8.宝石色の人
今、僕はギルドにある小さな部屋で、机を挟んでソファに座り3人のおじさんと向き合っていた。
左から、メガネをかけた温和そうなおじさん、中肉中背で目つきが異常に鋭いおじさん、そして何故か、迷っていた時に会ったあのごついおじさん。
イールが紅茶をいれてから部屋を出ていった。僕の紅茶を入れる時にチラリとタバスコの容器が見えた……。まあ、それは置いておいて、イールがギルドマスターを呼んでくると言って連れてきたのだから偉い人なのだろう。一応簡単に自己紹介をしておく。
「レイヴィルと言います。本日、冒険者登録をしようとしたところです。」
この奇妙な雰囲気と言うかプレッシャーに、少し声が掠れてしまった。
「僕はルニマン。この支部でギルドマスターを、務めているよ。」
「私はグーテンと言う。冒険者ギルド、オーナーだ。昔はSランク冒険者として活躍していたが、今は引退した身だ。」
「よお、さっきぶりだな。まさかこんな所で会うとは。俺はムスケル。一応Sランク冒険者だ。だけどあんまり固くなんなよ、オーナーと俺はおまけみたいなもんだしな!」
なんと、驚くことを聞いてしまった。ちゃんとギルドマスターを、連れてきてくれたのはいいんだけど、元Sランク冒険者のギルドオーナーに、現役のSランク冒険者まで連れてきていた。て言うかイール!!部屋に入る前に教えろよ!僕に嫌がらせする方法を考えてないで!!
色々な文句が頭に浮かんできたが、生憎とその文句をぶつける相手がいない僕は、仕方なく諦めて現実を受け入れ、本題に入ることにした。
「イールさんに聞いたと思いますが僕の職業適性は、赤の戦士でも青の魔導師でもなくて、白金色になっちゃったんですけど………」
「そのことについてですが………」
ルニマンが口を開く。
「まず、『適性診断水晶』は基本的には赤と青にしか変化することはありません」
結局ギルドマスターにも分からないのかと落胆するが、
「けれど」
と続ける。
「ごく稀に水晶は宝石色に変化することがあります。ルビー、サファイア、エメラルドです。ルビーは、物理攻撃も魔法も威力が常人よりも高いです。サファイアは、固有魔法『創造』により無制限の物質創造ができます。エメラルドは、『蘇生魔法』を柱に多くの治癒魔法が使えます。
因みに宝石色の人は、100万人に1人いると言われていてSランク冒険者のおよそ9割は宝石色の人です。僕は青の魔導師ですが。」
Sランク冒険者のほとんどが宝石色の人ということは、ここに居る2人も宝石色の人なのか?
僕の疑問を察したのか2人が言った。
「私はルビーだ。現役時代は"鷹の目"と言われて遠距離キラーだった」
「おいおい、冗談はやめてくれオーナー。何10キロ離れてようが外すことの無い魔法の精密狙撃のスペシャリストをただの遠距離キラーと表しちゃダメだって。ああ、俺もルビーだぜ。"身体強化"魔法を使った拳が武器だ。"鉄拳"と呼ばれているんだ。」
うん、何となく想像通りの2人だったよ。
「話を戻すね。文献を見ると白金色と言うのはダイヤモンドと著されるらしい。ダイヤモンドは、Sランク冒険者にもいないし、文献でもただ1人、100年前に英雄とか賢者とか言われた人物らしい。詳しいことは文献にも載っていないから実際は何も分からないことになるね。」
そうか。僕の白金色はダイヤモンドと呼ばれてて、かつての英雄または賢者と呼ばれた人らしい。これが分かっただけでも成果はある。
僕は英雄になれる───。