転移者ミヨチャンは6歳児(1-12)
2日後の昼過ぎ、フローレとロイドは、レッスンや雑務の合間に2軒隣のギュンター家を訪れる。
「ギュンターさん、ミヨいる?勝手に上がるよ~。」
フローレが声をかけて勝手に上がる、ご近所感覚である。
「ちょ、お嬢様!はしたないですぞ!」
一応、しつけ係を自任するギュンターさんは慌ててフローレをたしなめる。
が舐められっぱなしのジジィの声などシカとしてどんどん進む。
「あら、なんかチッチャイのが来たわね(笑)」
フローレとロイドが進みゆく階段の手前で黒ずくめの服にフードをぶったアイーダさんが腕を胸の前に組んでフローレを見下ろす。
「母様にもかなわんババァに用はない、ノケヤ!」
失礼な言いざまである、がいつものことらしい(笑)
なんと、魔法の授業をスポイルしてミヨチャンと遊びに来たらしい、でその魔法の教官がアイーダ先生。
「おまえの母親はも少し出来が良かったからあたしが手を抜いとるのを知ってたが、大概フローレも6歳なのだから・・・」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!、問われぬこと、答えるな!良いから通せ!」
「魔法の授業をほったらかして何してるかと思い痕跡を追えば・・・、」
言われる通り、広い廊下の真ん中で通せんぼをしていたアイーダは廊下の左側によって道を開ける。
「フローレ様、ミヨチャンなら朝ごはんの後にお出かけですよ。
何時に、何のために、どこに行って、いつごろには帰宅すると、朝9時に出かける時に私に18時に帰宅するまでの予定表を手渡してお出かけです。
フローレ様は心のどこかでご自分が時間に支配されているとお考えでは?
憤っても天には勝てないのですよ、たとえ王でも。」
アイーダはしゃがんでフローレにやさしく諭す。
「個人情報ですがフローレ様のためならミヨチャンもお許しくださりましょう」
アイーダはミヨチャンが書いた予定表をフローレに見せる。
9時から11時、 6歳児の庶民の生活を見て歩く(下町にいます)
11時から13時 修道女になれるか、修道院を訪問します。
13時から15時 冒険者になれるか、冒険者ギルドを訪問します。
15時から16時 商人になれるか、商業ギルドを訪問します。
16時から17時 商業ギルドで安いお家が買えるか相談します。
17時から18時 市場でこの世界にあるものとその値段を見学します
美味しそうなものがあれば、買って帰りますね。
途中で危険があったら戻りますのでご心配なく(ギュンターご夫妻へ)
追伸)
わからないことはまとめておきますので帰ったら教えていただければ幸いです。
お父様、お母様が死んでしまったこと、あの世界にあたしが帰れないことは分かってますのでご心配は不要です。
ただ、亡き両親のため、日々を精いっぱいの笑顔で生きていこうと思いますのでご協力をお願いします。
「・・・、なによコレ、10日妹のくせに生意気すぎよ!お姉さんに愚痴ぐらい、言いなさいよ!
本当にミヨ、ったら、水臭いんだから・・・、」
「・・・あたしは、・・・」
「何ができるんだろう・・・?」
「2日で、2回も大活躍をして、大人たちにチヤホヤされているのを見て、・・・」
「そこにいるのはあたしのはずだって、勝手に思い込んで、・・・」
いつの間にか溢れ出る涙をロイドがハンケチで拭ってくれている。
「アリガトウ、ロイド、さん。
でも、自分の涙を拭くのは自分の仕事!」
フローレは長袖で自分の涙を拭う。
「ねー、アイーダ先生。あたしはどうしたらいいのかしら?」
フローレはアイーダに問う。
それは師に問う、弟子の姿。
「ミヨチャンは『活躍したのは神馬の仕事、回復させたのは銅のコップ(神器)の仕事、あたしは何もしてません。』と、評価を固辞することだったそうです。」
「でも、職業としている人が同じ仕事をしたときに、前例として無報酬だったらその方も報酬がもらえないのですよ、世の中に習ってもらえませんか。」
と、説得しましたところ、「それでは」と受勲してくださいました。
アイーダが優しく話す。
「ミヨチャンがただの”ミヨチャン”、であるがごとく、あなた様もまずは人としての”フローレ”様を磨いていただきたい。
これがアズーレ領民の思いでございます。」
しばし、かみしめるように目を閉じてアイーダの言葉を小さく復唱するフローレ。
「アイーダ先生、わたしも成長して妹の荷を、いや領民の荷を少しでも背負わねばな。
フローレ・アズーリの名に恥じぬよう生きてゆく、これが第一目標だな。
先生、これからもよろしくお願いします。」
フローレが小さな背を折りアイーダに深々とお辞儀をする。




