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しっちゃかめっちゃか怪談物語  作者: 七海トモマル
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怪談:手回し充電できる新入社員

新入社員は爽やかで変なやつ。

夏のころには気圧をあげて、ぐったりしてた。

あの星空はきれいだったけれど、

仕事に支障が出るようなら、そんなことしなくていい。

社会人として、会社に勤める以上、

調子悪くしてはいけないと思う。


秋が深まり、

件の新入社員も仕事を覚えてきた。

要領が悪いわけではないけれど、

時々いっぱいいっぱいになっている。

先輩として、できる限りはフォロー。

何でもできる人間はいないと思ってる。

だから、できるようになればいい。

努力はそういうものだと思う。

新入社員は努力している。

そういうところを見ていると、普通なんだけど、

あの、気圧をあげたのは夢だったのかなと思う。


ある日。

台風が近づいてきていて、会社は強い雨風に包まれていた。

そんな時でも仕事。

ただ、パソコンが使えなくなったら、よくないなと思っていた。

その矢先に停電。

オフィスはどうにも動かなくなった。

直前にファイルの保存はしていたけど、

新しいことができないし、パソコンのメールも使えない。

非常用電源なんてあっただろうか。

そのとき。

「先輩。停電してると、よくないですよね」

件の新入社員が声をかけてきた。

「そうね、仕事がまともにできない」

「それじゃ、充電してきます」

「何の?」

「会社の」

新入社員は何ともないように答える。

「どうやって?」

「手回し充電器が非常用の段ボールに入ってるんで」

「はぁ?」

「それじゃ、いってきます」

新入社員はそれだけ言って席を外した。


逃げたのかなとも思ったけれど、

仕事に対してまじめだから、それはないと思うし、

ただ、以前気圧をあげた時のように、

何かするのかもしれれないと期待もした。

はたして。

少しして会社の電気が復帰。

隣のビルがまだ真っ暗なので、

このビルだけが復帰したようだ。


新入社員はふらふらと帰ってきた。

席について、ため息を大きく。

明らかにぐったりしている。

「おつかれ」

コーヒーを買ってきて、新入社員に。

「これで仕事できますね」

「そうね」

「手回し充電って、ビル一つ分は大変でした」

「そう、どうして大変なのにやったの?」

「役に立ちたいんですよ」

「大丈夫よ」

珍しくそんなことを言ったけど、新入社員はぐったり。


気が付かないならいいの。

褒めることは苦手だから。

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