お土産パパ
パパ:パパが帰ってきたよー。
息子:わー、僕目線の一人称でパパが帰ってきたぁ。
パパ:今日はお土産があるんだ。
息子:何だろう、初めてだ。
パパ:しかも3の倍数!
息子:できれば計算された数字で教えてほしい!
パパ:4個だ、4個。
息子:3の倍数じゃなかった!
パパ:そうだっけ、パパ酔っぱらっちゃってるのかなぁ?
息子:酔ってる人のお土産かぁ、ちょっとハードル下げないと。
パパ:まずはこれ、グラスだ。
息子:小学五年生に食器は渋いスタートだ!
パパ:良い感じだったから、もらってきたぞー。
息子:えっ? 居酒屋とかのヤツを勝手にもらってきちゃったのっ?
パパ:いいだろう?
息子:多分良くないよ! 明日返しに行かないと!
パパ:うちの息子は真面目だなぁ、そんなんじゃ政治家になっちゃうぞ。
息子:政治家に嫌悪を抱いているほうの人の物言いだ!
パパ:政治家になんてなったら、足引っ張られるぞっ。
息子:そういうものなのっ? それともただの偏見なのっ?
パパ:まあまあ、そんなことより、お土産、お土産。
息子:確かにパパのイメージ話よりも今はお土産が大切だ!
パパ:次のお土産は削り屏風だぞー、屏風をちょっと削ったヤツだー。
息子:お店の屏風、削っちゃダメだよ!
パパ:いやでもデカい屏風だったし、いいだろう。
息子:ダメだよ! 屏風はデカければデカいほどダメだよ! 高値だよ!
パパ:そんな真面目なことばっかり言うと、政治家になっちゃうぞ。
息子:真面目なこと言ったくらいでならないよ!
パパ:政治家になると襲撃されちゃうぞ?
息子:そんなことないよ! どんなイメージだっ!
パパ:次のお土産はこちら、最中だ。
息子:急に普通になった! でも小学五年生が喜ぶ食じゃない!
パパ:でもほら、この最中の箱の下のほうを探ってごらん。
息子:箱の下……って! 箱重っ! 何が入ってるんだ!
パパ:ささっ、探ってごらん、探ってごらん。
息子:わ、わぁぁああああ! 金の小判だぁぁぁあああああああ!
パパ:全部あげるよ。
息子:何か怪しいよ! 僕には難しい世界かもしれない!
パパ:そんなこと言わず、パパのお土産なんだから受け取って。
息子:これ正式な社会のヤツっ? これって正式な社会のヤツなのっ?
パパ:そんなことを気にするなんて真面目だな・・・
息子:政治家になっちゃうぞ、でしょ! いやそれよりも!
パパ:政治家になんてなったら、根こそぎ奪われるぞ?
息子:えっ? どういうことっ? パパって政治家から根こそぎ奪う仕事してるのっ?
パパ:最後のお土産はこれ、SDカードだ。
息子:何が入ってるのっ? 何が入ってるSDカードなのっ?
パパ:いや情報はもうこちらで消去したぞ、でも復元するんじゃないぞ?
息子:そんないわくつきのSDカード、お土産にしないでよ!
パパ:そんな真面目なことばかり言ってると・・・
息子:政治家になっちゃうし、パパみたいな人たちに襲撃されるんでしょ!
パパ:そんな、パパは別に悪者じゃないんだよ。
息子:どんな理由があっても襲撃しちゃダメだよ!
パパ:政治家のほうが悪者なんだよ、我々はやらなければならないんだ。
息子:急に”我々”とか言い出した! 組織になってきた!
パパ:でもパパね、ちょっとミスしてしまった。もう会えないかもしれないんだ。
息子:急展開! えっ? どういうことっ? パパとはもうお別れなのっ?
パパ:この4つのお土産を形見として、持っていてほしいんだ。
息子:嫌だよ! 主にSDカードが嫌だよ! SDカードだけはすぐ処分するよ!
パパ:的確な判断だ、それならきっと反政府組織・不明人に入れるよ。
息子:変な組織名出てきた! パパの組織じゃん!
パパ:とにかくこのままでは家族を巻き込んでしまうから、パパは行かなければ。
息子:そんな! 突然だよ! あと地味にグラスの形見も嫌だ! 普通に割れる!
パパ:金の小判を売れる店はもうママに言ってる、グラスは持っていてほしい。
息子:段取りを言わないでよ! 本当にお別れみたいに言わないで!
パパ:さよなら、タケル……。
息子:パパぁぁああああああああああ! ……いなくなってしまった……。
グラス、あと削り屏風……クソ、クソぅ……形見って!
もっと日々寄り添っていたアイテムじゃないのかよ!