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救助隊編成(その1)

早く、助けねば

 「フローレ様、ロイド様、ご無事で何よりでございます。

 して、供の者たちは?」

 無事に生還したフローレ一行、町を囲む城壁の門番の衛兵に案内され、衛兵の本部、”指令室”で騎馬隊総司令官、男らしく髪を刈り上げた長身にして細身でありながら屈強なアウラーデ子爵と面談をしている。


 この町はアズーレ、フローレの父アズーリ伯爵の邸宅があるイーハトーブ地方の中心都市であり、アズーリ城と呼ばれる伯爵の居城を中心に町が形成され半径2キロ、円周12キロにわたり、高さ4メートルの石作の城壁で守られ、東西南北4箇所の通行門は衛兵に守られる、テルメル王国の最北端だ。


 国境に近いアズーレの町は隣国、ネイザン王国との最前線、国境までの距離は北方へ30キロ程度しか離れていない。


 有史以来、幾度となく繰り返される戦いの最前線。

 その武勲によりアズーリ家が伯爵の爵位をもらったのは400年前、最古の貴族であり王国きっての武闘派一族といわれる。

 

 指令室にはフローレ捜索の相談に集まっていた町長のギュンター、元騎馬隊総司令官で60歳にしてなお眼光鋭い白髪短髪の男。

 この町のギルドマスターのリセラ、王国暗殺部隊に所属していたと噂される30歳くらいのプラチナブロンドの女性、も話を聞いている。

 アウラーデの部下、各師団長が6名、も直立不動で話を聞く。

 

 「我々は今朝がた、夜明け前にオーク4体、ゴブリン20体ほどの魔獣どもに強襲され旗艦であるフローレ閣下の愛馬シーザーが矢を受けた。

 リッツラ高原の西端、レヴィ遺跡のほど近くだ。

 護衛の騎馬隊はその時点では傷んではいなかったがフローレ閣下の出立時間を稼いでもらうために騎馬隊の15名には迎え撃つ防御線に徹してもらった。

 わたしはシーザーを潰す覚悟で走らせ、20キロほど走らせたところで完全に足が止まった。

 そこでゴブリン10体の強襲を受けた。」

 ロイドの説明は続く。


 「レヴィ遺跡からだと約80キロ、早馬の多頭立て部隊でも2日はかかるのではないか?」

 リセラがつぶやく。


 「完全に潰れたシーザーはさらに致命傷を受け、放置して徒歩帰還やむなしとなり、せめて置いてゆくシーザーを楽にしてやろうと剣を向けた時に奇跡が起きたのだ。」

 「この幼女がシーザーの傷をなおしてくれた。」

 ロイドが感極まったように声を上げる。


 「こんな子供がそんなすごいポーションを持って、たまたま魔獣の森を通りかかった、って理解でいいのかよ?」

 アウラーデ子爵騎士団長はいぶかしんでロイドに尋ねる。

 

 「まー、概ねそのような理解でいいと思う。」

 ロイドが返答する。

 「ミヨチャン、疲れてるのに悪いけどシーザーを治した”白いお水”つくってくれる?」

 ロイドは傍らの椅子に座って休ませていたミヨチャンにやさしく声をかける。


 「うん、大丈夫だよ、お友達のお願いはあたし、ちゃんとやるよ。」

 ミヨチャンは眠い目をコシコシ、こすりながら肩掛けカバンから取り出した銅のコップと赤い布を取り出して、手品のようにあっという間に銅のコップを白い液体で満たす。

 

 「だれか、ケガがあるものはいないか?どんな重症も治るぞ。

 わたしは自らのノロマさ故にオークに右の上腕部を殴られて骨折したようだがこの程度ならすぐ直ると思う。」

 ロイドは自嘲するかのように笑顔で話しながら、器用に軽鎧をはずし半そで姿の下着になる。


 強気の言動からはうかがえぬ鎧の下は華奢と言ってもいいくらいの普通の女性のカラダ。

 首元など普段、露出されていない部分の白さ、肌のきめ細かさが悩ましい。


 右腕の肩の付け根部分が青紫にはれ上がっている、完全ではないが折れているようだ。。


 みな、分かっている。

 ロイドはフローレをかばうために傷を受けたのだろう。


 「ロイドさん、可愛そう。」

 ミヨチャンは椅子から降りるとロイドに向かって歩く。


 「ロイドさん、しゃがんでね。」

 ミヨチャンに言われ、体を低くロイドは背を向ける。


 ロイドの右肩にいきなり、コップの白い液体をミヨチャンがかける。


 「!」

 激痛が走ったようだ。

 普段は騎士として表情を崩さないロイドが美しい顔をしかめ、汗さえ出ている。


 白い液体はロイドの右肩上腕部で一瞬、白く強く輝き吸い込まれるように消える。


 「治っている・・・、」

 アウラーデがつぶやく。

 

 目の前には青紫だったロイドの右肩部分の肌が、真っ白いきめやかな肌になっていた。


 「と、まーこんな物だ!」

 ロイドは苦痛に顔を歪めたのが恥ずかしかったのか、カノジョに似合わぬ軽い物言いで右肩を回している。


 「シーザーはよく、この痛みに文句を言わなかったな。

 帰ったらほめてやらねばな。」


 「さー、何がどうしたのと話している時間はないだろう、アウラーデ卿?

 大事な部下たちの救助作戦を立てねばな!」

 ロイドは真面目ないつもの口調で話す。



 30分後。

 「つまり、死にかかっていたシーザーが完全復活をして、ミヨチャンが召喚した白馬と2頭立てであの馬車を全力疾走のほぼ8割がたの速度で30分の休憩以外は走破したと、そういうことでいいのかよ?」

 アウラーデがロイドに尋ねる。


 『まー、軍人の脳筋に理解しろと言ってもな(笑)』

 あたしも、そうだったし。


 そう回想しながら、 

 「すまぬが、その通りだ。」

 「ついでを言うと、あの夜空に美しい信号弾を30分打ち上げ続けたのもこの6歳の幼女、ミヨチャンだ。」


 数分間の沈黙、一同アングリ。

 

 さらに数分後。

 ロイドの返答に「今はそれを検証、言及する時でなし」としてアウラーデは話を切り替える。


 「ロイドよ、疲れているところを済まぬ。

 俺の部下たちと離別した場所まで案内願いたい。

 あいつらはこの程度で全滅することはない、だが不利な防御戦で馬、あるい兵が傷んで微速の撤退に苦しんでいるのやも!」


 「もとよりそのつもり、閣下を守りし者たちを見捨てることなどありえない。

 ましてや交戦箇所などあたしより他知るはいない、命に代えても友軍のもとに案内しよう!」

 疲れをものともせぬよう、気丈にふるまいながら高揚してロイドは答える。


 「明朝5時、騎馬隊の捜索チームを編成、6時に救助活動に出発する。

 騎馬隊は武装のみで直行したい、ギルドマスターには冒険者を集いて騎馬隊の後方支援として補給部隊の護衛任務をお願いしたい。」


 アウラーデが結び、明朝よりのフローレ警護隊の二次捜索のスケジュールが決定される。

 「各自、連絡部隊を明朝の招集に合わせて派遣し、必要師団の形成を求む。

 非常ゆえにすべてにおいて最優先!

 明朝5時には完装にて、指令室下に集合、よろしく頼む!!」

 

 アウラーデ子爵のアッツイ訓示に、騎士隊の部下たちとギルドマスターは捜索隊編成のために急ぎ戻る。

 ミヨチャンは疲れのためか、すやすやと寝ていた。


 フローレは帰着後すぐに城壁の賓客室で寝かせてもらっている。

 






 



 


 

 

 


 

 


 

 


 


ソダネ

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