31 カデンツァ(変人)とその友人(奇人)
「自己紹介モ済んダところデ……ボクはキミたちを出来るだけ強クして、学期末の【戦闘魔法競技会】デ好成績、つまリは優勝さセようト思ってイル」
リューガが「ほっほう」と顎を撫でながら笑う。
何だ何だ、いくら撫でても髭はそこにないというのに意味深な態度じゃないかモフ耳モフ尾。感情に連動しているのかぱたぱたぴくぴく動くのが愛らしい。
こういうのがモフ属性の良きところよね。なでなでして思う存分モフりたいなぁ……特に尻尾。
「嬢ちゃん、視線がなんぞ怖いのじゃが……」
悪寒を堪えるように、リューガはノースリーブの腕をさすっている。寒いのは筋肉美を見せつけんとするそのご衣装のせいじゃないですかね。
まあそのけしからん衣装は、私が依頼したとおりの改造制服(上着オフver)なんですけれども……ということは私のせいか、結局。
反省します。
気を取り直して、と言った調子でこほん、とリューガは咳払いをした。
「優勝、なぁ……儂も先ほどのぬしらのお遊びを観戦しておったのじゃが、見込みこそあれど、それほどまでの実力者とは到底思えなんだよ」
友好的な雰囲気を醸しだしておきながら、爺口調のウサ耳はわりと手厳しいことを言った。いちおう最高学年だし、リューガはソウビも憧れるほどの強キャラ枠なのよね。マッチョで可愛いけど。
結局何回目の第四学年であるのかは作中で明かしてはいないが、リューガの外見は青年――おじ様ではない。
カデンツァよりは年上だろうが、ラルヴィーン族はヒト族よりも長命な種族だ……この共通ルート、もといナルシストモブことソウビくんルートに入りつつある現在、深入りするタイミングではないだろう。
「のう、カデンツァ。それはおぬしも理解っておろうな」
「グフ、もちロんさァ」
そんな私の思考をガン無視してカデンツァとリューガは二人で話していた。わざわざこのレクリエーションルームに呼びつけて、その呼び出しに応じるあたり仲がよろしいのかしら――開発者の私に記憶はないが?
こんな会話シーンあるなら特典ドラマCDでもっと絡ませたいレベルだし、ユーザー間の二次創作でリューガ×カデンツァのカップリングが流行する可能性すらある、この危うい距離の近さ。
背が高いキャラクター二人並ぶと圧がすごいな。その点……ちら、とソウビを見て私は安堵の息を吐いた。
「いまなんか失礼なこと考えなかった?」
滅相もございません、ソウビ様。女子生徒である私めと背の高さがそこまで変わらないというのもチャームポイントのひとつだな、と思ったまでです。背の順で並ばされる風習がなくてよかったね。
「ソウ……だかラコソ、ボクらでこのひよこチャンたちヲ育てルのはどうカナと思ってネ。このフタリをたっタ二か月デ四学年最強ニするんダ……ずいブん、夢ノある話だト思わないかイ?」
なんと、願ってもない流れになっているじゃありませんか。
前回優勝者のカデンツァが私達を育成選手に選んでくれたってことですか? しかもモフ耳パイセンもおまけについてくるんですか? お買い得商品じゃないですか、やったね! 涙を流して喜んだ私の隣にいた空気の読めない相棒が、この幸せな気分に水を差した。
「あんた馬鹿? そんな美味い話があるわけないでしょ……カデンツァ先輩。俺たちにどんな見返りを求めるつもりですか?」
「こらソウビ! カデンツァ先輩様のご厚意に決まってるでしょ、すこしはひとを信じるってことを覚えなさい!」
めっ、と年上の威厳を見せて叱ってみた。
いつもたしなめられるのは私だけれど、たまにはこうやって青少年に道徳的指導をせねばと思うわけですよ。
「フフ、そうだネ。ボクにとってもメリットがあるようニさセてもらウつもリだよ? 時間といウカけがえのナい資源をキミたちに割くんだ……ボクの時間は安くないんダヨ、ご褒美くらイもらわないトね」
「無償の愛じゃないんですか⁉」
愕然とする私を見て、にやとカデンツァが口角を上げる。
「なにもかも無料、フリー、なんて……下心がアリます、と言っていルみたいデ逆に胡散臭いトハ思わないノかイ?」
「タダより安いものはないんですよ?」
当たり前のことを格言風に言ってみても格好がつかない。だって無料は高くないもん、無料だもん。お安いもん。
そういうことじゃないってわかってるけど、この曇りなき主人公補正、きらきら魔性のアイズ――目からビーム(※呪文発動)打てます――を喰らえ!




