と、そこへ御天使様が降臨なされました。
超能力者。
かつてはアニメや漫画にしか存在しないといわれていた。しかし、数十年前から突如超能力者が現れ始め、今ではごく当たり前の存在となっていた。
そんな世界の一角。何一つ特別ではないこの街に、あるイレギュラーな存在がいる。
それが俺、樫野イオナ(かしのイオナ)。
何がイレギュラーかというと、
俺は中性。つまり性別がない。
一人称は「俺」だが、それだけ。声や体もどちらかというと女寄りだし。顔は中性的だけど。
そんな感じの俺が、雨の日傘をさしながら少し違う道を帰っていた時。
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「・・今日の晩御飯何にしよう。・・いや確かあかりが何か持ってくるって言ってたっけ。じゃあご飯くらいでいいかな・・」
性別のないため制服を着ることがない俺の相棒、紺色ジャージ君。お世話になっているそのジャージ君も少し濡れ、足元にも水が浸透してきた頃。
キイイー・・
「うん?」
動物の鳴き声を聞いた気がして、足元にあった段ボールを見る。何かいる。なんだこれ?
・・なんというか、ドラゴンの子供のような姿で、ツノの代わりに長い耳がある。
キュー・・・
結構震えてるな。この雨なんだし仕方ないか。
にしても異様に拾ってあげたくなる。見たことない生き物なのに、不思議と警戒心はない。俺の両親は早くに亡くなったからこういうペットみたいなのがいてほしいのかな。
「ほらほいで。」
段ボールの中からその生き物を抱え上げる。
大きさは両手に収まるくらいだった。
プルプルプル
「よしよし。大丈夫だから。」
そういや、これどんな生き物なんだ?見たことないけど。いや、超能力が日常化してる時代だし、いておかしくはないのかも・・。
どちらにせよこんな愛くるしい子を放ってはおけないけど。
ヘプッ!
「なでなで」
キュウ~
道中この子の衰弱ぶりに心配しながらも、無事家に着くことができた。
「ただいまー」
誰もいないけど。
「キイー・・?」
・・なあに子の可愛い生き物。
そうか。今はお前がいるんだよな。これからちゃんと育ててやるからなー♡
・・すう・・
「かわいいぃぃ!」
寝姿が可愛すぎて思わず叫びながらほおずりする。
こんな可愛い子を今まで誰も拾わなかったのが不思議だ。
ピンポーン
一通り撫で終わった頃に玄関のチャイムが鳴った。
あかりだな。
「はーい」
「あ、かっしー。ご飯持ってきたよ~。」
外には傘をさして弁当箱を持ったあかりが居た。
あかりは両親のいない俺のために時々ご飯を持ってきてくれる。
「いつもありがと。」
「幼馴染なんだから気にしないで~。・・ていうかその手の生き物何?」
お、早速この天使に目をつけたか。
「拾った」
「拾った?」
「うん。段ボールの中にいたんだけど、見てたらつい拾ってあげたくなって・・。」
「相変わらず生き物好きだねぇ」
「そりゃあね」
生き物ってのは温かみがあって、ちゃんと生きてる。それを踏みにじる人間なんか意味が分からない。
っていう決まり文句を毎回言っているせいか、あかりの顔には「飽きた」と書かれているようだった
「いやおいちょっと待て。ホントに書こうとするんじゃない。」
「何回も聞いたも~ん」
たくもう。ま、これでも結構甘えんぼなんだけど。
「あかりも自分家の猫に抱き着いて撫でに撫でまくってたでしょ。」
「!?なっ、なんでそれ知ってるの!?」
「ぷすすー。顔赤らめてやーんのー」
「む~~~~」
こんな明るい性格なのに、いたってモブの俺といつも遊んでくれる。前に「もっといい友達いるでしょ」なんて言った時も、「いい人はいい人とちゃんと認めるのが偉いんだから!」って言ってくれたし。本当にいい幼馴染だよ。
「話戻るけど、この子どんな生き物なの?見たことない。」
「さあ・・それが分かんないんだよなー。ご飯とかどうしよう。」
「とりあえず食べ物あげて、嫌がるかどうかで判断してみれば?」
「そうしようかな」
その後話し終えたあかりは帰り、俺はこの子にご飯でもあげようかと思った。が、この衰弱ぶりではまともに食べられそうにないし、何を食べるかもわからない。とりあえず食事はやめて風呂に入ることにした。
風呂は特に嫌がる様子もなくしっかり洗わせてくれる。洗ってみると意外と汚れていたことが明らかになった。
最初は黒だったんだけど、今ではうっすらと紫がかった黒色になっている。
そして今。
布団の中ですうすうと寝息を立てて寝ている。
ああ、なんてかわいい・・
神様、先祖ともども感謝いたします。
(・・・先祖にどうやって感謝させよう。)
はい。馬鹿な事言ってないで早く寝ましょ。
明日もこの子がいますように・・・・・
*
「・・・・・ま・・」
「・・・ゅ・・・さ・ま・・」
「うん?」
聞きなれない声で目を覚ます。あかりがたまに起こしに来てくれるけど・・違う・・もっと舌足らずな声・・
確認しようと目を傾けてみたが、
「ご主人様。お腹すきました。」
見慣れぬ少女がベッドに顔を乗せていた。
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