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しっちゃかめっちゃか怪談物語  作者: 七海トモマル
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怪談:真空パックの疑いあり

俺は探偵。

調べてほしいと依頼されたら大抵のことはする。

ただ、そんなに有能ではないので、

仕事をスマートにこなすことができない。

泥臭い汚い探偵だ。


今回の依頼は、

浮気調査だそうだ。

聞く限りでは、すぐに証拠が集まりそうに思えた。

しかし、どうにもおかしい。

依頼人は妻。

夫の調査をしているが、

どうにも、浮気の気配がするのに臭いが希薄だ。

俺の言葉では、わかりにくいのは承知だけど、

多分この夫は浮気をしている。

しかし、臭いがしない。

女の臭いもしないし、

ゲイの可能性も探ったけれど、

その臭いでもない。


俺は張り込みを続けて、

まもなく、夫が車庫にこもっている時間をとらえた。

車庫は自家用車一台分の建物。

シャッターを閉めるタイプのものだ。

ここで密会をしているのかもしれない。

しかし、肝心の相手の臭いが希薄だ。


俺は依頼人である妻に掛け合って、

車庫のカギを借りる。

夫は近所に用事があって、自家用車は置いてある。

調べるなら今だ。


俺は車庫の中を見回す。

普通の車庫。

ただ、電動のエアーポンプがある。

結構大がかりだ。

空気を入れたり抜いたり。何に使うのか。

次に俺は、車のトランクを開こうとする。

かすかだけど、臭いがする。

ここか。


開けたと同時に、帰ってきた夫。

そして、眼前にあるのはトランクに横たわった、

ビニールに包まれている、真空パックの女。

服はつけていない。

おそらく死んでいると俺は思ったが、


「すごいだろ、真空パックだから、いつまでも愛せるんだ」

夫はそういいながら、

ふらふらとトランクに近づき、

女の入った真空パックを開く。

ビニールに空気が満たされる。


はたして。


俺の目の前で女の指が開閉を繰り返す。

臭いがする。

今までパッケージされてたから、わからなかった臭いが。

新鮮な腐臭がする。

生きているのに、

いや、死んでいるはずなのに。

女の目が俺をとらえた。


人間でない疑い、あり。

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