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45/61

44 5パーセントで勝機を掴め。

 パンチパンチキックキック飛び蹴り回し蹴り、その隙間を埋めるようにして火焔弾。いや格闘ゲームかな?


 これ支援役に浴びせる攻撃じゃないんですけど、と思いながらもどうにかこうにかさばいていく。

 攻撃についていくために速度向上の呪文コードをセットして、即座に展開したがそれでもリューガのスピードのほうが上回る。ケモ耳族だからでしょうか。動きがずいぶんと俊敏だ。


「ほっほう、楽しませてくれて感謝するぞ、嬢ちゃん」

「う、ウサ耳揺らしながら言うセリフじゃないですけどっ」


 ひょこひょこ垂れ耳が動いて可愛い。

 殺意を感じる眼差しとのギャップにめろめろ、ワタシ、トテモジャナイケド集中デキナイ。頭の中の独りごとでさえも片言になってしまう。

 えーん、およそ5パーでもかなわないなら競技会なんて無理じゃんか。


 いや、待てよ……カデンツァとリューガは私達の師匠役に徹するみたいだし――これはチャンスありでは? 前回優勝者不参加だよ?


「っひぇ!」

「余裕そうじゃな、考え事とは」


 首をむぎゅっと鷲掴みにされた。無意味に足をじたばたさせてしまう。

 うわ浮いてる浮いてる、爪先地面から浮いてる! ほわ、こういうのってほんとにあるんだ――じゃなくてぇ。


 ぐえ、絞まってるっ、まじで、首が、絞まる!


 まるで鶏の下拵えみたいに手軽に首の骨をくきっ、とイっちゃわれそうなんですが。やめて塩もみハーブで味付けしないで。ていうかそもそもウサギなら草食動物では……あ、尻尾は狐っぽいんだった。


 さすがにる気はなさそうなので、わずかに力が緩められたすきに、リューガの腕を掴んだ。

 そのまま掌に刻印した高速発動呪文(コード)を展開する。


「やめてっ……て」

「む?」

「言ってるじゃないですかぁ!」


 じゅ、と肉が焼ける音がした。うう、あまり使いたくなかったのに。

 手の中に仕込んであった魔法薬【酸撃《acidus》】をぶちまけるという地味な手法だが、それなりに効果はあったようだ。ぱっと私の首から手を離したリューガの腹に左足で蹴りを入れる。


「うえ。めっちゃ、くちゃ、かったーい……!」

「ほほ、その程度のキックでは効かんのう。むう……?」


 次の瞬間、ぼよん、と勢いよく私の身体が吹っ飛ばされた。


 リューガからの反撃をまともに喰らった――わけではない。

 リューガ自身も不思議に思っているみたいだ。よっしゃ。このままこのまま。

 勢いよく私が飛んでいった先は、リューガとは真逆、対角線上だ。


 そしてそこには――カデンツァとソウビがいる。


「ソウビお待たせ! 支援バフかけまくっちゃうからね」

「まあどうせあんたのことだし、期待はしないでおいてやるよ」

 

 いちおう解説だけしておこう。

 リューガの硬い筋肉はそもそも鋼みたいなので――おそらくとんでもなく固い強化呪文(コード)が発動している――その硬度を利用したのだ。

 私の軸足と逆、蹴りをかました方の足に【反射《reflecto》跳躍《salire》】を展開、それなりの私の蹴りに背後への推進力を付与したというわけです。


「地道な積み重ねって大事ですよね、カデンツァ先輩ししょー♡」


 アラサー社会人の運動神経から、異世界主人公キャラの運動能力S+を獲得しているのでムーンサルトだって出来ちゃいます。若者ってすごい。カデンツァのもとでの修行は別にお勉強だけじゃなかったのだよ。普通に筋トレやランニングなどもやらされていました。


 そして私の「ししょー」呼びにへらへらしているカデンツァ、まじでキモいけど好都合、だ、ぜ!

 

「着地ハボクに任セるとイイよォ!」

「任せるかこのド変態がっ」


 ふぎゃ、と潰れたような悲鳴が足元から聞こえた。

 ふ、他愛もない。


「……あんた、一段と頭おかしくなったよね。カデンツァ先輩に毒された?」


 失礼だな、相棒! げしげし、と踏んで足もとで伸びたふりをしているカデンツァにご褒美をくれてやる。


「いいからさっさととどめ刺して! こいつ戯れて(あそんで)るだけなんだから」

「ンフフフフフ、ちょット飽きテきチャっタなァ……雑に踏みツケられテも愉しクナイんだよネ」


 私の足首を掴んで放り投げる。うわ、やっぱりじゃん、もーっ! 天井すれすれまでの高さまでぶん投げられた――おいおい、いつ用意してたんだよそんな強化呪文(コード)。ほんとは非力なくせして、こんなソラ高く女子を放り投げるなっ。


 落下、地面への衝突までの速度を考えて――出来うる最善を……そのときソウビとぱちっと視線があった。私の意図は理解していることだろう、おそらく。個別練習の名のもとに引き離されていたとしても、しばらくろくに話せなくたってわかるよ。


「私たち、ズッ友だもん!」

「相変わらずあんたの言うことは意味がわからんっ!」


 私とソウビの声が重なり合い、直後――激しい爆発音が闘技場に響き渡った。

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