表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

澪の日記


3月12日


今日は教室の光がとてもまぶしかった。

みんな笑っているように見えて、私は薄い壁の向こうからそれを眺めているみたいだった。

「入っておいでよ」と言われた気がしたけど、やっぱり足が竦んでしまう。

私はここにいてもいいんだろうか。


4月3日


最近、夜になると誰かが話しかけてくる。

鏡に映る自分が、私じゃない気がすることも多くなった。

「また失敗したね」と小さな声が言う。

べつの誰かが「わたしは自由になりたい」と叫ぶ。

私はただ静かに泣くだけ。



5月10日


授業中、気付いたら立ち上がっていた。

先生が私を驚いた顔で見ていた。

覚えていない。周りの視線だけが痛い。

「来てあげたの、あなたのためだよ」と誰かがささやいた気がした


5月17日


今日も“わたし”ではない“だれか”が教室に行った。

みんなと話をした。まこととも目が合った。

でも、それはわたしかどうかわからない。

ノートの字がバラバラになっている。どれがわたしの字か、もう思い出せない。


6月2日


「友達がほしいよ」と泣き続けている子がいる。

「やさしくなりたい」と祈っている子もいる。

「愛されたい」とささやく声が胸の奥で響いている。

私はその子たちの思いを背負いきれない。

重たくて、つぶれそうになる。


6月8日


真琴が話しかけてくれた。

うれしかった。でも、“わたし”が答えたのか自信がない。

声が途切れ途切れになる。

どこからどこまでが“わたし”なのかわからない。

「わたしはここにいるよ」と言いたいのに、どうしても言葉が出ない。


6月15日


もう、どこにも行きたくない。

消えてしまいたい。

それでも、どこかで「生きて」と声がした気がした。

でも、だれの声だったんだろう。

私の中の“私”たち、わたし自身、真琴……

みんな、わたしの記憶のなかでだけ、生きているのかな?


6月20日


もし明日、目が覚めて私がいなかったら。

だれか、私のことを見つけて、気づいてほしい。

私がここにいたこと、ぜんぶが夢じゃなかったって、だれかに伝えてほしい。


ひとことでも本当は、伝えたかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ