45 爆発と喧嘩は学院の華、とは言いませんが
私の落下地点を中心に、すさまじい轟音に満たされた。
濛々と立ち込める土煙が上がり、煙の中のようすは何も見えない。
それもそのはず、ソウビが私が落ちる地点を狙って特大の魔法弾を放ったのである。普通なら即死間違いなし、セーブデータからのロードを要するような状況だ。
仮に直撃したとすれば、木っ端みじんで肉片しか残っていないかも。
で、でも、死なないはずだから。そこんところ、大丈夫なようにカデンツァがいい感じに防御と回復の魔法障壁築き上げてますから。だよね? ねっ⁉
ただ――どうやってこう、瀕死(ほぼ死んでる)から再生するわけ?
うっ、やだな……肉片からじわじわ手とか脚とか生えてきたりするの。想像するんじゃなかった。
「うわあアアああああァあアっ、ひ、ひよこチャン……ッ! ソウビクン、キミと来たラなんテ危険ナこトを」
カデンツァから、くそデカボイスの悲鳴が上がる。
美少女の絶体絶命のピンチ――息を呑む観客たち、煙の中から真の主人公たる、そう! この私が闘技場というステージに舞い降りるのだ。なんなら一曲披露しちゃおっかな。十八番は秘密です。
爆炎の中に屍(※戦闘不能状態)と化した私を心配し、目を凝らしているだろう先輩方には申し訳ないが……。
「……ああッ、身震イしチャウなァ……この煙が晴れたとキ、ボクの愛弟子がコんがり焼けテいたラ……ンンンッ、四肢がばらばらで、無残な状態だったら……ムフフ」
いやまったくもって申し訳なくないや、カデンツァ喜んでるし。それどころか興奮のあまり身もだえしてるわ。知ってはいましたけど、センパイはとっても最低野郎でいらっしゃいますね。
というわけで心置きなく隙を突かせていただきましょうかね。
爆炎に隠れて私様は華麗なる着地――しゅたっ。
もちろん無傷なのです。防御魔法で全身を高強度の耐熱、耐衝撃の装甲状態にしておいてよかったあ。さすが、やはり基本は大事ですよねカデンツァ先輩。
よっしゃいくよソウビ、いまこそふたりの連携技を見せるときだッ! ゴールデンコンビの名に恥じない奥義をかましてやろうじゃない。私達の愛のダブルスでっ、この変態どもを成敗せねば。
「ふにゃうっ」
こそこそ気配を遮断しつつ煙に紛れ、ソウビへの強化呪文発動に備えていたときだった。
なんの前触れもなく、びたん、と忍んでいたはずの私は地面にへばりついていた……うひえ。
雨上がりの朝の蛙よろしく大の字になっている。いやふざけているわけではないんです。
なんか上からすごい圧みたいなのがあって身体が動かないんです!
「くく、奇襲か。考えたのう? だが詰めが甘いな――落下の衝撃を爆破の衝撃に紛れさせ、緩和させるとは」
「こ、この爺口調はっ、貴様、ウサ耳かっ!」
「ウサ耳呼びはやめい。魔法弾に攻撃魔法を放って相殺――威力を殺しているのが丸見えじゃったぞ。何をしようとしてるのか、バレバレじゃ」
うぐ。
あからさまにため息を吐くんじゃない、ソウビ。お願いだから使えないやつ、って冷え切ったブリザードのような視線だけはどうかご勘弁を。
「目くらましはわからないようにやらねばな」
儂のように、と言わんばかりのドヤ顔でリューガが、這いつくばって私の前にしゃがみこんでいる。
大体いつのまにここまで来たんだこのウサ耳マッチョは。闘技場の端らへんにいたの見えてたぞ。




