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10話⑵

 一学期に大変だったのは、何も友人たちへの妬み嫉みからくる対人トラブルだけではない。



 ドタバタ劇場ダイジェスト3つ目。


 脳筋バレットくんの試験勉強に駆り出されるネルス先生。


 はい、とても学生らしいやつですね。

 スポーツ漫画だと大事な大会の前によくある話です。


 聞くところによると、バレットは座学が苦手らしい。

 苦手とというよりは、政治とか経済とかに完全に興味が無いというのが正しそうだった。


 早起きして朝から体を動かしている彼は授業中は寝てはいないもののぼーんやりと過ごし、授業が終わったら暗くなるまで剣術の稽古。勉強などやる時間がない。


 いや作れよその時間。

 と言いたいところだが、普段予習復習の時間がとれるのって相当すごい人だと私は思うので何も言うまい。


「初めて会ったときに図書館で課題に必要な本を探していたのは何だったんだ!」


 とネルスが発狂したが、


「最初はやってみようと思ったが無理だった。つまらん」


 と真顔で返されていた。

 気持ちはとても分かる。そういうもんだ興味なかったり嫌いな分野ってのは。


 まぁ剣術弓術馬術魔術などの実技は出来ているんだし騎士になるなら大丈夫なのかな、と思いきや。


「でも、貴族階級は2つ、騎士階級は3つ赤点を取ったら剣術大会に出られないらしいぞ?」


 というエラルドからの情報で、流石にバレットもペンを握るしかなくなったのだ。


 ガミガミと怒っていたネルスが、赤点回避のために立ち上がった。

 面倒見がいいのもあるが、バレットには必ず剣術大会に出て欲しいとのこと。

 すごく楽しみにしているんだな、剣術大会の観戦。


「お前、自分の勉強はいいのか」

「君が毎日剣術の稽古に励んでいる時間を僕は勉強に使っているんだ。期末試験くらいは問題ない」

「そうか」


 という2人の会話がなんかかっこよかった。

 自信をもてることがあるのは素晴らしい。

 片方赤点予備軍だけど。


 座学一本で特待生をもぎ取ったアンネもみてくれると言っていたが、


「君は自分のことだけを考えてくれ。僕は最悪赤点をとっても学校に在籍できるんだ」


 と、ネルスに止められた。その通りである。

 

 バレットは試験勉強期間中は毎夜ネルスの部屋に通って勉強していた。

 毎日毎日。


 絶対あの2人、この期間中なんかあったでしょ。無いとおかしい。

 そう、BL小説ならね。


 でも何故か私も常に勉強会に参加させられていたから残念ながらそんなことはなかったのである。

 多分、私は勉強しないでほどほどの点数でいいやとか思ってたのがネルスにバレてた。


 結果的にバレットは全科目赤点は免れた。

 良かったね。


 勉強をみてあげていたネルスの試験結果は、なんとアンネと同着1位だった。

 2人とも全部満点だ。すごすぎる。

 

 よく考えなくてもこれも私はほとんどなんもしてないわ。

 辛抱強く教えているのを隣で聞きながら自分の勉強してただけだわ。

 


 ドタバタ劇場ダイジェスト4つ目はちゃんと私の話。ドタバタかは知らないけれど。


 アレハンドロくん、夜に私の部屋にやってきて私のベッドで眠りました。

 こっそりと「夜泣き事件」と呼んでいます。


 深夜。

 本当に深夜。

 私はもう完全に熟睡していた。


 そんな中、なんとなく、こんこんと音が聞こえる気がする。その音はどんどん鮮明になり、眠りの深いところから一気に引き上げられた。


「……?、……?」


 私は目がほぼ開かない状態で少し体を起こしキョロキョロと部屋を見渡した。

 特に異常は感じられないが音だけが響く。

 ぼんやりと音のする方を見ると、確実にドアだ。


(一体誰だこんな時間に)


 眠すぎてイラつきもせず鉛のように重い体を動かしてドアを開く。

 寝巻き姿の仏頂面君がそこに立っていた。


「……こんな時間にどうした?」

「目が覚めた」


 こっちは現在進行形で頭が寝てるんだわ。

 と脳内でツッコミを入れられるほどには覚醒してきていた私を押し退けて勝手にズンズン部屋に入っていくアレハンドロ。


 夜中にやってくるのは初めてだったので、話を聞いてあげた方がいいのかと思った。

 のだが、なんと私のベッドに入って横になりやがった。


「私が寝る場所がないんだが?」

「ここがいい。」

「じゃあもっと詰めてくれ」


 それには素直に従った。

 床に寝ろと言われなくて良かった。


 せめてアレハンドロの部屋だったらとても広いベッドだったのに。

 1人用のベッドに2人で入る羽目になった。

 1人用といってもお金持ち学校の寮なので1人用ベッドはセミダブルくらいはある。でもさすがに15歳男子2人で寝るのは狭い。


 正直懐かしいキツさ。

 この布団の端っこに追いやられる感じ。


 結局よくわからないまま、アレハンドロが寝付くまでぽんぽんお腹を叩いていた。

 全然拒否されない。

 一体どうしたんだお前。


 やっぱり皇太子ってストレスも多いし大変なんだろうなぁなどと心配しつつ私も眠りに落ちた。


 で、朝。

 全て忘れていたアレハンドロが飛び起きて、


「貴様なんでここに!?」


 とか本気のトーンで言っていたのでデコピンしてやった。

 

 こっちの台詞なんだわ。

 

 と、この他にも本当に色々あったのだが割愛する。


 パトリシア魔術暴走事件のように、何故かトラブルが起こると私を呼ぼうとする奴が多すぎて、何でも屋かなにかと思われているんだろうか?というくらい無駄にトラブルに関わってだいたい魔術で解決した。


 頼むから先生方を頼ってくれ。

 

 私としてはアレハンドロとアンネの恋愛模様を眺めるのが楽しみの1つになっているのに、全くそういったシーンに出くわすことができない。

 つらい。舞い込んでくるのはトラブルばっっっかり。


 双方の話を聞くところ、順調に友情なのか恋情なのか微妙な線のむず痒い関係性を築いてきているようである。


 一緒に図書室でお勉強したとか剣術の授業を見学したらアレハンドロがかっこよくて見惚れたとか夜に散歩してたら偶然出会ったとか、一体どんな状況だよ学園内とはいえ夜中一人で出歩くなよというエピソードまであった。

 

 舞踏会の日にあわや2人とはもうまともに会話できないかもと思っていたから、2人が普通に私と話してくれるだけでもありがたい。

 二人ともとてもかわいい。

 だからこそあの日に見てしまったことは口が裂けても言うまい。

 

 そんな一学期がこれでおしまい!

 夏季休暇、じゃない。

 夏休み中は実家でのんびり過ごさせてもらおう。

 

 私は鼻歌を歌いながら寮で帰り支度した。

 

 

 フラグじゃありませんように。

お読みいただきありがとうございます!

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