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転移者ミヨチャンは6歳児(1―11)

 「まー、素敵なお部屋だわ。」


 ベッドが1つと木の机が1つの3階の8畳間くらいの洋室。

 南向きに腰窓が2カ所、明るい洋室は2人姉妹の長女が使用していた部屋。

 3階のお部屋は全部で4室。

 「私たちはお手伝いも含めて高齢で3階までの上り下りがツライの。

 3階の部屋、全部の手入れをしてくれれば、無料でいつまで滞在を願いたいわ!」

 アイーダにそう言われる。


 ギュンター夫妻にミヨチャンが借りたのは板張りの床に白い漆喰塗の清潔感あふれる明るい部屋。

「イイワネ、ミヨ。」

「そうですわね、お嬢様。」


 机の前の椅子に座るミヨチャンとベッドの上でゴロゴロとくつろぐフローレとロイド。

 ジト目で見るミヨちゃんから何気に視線を外す2人。


 「あたし、ちょっと踊りの練習したいんだけど!

 毎日の習慣だからレッスンしたいんで、気が散るから出て行ってくれるとありがたいんだけど。」

 ミヨチャンが一生懸命に追い出しにかかる。


 「自分からレッスンしたいなんてあたし考えたことない!」

 フローレが言うと

 「お嬢様はアレですからねー。」

 ロイドがため息をつく。


 ミヨチャンに今の話がヒット。

 「なに、フローレはなんかレッスンしてるの?」

 食い気味の質問に嫌そうに答えるフローレ。

 「外国語が2カ国語、行儀作法、社交ダンス、剣術、馬術、魔法、歴史、算術、天文学、・・」


 「もしかして帰りたくないとか・・?」

 ミヨチャンの問いかけに

 「・・・ウン。」

 小声で答えるフローレ。


 「ハー、あたしは好きで好きで踊ってるの、確かに貴女の生活に同情の余地はあるわ。

 帰れとは言わないけど怒られても知らないよ。」

 ミヨチャンは幼稚園カバンから真っ赤なヒラヒラのドレスを取り出すと着替えながらフローレに話す。


  そう言いながら、取り出した銅のコップに入った液体を床にぶちまける。

 瞬時、床一面が白く輝くと白いゴムマット。

 さらにその上にもう1杯、液体をまくと木目の色の板状に固まる。

 「防音床、完成!」


 「相変わらずミヨは無茶苦茶ね(笑)」

 フローレのつぶやきにロイドも無言で同意。


 背中の大きく開いた薄手のロングスカートのワンピース。

 真っ赤なドレスは炎のよう。

 両手にカスタネット、ヒールのついたダンスシューズ。


 床に立ちあがったミヨチャンは両足で軽く床を踏み鳴らす。

 聞いているうちにそのステップ自体にリズムがあることが分かる。


 数分間ステップだけでリズムを刻んでいたが、やがて両手に持ったカスタネットを片手ずつ、確かめるようにたたき始め、次には両手のカスタネットを併せてすべての音が混じり合う。


 10分ほどカスタネットとステップの音だけでリズムを確認した後、いったん休憩をするミヨチャン。

 フローレやロイドの姿は全く目に入らない、すごい汗、胸の鼓動が激しい。


 数分後、ミヨチャンはカスタネットを両手から外すと素手で再び踊りだす。

 「オレ!」

 両手を高く、宙をつかむようにくねらせ、花びらのようなスカートの袖を掴みながら激しく床を踏み鳴らし、タップを激しく優しく緩急をつけて踊る。

 時には何回転も激しく回り、時には静かに前方に体を倒し静寂の中、何かを表現しようとしている。

 深紅のヒダの大きなスカートの裏地は紺色に白い大きな水玉。

 裾をつまんだロングスカートのすそを翻すたびに 紺色の裏地が生き物のように深紅のスカートの表と混じりあう。

 音はかかとのたたくタップと、ミヨチャンが時折発する歌声と掛け声。

 10分ほど経っただろうか、両手を高く「パンパン」と激しく2回たたいて、激しい踊りから急停止する。


 「ミヨ、何よソレ?初めて見るけどすごい踊り。」

 フローレがしばし後、話かける。


 「あら、フローレ。そう言えば居たのね。 

 5分後にもう一回やるから、それまでお話はパス。」

 

 ミヨチャンはタオルを顔に当てて全く動かない。

 ただ、動悸で胸の筋肉が静かに、だが激しく起伏している。


 5分後、ふたたび踊り始めたミヨチャンはアドリブにも見えた激しいダンスを全く、完璧なレプリカのように踊りきった。


 「1回じゃダメなの、2回そろえて初めてレッスンなの。」

 疲れ切ったミヨチャンはフローレに言う。


 「おばーちゃまはスペイン人、フラメンコの国宝になる人、って言われてたの。」

 「おじいちゃんと結婚してから日本にしばらくいたらしいけど、今はスペインに戻ってるわ。」

 

 「週に2回、スペインからビデオレッスンしてもらってたの。」


 「好きだから、続けられるのよ、・・」



「ロイド、帰りますわ。あたしの時間は無限ではない、と妹に教わりましたから!

 ではミヨチャンまた明日。ごきげんよう。

 お母様が、”すべてのレディーは最大の仲間であって最大のライバルよ”、と言っていた意味、少しわかった気がしますわ。」


 「最大の敵は自分です!」ミヨチャンは笑顔で返答する。


 言い切って、フンスと帰るフローレとロイド。

 何を思うフローレよ(笑)

 1.3キロ離れたお城に自らの足でお帰りになるお嬢様と従者。

 

 がんばれフローレ!ミヨチャンもフローレもまだAカップ、勝負は始まったばかりだ(笑)

 


 



 

 


 

 


 

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