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23話⑶【海にて】

 

「もー! びっくりしましたラナージュさま! まだドキドキするー!」

「ふふ、だって本当のことですもの」


 頬を紅潮させて嬉しそうに声を弾ませるパトリシアと、上品に微笑むラナージュ。

 助けるにしてもめっちゃダッシュしたなと思ったけど、多分やってみたかったんだなアレ。


 見事な百合の花を咲かせましたで賞をあげたい。

 男なんかお呼びでない感とても良い。眼福。

 

「ありがとうございました、でん……アレックスくん」

「簡単に触らせるな」


 俺のものなんだからと言わんばかりの台詞。友人のくせに。

 いつもの黒髪三つ編みバージョンのアレハンドロは腕を組んで顰めっ面だ。


 その顔を見て、アンネがしょんぼりと項垂れる。

 ビキニの上に着たふんわりとした白いワンピース型の水着の裾をぎゅっと握っている。


 まだ触られてなかったからそんな不機嫌にならなくても。触らせるなってのも無茶な話だし。

 

「ネルス、大丈夫?」

「大丈夫じゃない……まだ鳥肌が……」


 こちらはパラソルの下で体育座りをしているネルスの背をエラルドが撫でている。

 大丈夫じゃないって返事が素直でかわいいな。

 気遣わし気に眉を下げるエラルドとは反対側にバレットもしゃがみ、黒い髪を撫でた。


「筋肉無くて細くて小柄でも、どう見ても男なのにな。俺なら絶対いけない」


 このタイミングで出てくる台詞じゃなさすぎてびっくりだ。すごい真顔だし。


「バレットなんてどっかいってしまえ」


 そりゃそうだ。

 ネルスは膝に顔を埋めてしまった。


「なんでだ? いける方がいいのか?」


 バレットは本気で不思議そうな顔をしている。

 いや、なんでだじゃなくて。

 良い悪いは人それぞれの好みとして、小柄で細いのはネルスのコンプレックスだから。


 でもやりとりが面白くて笑ってしまいそうになった私は、なんとか真面目な表情を保とうと顔に力を入れる。


「真面目に言ってるんだ。少年趣味のやつはモテないから女の代わりにしてるのかって思ってたけど。こうして見ると同じ肉付きが良くないのでも、ネルスとパトリシアじゃ全然違う」

「肉付きが……」

「良くない……」


 ネルスとパトリシアは完全に「ガーン」という効果音が似合う表情になっている。

 なんでトドメを刺したんだよ。


 パトリシアまで被弾したじゃないか。とんだ流れ弾だ。

 確かにパトリシアは細身で色々な肉付きが控えめだけども。

 だから胸元にめっちゃフリルのついた水着着てるんだろうな。青いセパレート水着、かわいいし似合ってるよ大丈夫。


 あと、2人には悪いけど私の腹筋にもトドメ刺されそうだわ。

 涼しい表情を保つために、全身の筋肉を顔に総動員してる。

 

 それなのに空気が読めないらしい学園の騎士様はまだ口を開こうとする。


「代わりにするのは無理だとムグっ」

「バレットバレット。ちょっといいか?」


 突然後ろからがっしり口元を押さえられたバレットは、笑顔のエラルドに連行されていった。

 出来ればしっかり注意してほしい。


 せめて女の子の体型の話題は男ばっかの時にしようね。

 女性の体型の話で盛り上がる私たち、全然想像出来ないけど。

 

 バレットの台詞が聞こえていたらしいアレハンドロが、アンネから離れてわざわざネルスの隣に腰を下ろす。

 そしておもむろに咳払いした。


「騎士はそこかしこに紛れているが、我々の想像の及ばないこともあるからな。ひとりにはならないようにしろ」


 アレハンドロが言葉を選びながら発言している。

 すごい。しかしごめん、やめてあげてくれ。

 これ以上はネルスのライフがゼロになってしまう。


「危ないですし、申し訳ないですがシンさまエラルドさまバレットさまのどなたかと必ず行動するようにいたしましょう」


 パトリシアを慰めていたラナージュは、ネルスだけの話ではないことを伝えることでそちらもフォローした。

 わざわざ危ないとこ選んどいて、しれっと言うなぁ。

 それでもネルスは俯いたままコクコクと頷く。


 ちなみに、ラナージュが何を言ってもパトリシアは浮かばれないと思うよ。

 良い子だから笑ってるけども。

 

 私は話題を変えてあげようと、アレハンドロを見ながらちょっと意地悪く見えるように笑った。


「ふたりっきりになれなくて残念だったな?」

「昼間の海でそれを期待してはいない」


 アレハンドロはサラッと返してきたが、立っていたアンネの顔がボンっと音がしそうなほど赤くなった。

 頬を抑えて俯いている。

 察しがいいヒロインだなぁ。可愛いなぁ。


 その反応を見て、アレハンドロはとても満足そうな表情になった。


(もう良いから付き合えよ)


 そう思いながらも、私は笑顔で釘を刺す。

 

「昼間の海で? 夜の海も絶対ふたりだけで行かせないぞ」


 

 そっちも相当危ないからな。


お読みいただきありがとうございます!

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