園児、異世界に現る。
魔法のお馬、”ハナちゃん”のモデルは榛名湖の観光馬車の”ハナちゃん”(同名)です
6歳児童がまばらに木が生えている、日当たりのよい林の中を歩いている。
足元は短い芝生のような草原。
「ヘヘッ、芝生の公園みたい。」
誰もいないところでカノジョは独り言を言って笑った。
鳥の声しかしない、風のささやかな音しかしない、ソコでヒトの声を聞きたければ自分で話すしかなかったから。
風に乗って、遠くから声が聞こえる気がした。
左側の林の向こうから聞こえる気がする。
「ロイド、お願い!もう少しだけシーザーにお別れをさせて!」
幼い?女の子の声がする。
「お嬢様、シーザーはもう助かりません。
少しでも早く楽にしてあげるのがこの子のためなんです。
馬車が使えない今、早くシーザーを楽にして私たちも早く、町まで歩かないとまたゴブリンどもに追いかけられます!」
落ち着いた声の女性の声もする。
「こわい人じゃないみたいだし、」
6歳児童は林のまばらな木のあいだを声のする方に小走りに、でも注意深く歩いていく。
カノジョの視界に、黒い大きな馬が倒れて苦しんでいるのを周りでなすすべもなく取り囲んで見ている2人の女性が映った。
少し離れた場所に切り離したであろうか、白くて高級そうな小さめの馬車がある。
一人の女性はミヨチャン(主人公)と同じくらいの年の、きれいに着飾った女の子。
もう一人の女性は大人になったばかリ位の、キレイな女の人。
腰に剣を指して軽い鎧を着ている、いわゆる用心棒?
付き添いの大人の人が死にそうな黒馬を殺して、馬車を捨て町まで急ごう、とお嬢様をせかしている状況
のようだ。
ミヨチャンは2人のそばに無警戒に歩み寄る。
「何者だ!」
ミヨチャンが踏む木の葉の音に用心棒?が剣を抜いて振り向く。
「すごい、キレイな人。」
ミヨチャンは用心棒の顔を見て思わず、緊張感のない感想を。
かたや、人などいるわけがない山奥で、すわ襲撃か万事休す、とパニック寸前女子。
かたや、人に会えて嬉しい一心の幼女。
なんとも場違い遭遇な展開(笑)。
「と、盗賊のこ、こどもか?こ、子供の盗賊じゃないだろうな?」
用心棒、キレイな女性は引くに引けず剣を構えたままにカミカミである。
「あたし、イマイミヨ。6歳だよ。
迷ってたから町まで連れて行ってくれると嬉しいのよ。」
ミヨチャンは人に会えた嬉しさで剣など目に入らないように2人の方に歩み寄る。
「君も迷子か、お嬢様だけでも町までと思っているところに・・・。
クッ、わが女神、セシリア様はわたしに恨みでも・・・!」
(聞き苦しい独り言(笑)以下略)
「お姉さん、そのお馬さんにお薬があればいいの?」
ぶつぶつと不信心なことを言う従者にミヨチャンは話しかける。
二人の場違いな会話に泣き止んで、ホエッ?とした顔でこちらを見ていたお嬢様。
「シーザーの薬をお持ちですの、お金はいくらでも払います。どうか、・・・」
「おじょうさま、手提げかばん(幼稚園カバン)しか持ってない子供が薬など、『今作るから待ってね。』、えっ??」
ミヨチャンは唯一の手荷物の黄色い幼稚園バックのチャックを開けて古びた、紅い銅製のコップと赤い小さなハンカチを取り出す。
小さな手で片手で持った銅製のコップに赤いハンカチをかぶせる。
瞬間、ミヨチャンの小さな体が真っ白に輝き、すぐに発光が終わる。
赤いハンカチをどけるとミヨチャンの持つコップに真っ白な液体、牛乳か(笑)。
「お姉ちゃん、あたしそのお馬、大きくて怖いから、このお薬、お馬さんにかけて。」
従者さん、展開についていけずに、すがるようにお嬢様の方を向く。
こちらも、訳が分からないお嬢様、無言でコクコクと頷くと、”おまえがやれ”、とジェスチュアで指示を出す。
『こんなもんで治るわけねーじゃん(普通の感覚)』と思いながら、従者さんはミヨチャンから受け取ったコップの液体を黒馬の折れた左足、矢に射られた左首に順にかける。
白い液体は、シーザーの見事な黒毛の上で一瞬輝くとその体に吸い込まれるように消えて、傷跡が痕跡も残さず消え去っている。
黒馬は一度、目を深く閉じると”カッ”と目を見開き踏ん張ると一気に立ち上がる。
お嬢様と従者さんは、
「おー、神よ!わが女神セシリア様。
わたくしの深き信仰心にお答えいただき、・・・」
「あのー、お馬さんのご飯を用意するから入れ物ください。」
2人の長いお祈りを待ちきれずにミヨチャンがしびれを切らして言う。
ナニセ、ココハキケンラシイ(笑)。
ハッとした従者さん。
馬車から水飲み用のタライを用意する。
「大賢者様、これでよろしいでしょうか?」
『ダイケンジャ、ってなんだ?』
ミヨチャンは思いながら、ハンカチをかぶせたコップから出来上がる黄色いポタージュスープのような液体をパッパカパッパカとタライの中にぶちまけては次を作る。
待ちきれずにタライの底を舐める黒馬。
ミヨチャンが作るポタージュスープ(のようなもの)1回200CC。
馬が舐める量、1回200CC。
10回ほど繰り返しミヨチャンが飽きてきたころ、馬は満足そうに天を仰ぎ”ヒヒーン”、と大きくいななき”早く行こうぜ”、とばかりに前足をかく。
「シーザー!」
感動のあまり、黒馬に縋りつくお嬢様。
できる従者はお嬢様に構わず黒馬を引っ張り、馬車につなぐ。
引きずられて当然にコケるお嬢様。
でも、嬉しいので文句はなし。
馬車は小さい。
1頭立てである、御者席の後ろには小さなベンチ1台分とその後ろに食糧、水、衣類などの最低限の旅装具。
「あの、大賢者様?もお乗りになります?」
馬車の支度も済み、出発の段になってお嬢様がミヨチャンに尋ねる。
「あたし、イマイミヨ。ミヨチャンだよ、ダイケンジャって名前じゃないけど、ご飯食べられるところまで連れてってくれるとうれしい、連れてってください。」
2人の少女が馬車のベンチに座ると、御者台の従者が馬に軽く合図の鞭を入れる。
ここから街道まで馬車で2時間くらい、街道に出てから馬で4時間くらいか。
日暮れには町に着けるかもしれない。
書いててマッタリ