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46 呆気ない敗北


「ぴえん(৹˃ᗝ˂৹)」

「なんじゃその若干イラっと来る物言いは」


 すんませんねえ、こちとらアラサーなもんで若ぶってみるにしてもちょっと微妙に古い若者言葉しか使えんのよ。理解してくれとは言わないよ、ただ痛々しい物体を見るようなまなざしは私のハートにぐさぐさ刺さって致命傷になります。


「大体おぬしは動作が大きすぎるんじゃよなあ。仕掛ける判断は悪くなくとも殺気が駄々洩れでは、トーナメントを勝ち進むことなど到底できぬぞ」


 リューガが、どん、と私様というお椅子に体重をかけた。

 重い。重いんですけどこの筋肉だるま! ちなみに私はあっさり負けてしまった罰ゲームとしてリューガの「椅子」となった。椅子ってつまりどっかと私のうえにあのデカうさが座ってるってことだ。


 むしろご褒美です、なんて言うと思った――? そんなわけなかろうがっ。


 四つん這いになってあの巨体に腰を下ろされると正直骨折の危機さえおぼえるし、手も足もぷるぷるしているし、べちゃっと床に潰れることを繰り返し――ただ、強制的に元の姿勢に戻されるような魔法がかけられていたため逃れることもできなかった。

 

「そもそもソウビは屈辱的な目に遭ってない! 私達は一蓮托生なのにずるいっ、パートナーなんだから一緒に映す価値無しになってよ」

「あんたはまったくもって意味不明だよ」


 呑気に明日の授業の予習なんかしてやがる。まじめか。あの子は確かにまじめなんだけどさ。ちょっとは私のことを気にしてくれ。


「いいなァ、ボクもひよこチャンで遊ビたいなァ」

「『で』って言うな、『で』って」


 カデンツァは私のことをちょっと頑丈な玩具だと思っている節がある。か弱い乙女なんですけど⁉ 憤慨する私をよそにリューガはカデンツァに「しかしなあ」と話しかけていた。


「手加減してやったというのにこのていたらく……才能ないんじゃないかのう」

「いやいやいや、ちょっとぉ⁉」


 見切りつけるの早すぎやしませんか。

 さてはなんかめんどくさくなってきたんでしょ。リューガおじいちゃん、って飽きっぽいところあるっていう設定だったし。そんな設定にすんなし過去の私! 自分の首絞めてるよ⁉


 べしゃっとつぶれた私からようやくリューガは退いてくれた。もっと早く許してほしかったです。這いつくばったままの私の前にしゃがみこんで言った。


「諦めた方がよいとおもうぞ?」

「えーん、そんなぁ……そこをなんとか、なんとかリューガ大先生のお力でっ」


 小悪党じみたお願いをしてしまったがこちらは切実なのである。

 黄金色のお菓子を差し出したっていいくらいなのですが、私ほぼ無一文でして……仕送りは教科書とか文房具に消える始末なので……。寮があるから食費がかからなくてよかった。


 主人公が地べたに張り付いている時点でもうヒロインとして終わってるんですが、これ以上ダサいままでいるわけにはいかない……。

 乙女ゲームに出てくる悪役令嬢、死すべし。いや殺す気はないんですけども。


 とりあえず私の開発したゲームからは排除するんだって――こと、で。

 ん?

 んんん?


「ちょっとローゼル、どうした……のっ⁉」

「うわあああああああああっ!」


 気遣うソウビの声に私の奇声がもろ被りした。ごめんごめん。


「あっ、あ……ルイーザ、あの子もしかして……」


 新世界での記憶の中に埋もれつつある、職場でのミーティング風景。くそムカつく同僚のプレゼンに動揺するチームメンバー。なにしろいままで作って来たプランを真っ向から否定するような提案だったからね。


 企画書の中に描かれていた主人公候補としてキャラデザされた「悪役令嬢」の顔と名前。ばっと私が放り投げて舞い散る企画書の束の中から、かろうじて読み取れた。


『ルイーザ・プリムローズ:悪役令嬢。攻略対象に何故か気に入られたうえ、ド田舎出身のヒロインを圧倒する実力者』


 そのときようやく私は、同僚の名前『坂野トモ』を思い出した。

 薄情だって? うるさいな、最近顔も見てないし話もしていないやつの名前なんて覚えておく必要はないでしょーが。

 ていうか、こ、こいつのせいでわたしは、もしやこんな目に遭っている?

 悪役令嬢をキャラデザしちまった同僚のせいで、私のヒロイン生活が苦難の連続になっているっつうことなんか⁉


 あ、あの女ァ~~~~~っ!!



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