転移者ミヨチャンは6歳児(1-8)
「かわいいお客さん、怖がらせて悪かったね。ちょいと座っていいかい?」
リセラがほほ笑みながらミヨチャンとロイドに尋ねる。
「ボクも相席させていただきたいな、本日の救出隊隊長としてお話を聞かせてもらいたいものだ。」
アウラーデ子爵もリセラの横に立ってる。
目を泳がせて思案するロイドに
「お姉さん、とりあえず座ってもらえば?」
ミヨチャンに言われ、
「ハ、はい。ギルドマスター、隊長殿、空いてるお席にどうぞ!」
「わしも小さな英雄殿のお話を聞かせていただけるかな。」
町長のギュンターも椅子を持参で4人掛けのテーブルの近くに椅子を置き座る。
リセラがロイドの隣に、ミヨチャンの隣にアウラーデ子爵が座る。
「ほー、これがヤツラが騒いでいた異国の調味料か。
レディーとしては、レディーとしては不本意だが・・・。」
手のひらに各種調味料を載せては味見をするリセラ、好奇心に負けて同じくアウラーデ子爵(笑)。
「お貴族様と淑女と名高いギルマスが、・・・
ククッ、これは滑稽だ。」
ロイドがクスクス笑う。
「イヤイヤ、これはこれで楽しいものだ。他国の市場に行ったような気分だな。
他国では屋台でこうやって味見して私も調味料はよく購入してくる。」
リセラが言う。
「しかし、これらは完成度が高いな。
特にこの”ポンズ”と”モミジオロシ”というものは白身魚に合いそうだな。
ミヨチャン、売ってくれないかな。」
「ギルドマスターさんは今日、あたしたちの応援してくれたから差し上げますよ。」
ミヨチャンは黄色い幼稚園カバンから、新しい”ポンズ”と”モミジオロシ”の瓶を取り出し、リセラに手渡す。
「感謝するよ、ミヨチャン。
早速、今夜にでも行きつけのレストランで使わせていただくよ。」
子供のような笑顔でリセラは微笑みながら礼を言う。
「もちろん、贔屓はいけませんからアウラーデ子爵様にも差し上げます、町長様にも。」
「お、おう!ありがたい、実ははしたないと思ったが喉元まで”お願いします”、と出かかってたんだ。」 アウラーデ子爵の一言にテーブルのみんなが笑う。
「ところでその黄色いかばんはマジックアイテムのようだね。
異世界の物らしきものも収納されているようだが、見た目は小さいがどのくらいの物が・・・、」
「閣下、それは聞くのはタブーでは?」
アウラーデ子爵の質問をやんわリとリセラがたしなめる。。
「あー、そうだったね!
ぼくは馬フェチなもので、それがペガサスを見てしまっておかしくなっているのかもしれない。」
「で、肝心の報奨金の件だが、ロイド君とフローレ姫の救助報酬についてはアズーレ伯爵がじかに礼をして手渡したいそうだ。
本日の騎馬隊救援の方だけ、ぼくの担当なので少し話を聞いてほしい。」
アウラーデ子爵がまじめな顔で切り出す。
「冒険者たちの報酬はすでにこちらのギルドマスターと話してある。
騎馬隊は仲間の救助であり、当然のお仕事だから彼らはわたしも含め給料のうちだ。
さて、応援として友軍で参加してくれたロイド君とミヨチャンには騎士団より規定通りに報酬を用意しなければならないがロイド君は、まーキッツイ言い方をすれば一次遭難の原因となっているので、報酬対象にはならない、すまんなロイド君。」
「いいえ、隊長のお話は当然のことであります。
わたしはフローレ様さえご無事であれば、他は望外であります。」
ロイドは即答する、あふれる忠誠心だ。
「うむ、君ならそう言ってくれるだろうと思った。
して、ロイド君とフローレ姫を従魔、”神馬を魔物呼ばわりして失礼だが”、と共に昨日救助したミヨチャンが、本日には2日、あるいは3日はかかるであろう大部隊遠征を神馬を駆使して、上級ポーションを駆使して、遭難している騎馬隊を瞬時に発見、治療の上、無事であった馬、兵士、馬車をすべて一人で回収して全員の無事帰還を全面サポートした、奇跡の半日救出の報酬を進呈したい。」
「馬車1台が金貨180枚の新車価格、騎馬兵は通例により1人が金貨200枚で換算する、そして名馬ぞろいの騎馬隊の馬は1頭がやはり金貨200枚。
まずは完全救助したものの物的報酬として、これらの評価額の60%。
単独帰還の馬、馬上の騎士もミヨチャンが引き連れての完全帰還にカウントしている。
以上で物的報酬が金貨2848枚。」
「提供された上級ポーションが10本で金貨800枚、完全回復剤10本で金貨300枚、これはサポートの実費として規約にて換算する。」
「そして、最終的な報奨金、つまり、全体での功労による報償だが・・・、金貨100枚。」
幼児が活躍したなどと知られれば政争の具に巻き込まれるのは間違いない。
ミヨチャンの活躍は最小限の報告書という形がとられた。
通常なら金貨2000枚を下らないだろうビッグサクセスもあえて報告しない。
国家のシステムも一枚岩ではない。
「現場(軍部)はたった半日の出兵で・・・」と経理部はほぞを噛んでいる。
説得するには自分ですら信じがたきこの状況を説明するしかない。
聞く耳を持たぬ者と話しても平行線、というのがこの国の現場での軍部と経理部の普通の認識である。
「ということで、・・」
「アウラーデ閣下、もうミヨチャンはお休みですよ、」
熱弁するアウラーデ子爵に小声でリセラが言う。
ミヨチャンはテーブルに突っ伏して夢の中、ついでにロイドも(笑)
「そうかリセラ卿、ミヨチャンを宿泊室に頼める、かな?
たしか6歳だったか。」
無言で頷き、抱き上げたミヨチャンをそっと運ぶリセラの後ろ姿を見送りながらアウラーデ子爵は自分も予想外の事態の連続に疲れていたのだと不意に感づく。
「さー、みんな、ラストスパートだ。、飲みきったら解散だ!
難しい話は明日だ!」
なにか、吹っ切れた顔のアウラーデ子爵が高らかに声を上げる。
もう一度(一同)カンパ~イ!!
その後、半年ほど
『難しい話は明日だ!』というのが騎馬隊の間で大流行したそうな(笑)。
大金貨 100万円
金貨 1万円
銀貨 1千円
小銀貨 1百円
銅貨 10円
鉄貨 1円