15.パーティを組む
評価、ありがとうございます。
今回はいつもより長くなりました。
冒険者ギルドに着いた、イヴとミレアはイールがいる受付の列に並んだ。
今日は朝だから、依頼を受注しに来た冒険者が多く賑わっている。
並んでいると、2人に多くの視線が向けられる。イヴは、昨日のギルドカードのバグで目立っちゃったな、と考えているが、この視線はどちらかというと軽蔑したようなものだ。
注目の的になっていることで、ミレアはイヴの後ろに隠れるが、耳は隠れられずピクピクしている。昨日のバグで目立っちゃったこと忠告しとけば良かったな、と思うイヴだが的外れ。
何故亜人を連れてきた。ギルド内にそんな視線が飛び交う。
一部、頬を赤くしている人もいるが。
しばらくして、イヴとミレアの順番が回ってくる。ミレアももう慣れたのか、さっきよりも落ち着いている。
「本日はどのようなご用件でしょうか。」
「彼女、ミレアの冒険者登録をしたいんだ。あと、パーティの登録も」
「あっ、ミレアさん。パーティ組んでくれる人、見つかったんですね!」
「え、えっと、見つかった……?」
「? イールさんとミレアって知り合いだったの?」
「ええ、ミレアさんはいつも、魔物の素材を売ってくれるんですよ。依頼じゃなくても狩った魔物は売れるので。いつもは解体場に直行なのでここで話すのは初めてですね。解体場の方々がものすごく綺麗な狩り方に感動してましたよ。
ああっと、、それではミレアさんの冒険者登録で良いですね?」
「ちょっ……ちょっと待って。私、お金持ってないよ」
「はい! これで足りる? 大丈夫、これでも結構持ってるんだ。それに、パーティを組んだら2人のお金だよ。」
「わかりました。こちらに必要事項を記入してください。それから、パーティを組む際の必要事項はこちらに記入してください。」
ミレアはそう言われて、名前や年齢などを書き込んでいく。その隣でイヴも書き込んでいく。そして、ミレアが描き終わったタイミングを見計らって、
「ねえねえ、パーティ名どんなのがいい?」
「うーんと、『鳳凰の羽』ってどう? 1万年生きた不死鳥は鳳凰になるんだって。フェニーちゃんの下で! って感じだよ」
「うん、確かに僕たちにピッタリだよ!」
書き終わったので、イールに渡す。
「えーっと、メンバーはレイヴィルくんと、ミレアさんで……、『鳳凰の羽』で宜しいですか?」
「「はい!!」」
「あ、そうだイールさん。ミレアの職業適性診断もできる?」
「やる分には良いですけど、獣人って魔力ないですよね?魔力が無いと水晶は光りませんよ?」
「あっ、ごめん。ちょっと待って」
ミレアに小声で尋ねる。
「君、魔力持ってるよね?」
「───!?」
「隠したそうだけど、隠した方がいい?」
ミレアはかなり高精度の魔力制御によって、魔力を隠蔽している。それは、魔力を持っていることが周りに知れたら、ここに居られなくなると、ミレアは本能的に思ったからだ。
軽蔑の目で見られることがあっても、イールのように自分を認めてくれる人もいるこの街での生活は充実していたからだ。
でも、魔力を持っていることを知られたらみんな離れてしまうと思った。
だからこそ驚く。魔力を持っていることを気付かれ、それを知っても距離感なく接してくれることに。
故に決めた。
「ううん。隠さなくて良い。……イールさん、職業適性診断? お願い」
「は、はい。では、これに触れてください。」
そう言われたミレアは水晶に触れる。近くで見ているイヴは、どういう仕組みなのか観察するが、分からなかった。
水晶の中で、可視化した気体のようなものが渦巻き、そして、碧に輝きを放つ。
「おおー、エメラルドかー」
「いいなあ、才能ある奴は」
「獣人でもあれ起動するんだ」
と、周りの冒険者が口々に言う。誰よりも驚いているのは、受付嬢のイールである。
適性診断水晶は魔力が無いと使えない。しかし魔力を持たないはずのミレアは水晶を使えた。それ即ちミレアは魔力を持っていることになる。
しかし、昨日のイヴショックの方が重症なので、なんとか対応できる。
「えー……では、ミレアさんはエメラルドということになります。」
「エメラルド? 赤か青じゃないんですか?」
「赤の戦士と青の魔導師の他に宝石色の人というという者が存在します。トールはごく稀に生まれる異能持ちで、ルビーは能力強化、サファイアは『創造』、エメラルドは『蘇生魔法』が使えます。」
「あっ! Sランク冒険者が異常って、これのせいですか?」
「お察しの通りです」
「ふーん、じゃあイヴは?」
「僕? なんかねダイヤモンド? らしいよ」
「ダイヤモンド? さっきのとは違うの?」
「レイヴィルくんは色々とおかしいので、そっとしておきましょう。」
イヴは、仲良くなったと思った受付嬢に見限られて、内心落ち込んだ。
そのとき、グーテンがギルドに入ってきた。しかし、ギルドオーナーであるグーテンを見たことがある人はいない。
「誰だ? あのおっさん?」
「ここらじゃ見ない顔だな」
「それよりあの目見ろよ。誰か殺す気なのか?」
「うーん……でもなあ、なんか見た事あるような……。」
と、口々に言い、Sランク冒険者として活躍していたグーテンを知っている者は何か引っ掛かるようだ。
そして、つい昨日面会したばかりのイヴと、イールも含めてギルドの従業員には緊張がはしる。
「ほ、ほ本日はどのようなご用件でしょうか!?」
「そう固くなるな。今はもう歳で冒険者を引退したジジイに過ぎないからな。」
「し、しかしグーテン様は冒険者ギルドのオーナーという立場にありますから!」
「うーん、じゃあ好きにしろ。それでだがムスケルのバカを見なかったか? 時間になっても来ないから、どうせ依頼でも受けてんのかと思ったんだが。」
「いえ、ムスケル様は今日はいらしておりません。」
「あいつ……こりゃ寝坊確定だな。宿の場所聞いときゃ良かったな。虱潰しに探すしかないか。調査がだるいからってサボらせねえぞ……。じゃあ世話になった。」
「いえ、お力になれず申し訳ありません。」
と、やり取りがあって帰ろうとする間際、グーテンの目に碧に輝く水晶が映った。
「これはエメラルドじゃねーか。宝石色の人がいたのか?」
「は、はい。実は───」
と、若干慌てながらもイールはしっかりと説明する。
獣人のミレアが冒険者登録をしたこと。
ミレアと昨日のダイヤモンドの子、イヴがパーティを組むこと。
イヴの提案で、ミレアの職業適性診断を行ったこと。
そして、ミレアが触れた水晶が碧に輝いたこと。
グーテンは一瞬、呆然としていたがすぐに我を取り戻す。期せずして、昨日のイヴの『ダイヤモンド』という結果が緩和剤になった。
「はあ、こうもイレギュラー続きだと気が持たねえよ。じゃあ、ありがとな。ムスケルを探すとするか。」
そう言ってグーテンはギルドから出ていった。グーテンが出ていったことで従業員の緊張も解れ、集まっていた冒険者も各々依頼を探しに行った。
「では、登録は以上です。依頼を受けていきますか?」
「うん、そうするよ。それでいいよね?」
ミレアも頷いた。そうして、イヴとミレアは初めての依頼に出掛けていった。
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