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第4話 赤毛の男。

芸術の国、フールに来てからというもの、仕事と音楽を聴きに行くことが私の生きがい!

若くて、能力があって、援助のし甲斐のありそうな子を発掘しては、教授に頼んで面倒を見てもらってきた。


フール国内の音楽祭や、コンクールにも足を運んで、いろいろな演奏を聞いたけど…もちろん、譜面通り忠実に演奏する上手な子はたくさんいる。なんというか…うまく説明できないけど…上手だけじゃない、違う子がごくまれに、いる。


コンサルタントに頼んだアカデミアの教授をされているアドリアン様に、援助をする前には必ず聞いていただく。反対されることは今のところはない。



今日は久しぶりにサロンコンサートに出向くので、ワクワクです。

しかも、今日の目玉はヴァイオリンの子です。楽しみで昨日は寝付けませんでした。


教授を馬車で拾いに行くと、アカデミアの正門の前で女の子に囲まれて待っていてくれました。後ろで緩く縛った金髪。品の良いシャツにタイとジャケット、そこにいつもの白い手袋。この方の出生までは知りませんが、女の子と遊び歩いている割には、妙な気品があります。不思議な方です。


さて、サロンコンサート!

ピアノ、フルート、ヴァイオリンの三人の三重奏曲が2曲。


その後に、一人ずつの演奏が始まります。ギャラリーは思ったより多く、50人ほど招かれているでしょうか?侯爵家の別邸のホールもそれを収容して余るほどの大きさです。


ヴァイオリンの奏者は、赤毛の男、アランさんというらしいです。三重奏では抑え気味だった演奏が、ソロでは爆発ですね!!


一人2曲ずつ演奏していますが、アランさんの1曲目は超絶技巧系の技ありの曲。


2曲目はスローテンポの…抒情的な…バラード…。


気が付くと何人かの人が涙を落としていました。


「レディ?」

そう言って教授がハンカチを渡してくれて、私も泣いていたことに気が付きました。


演奏会が終わり、演者と侯爵家の大奥様がご挨拶に出て拍手を受けている。

お客様がそれぞれお目当ての奏者のもとに詰めかけています。援助の申し出や、ぜひうちのサロンコンサートに来てほしい、など…


教授に誘われて、中庭のベンチで休憩しました。給仕係に頼んで、カクテルを頂きます。


「俺は反対だ、レディ。」


私がまだ何も言わないうちに、ベンチの背もたれに片肘をかけてカクテルを飲んでいた教授が、面白くなさそうにそう言い放った。


「……」

「あのヴァイオリンの赤毛の男に援助するつもりでしょう?あの音は、違いますよ?」

「……え?」

「さすがのレデイも聞き間違えしましたね。あの音は、違います。」


違いましたか?でも、私はあのバラード…あの弾き方…そしてあの髪色…探していたのは彼ではないのでしょうか?







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