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51 トーナメント、くじ引き

 その後、通常授業をこなしながら私たちは二人の師匠による訓練を受け、基礎としての魔法学力を高めていた。ひい……主席から落ちるのをカデンツァが許さなかったためである。必要なんだけどねお勉強、そうよ、確かにそうなのよ。


 魔法戦闘でつよつよになる、が目標になっちゃってたけど学生の本分は勉強なわけで。ソウビは言われなくてもちゃんとできる子。

 私は塾か家庭教師カテキョー、すなわちカデンツァがないと出来ない子。我らズッ友コンビの間でも、明暗が分かれてしまったわけだった。

 結局、相容れない存在なのね、私達……。


 そんなこんなで、戦闘魔法競技会コロシアムの一週間前を迎えたわけだった。

 この競技会、事前に成績によるふるい落としとかは特にない――出場したければ、誰が出てもイイ。という方式ではあったのだが思いの外出場者は少なかった。


『ルイーザ様サイコー!』

『学院の我らが親衛隊がルイーザ様のお姿を見守りますっ』


 という感じで、ルイーザ・プリムローズ様の親衛隊と言う厄介ファンによる妨害を気にしたものと思われる。

 近頃学院ではルイーザ派か否かで教室の座る位置さえも別れたり、カフェテリアの使えるテーブルが決まったりする極端な状況となっていた。

 このゲームを書き換えたのはほぼ間違いなく、私の同僚……坂野トモだ。なにしろルイーザは彼女発案のキャラクターだし――展開も、ほぼあの子が望んだとおりに進んでいる。

 シナリオが完全に、私が想定していない方向に動いているのだ。ゲームの中から私は介入しているわけなんだけど……このつよつよになった私様でも敗北してしまう可能性はある――外からの強制力。

 エラー修正によって。


 でもそんなんずるじゃん! 私は断固として戦うぞ、坂野トモ! あんたなんかに負けないかんね!

 それに私には……ちら、っと隣に立つソウビの姿を見た。なに、と若干嫌そうに眉をひそめて、でも確かに私の視線に気づいてくれる相棒。

 ソウビがいるからさ。


 さて、私達はエリュシオン魔法学院の講堂に集合している。

 全学年の1/5ぐらい、およそ100名の生徒たちがわらわらと集まっていた。

 なんと、これから前期戦闘魔法競技会(コロシアム)の組み合わせ抽選会が行われるのだ。ええっと、甲子園かな……夏の高校野球かな? いちおう言い直してみました。


「あのさ、ソウビ」

「だからさっきから何」


 あ、若干イラっとしている。さっきは「なんにも!」って誤魔化しちゃったからそのせいだろう。若い子は怒りっぽいんだから。ソウビはソウビで手鏡を取り出して肌の状態のチェックなどをなさっていた。

 いまいちおう、戦闘魔法競技会の概要とかを参加者に説明しているんだが――まあ教員からされるような説明以上のことは既に私たちはリューガとカデンツァから聞いている。

 あまり真剣に聞く価値がない、と言えばそうなんだけれど……可哀想でしょうが、せんせえが。大人が話しているときはちゃんと耳を傾けなさい。


「言っとくと私くじ運めちゃ悪いんだけど」


 では、代表者前へと先生が指示をなされた。

 これから集まった参加者で組み合わせ抽選を行う。不正などが行われないように、特殊な魔法がかかった魔法道具【くじ引きくん】を利用するとのことだった。

 どこをどう見てもただの箱にしか見えないんだが。

 本競技会の運営責任者である「魔法戦闘」担当教員、グリーヴ・ダンデライオンが何やら呪文《コード》を【くじ引きくん】に打ち込んでいた。おそらく、組み合わせを行うペアの数や試合数とかだ。 


「……べつに俺が引いてもいいけど。文句言ったら承知しない」

「言わない言わないっ」


 二回繰り返すと若干嘘っぽくなるけど、この重圧プレッシャーの中くじを引く度胸など私にはない。若者の怖いもの知らずな挑戦こそが、未来に羽搏はばたく明日を作ったりなんかするんじゃないかな、って思うわけですよ、私は。

 自分でも何の話をしているのかだんだんわかんなくなってきたので本題に戻すね。


 壇上にずらりを並んだ49名の生徒たち――彼らが順番に【くじ引きくん】に手を突っ込んでいった。

 彼らの背後には抽選結果を当てはめるトーナメント表が照射されている。

 ちなみにいま引いた男子生徒は8番……おっと、シード枠(初戦が免除になる)番号じゃないか。羨ましい。49の番号のうち、16組が初戦免除になる超当たりである。16/49だから割と引ける確率は高い。

 そしていよいよソウビの順番が回って来た。


「いよっ男前! ソウビならやれる! 幸運の女神さえもときめかせちゃうっ」

「おいベネット。うるさいから黙ってなさい」


 グリーヴ先生に注意されてしまった。しょんぼり。

 でもって、ソウビが引いたのは……。

 ああ……。


「お、おかえり」

「……」


 抽選会が終了し、ソウビが私の隣に戻って来た。ざわめく生徒たちの喧騒で講堂が満ちていた。解散の号令があったのでもう出て行ってもいいのだが、ソウビは茫然とトーナメント表を眺めて突っ立っていた。


「もういいから責めろよ……」

「えっ、いやそんな」

「くそ、自分でも引くぐらいミスった」


 ソウビにしては珍しいほどの言葉遣いの雑さだった。わりと綺麗な言葉を選びがちなのに。私と違ってね。まあそれも仕方がないか。


 私達、ローゼル・ベネットとソウビ・ラスターシャ・有馬組は――トーナメント表の一番右端、優勝するまで怒涛の六連続の対戦が組まれてしまった。


 ちなみに注目のルイーザとエリアスはちゃっかり、1回戦免除の当たりを引いていた――なあ、ほんとに不正はないんか?

 しかも、あっちも私達も全勝しないと対戦しないようになっている。


 これ絶対ストーリーなんか弄ってるでしょ、なあ坂野よ。

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