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僕の魔法使い

作者: 畔木鴎

僕の前に魔法使いは現れない。僕を主人公にしてくれる神もいない。

自分を変えるには相応にお金と時間がかかるんだと、最近になって気が付いた。だけどそれも気が付いただけで、何か行動を起こせるわけでもない。


一度日常に戻ってしまうとどうしようもなくて、今まで僕が歩いてきた道を繰り返すことになる。

だから非日常にいるうちにどれだけ動けるかということになるんだけれど、それが出来るなら僕はとっくの昔に変われているのだろう。


何かを必死にやるだとか、そういうことが上手くできない。長続きしない。

どこか冷めた目で見てしまう自分が、自分自身の脚を引っ張るのだ。


そうやって過ごしていると、何もかもが平らに見えてきてしまう。起伏のない人生になってしまう。

何かにつけて理由をつけて、「面倒くさいから」と言葉を漏らす。

僕の前に魔法使いが現れないのも納得だ。こんな奴の前に現れるなら、もう少し頑張っている人の前に行って助けてやるべきだ。


人生は残酷だ。僕が立ち止まっている間にも勝手に進んで行くんだから。

いくら心構えをしていても気が付けば僕の後ろに立っていて、無表情で全てを洗い流していく。


バケツに入った気持ちは捨てられて、強い感情はブラシで擦られる。

人間だれしもが同じ事を体験しているはずなのに、どうしてか自分だけが特別なのだと思ってしまう。だというのに他人に対して勝手な劣りを感じて嫌な気持ちになるのだ。


もし、僕が非日常に踏み出して変われたとして、そこからどうすればいいのだろう。

お金をかければかけるだけ僕の強度は強くなっていくのだろう。おしゃれな服に身を包んで、身だしなみを整えて、誰が見ても好印象を与えられるような人間になれたとして、そこからどうすればいいんだ。


一人で飲みに行けば誰かが話しかけてくれるのか。

一人で観光に行けば特別な出会いを見つけられるのか。


変わったのは僕の外見だけで、中身なんてそうそう変わるものじゃない。

シンデレラのようにはいかないんだ。舞踏会に行くだけの準備は僕にだって出来るだろうけれど、そこで王子様を待っているだけでは何も変わりはしないんだ。自分から話しかけられるだけの自信を、僕は持たなければならないのかもしれない。


特別になりたいわけではない。目立ちたいわけではない。何もかもを諦めたわけではない。自分に自信はないけれど、自分の指針はあるはずだから。

少しずつ勇気を、声を出してやっていくしかないのだろう。杖なんて持ってなくても人生は過ぎていくから、僕もちょっとは成長出来ていると思うんだ。


自分を幸せにするために、僕は、僕の魔法使いを頑張ってみようと思う。

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