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59 大団円

「おろ……?」


 はっと気づいた時には大歓声の中にいた。

 ものすごい熱気が肌にびしびしと伝わってくる。

 

 どうやら此処は戦闘魔法競技会の会場――みたいだ。観衆たちに見下ろされ、歓声を全身で浴びている。なに、何が起きたんだ? え、私さっきなんか病室で死んじゃって。で、こっちは何、祭り? テンションの高低差で風邪ひきそうなんだが。


「なにぼうっとしてんの」


 バシッと背中が叩かれて顔を向ければそこにはソウビが立っていた。え、何。これどういう状況。わあああ、と振動にも近い大音量の歓声で頭がずんずん痛む。思わず片目を瞑って耳を塞いだ。


「ね、ソウビ。あのさ……いま私達何してたんだっけ?」

「はァ?」


 じろ、と冷ややかな視線が向けられたがさほど気分を害してはいないようだった。何回言わせれば気が済むの、とため息交じりに言った。


「信じられないってあんたさっきも叫んでたけど、俺たち優勝したんだから。わかったらぴっと背筋伸ばしなよ」

「……優勝?」


 優勝ってあの有償とかではなくてあの一番の意味の「優勝」? 何に優勝したのか、と聞いてしまいそうになったけれどなんとか呑み込んだ。何って、決まっている。


『前期魔法戦闘競技会の優勝者は……ローゼル・ベネット、ソウビ・ラスターシャ・有馬コンビですっ』


 高らかに実況のエリュシオン放送部が宣言した。


 え。めっちゃ実感ないんですけど、うちらは優勝したらしい。

 どうよこのソウビたその誇らしげな表情。実際、私はルイーザたんとお話をしていただけなんですけど、そのあと何があったし。


 気付いたら私はソウビと共に表彰台の上に立っていた。


 学院長らしきお爺さんから大会につきものであるばかでかい旗とぴかぴか光るトロフィーみたいなのを手渡された。いや待ってよ、付いていけない、この急展開。


 そして同じくお偉いさんと思われる厳めしい顔をした女性に着せかけられたのは【輝ける恒星(リュケーレ)】の証となる特別制服――流星のローブだった。


「おめでとう、ローゼル・ベネット。優秀な生徒あなたをこの学院セカイに迎え入れることが出来て嬉しく思います」

「……ん?」

「あなたのおかげでこの世界は生まれ、そして成長していきました。今度はご自身の目で見届けてください――ご主人様(マイ・マスター)

「ちょっ、ちょっと待った。あなた、どなたですか⁉」


 私があわあわしながら尋ねると、初老の女性は厳めしい顔のまま頷いた。


「私は『|薔薇の誇り《superbia rosae》』の管理者――消えかけていたあなたの魂をこの世界に導いた者――ひとは皆、私を【始まりの魔女】と呼びます」


 で、出たぁ~この展開はどことは言わないけれど、いろんなところで見たことがあるやつ。

 ああ、うん、まあ私もテンプレート異世界転生者だったわけね。別にオリジナリティとかいいもん。どうせこっちはもうどっぷり転生ライフ送ってんだから。もう現世の――生身の身体がないんだし。

 そろそろ火葬されたのかな。

 供花たくさん置かれてたかな、お葬式。私に祟られないように。


「私、死んじゃったんだなあ……」

「残念です」


 機械的な口調だが、管理者さんは私に悼むような目を向けてくれた。ありがとう。ひとりでもその事実を知っていてくれると思うと救われるような気がする。

 まだ完全に受け入れられたわけではないけれど――もう、ここまで来たら私は「ローゼル・ベネット」として生きていく。その覚悟を決めなければならないということだった。


「幸運を祈ります。ご主人様(マイ・マスター)

「そういうのいいって、確かに私がシナリオ書いたんだけどっ」

「いえ。あなたは、我らの創造主ですから――自由に、生き(プレイし)てください」


 うん。

 ありがとう。腹を括るよ。この世界を愉しんでやるんだからねっ。前から満喫してただろ、って。そりゃ当然でしょ。自分の「大好き」を詰め込んだ場所を嫌えるわけなんてないんだから。どんな酷い目に遭おうとも。


「ローゼル!」


 もうとっくに表彰台を降りていたソウビが「遅い!」と文句言いつつ私を呼んでいる。

 ああ、あっちで手を振っているのはカデンツァとリューガ。エリアスはそっぽを向いているし、ルイーザは笑顔で拍手を送ってくれていた。


 いい感じのスチルと共に、きっとなんかめちゃハッピーなBGMが流れているんだろう。そんな想像をするとすこし笑えた。

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