転移者ミヨチャンは6歳児(1―10)
「それでは、今日の本題。
我が家の宝、長女フローレと大事な預かりの貴族子女、ロイド嬢,娘の愛馬シーザーを救助してもらったお礼をさせてもらおう。
騎馬隊の捜索補助で金貨4000枚を超える報償を出したことは既に聞いている。
私としては金銭の評価はできないほどの恩だが、それを計算評価するのも伯爵の仕事の内だ。
人、馬、馬車まで含めて我が家の数倍の救助をした報償が金貨4000枚ならば、私は立場的にそれ以上の報償は拠出できない、それは分かってほしい。」
「イマイミヨ、あなたはさきの救助において、多大の功績をのこした。
アズーレ伯爵命により金貨2000枚の報償と、その勇気をたたえ、感謝の品としてアズーレ家の家紋を刻んだミスリルの小刀を与える。
火の加護を刻んだ宝刀を示し、アズーレ家の客分を名乗ることを許可する。」
読み上げる伯爵の正面でミヨチャンガお辞儀をして小刀を受け取る。
皆の拍手喝さいにて叙勲式、兼食事会は無事終了。
で、ミヨチャンをどこに送るんですか?という、問題が発生。
そだ、たしか、
「よければ、ワシのうちに身を寄せなせい。」
さっき、町長のギュンターさんが言っていた。
「うちは娘2人が嫁に行ってからは婆さんとの二人暮らし。
良ければ、異世界の面白い話など冥途の土産に持ってきてくれればありがたい。」
「年寄2人の茶飲み友達だと思って逗留してくだされば嬉しかろうて、・・・」
思い出してミヨチャンはギュンター家への送迎を希望。
泊まってもらえると思ってたフローレが泣きべそをかいているのをいなしながら、送迎の馬車に。
送迎の馬車に乗り込むミヨチャンと、見送りにはロイドとフローレも大型の馬車に乗り込む。
ゆったりと馬車が走り始める。
”ガタガタゴトゴト”、なんという揺れ!
これが伯爵家の最高級馬車の乗り心地とは!
これでは確かに、危なくてゆっくりとしか走れない。
伯爵家,アズーレ城より敷地の門まで1キロ(広い!)門番の衛兵により開けられた城門を通過して城外の町に出る。
そして走ること300メートル、隣のお屋敷のそのお隣のお屋敷前で馬車が止まる。
「ミヨ、着いたよ!」
ギュンターさんの家、アズーレ城の2軒お隣、超ご近所さんだった、しかもお屋敷。
”引退したお年寄り=年金生活者=ちっちゃなお家”、というミヨチャンの頭の中の方程式が音を立てて崩れる。
開けっ放しの門の衛兵所には誰もいない、門から100メートルほど入ったお屋敷に到着。
石造りの3階建て。
玄関ではギュンターさんと奥様?が立って出迎えてくれる。
ミヨチャンは御者さんにお礼を言って馬車から降りるとロイドとフローレも当然のように降りる。
パッパカパッパカと2軒隣に戻る馬車。
「ギュンターさん、こんにちわ。数日お世話になりに来ました。
この世界の常識に疎いので、もし失礼がありましたら・・・、」
「まーまー、世界が違えば常識が違うのも当然。良いからミヨチャン、入りなさい。
堅苦しい挨拶はいいから、ロイド君と姫様もよろしければ・・・。」
ぶっちゃけ、平日のペンション?みたいな感じに、”今日は使われてませんよ”、という感じのたくさんの部屋がある邸宅。
暖かい居間に案内されると中年のお手伝いさんが3人、下町の庶民の奥様に昼間だけ数時間、パートでお掃除やお食事の手伝いなど最小限のお手伝いをしてもらってるそう。
庶民感覚あふれる居間の大きな木製のテーブルを囲んで、まずは紅茶でティータイム。
「ギュンター様、、いつもご苦労様ですね。」
ロイドさんがギュンターさん夫婦に軽く会釈をする。
『町長さんのお仕事のことかな?』
「ミヨチャン、ギュンターさんは伯爵家の門の外を常に警戒して警護してくれてるのよ。」
いぶかし気なミヨチャンにロイドが説明する。『なるほど。』
「わしと家内は高齢です故、お世話はできませんが部屋は用意しました。
身の振り方が決まるまで、のんびりしてください。」
ギュンターさんがミヨチャンに言う。
「わたしはアイーダ、そう呼んでくれればいいわミヨチャン。
こんなカワイイお客様をお迎えするのも久しぶりで嬉しいわ。
自分の家だと思ってゆっくりしてね。
でも、宿屋じゃないから最低限のことは自分でするのよ、ご飯の用意は心配しないで。
料理自慢が手伝いに来てくれてるから。」
ギュンターの奥さんが自己紹介。
50歳をでたくらいか?薄紫の長い髪が半分シルバーグレーになっている。
もとはたいそうな美人さんだったこと間違いなし。
「ギュンターさん、アイーダさん、お世話になります。」
立ち上がってぺこりとお辞儀をするミヨチャン。
「まー、可愛いお客様。町長、楽しみが増えましたね。」
お手伝いの奥さんたちも歓迎してくれてるよう。




