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魔法のお馬(ハナちゃん)、異世界を疾走する

子供は早く、おうちに戻りましょう。

 街道に出た。

 これで、かなり安全だろう。

 御者台の上でロイドは大きく安堵の息をつく。


 馬車の振動に合わせて大きな胸も揺れる。

 剣士スタイルながら巨乳である。

 剣士イコール貧乳という間違った価値観はイケヌ(笑)。


(以後 ロイドの回想)

 真後ろのベンチシートで先ほどから、ミヨチャン(ダイケンジャ?)が作るカルピス?という飲み物をお嬢様と二人で飲んでいる、っていうかその液体はどこから出てくる?

 くだらないことを考えていて馬車がグラリ、と傾く。

 アブネーゾ、オラ!

 気をつけろ、あたし!

 

 もうダメ!

 「お嬢様、シーザーが疲れたみたいですよ、熱いですからね。

 この先の水場で休みましょう、ここまでくれば安全ですから。」


 水の湧く泉がある小さな水場、大きな一本の木にシーザーをつなぎ、タライで水を飲ませる。


 「わたしも、そのカルピス?というもの、ご相伴に、・・・ご馳走して、ダイケンジャサマ!」

 さっきから、あっつい日差しの下、日射病になりそうな暑さの中、シーザーとアタシは頑張った!

 ご褒美ください!


 「もちろんよ、ロイドさん。」

 ミヨチャンの手から銅のコップが手渡される、えっ冷たい。

 薄手の銅の表面が冷たくて、中の液体がカチカチ音がする。えっ氷!


 飲む、甘い、冷たい、ちっちゃな氷もバリバリと食べちゃう。

 美味しい、疲れが一瞬でなくなった気がする。

 「オカワリ!」


 「フフッ、ロイドがあんなに必死でオカワリするなんて、いいものを見ましたわ。」

 お嬢様のクスクス笑いで我に返る。


 「ミヨチャン、ロイドは男爵家の貴族令嬢なんですよ。

 礼儀作法と剣術をお母様に習いに来ている、花嫁修業中の、『お嬢様、それ以上は個人情報保護法に、・・、とにかくオカワリください!ダイケンジャサマ』」


 従者でありながらお嬢様のお言葉に被せてしまいましたわ。


 「イヤ。」即断ですか!

 「!」


 ワラシは多分、絶望的な顔をしていたと思う。


 「だって、あたし“ダイケンジャサマ”って名前じゃないもん。

 ミヨチャン、ちょうだいって言ったらお友達だからいーっぱいご馳走しちゃう。」


 「フローレ様もそうお呼びなのですか?」

 「そうよ、フローレとはお友達だもん。」

 ミヨチャン、フローレ様を呼び捨てですか?この領内にそんな方いませんよ。


 「ミヨチャン、ちょうだい。」

 あたしは言ってしまった、ダイケンジャサマをチャン呼びで!


 「はい、ロイドさん。オレンジ味も美味しいよ。」


 一気に飲み干す。ミカン味とは大好物!不覚にも涙が・・・、

 

 「・・・、神よ。4時間前、オークどもに追われながらも生をあきらめなかった褒美なのでしょうか。

女神セシリア様、この奇跡のごとき出会いと幸福に(以下略)」


 4杯もいただきましたわ、当然の自然現象(笑)。

 「お嬢様、わたくしはお花を摘みにいき・・、」


 「そろそろ、出発ですね。」

 ミヨチャンが言いました。


 「お花屋敷」ミヨチャンがそう言ってコップの水を宙に撒くと、霧状の水滴の中から白い小さな半円型のテントが地面の上にポンッ、と出てきました。


 「外から見えないおトイレよ。中には可愛いアヒルのオマルちゃんがあるのよ。

 誰にも見えないから安心よ、中に入ると見えなくなるから。

 トイレしたあとはアヒルちゃんが(たぶん)片してくれるから、そのまんま出てきて大丈夫。

『ありがとう』って言うと消えるから。」


 そんなバカな!と思うあたしとお嬢様。

 

 お嬢様が無言のジェスチュアで”おまえ、先にやってこい”と!

 嫁入り前の娘になんてことを!(笑)

 

 どこに入り口が有るんだろう「お花屋敷(白いテント)」の生地に触ろうと手を伸ばすと、手が中に無抵抗で入った。

 体ごと白いテントの生地を素通しで、中に入って座ってみると1メートルちょっとの高さの天井の白いテントの中。

 光源がないのにほどよい明るさ。


 暖かくていい匂いがして鳥の声がかすかに聞こえる。

 目を閉じると伯爵様の庭園にいるような感覚。


 テントの真ん中に黄色いクチバシの(やや大きめ、大人サイズの)可愛いオマルちゃん。

 中にはきれいな水が張られていて、横には柔らかそうな(お尻ふき)紙も。


 このテントの中で寝たい、読書したい、と思う快適さ。

 でも私には”使命”があります。


 可愛いアヒルのお世話(小)になって、そのまま「お花屋敷」から退出。

 そして、(ちょっぴり魔法使いの気分で)「お花屋敷、ありがとう」と言って指を振ると、白いテントが空間に消失!


 「なんですか、これって何度でも使えるんですか?魔法ですか?」

 興奮です、魔獣や山賊を気にしながら外の”お花畑”でするのと比べれば天国ですよ!


 「『お花屋敷』、フローレもどうぞ。

 あたしも少し飲みすぎすぎたから、お隣に作っちゃうわ『お花屋敷』」


 ミヨチャンがコップ2杯の水で2個のテントを作る。

 当然のように”用を足して”当然のように、『お花屋敷、ありがとう』で消失。


 お嬢様とミヨチャンが

”アヒル可愛いでしょ”

”(大)でも平気なんだねー”とか言って、笑っている。

同年代は打ち解けるのが早くていいな。


 あと、手を洗うのにスミレの香りのきれいな水までミヨチャンが出してくれた。


 「さー、あと4時間くらいです。

 お嬢様もミヨチャンも馬車にお乗りください。」

 

 あたしがそう言うとお嬢様は馬車のベンチシートに座ったがミヨチャンはシーザーのそばに近寄って、じっと診察するかのようにその黒毛を撫でている。


 「すごく疲れてるわ、もう少し休みたい、って言ってる。」

 ミヨチャンが真剣な顔で言う、大きなお馬は怖いんじゃなかった?


 

 


  

 


 




 

 

 




 

 


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