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26 密林のマッドサイエンティスト

 遊戯室レクリエーションルームと名付けられた、カデンツァ専用の魔法戦闘「ルーム」はまさかの密林だった。


 なんということでしょう……。

 カデンツァが魔導装置を起動すると、あっという間に無機質な部屋が、草木生い茂るジャングルに。

 油断していると物陰から大蛇とかジャガーとか出てきてそうだ。職人の技が光るリノベーションに脱帽してしまう。

 なんか暑いし。湿度も高いみたいだ。もうすでに身体が水分を欲している……いますぐに水が飲みたい。自動販売機とか置いてないかな? もしくは求む、コンビニエンスなストア。


 当のカデンツァの姿は見えないのだが、例のぬめっとした艶のある美声が降って来た。


『ひよこチャンたち、どうカナ、ボクのフィールドは。これガ現実じゃなくテ残念だヨ。見渡ス限リ、喉かラ手が出るほどに欲しイ材料ばかりだァ……』


 うっとりした調子で発せられるカデンツァの声に、私は眩暈を覚えた。

 くそう、この天の声方式もあの変態の作戦だとでも言うのか! うっかり術中にはまってしまうじゃないかっ。


「ちょっとカデンツァ。俺たちの勝利条件は何? あんたをK.Oすればいいってこと?」

「そ、ソウビくん、あなたときたらまだ姿も見えない相手にそんな強気で……」


 ド変態とはいえ先輩を先輩扱いするのもやめたというのか……恐ろしい子。

 見ているだけで危なっかしい。生きづらいだろうな、この喧嘩っ早さは。そこがソウビのいいところだとは思うのだけれど。



『ン~、そうだネェ。一対二でボクが不利……ではアルけど、地の利もアルし、能力は圧倒的ニボクの方ガ上……ハンデくらいあげたいトコだけれド、キミたち優勝するつもりナんだヨねェ? 全大会優勝者のボクニ、負けてイルようじゃァ、夢のマタ夢だヨ』

「……それもそうか」

「納得しちゃ駄目ぇ……! 私達これから強くなる気満々なので、とりあえず胸をお借りしたいです!」


 強豪校に練習試合を挑む監督の気持ちでソウビの頭を掴んで強引に下げさせた。


「こんなやつにぺこぺこするなんて正気⁉」

「処世術を学びなさいッ、これが大人のやり方なの! 最終的に勝利するために必要とあらば媚びるよ、私は……」


 ソウビにみっともない大人の姿勢を見せたくはないが、こっちもあのクソダサ二つ名返上と単位取得という大いなる目的がある。必要な犠牲なのよ、これも。私のちっさい自尊心プライドなんか捨ててやる。


『そウだネぇ、ハンデをあげよウか。通常ノ魔法戦闘でハ、勝ち目はゼロ……いまコノ瞬間にモ、ボクはキミたちをK.Oすることは出来チャウんだけド』

「さすがです、前回優勝者様!」


 私のわかりやすすぎる媚び方にソウビが睨んでくる。だからごめんて。


『そうダァ。キミたちの勝利条件ハ、ボクを《《見ツける》》コト。それダケにしよウ……簡単ダろウ?』

「あぁ、なめてんのか……⁉」

「ソウビくんっ! カデンツァパイセンのご厚意に心から感謝しましょうっ、ねっ!」


 とりあえず痛い目に遭うことはなさそうだ。だってただのかくれんぼなんだもん、私たちが鬼! よっし、頑張っちゃうぞぉ。この生い茂るジャングルの中であの変態見つければいいんでしょ、楽勝らくしょ……うか、ほんとに。

 私を小馬鹿にするようにエキゾチックな鳥の鳴き声が聞こえてきた。

 

『ただシ、制限時間は設ケさせテもらウ。キミたちがボクを見つけラれなけレば、ローゼル・ベネットチャンはボクの実験ニ全面的ニ協力しテもらウ……安心してネ、素敵ナ首輪をZOMAMA(通販)で買っておいタんだァ』

「乗った」

「ちょっと私は了解してませんけども⁉」


 そんなのカデンツァ・ウィステリアルートのバッドエンドとほぼ同じじゃねえか。檻に入れられちゃうやつじゃん、それ!


「勝てばいいでしょ、勝てば」


 なんだかどうにも嫌な予感しかしないんですが。

 張り切るソウビと高笑いする天の声……どっちも一旦、ボイスオフにしたい。不快指数が増していく密林の中、私はぐったりと力が抜けていくのを感じていた。

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