52 初戦の相手は――。
くじ引きから三日後、いよいよ戦闘魔法競技会の開催日を迎えた。決勝戦だけ翌日だけど、準決勝終了まで私達はこれから5連戦である。
もちろん、勝てば――ではあるのだけれど……勝たなくてはいけないので5連戦で確定です。異論は認めません、いいね?
予選もないし敗者復活もない。
純粋に出場したいと望んだ者たちもとい、戦闘狂ばかりを集めた磨き抜かれた戦闘魔法の技術を競い合う場。
戦闘魔法競技会はエリュシオン魔法学院内外でも注目度の高い一大イベントだった。なんと大会の模様は学院のサーバーを使って世界中に《《有料》》配信される。あこぎだねえ。
競技会でめざましい活躍をすれば、将来うちで働きませんかといったようなスカウトが来たりする。そんなコネクションを得て魔薬の申し子、カデンツァは前回の勝利により研究資金をがっちり確保したのだった。
そして競技会が開催される二日間は学院の授業は休校となる。
競技会に興味がなければだらだら休日を楽しめばいいし、出店をやって儲ける子もいるから、なんか文化祭みたいだよね。カデンツァにおねだりして買ってもらったチョコバナナをもぐもぐ食べながら、私は会場内をぐるりと見回した。
みっしり。という形容がぴったり合うような過密状態で、用意された席をさらに座席を増やしたがまだ席が足りないと苦情が出ていた。
詰めかけた観戦者が思い思いの「推し」を応援していたがやっぱり一番声援がデカいのはルイーザだ。まあ予想どおりではあったが。
同時に複数試合が実施されるため、私達が試合中も「ルイーザ、ルイーザ!」とうるせえコールが聞こえるのでかなり気が散る。
なお会場で直接観覧するためのチケットは入手難易度が高かったようで、生徒たちの申込が殺到し、抽選倍率がかなりやばかったらしい。
E-フォンに初期から搭載されているフリマアプリで本来無料の観覧チケットが高額転売されていた。転売を推奨すんな、学院。
今回の前期戦闘魔法協議会は毎度おなじみの闘技場風のステージなのだが、いわゆるリング脇みたいなスペースがある。セコンドとしてリューガとカデンツァが控えている。
リューガがじろっと私を見て言った。
「気を付けるんじゃぞ」
「うーい」
「《《くれぐれも》》気を付けるんじゃぞ」
「そんな強調して言われなくてもわかってますって……心配性だなあ」
いくら私が美少女ヒロインだからといってそれは過保護が過ぎるというものですよ。
初戦の相手はなんと同学年だった。
しかも面識がある子たちだから実力もある程度知っている……負ける理由がないといっても過言ではなかった。何を心配しているんだか、ぷんぷんですわよ。
「……だから、やりすぎんなって言ってるんだってば」
「えぇ?」
ソウビがわざとらしくため息を吐いて、私を見遣った。な、なによ何なのよ……私は悪くないもんっ!
「ボクも心配だナぁ」
「先輩は私がボコられるのは良くてボコるのは嫌なんだよね?」
「ひっひどイッ……ボクはひよこチャンを心配しテイルだケなノに」
カデンツァが横から口を出してきたので反射で言い返してしまった。さすがに申し訳ないような気がしなくもないが「ンフフフ、ひよこチャンで遊んデいいのハボクだけ……フフフフ」と薄気味悪い呟きを聞いた。
うん、やっぱりこいつは駄目だ。




