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16話⑵【剣術大会】

 

 日が傾き始める時間。

 私は剣術大会の会場に向かっていた。

 大会前日の今日、出場者にはトーナメント表が開示される。


 いつ発表されても、皆んなの実力を何も知らない私には関係のないことだ。

 他の出場者は実力者同士の普段交流があるだろうから、発表が早い方が対策が取れるとかがあるのかもしれないけれど。

 そうは言っても、1日前のこの時間だと私と同じく何も出来ないだろうか。


 生徒はもう寮へ帰る時間にも関わらず、今、学園の敷地内は騒ついている。

 警備の騎士やら兵士やら魔術師やら、その他大会の運営に関わる人たちが走り回っているからだ。

 お仕事、お疲れ様です。


 しかし、物々しいほどの警備の人数だ。

 貴族やら大商人やら騎士団の偉い人やら、とにかく色んな人がやってくる日だから当然ではある。


 我が子が出ているならともかく、そんなに学生の剣術大会が見たいかなぁと正直思うが。甲子園みたいなものなのだろう。


 警備と言えば、ここ数日はアレハンドロ周辺の護衛が特に厳しくなっているので、気軽に会えない。

 そのせいなのか、移動教室の合間に一瞬見かけた時は物凄く機嫌が悪そうだった。

 護衛の皆様、本当にお疲れ様です。八つ当たりされてないといいけど。


 人の出入りが激しいと、スパイやら暗殺者やらが紛れ込んでたりしそうだなぁと思うのは、フィクションを見過ぎた人間だけではないらしい。

 

 指定された時間が迫ってはいたが、特に慌てることなく、学園内の端に常設されている剣術大会の会場の前に着く。

 普段は全く使わないからもったいない場所だ。


 警備の人たちが入り口に立っているのが見えた。

 闘牛場やコロッセオのような、円形の石造りの建物だ。

 いかにも、ここには戦いの歴史が刻まれていますって雰囲気を醸し出している。

 建物からの圧がすごい。

 

(帰りたい……)

 

 他の出場者はもう揃っているのだろうか。

 みんな張り切ってるだろうしな。

 こういう時には時間ギリギリに駆け込むか、余裕で遅れてくる人が1人は居るのがセオリーではあるけれど。


 そう思うと、バレットは絶対来てないタイプ。

 よし、賭けようバレットは遅れてくる。

 しかも慌てて駆け込んでくるとかではなく。ただただ当たり前のような顔をして無言で入ってくる。


 その答えを得るために、私は一歩踏み出そう。

 と、気持ちは前向きになっているのだが。

 足に根が生えてしまっている。

 

(あ――入りたくない絶対場違い……)

「なーに立ち止まってんだ、シン」


 突如、後ろから肩に腕を回された。

 

 私は固まった。

 

(え? 誰? 何、名前を呼ばれた? ってことは知り合いか?)

 

 この感じで声をかけてくる友人はエラルドしかいない。

 が、声が全然違う。

 というか、私のことを「シン」と呼ぶのは親族以外ではアレハンドロ、エラルド、バレットくらいのはずだ。

 呼び捨てでも「デルフィニウム」と姓で呼ばれることが多いから。


 勢いよく飛び退きたいところを踏みとどまって、気づかれない様に静かに深呼吸する。

 間抜けな声を上げなかったことを褒めて欲しい。


 早鐘の様に鳴る心臓音を感じながら、ゆっくりと顔を左側に向ける。


「……どちら様?」


 全く知らない顔が間近で笑顔を向けていていた。

 

 毛先に癖のある焦茶色のショートヘア。

 吊り目というほどではないが、少し目尻が上がった大きい目は煌めく黒色だ。

 身長は私より少し高い。アレハンドロくらいだろうか。

 年齢は少し上に感じるので、おそらく3年生だ。

 

(なんというか、オーソドックスなイケメンだな……)

 

 初対面の人に対して内心ビビりながらも、整った顔面についつい見惚れてしまう。

 その人は、組んだ私の肩をぽんぽんと叩いた。


「ああ、悪い悪い。初めましてだったな。俺は剣術大会の審判を任されたリルドットだ。よろしくなー!」


 明るい声と笑顔で、軽い調子で言われたが。

 

 ああそうですかこんにちは。ってなるか!

 本当に初対面じゃないか馴れ馴れしい!

 距離感バグってんのか!!

 

 そういうキャラ、とても好き!! 


 イケメン無罪!!!!!



お読みいただきありがとうございます!

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