表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しっちゃかめっちゃか怪談物語  作者: 七海トモマル
18/21

怪談:いまどきの回数券

通勤通学ラッシュから外れた時間。

学生をやめかけている私は駅にいた。

学校がしんどくて、それでも家にはいられなくて、

友人はいなくて、行き場がなくて、

非行はしないけれど、たぶん不良だ。

だらだら地方都市の駅を歩くと、

ふと、見慣れないものが落ちていることに気が付いた。

拾ってみると、

「回数券?」

スマホで調べると、

特定区間を指定して、10枚分の料金で11枚つづりらしい。

1枚お得なのか。

納得したところで、その回数券を見る。

1枚使われたらしく、10枚つづりで、

『現実→夢』

とあった。


不意に、この現実から逃げたくなった。

そうだ、夢に逃げられたらどんなに素敵だろう。

だらだら駅で時間をつぶすだけの現実から、

素敵な夢に逃げられたら。

素敵でなくてもいい。

ただ、深く眠りたい。

休みたい。

走り続けなくては倒れるような、

そんな、いまどきという時代から逃げ出したい。


私は回数券をじっと見る。

夢。

現実の対として生き先になっているけれど、

私の夢って何だっただろう。

将来の夢として、小学校あたりは作文も書いたかな。

何になりたかっただろう。

あの頃は未来が輝いていた。

将来は夢であった職業に就いて、

笑顔で働く大人になれると信じていた。


どこでこんな道を歩くことになっただろう。

自分は何になりたかったんだろう。


「おや」

声がした。初老の男性の声。

「ああ、あなたが拾ってくれましたか」

「これ?」

「はい」

男性が探していたのだと判断して、回数券を渡す。

「お礼と言っては何ですが、1枚使いませんか?」

それは、夢に行ける回数券を、だろう。

男性は回数券を切り離し、1枚渡す。

私は受け取り、しげしげと見つめ、

びりびりに破いた。

「私、その路線に乗って、夢には行かないと思うので」

私は楽ができない性分らしい。


私はその場を離れ、一度家に帰ることにした。

昔の夢を思い出すために。


そして、初老の男性は消え、

回数券は1枚減ったまま、

また、駅のどこかにひっそり落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ