5.トカゲ肉は飽きた
家を出てから1週間。ようやく山から抜け出せた。
あれからも僕はトカゲを狩ったり、自生している植物などを摂って過ごしていた。どうやらここら辺の山にはトカゲしか棲んでいないらしく、トカゲ肉しか食べることが出来なかった。そのトカゲも最終的には最初に見つけたトカゲの大きさの半分以下になっていた。
そういうことでトカゲ肉にも飽き始めた頃に、田舎道に入った。小さな村が見えるがあんまり元気が無さそう。寄ろうかとも思ったが、先に街へ行って冒険者登録を済ませてしまおう。もしかしたら依頼でまたこの付近に来ることがあるかも知れないので寄るのはその時で良いだろう。
幸い山を降りてから街までは近かった。これ以上野宿をするのは食料的な問題で後ろめたかったが杞憂だった。トカゲ肉はほんとにもう飽きたからね!
日が暮れ始める頃に街が見えてきた。このトータスの街はどこよりも依頼が豊富なことで有名らしく、多くの冒険者が集う街となっている。簡単な採取依頼も多く初心者にもオススメの街だ。
街に入って僕は呆然としてしまった。今まで人と関わってこなかったのに、いきなりこの人の量は殺人的だ。右を見ても左を見ても人、人、人。その数に圧倒されていたらいつの間にか道の真ん中にぼーっと突っ立ってしまっていた。この一通りの多い道に突っ立っていたら迷惑なことこの上ないだろう。取り敢えず冒険者ギルドを見つけなきゃ。
そう思っていると、
「おいそこの小僧、ちょっと来い」
と、厳ついおじさんに呼び止められてしまった。この人強そうだ。凄い鍛えられてる。
「なんですか?」
「あんな所に突っ立ってどうしたんだ?迷子か?」
「冒険者登録をしたくて冒険者ギルドを探していたんですがなかなか見つからなくて。あと、人の数に驚いてしまいました。」
「ああ、そういう事か。確かに田舎に比べたら遥かに人が多いもんな!それと冒険者ギルドはその角を右に曲がって暫く行った白い建物だからな!」
ごつい見た目とは裏腹に中身はとても心優しい人だった。
「ありがとうございました」
しっかりとお礼を言い、再び歩きだそうとする。
「ああ。それと敬語なんかは辞めときな。冒険者は自由の象徴!硬っ苦しいのは無しだ!」
「わかったよ、ありがとう!」
今度こそ冒険者ギルドへと進んでいく。