご飯に近い。

 ローストビーフやササミは、ドッグフードで埋もれチラチラ見え程度……、何より見た目が違い過ぎた。

 疑いの眼差しを僕たちに向けるけど、さすがに()()を食べる気は起きなかった。

最後には渋々と、父の顔を立てるようにして完食したけれど、あの日の出来事は忘れない。

 










 賑やかな一日が終わり夜が更けると、ダイスケは彼は必ず二階へと上がり、妹の部屋のドアをくぐる。

 そして、彼女が眠る布団の上へと、どっしりとその身を預けるのだ。

 一歩引いて見守る昼間の態度とは違い、彼なりの甘え方なのだろう。

 妹の体温と寝息を感じながら、彼はのんびりと伏せ主人の眠りの番犬になる。

 夜中……ふと覚ますと、チャッカチャッカとダイスケの廊下を歩く音がする。

 夜中の見回り……、みんなが寝静まってから、ダイスケはお仕事をしているのだ。



 翌朝……、母はゴミ出しのついでに、近所の奥さんたちにその話を披露していた。

「あの子、中身は人間(弟)よね」と笑い合う結末を話す。

 散歩から戻ってきたダイスケが角を曲がってくると、近所の人に「災難だったわね」と声をかけられる。

 ダイスケは一瞬だけ「すまし顔」を見せ、それからまた、あの軽快な「馬のようなステップ」で玄関へと消えていった。

 偏食で、頑固で、お調子者で……、けれど誰よりも家族を愛し、愛された僕らの自慢の弟ダイスケ。


 ダイスケが残した足音のリズムは、今も僕らの胸の中に、温かく響き続けている。

 

 






読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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― 新着の感想 ―
なんだか目に浮かぶ可愛さ! いや、カッコよさ!!といった方が本人(本犬?)にはいいのかな(*^^*)
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